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竹林軒出張所

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『真珠の耳飾りの少女』(映画)

真珠の耳飾りの少女(2003年・英・ルクセンブルク)
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
脚本:オリヴィア・ヘトリード
撮影:エドゥアルド・セラ
美術:ベン・ヴァン・オズ
衣装デザイン:ディーン・ヴァン・ストラーレン
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ、エシー・デイヴィス

フェルメールの詩的要素が再現された
スナップショットのような映画


b0189364_22152672.jpg フェルメールの肖像画『真珠の耳飾りの少女』がどういういきさつで描かれたかという、それだけのストーリーの映画。今回久々に見た。二度目である。
 原作は短編か中編の小説ではないかと思う。ストーリーについてはドラマチックな要素はあまりなく、フェルメール家の騒動や、そこに女中として仕える主人公のグリートが受けるセクハラやパワハラがドラマの盛り上がりの部分で、ほとんどは写実的な表現に終始する。ただし写実的であっても表現方法によっては詩が生まれる(竹林軒出張所『お葬式(映画)』を参照)。この映画は、まさに全編を通じて詩であり、フェルメールの絵画のような静けさをたたえた映像が随所に登場する。また有名絵画に似せたような映像も随時登場し、ちょっとしたパロディなのかも知れないが、こういった映像にも美しさが漂う。17世紀オランダの風俗も見事に再現されており、まさにフェルメールの世界に飛び込んだようなそういう映画である。
 このように僕は撮影、美術、衣装デザインを特に高く買っているが、ただいわゆる「美術」にあまり興味がない人にとって、この映画が面白いのかどうかは少々疑問ではある。とは言え、映像の美しさは、「美術」的な要素を超えて存在するのは事実であるため、そちらが堪能できれば十分楽しめるのではないかと思う。
 これまで美術関係の映画は数々見てきたが、この作品は最高レベルの1本と言える。同じように映像面で感心した美術映画といえば、印象派の絵画を再現したかのような『田舎の日曜日』があるが、この作品などはモネとルノワールを足して二で割ったような画家が主人公だったため、印象派的な絵作りにしたことは、この『真珠の耳飾りの少女』と同様、きわめて筋が通っていると言える。この映画のスタッフも、あるいはあの映画から感化を受けて同じようなアプローチを目指したのかも知れない。
2003年LA批評家協会賞撮影賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ロスト・イン・トランスレーション(映画)』
竹林軒出張所『ブーリン家の姉妹(映画)』
竹林軒出張所『フェルメール盗難事件(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『レンブラント 描かれた人生(映画)』
竹林軒出張所『レンブラントの夜警(映画)』

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 以下、以前のブログで紹介した『真珠の耳飾りの少女』のレビュー記事。やはり同じようなことを書いている。

(2006年3月27日の記事より)
真珠の耳飾りの少女(2003年・英ルクセンブルグ)
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
撮影:エドゥアルド・セラ
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ、エシー・デイヴィス

 オランダの画家、ヤン・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」を題材にしたトレイシー・シュヴァリエの原作の映画化。だが、原作ものを単に映像化したというレベルではなく、作り手がフェルメールの絵画に直に接近しているのがよくわかる。
 この映画の一番の魅力はやはり映像である。フェルメールの世界を映像でことごとく再現しており、フェルメール好きの人ならばあちこちでニンマリしてしまうだろう。構図やインテリアだけでなく(これだけでもなかなかなんだが)、光の具合も再現されている。特に驚くのは、フェルメールの絵のタッチ(マチエールというのかな)まで似ているということ。どうやって再現しているのかわからないが、輪郭を少しぼかして若干ハレーションを起こさせるような撮り方をしているが、これがフェルメールのタッチによく似ている。全編でこういう効果を出しているわけではなく、フェルメールの絵に似た構図の箇所でのみやっているので意図的なものだと思うが、正直これはすごい! 掃除のシーンでさえも、フェルメール絵画の再現になっている。また、バルビゾン派のフェルメール風とか、横長の印象派(浮世絵)構図のフェルメール風というようなものも出てきて、なかなか面白い。
 もちろん映像だけでなく、ドラマとしても人間の機微が描かれていて、スリリングな展開もあり、まったく最後まで飽きることがない。でもやっぱり、西洋美術好きにはたまらん映画だろうなと思う。
 余談だが、この映画に登場するフェルメールの奥方が、同じオランダのヤン・ファン・エイクの絵(「アルノルフィニ夫妻の肖像」)に出てくる人物によく似ており、こういうのも意図的だったんだろうかと気になった。
★★★★

