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竹林軒出張所

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『トータル・リコール』(映画)

トータル・リコール(1990年・米)
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
原作:フィリップ・K・ディック
脚本:ヨスト・ヴァカーノ
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、レイチェル・ティコティン、シャロン・ストーン、マイケル・アイアンサイド、ロニー・コックス

「万物斉同」にして「逍遥遊」

ネタバレ注意!

b0189364_20303864.jpg フィリップ・K・ディックの短編小説「追憶売ります」(現在は「トータル・リコール」と訳されている)を映画化したもの。またこの作品、数年前にリメイク版が作られている。今回見たのはシュワルツェネッガー主演のオリジナル版である。
 舞台は近未来で、すでに火星では植民活動が行われているという世界。主人公のクエイド(シュワルツェネッガー)は、実体験に近い夢を見せるというリコール社の広告に惹かれ、このサービスを受ける(諜報員になるという設定のオプションも買う)。ところが、この夢サービスを受ける段階で異常が発生し、クエイドが実は火星での重大な秘密を握ったために記憶を消されていたことが判明する。そのためにその現場から抜けだして火星に赴き、火星でゲリラ戦を展開している反植民地政府ゲリラにこの重大な情報を明かすことで、火星植民地の悪徳支配者コーヘイゲンを倒すべく戦うというストーリー。
 途中からハリウッド映画的にやや荒唐無稽な感じでドンパチが始まってしまい、何だか少し白けてしまうが、しかしもしかしたらここで展開される劇的なストーリーもクエイドが見せられている夢である可能性があり、そしてそれを示唆するようなシーンもあって、どれが夢でどれが現実なのかよく分からなくなる。言ってみれば「胡蝶の夢」あるいは「邯鄲の枕」のモチーフと言うこともできる。したがってあまりに主人公に都合良く話が進むハリウッド的な展開についても、これがリコール社によって作られた夢であると考えれば、映画的な視点からは決してご都合主義的ではなくなる。ただし、映画ではそのあたりをうやむやにしていて少々モヤモヤするが、しかしそれはそれで良かったのではないかと見終わってから思う。
 美術もよくできており、当時テレビのCMでよく放送されていた変身のガジェットや投影装置のガジェットなどは映像として非常に魅力的な素材である。ただ火星植民地の街の様子がスタジオ感が滲み出ていて安っぽかったのが難点。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ブレードランナー ファイナル・カット(映画)』
竹林軒出張所『アイズ ワイド シャット(映画)』
竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 老子・莊子(本)』

by chikurinken | 2018-12-10 07:30 | 映画

『こんばんは』(映画)