by chikurinken | 2018-06-08 07:15 | 映画

『ポセイドン・アドベンチャー』(映画)

ポセイドン・アドベンチャー(1972年・米)
監督:ロナルド・ニーム
原作:ポール・ギャリコ
脚本:スターリング・シリファント、ウェンデル・メイズ
撮影:ハロルド・E・スタイン
特撮:L・B・アボット
出演:ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレー

パニック映画の元祖
二番煎じがたくさん出たが
これを超えたものはない


b0189364_22063353.jpg 70年代にパニック映画がやたら流行ったが、その元祖とも言えるのがこの映画。豪華客船が津波に遭って転覆し、沈没する船の中に閉じ込められた乗客たちが何とか脱出しようとするというストーリー。
 僕自身は、子どもの頃映画館で予告編を見たのが最初で、特に転覆したときの船内の映像がものすごく、大変衝撃を受けた。その後、『月曜ロードショー』でノーカット版が放送されたときに見て、今回はそれ以来、つまり45年ぶりということになる。月日の流れは速いもんだ。
 この映画、基本的には脱出過程が目玉ではあるが、人間同士のぶつかり合いや希望、絶望などもうまく描かれているため、非常に見応えがある。最後まで目が離せなくなる類の映画である。なんと言ってもセットが非常によくできていて、あらゆるシーンがものすごいリアリティで迫ってくる。「作り物」という感じが一切ない。
 ジーン・ハックマンが、いかにもアメリカンな一癖ある牧師を演じていて、これが強烈。敵対する元刑事のアーネスト・ボーグナインとのぶつかり合いも素晴らしく、一番の見所である。あまり有名な俳優は出ていないが、どのキャストもよくはまっていて好演である。
 この映画、2006年にリメイクされたが(『ポセイドン』)、こちらは第27回ゴールデンラズベリー賞の最低リメイク賞にノミネートされている。どうしてこんなよくできた映画をわざわざリメイクしようとしたかわからないが、そういうリメイクの話は日本でもまあ良くある話である(竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』を参照)。ただアメリカには「最低リメイク賞」などといった遊び心に溢れた賞があり、そういう点がいかにもアメリカで、なかなか奮っていると思う。日本の映画界もその精神をまねて、つまらないリメイクはやらないようにしてほしいものである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『俺たちに明日はない(映画)』
竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』

by chikurinken | 2018-06-06 07:06 | 映画

『泥棒成金』(映画)

泥棒成金(1955年・米)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:デヴィッド・ダッジ
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
出演:ケーリー・グラント、グレース・ケリー、シャルル・ヴァネル、ブリジット・オーベール、ジェシー・ロイス・ランディス