こんばんは(2003年・イメージ・サテライト)
監督:森康行
撮影:川越道彦
出演:倍賞千恵子(ナレーション)、ドキュメンタリー

もっと自由で良いじゃないか

b0189364_17563855.jpg 公開時に地域のホールで見て非常に感動したドキュメンタリー映画である。すばらしい映画ではあるが、DVDが広く出回っているわけでもなく(販売はされているようである)、再び見るチャンスはもうないかと諦めていたが、何と近くの図書館にDVDがあった。いつも利用している図書館ではあるが、こういうことがあると、あらためてその価値を思い知るというものである。
 この作品は夜間中学校の1年間に密着したもので、おそらくありのままの夜間中学をそのまま垣間見せてくれるドキュメンタリーと言って良い。夜間中学といえば、1993年に山田洋次が『学校』という映画で題材にしており、この映画もそれなりにヒットしたんだが、その映画の先生のモデルになったという見城慶和という先生もこの映画にありのままの姿で登場している。
 この映画の舞台になるのは、墨田区立文花中学校夜間学級である。この映画撮影時、夜間中学は全国8都府県に35校あり(「しかない」と言う方が適切か)、文花中学校はその中の1校ということになる。この中学校には、15歳から92歳まで約80名の(8カ国の)生徒が通っているという。幼い頃戦争や仕事のために教育を受けられなかった高齢の人々や、不登校になった若者、在日外国人など、その背景は多岐に渡る。確かなことは、初等・中等教育を必要としている大人が実際に存在するということである。
 僕を含め、ともすれば自分の位置が世界の標準であると勘違いしがちだが、普通に小中高校を卒業して大学まで行けるというのは、立場的にはラッキーとも言える。実際には、さまざまな理由で教育を受けられないという人々もいるし、世界的に見ればそういう境遇の人の方が多いのかも知れない。したがってそういう人々の現実を生のまま見せられるということは、いろいろな立場の人が存在するということをあらためて認識させられるわけで、それこそがドキュメンタリーの存在価値の1つである。
 ほとんどの日本人にとって、夜間中学はおそらく一生関わることはないだろう。しかしこういった学校の存在が人々の役に立っていることはこの作品を見れば一目瞭然。それどころか、ここには本来教育が果たすべき役割があるとも言える。老齢の生徒が語っていた「ここには足の引っ張り合いがない。自分がわからないところは他の人が助けて教えてくれる」という言葉が印象深い。教育ってのは本来そういうものではないかと思う。いつから足の引っ張り合いが教育現場のスタンダードになったのか、逆に疑問に感じたりする。
 この映画に登場する生徒の中には、小学校で不登校になり人と話ができなくなった15歳ぐらいの伸ちゃんという少年もいて、彼が高齢者中心の学級に入ってくる。彼は、永らく引きこもりだったせいか、学校には一切行けなかったんだが、この学校(文花中学校夜間学級)であれば行けるかもということで、2時間だけ(それでも途中まで)通うことになった。伸ちゃんは、他の人とまったく会話をしないし、表情もあまり変えることがない。他の老生徒がいろいろと話しかけるんだが、とにかく反応がない。普通だったらこういう人間と関わると「返事せんかい!」と怒る人間が出てきてもおかしくないんだが、皆彼の境遇をよく理解した上で優しく接する。最後の方のシーンでは、この彼が、何ヶ月後かわからないが、話ができるようになっていて、しかも今までできなかった行事への参加もできるようになっていることが紹介される。驚きの結末で、教育が本来果たすべき役割というものがはっきりと明示されていて、大変気持ちが良い。
 この映画を見て感じるのは、日本の学校があまりにも同調圧力が強すぎるのではないかということである。こういった、割合自由な環境で生徒たちが楽しみながら勉強して、しかも一定の成果が上げられるのであれば、もっと自由でも良いんじゃないかと思う。僕自身、以前この映画を見てからというもの、こういった(普通のルートを外れた)教育について関心を持ち、関連するドキュメンタリーや本にも接してきたが、あらためてこの映画を見るとこのようにまたいろいろ考えることが出てくる。それにもっとこういった環境を増やすべきではないかとも(当然ながら)思う。こういう風にあれこれ考える機会を与えてくれるというのもドキュメンタリーの存在意義である。そういう意味でも、このドキュメンタリー映画が非常にすばらしい作品であること、これは間違いない。
2003年度キネマ旬報ベストテン文化映画第1位
第58回 毎日映画コンクール 記録文化映画賞
第1回文化庁映画賞文化記録映画大賞
第13回日本映画撮影監督協会 J.S.C賞他受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『学ぶことの意味を探して(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『本当は学びたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『みんなの学校(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『まちがったっていいじゃないか(本)』

by chikurinken | 2018-11-28 07:56 | 映画

『毎日がアルツハイマー』(映画)

毎日がアルツハイマー(2012年・NY GALS FILMS)
監督:関口祐加
撮影:関口祐加
出演:関口宏子、関口祐加(ドキュメンタリー)

あるお年寄りを取り巻く家族の記録

b0189364_18070520.jpg 老齢の親が、ある日突然認知症に……というケースは今ではまったく珍しい事例ではなくなり、いつ身の回りで起こってもおかしくはない出来事になった。そのためもあり、現在、認知症を扱ったドキュメンタリーや本は増えてきている。この映画もそういったドキュメンタリーで、ある映画監督が、自身の母の変わっていく様子をカメラに収めるという当事者目線の作品である。
 このドキュメンタリーに登場する「母」は監督の母親であり、二世帯住宅に住んでいる。2階には監督の妹家族が住んでおり、母親は1階に一人暮らししている。母親の夫(つまり監督の父)は10年前に他界。こういう状況で、娘でありこの映画の監督でもある関口祐加は、この母の様子がおかしいという話を妹から聞く。要するに認知症の症状が出始めたということなんだが、この話を聞いて、オーストラリア、シドニー在住の娘(つまり監督ね)は日本への移住、つまり母との同居を決意する。実はシドニーには息子が1人いるんだが、仕方がないので、この息子は別れた夫に預けることになった(このあたりの事情はよくわからないが)。
 母に寄り添うように母の様子を撮影していくと同時に、その母の周辺、つまり自身の家族の周辺もあわせて撮影対象になる。母が少しずつずれていく様子も当然描かれ、こういう映像は正直見ていて辛く、見るこちら側も戸惑ってしまうんだが、本編に登場する精神科の新井先生の言葉、「認知症であっても問題があるのは脳の5%だけで、認知症になっても一瞬一瞬はまとも。ただ時間の継続の中でそれが続かないだけ」という言葉がいくらか救いになる。
 作者のツッコミが随所で字幕として出てくるなど、全体にユーモアが漂う作りになっており、そのあたりがこの作品の大きな特徴である。ただ基本は映像日記みたいな内容であり、極論すれば、あるお年寄りを取り巻く家族の記録というような映画である。もちろん作者の問題意識やメッセージ性は伝わってくるんで、それだけで終わっていないのは確かだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『いま助けてほしい 〜息子介護の時代〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『野田明宏先生のファンの皆様へ』
竹林軒出張所『老人漂流社会(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『エンディングノート(映画)』

by chikurinken | 2018-11-27 07:06 | 映画

『すばらしい蒸気機関車』(映画)

すばらしい蒸気機関車
(1970年・たかばやしよういちプロ)
監督:高林陽一
脚本:高林陽一
撮影:高林陽一
音楽:大林宣彦
ナレーション:見上良也(ドキュメンタリー)

音楽の違和感だけが耳に付いた

b0189364_18021830.jpg 日本国内のいろいろな蒸気機関車を紹介するドキュメンタリー。「日本国有鉄道が現有する記録を基に自由に構成したもの」というコンセプトらしい。全国で撮影された蒸気機関車の映像を編集して、1本の作品にしましたというのがこの作品である。
 特定の線ごとにある程度まとめられた映像集が小編みたいな感じで繋げられている。登場する主な機関車は、B20、C61(鹿児島機関区)、C57(宮崎機関区)、C55、D60、D50(筑豊本線)、D51(大畑ループ線)、C59、C62(呉線)、C58、9600(宮津線)、D51、C58(伯備線)、C57、D51(山陽本線)C11、C57、8620(梅小路機関区)、C58(奈良線)、C60(熊本機関区)、D51、D60、D50(直方機関区)、C12(西舞鶴機関区)、C56(木次線)、C11(倉吉線)、9600(米坂線)、8620(花輪線)。その間に、機関車の説明、動輪がどうとか製造台数が何台だったとかそういった解説が入る。また途中に、女性モデルと機関車を一緒に映したプロモーションビデオ風の映像が入る。背景には機関車の歌が入り、さながらカラオケの背景映像みたいなクリップが出てくる(杉田靖子という人が歌っているらしい)。歌も変だし、この映像も演出の意図がよくわからない。
 音楽は、無名時代の大林宣彦が担当しているらしいが、総じてかなり違和感のある(恥ずかしさを感じる)音楽である。冒頭からして「うれしいひな祭り」の替え歌みたいな音楽が耳に付く。プロモーションビデオ風のシーンに登場した「す・ば・ら・し・い・機関車よ〜」と繰り返すテーマ曲(みたいな歌)もかなり奇妙な感じがある。音楽の主張が強すぎて映像に合っていないと感じる。
 映像は先ほども言ったように蒸気機関車とその周辺の風景ばかりで、蒸気機関車ファンには垂涎の映像かも知れないが、僕のような門外漢にとっては実に退屈なシーンが続く。周辺風景の映像は確かに懐かしさを誘うが、どの機関車も僕には同じに見えるし、まったくもって面白さは感じない。釜に石炭をくべるシーンは小さな子どもの頃から好きだった(なぜか知らない)ため、そのシーンはほぼ唯一心地良かった。また映像は、概ね春夏秋冬の順に並べられていて、季節感を感じられるようにはなっている。
 先ほども言ったように、鉄道好きには堪らない映画なんだろうが、僕にとっては音楽の違和感だけが耳に付いたのだった。やはり鉄道マニア向けの映画なんだろうなと思う……ま、当然だが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ある機関助士(映画)』
竹林軒出張所『裸の太陽(映画)』
竹林軒出張所『さびしんぼう(映画)』