楽しく時を過ごせる映画

b0189364_18380087.jpg ヒッチコック作品。以前見たことがあると思っていたが、結局、見たことがあるのかないのかよくわからなかった。『おしゃれ泥棒』や『シャレード』なんかとストーリーが重なっていて、よく憶えていないのだ。今回見た分についても、なんだかすぐに忘れそうな気がする。
 ハリウッド映画らしくハラハラドキドキの展開で、内容もしゃれていて面白いが、字幕のせいか一部内容についていけなかったため、最後は結構モヤモヤして終わってしまった。引退したかつての大泥棒(ケーリー・グラント)が、新たな泥棒事件の嫌疑をかけられ、それを晴らすためにあれやこれややっていくというストーリー。その過程で出会う美女がグレース・ケリーで、いかにもハリウッド映画な展開……と言えば言い過ぎか。
 とは言え、やはり随所にキラリと光るヒッチコック演出が散りばめられていて、非常に感心することしきり。そもそも冒頭部分からして奮っている。タイトルバックに出てくる旅行代理店のショット、ウィンドウ内にあるフランス旅行の宣伝文句のアップ(「France」と出てくる)、そこから急にフランスの保養地に一挙に飛んで、次に(その保養地の)ホテルでの泥棒のシーンと短いショットで繋がっていく。しかも泥棒のシーンには屋根を歩く黒猫が象徴的に使われていたりしておしゃれである(ちなみに主人公の元大泥棒は「猫」と呼ばれていた)。また、あちこちに出てくるユーモアもヒッチコックらしい。ただストーリーが少々できすぎで、途中から概ね筋書きも見えてくるし、そういう点がちょっとマイナス。
 ケーリー・グラントもグレース・ケリーもヒッチコック映画では常連(それぞれ4本、3本に出演)で、まったく違和感なく、ヒッチコックの世界を形作っている。美しい男女が出て活躍するというのもハリウッド映画の常道で、この映画もご多分に漏れない。やはりこの映画、あまりいろいろ考えたくないときなんかに見るのが適している。楽しく時を過ごしたいような場合に最適な娯楽作品と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『巨匠たちの肖像 ヒッチコック(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『レベッカ(映画)』
竹林軒出張所『サイコ(映画)』
竹林軒出張所『知りすぎていた男(映画)』
竹林軒出張所『マーニー(映画)』
竹林軒出張所『ロープ(映画)』
竹林軒出張所『めまい(映画)』
竹林軒出張所『シャレード(映画)』

by chikurinken | 2018-06-04 07:37 | 映画

『ジュリアス・シーザー』(映画)

ジュリアス・シーザー(1953年・米)
監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本:ジョセフ・L・マンキウィッツ
出演:ルイス・カルハーン、ジェームズ・メイソン、マーロン・ブランド、ジョン・ギールグッド、デボラ・カー、グリア・ガーソン

演劇的な、余りに演劇的な

b0189364_16453842.jpg シェークスピアの同名タイトルの戯曲を映画化したもの。監督は『イヴの総て』、『クレオパトラ』のマンキウィッツ。ブルータス(ブルトゥス)を演じるのが、『ロリータ』のジェームズ・メイソン、アントニー(アントニウス)は『ゴッドファーザー』、『革命児サパタ』のマーロン・ブランドが演じる。
 元々が舞台劇であるため、全体に芝居がかった演出である。ジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)の独裁政治を危惧した元老院議員たちが、シーザーの暗殺をもくろみ、やがて議場で決行する。この中にシーザーの腹心であるブルータスもいて、「ブルータス、お前もか」というシーザーの有名なセリフが発せられることになる。その後親シーザー派のアントニー、オクタヴィアヌスらと反シーザー派との間で決戦(フィリッピの戦い)が行われるという運びになる。通常の映画であれば、このフィリッピの戦いあたりが目玉になりそうだが、舞台劇の映画であるため、派手な戦闘シーンは、まったくないわけではないが、少ない。ほとんどは、大がかりで劇的なセリフですべてが表現される。
 そのため演劇の延長として見ればそれなりに楽しめるが、この手の映画の常で、通常の映画の概念からは少々外れている。ただセリフなどは、シェークスピア風でなかなか詩的である。シェークスピア劇を見た気分になる分には良い素材ではないかと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『クレオパトラ(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『ハムレット(映画)』
竹林軒出張所『もうひとりのシェイクスピア(映画)』
竹林軒出張所『蜘蛛巣城(映画)』
竹林軒出張所『ロリータ(映画)』
竹林軒出張所『革命児サパタ(映画)』

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 以下、以前のブログで紹介したマンキウィッツ監督作品のレビュー記事。