by chikurinken | 2018-11-26 07:01 | 映画

『人間革命』(映画)

人間革命(1973年・東宝)
監督:舛田利雄
原作:池田大作
脚本:橋本忍
音楽:伊福部昭
出演:丹波哲郎、芦田伸介、仲代達矢、新珠三千代、稲葉義男、森次晃嗣、山谷初男、佐原健二、渡哲也、佐藤允、雪村いづみ、黒沢年男

これは映画ではなく教材である

b0189364_18582519.jpg 創価学会の池田大作の著書が原作の映画。僕はあの団体にはまったく何の利害も関心も持っていないため、元々この映画にもまったく興味がなかったんだが、子どもの頃「にんげんかくめいっ!」とやたら連呼するCMが記憶に残っていたのと、スタッフとキャストが豪華であるということを最近知ったため、あまり見る機会もない映画であるし、今回見ることにした。見たのは、BSの日本映画専門チャンネルで放送されたものである。
 宗教団体の映画ということなんで、教条を押し通すような映画でなければ良いな、スペクタクルがあれば良いななどと思っていたが、残念ながら予想通りの映画だった。創価学会を作った戸田城聖という人の半生を描くんだが、この人の半生自体(治安維持法違反で投獄されはしたが)あまりドラマチックな要素がなく、この人に思い入れがない人にとってはまったく見所がないと言って良い。この戸田という人が、獄中で悟りを開き、出獄、そして終戦を経て、その思想の広報活動を行うというストーリー。後半は、延々とその説法のシーンが続き、戸田役の丹波哲郎が語り尽くす。丹波哲郎の講義はなかなか迫力があって良いが、内容については大して興味が湧かない上、ただただ講義し続けるシーンが綿々と続くため、信者以外の人間にとって面白いわけがない。よくぞこんな映画を劇場公開したなというような代物である。断じて言うが、これは(一宗教の)教材であり(通常の概念の)映画ではない。要するに関係者の間だけで見るような素材である。もっとも公開時に劇場に足を運んだのはもっぱら学会員だっただろうし、全国の劇場を学界が貸し切りしたものだと考えれば、それはそれで東宝側のビジネスとしてはOKだったのかも知れない。しかしそれにしてもだねぇ……(ここは丹波哲郎風の言い方で)。
 この映画、製作費も配給収入も当時日本映画界でトップクラスだったようで、そのことが当時話題になったことは記憶している。ただ、製作費は(金のある)宗教団体からおそらく金が出ているわけだし、配収の方も、会員がチケットをたくさん買わされた(そしてそれを一般人に無料で配付した)ことが容易に想像されるため、それについては十分合点が行く。言ってみれば元祖・角川商法みたいな映画で、当時斜陽産業だった映画界にとっては、こういったスポンサーは上客だったことが想像される。ただそういうような製作姿勢は決して後の世からすると褒められたものではないし、作品の内容も推して知るべしである。はっきり言って、個人的にはまったく見る必要がなかったし、時間の無駄だったとも思う(もっとも彼らの考え方の一端には触れられたような気がする)。橋本忍まで動員してこんなPVばりの映像を作ってしまうというのは、いやしくも映画という芸術に携わる企業の姿勢としてはきわめて恥ずかしいことだと言わざるを得ない。
★★

参考:
竹林軒出張所『二百三高地(映画)』

by chikurinken | 2018-11-25 07:58 | 映画

『ムッシュ・カステラの恋』(映画)

ムッシュ・カステラの恋(1999年・仏)
監督:アニエス・ジャウィ
脚本:アニエス・ジャウィ、ジャン=ピエール・バクリ
出演:アンヌ・アルヴァロ、ジャン=ピエール・バクリ、ブリジット・カティヨン、アラン・シャバ、アニエス・ジャウィ、ジェラール・ランヴァン、クリスティアーヌ・ミレ

笑いあり涙ありだが
一方であれこれ放り込みすぎ


b0189364_16391560.jpg 内容はほとんど憶えていなかったが、前に見たときは大変気に入っていたようで、過去に★★★★を付けていた(竹林軒『2004年の5本:リスト』参照)。そんなに気に入った映画ならば……ということで(内容は憶えていなかったわけだが)今回もう一度見ることにした。
 芸術などにまったく造詣のない現実主義の会社社長、カステラ氏が、自身の英語家庭教師になった女性をたまたま舞台で目にして(彼女は売れない舞台女優だった)突然恋してしまう。その舞台女優クララの周辺は芸術家ばかりが集まるコミュニティで、いきなりカステラ氏、慣れていない別世界の環境に放り込まれることになるというのがメインになるストーリー。
 サブプロットがいろいろ織り交ぜられていて、カステラ氏の運転手や護衛、それからよく行くバーのバイト女性の恋模様まで絡んでくる。監督は、バーのバイト女性も演じているアニエス・ジャウィという人。しかもカステラ氏を演じたジャン=ピエール・バクリも製作に一枚噛んでいて、同時に共同脚本にも名を連ねている。舞台女優を演じたアンヌ・アルヴァロという人もフランスでは有名な舞台女優らしい。この映画の関係者たち自身が多才な人たちばかりで、映画に登場する芸術家たちの集まりは彼ら(つまり自分たち)がモデルかとも感じる。
 全編軽いタッチで、笑いやもの悲しさもある、いわゆるペーソス・タッチの作品であるが、少々こんがらがったような印象が最後まで残ったのは、サブプロットが多すぎることが原因ではないかと思うが、それでも最後はうまくまとめられていて、試聴後感は良い。だが前回見たときほどの感動はないなーと思う。良い映画ではあると思うが、前に見たときにどこにそんなに感心したのかも思い出せない。
2000年セザール賞作品賞、脚本賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『アメリ(映画)』
竹林軒出張所『仕立て屋の恋とフェリックスとローラ(映画)』
竹林軒出張所『髪結いの亭主(映画)』
竹林軒出張所『親密すぎるうちあけ話(映画)』

by chikurinken | 2018-11-14 07:38 |

『渚にて』(映画)

渚にて(1959年・米)
監督:スタンリー・クレイマー
原作:ネヴィル・シュート
脚本:ジョン・パクストン、ジェームズ・リー・バレット
出演:グレゴリー・ペック、エヴァ・ガードナー、フレッド・アステア、アンソニー・パーキンス、ドナ・アンダーソン