(2005年10月31日の記事より)
イヴの総て(1950年・米)
監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
脚本:ジョセフ・L・マンキウィッツ
出演:ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、ゲイリー・メリル、マリリン・モンロー、ヒュー・マーロウ

b0189364_16454404.jpg 芸能(演劇)界のおどろおどろしい実態を描いたドラマ。
 去年か一昨年くらいに1回見ているようだが、見たこと自体をまったく憶えておらず(こういうのは初めてだ)、見ている途中でそのことに気がついた。なかなか良くできた映画だが、見終わった後は少し不快感が残る。題材が題材だけにしようがないが。
 有名な演劇の賞で女優賞を受賞したイヴ(アン・バクスター)の授賞シーンから始まる。アカデミー賞の授賞式でおなじみの、例のスピーチが始まる。「私を見出してくれた○○さん、すばらしい脚本を提供してくれた○○さん、陰で支えてくれた○○さん、感謝の言葉もありません」ってヤツ。実際に、アカデミー賞の授賞式を見ていたりすると、外部の人間から見ていてもかなり空々しく感じるものだが、この映画で描かれているのはこの言葉の裏の世界。空々しさもひとしおである。
 この映画は、アカデミー賞6部門受賞しているので、実際の授賞式でもこういったスピーチが行われたはずだが、どうだったのだろうか。今度調べてみよう。残念ながら主演女優賞と助演女優賞は獲得していない。アン・バクスターに賞を与えて、実際の授賞式でスピーチさせるという発想は審査員にはなかったようだ(なんでも、ベティ・デイヴィスとアン・バクスターのどっちを主演にするかでもめたためらしい。このあたりも映画のテーマと重なっておもしろい)。
 マリリン・モンローが端役で出ていて、なかなか存在感を示している。この映画を通じて「イヴ」になったというオチまで付いた。
★★★☆

by chikurinken | 2018-06-02 07:45 | 映画

『古都』(映画)

古都(1980年・ホリプロ映画)
監督:市川崑
原作:川端康成
脚本:日高真也、市川崑
撮影:長谷川清
出演:山口百恵、實川延若、岸恵子、三浦友和、北詰友樹、沖雅也、石田信之、泉じゅん

ジャパネスクが空回り

b0189364_18420528.jpg 川端康成の小説『古都』の3度目の映画化作品。主演は山口百恵であるが、監督が市川崑であることだし、単なるアイドル映画ではあるまいと思って見たんだが、実際のところは、山口百恵以外あまり見るところはなかった。てことは、やっぱり単なるアイドル映画だったのか。
 京都が舞台で、多分にジャパネスクを前面に押し出した映画ではあるが、そういう点で感じるところはあまりない。そのあたりは3年後に同じ市川崑が撮った『細雪』と大違い。確かに味のある映像もあるんだが、なんだか少々空回りしているようなところがある。それに主人公の京言葉が変で、気持ち悪い。舞妓さんじゃないんだから「どす」の投げ売りはやめていただきたい。あるいは原作のセリフ回しかも知れないが、外部から見た(誤った)京都のイメージを体現したようで、ものすごく違和感がある。
 ストーリーについても、川端はこの小説で一体何が言いたかったのかと思うようなもので、あまり面白味がない。幼い頃捨てられた主人公が、商家でお嬢様として育てられ、そのまま(捨てられずに育てられた)双子の妹の方が苦労して貧しい生活を送っていたという、逆説的な設定がもしかしたら面白い部分なのかも知れないが、この映画からは面白味を感じないのだな、これが。
 映画については、原作にあるのか知らんが、双子の姉妹の間に同性愛的な表現があったりして、目を留めるような箇所もある。ただしこの双子は山口百恵の二役であるため、同性愛というよりナルシシズムということになるのか。なんだか摩訶不思議な感じがする。
 キャストについては、父母役の實川延若と岸恵子がなかなか好演。山口百恵も例によって存在感がある。本来の相手役であると思われる三浦友和は、これもなんだかはっきりしない、印象の薄い役。登場人物の整理が付いていないような印象さえ受けた。キャストで目を引いたのはロマンポルノで売れていた泉じゅんで、主人公の友人役で出ていた。こういう一般映画で見るのは初めてだったので少し驚きである。と思っていたんだが、調べてみると実は『それから』や『そろばんずく』にも出ていたので、きっと目にしていたはずなのである。まったく記憶が飛んでいた。なお、この泉じゅん、この映画の後、にっかつロマンポルノの『百恵の唇 愛獣』という映画に出ている。当時のにっかつ映画、「百恵」とか「聖子」とかタイトルによく使われていたが、しかし友人役として出てた泉じゅん、山口百恵に対して申し訳ないという感覚はなかったのだろうか。
★★★