テーマは意欲的だが内容が伴わない

b0189364_20535855.jpg 核戦争後の世界のありさまを描く一種の終末テーマのSF映画。北半球では核戦争のせいで人類が絶滅し、オーストラリアにはまだ放射能の影響が及んでいないため、オーストラリアの人々は普通の生活を送っている……というのが背景になっている状況である。
 主人公は、米海軍の潜水艦艦長(グレゴリー・ペック)で、たまたま海底にいたため核戦争の影響を受けず、そのままメルボルンに寄港したというような設定。この映画の舞台は1964年の設定になっていたので、てっきり1962年のキューバ危機を念頭に置いて作られた映画かと思っていたが、製作年は59年ということで、キューバ危機はこの映画の後ということになる。偶然とは言え何だかすごい話である。
 さて、このように大変興味深い話なんだが、ストーリーが何だかいい加減な上、登場人物の(オーストラリアと北米間の)移動もまるで瞬間移動したかのようで、相当ご都合主義的である。また、放射線の影響という点でも、今見るとあまり現実的ではない。何より、ドラマとしての流れが非常に悪いために、僕は最初の10分ぐらいから最後までひたすら退屈していた。描かれるモチーフも、人類の生存の可否を扱っているのは確かだが、他にも恋愛あり、レースあり、夫婦愛ありとわけのわからない多様さで、まったくまとまりがない。古い映画で今でも残っているんで名画の類だと思うが、率直に言って、見所は皆無に近い駄作と言わざるを得ない。
 テーマや主要なモチーフは非常に意欲的で、ハリウッドで作られた映画とは思えないようなものだったが、映画の内容がテーマについていけてないという、誠に残念な結果に終わっている。いろいろな点でリアリティが欠如していて、突っ込みどころが多いのも大きな問題である。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『招かれざる客(映画)』
竹林軒出張所『ニュールンベルグ裁判(映画)』
竹林軒出張所『ラ・ジュテ(映画)』
竹林軒出張所『吸血鬼ゴケミドロ(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』

by chikurinken | 2018-11-13 07:53 | 映画

『時の支配者』(映画)

時の支配者(1982年・仏)
監督:ルネ・ラルー
アニメーション監督:メビウス
原作:ステファン・ウル
脚本:ルネ・ラルー、メビウス
脚色:ジャン=パトリック・マンシェット
出演:アニメーション

精緻でユニークな美術が魅力

b0189364_15594477.jpg 『ファンタスティック・プラネット』のルネ・ラルーがメビウスというマンガ家と組んで製作したSFアニメ。
 メビウス(ジャン・ジロー)という人、僕は全然知らなかったんだが、手塚治虫や大友克洋、宮崎駿に影響を与えたというフランスのマンガ家で(メビウス自身も彼らの影響を受けたと語っている)、しかも『エイリアン』のデザインも手がけているらしい。そういう人が存在することについて大いに関心を持ったため、今回メビウスが関わったという作品を見ることにしたというわけ。
 この映画では、原画などを担当しているということで、おそらく絵がメビウス風なのではないかと思う。確かに精緻に描かれていて魅力的で、どことなく大友克洋を彷彿とさせる。登場人物、特に子どもの顔が大友克洋の絵によく似ているとも思う。少しばかり不思議で不気味な植物や動物があちこちに出てきて、独特の世界が形作られている。このあたりは『ファンタスティック・プラネット』とも共通である。
 ストーリーは、原作ものということもあり、かなり凝りまくった話である。タイム・パラドックスの類の話で、なんとなく辻褄が合わないような気もするが、意外性のある面白いストーリーではある。
 映像やキャラクター・デザインは非常に魅力的であったが、エピソード間のつなぎの部分が(これは全体に言えるんだが)非常に単調で(絵が動かないとでも言えば良いのか)面白味がない。これは『ファンタスティック・プラネット』にも共通する部分で、そのために中だるみした印象が出てくる。そのためかどうか知らないが、80分程度の映画だったが、途中かなり退屈した。鑑賞中、時計を何回も見たというのが実際のところである。とは言え、先ほども言ったように、見所は多く、決してないがしろにできない作品であるとは思う。
ファンタフェスティバル映画祭1982 最優秀子供映画賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ファンタスティック・プラネット(映画)』

by chikurinken | 2018-11-12 06:59 | 映画

『犬ヶ島』(映画)