参考:
竹林軒出張所『春琴抄(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『炎上(映画)』
竹林軒出張所『破戒(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
竹林軒出張所『おとうと(映画)』
竹林軒出張所『太平洋ひとりぼっち(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『野火(映画)』
竹林軒出張所『プーサン(映画)』
竹林軒出張所『幸福(映画)』

by chikurinken | 2018-05-31 07:41 | 映画

『フランケンシュタイン対地底怪獣』(映画)

フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年・東宝)
監督:本多猪四郎
脚本:馬淵薫
音楽:伊福部昭
ストーリー:ジェリー・ソウル
特技監督:円谷英二
出演:ニック・アダムス、高島忠夫、水野久美、ピーター・マン、土屋嘉男

子供だましにもなりゃしない

b0189364_22434470.jpg 「フランケンシュタイン対地底怪獣」というタイトルからもかなり怪しげであるが、内容も怪しげ……というかかなりいい加減な代物である。作りが雑で、ストーリーも行き当たりばったり。小学生が書いたストーリーか?と思わせるようなひどいシナリオである。
 ナチスが極秘に開発していた人造人間が戦時中日本の研究者に引き継がれたことから、日本の国内にその細胞が存在しており、その細胞がちょうど広島の原爆投下により大量の放射線を浴びたというのがストーリーの背景になる。この細胞が戦後、何らかの過程を経て(放射線の影響か知らないが)見るからに普通の浮浪少年になり(この間15年)、その後なぜか(不審者だからか)拘留され、数カ月だか数年だかわからないが(徐々に)巨大化して体長20メートルになってしまう。ご都合主義も甚だしいプロットである。この間、このフランケンシュタインと比較的良好な関係を築くのが放射線障害の女性研究者(水野久美)で、このあたりは『キングコング』のモチーフになる。一方で、この女性研究者の同僚の米人研究者(ニック・アダムス)が当たり前のように彼女と濃厚に接するのが、見ていて非常に居心地が悪い。アパートに呼んで接待したりして,さながら愛人であるかのようなベタベタした付き合い方だが、映画における両者の関係はあくまで同僚であり、最後までお互いに敬語で話し続ける。おそろしくアンバランスな関係が展開される。また、主人公(?)のフランケンシュタイン少年(姿形はどう見ても普通の人間)に対して、当たり前のように危険だから殺せだの、研究のために細胞だけは残してほしいだのきわめて差別的な扱いが、21世紀の今となっては相当な違和感を覚える。ともかくあちこちで演出に破綻があり、見ていると痛ましい感じさえしてくる。
 そこになぜか唐突に地底怪獣が現れ、最後はこの巨大化したフランケンシュタイン少年と対決するというわけのわからない展開になるが、この地底怪獣の部分は本当に必要なのか、フランケンシュタインだけに絞って話を展開させた方がまだマシだったんじゃないのかと感じることしきり。どうしてこういうストーリーにしたのかがさっぱりわからない。つまり発想が幼児的でご都合主義的なのである。子ども向けだからこんなもんで良いだろうと思ったのかも知れないが、子どもでも納得しないんじゃないかと思う。もっともAmazonのレビューを見ると、子ども時代にこの映画を見たという人々が高い評価をしていたんで、子供だましにはなったのかも知れぬ。
 子供だましといえば、特撮シーンもいかにも作り物的で、全然迫力を感じない。地底怪獣(バラゴン)の着ぐるみも非常にチャチ。怪獣が唐突に口から光線を吐いたりするのは子ども受けしそうなギミックだが、この怪獣、宇宙怪獣ってんならいざしらず、恐竜の生き残りという設定なのにおかしいだろと思うのは僕が汚れた大人だからか。しかも、光線を浴びせられたものは、周囲のものについては爆発したり炎上したりするのに、フランケンシュタインに浴びせられた場合は何事もなかったようにスルーされる。あちこち矛盾だらけである。フランケンシュタインの容貌もそれほど異様ではなく、似たような顔の日本人が普通に存在するというようなものである(せめて『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』のサンダやガイラぐらいになっていればまだ良かった)。そのため地底怪獣との格闘シーンも、いかにも「人間 vs 着ぐるみ」みたいに映ってしまう。いくら周りのセットを1/20サイズにしても(実際のところ何分の一かはわからないが)やはりミニチュアにしか見えない。
 キャストは割合豪華で、中村伸郎、志村喬、藤田進などがチョイ役で出たりする。黒澤映画を彷彿とさせるような(無駄な)俳優の使い方だが、黒澤の盟友、本多猪四郎が監督だからか。その割に主役を張っている方の俳優がちょっと冴えないのも、また実にバランスが悪い。
 僕が今回この映画を見たのは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』との繋がりによる。前にも書いたが、あの映画で、当然のように「フランケンシュタイン研究者」が登場したりして、どうにも前提になっている環境が存在しているように感じたため、その前に作られたフランケンシュタイン映画である本作を見てみたというわけだ。確かにこの映画の後であれば、「フランケンシュタイン研究者」がいてもそれほど違和感はないなと思う。とは言っても、だから何だという感触もある。この映画はあまりにもどうでも良い作品になっていて、個人的には消えてもらってもかまわない類の代物である。HDリマスターしたなどという話を聞くと、本当にそんな必要があったのか疑問に感じる。ともかく見終わるのが非常に苦痛な映画だった(なんでもこの映画「日米合作」ということである。とんだ日米合作だ)。