犬ヶ島(2018年・米)
監督:ウェス・アンダーソン
原案:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン、野村訓市
脚本:ウェス・アンダーソン
声の出演:エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、野村訓市、ブライアン・クランストン、コーユー・ランキン

ストーリーがくだらない

b0189364_17205488.jpg メガ崎市という架空の日本風味の都市が舞台のアニメーション。日本風味と書いたが、相撲や歌舞伎が出てくるし、市長は三船敏郎風だし、メガ崎市では日本語が話されているから、舞台は日本なんだろう。だがなぜ舞台が日本であるかはわからない。製作者の趣味か。
 全編ストップモーション・アニメーションで作られているという話だが、映像にぎこちない感じはまったくなく、非常にグレードが高い。だが話自体については、あまり面白味がない。少年と犬との愛と友情の話ということになるんだろうが、単純でつまらないストーリーである。
 声優には、有名な俳優が起用されていて、しかもゲスト的にスカーレット・ヨハンソンやオノ・ヨーコ、渡辺謙まで出てきて豪華である。また、『七人の侍』のパロディみたいなシーンがある他、何より『七人の侍』のテーマ曲が随所に流れるんで、同作を大いに意識しているんだろう。僕がこの映画に興味を持ったのもそのあたりだったんだが、結局のところ、だから何だ?というレベルでとどまっている。三船敏郎風の小林市長も、声が甲高くて全然三船風の迫力がない(映像については迫力があるが)。もう少しドスの利いた声の声優を起用したら良かったのにと思う。だが、そういう話以前に、内容がつまらないという致命的な欠陥があるわけだが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『アナと雪の女王(映画)』
竹林軒出張所『スーサイド・ショップ(映画)』
竹林軒出張所『山賊の娘ローニャ (1)〜(3)(アニメ)』

by chikurinken | 2018-11-11 07:21 | 映画

『ボクサー』(映画)

ボクサー(1977年・東映)
監督:寺山修司
脚本:石森史郎、岸田理生、寺山修司
出演:菅原文太、清水健太郎、小沢昭一、春川ますみ、地引かづさ、唐十郎、具志堅用高

寺山「ジョー」

b0189364_17511157.jpg 寺山修司が監督したボクシング映画。落ちぶれている元ボクサーのトレーナー(菅原文太)と足に障害を持つボクサー(清水健太郎)の二人三脚のドラマで、寺山版『あしたのジョー』といったところ。スポ根マンガを映画にしたようなありきたりな演出が多く、目を瞠るような部分はほとんどない。
 菅原文太と清水健太郎のボクシングが割合サマになっていたのと、具志堅用高を始め、歴代の世界チャンピオンたちが大挙してゲスト出演していた(日本ボクシング連盟が協力しているらしい)のが印象に残った程度で、後はあまり見るべきものはなかった。もっともボクシング好きには楽しめるのかもしれない。
 菅原文太のトレーナーが飼っている犬がボクサーで、この犬が少しとぼけていて面白かったのが僕にとっての唯一の見所。監督が寺山修司だけに天井桟敷のメンバーも大挙して出演している。挙げ句に状況劇場の唐十郎までが出ていたが、こちらは友情出演みたいな感じだったのかなと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『チャンプ(1931年版)(映画)』
竹林軒出張所『書を捨てよ町へ出よう(映画)』
竹林軒出張所『初恋・地獄篇(映画)』
竹林軒出張所『寺山修司からの手紙(本)』
竹林軒出張所『買った、見た、ふるえた……キックの鬼 最終章』
竹林軒出張所『慢性拳闘症(本)』

by chikurinken | 2018-10-29 07:50 | 映画