参考:
竹林軒出張所『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(映画)』
竹林軒出張所『イノさんのトランク(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『マタンゴ(映画)』
竹林軒出張所『音で怪獣を描いた男 ゴジラVS伊福部昭(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-05-29 07:43 | 映画

『歴史は女で作られる』(映画)

歴史は女で作られる(1956年・仏)
監督:マックス・オフュルス
原作:セシル・サン=ローラン
脚本:アネット・ワドマン、マックス・オフュルス
出演:マルティーヌ・キャロル、ピーター・ユスティノフ、アントン・ウォルブルック、オスカー・ウェルナー

なぜ録画したのか憶えていない

b0189364_19462442.jpg 伝説的ダンサー、ローラ・モンテスの伝記的映画。
 ローラ・モンテスは、音楽家のフランツ・リストやバイエルン王ルートヴィヒ1世などの愛人だったことで有名な人らしい。そのローラ・モンテスが、どのようにしてさまざまな名士を惹きつけたかというのがこの映画の柱の部分だが、しかし正直言って、あまり興味を引かれない。そもそもローラ・モンテス自体まったく知らない存在だったし、映画も取り立ててどうという作品ではない。美術や衣装には見るべきものがあって、時代考証なども優れているという印象ではあるが、話自体がどうということもないし、かなり退屈したというのが本当のところである。サーカス団員に身を落としたモンテスの視点で、これまでの来し方を思い出すという回想形式のストーリーは凝ってはいるが、内容が取るに足りないため、むしろ空回りの印象しか残らない。
 この映画、随分前にCSで放送されたときに録画していたものだが、なぜ録画したのかすらよく憶えていない。見る必要はなかったかなと今にして思う。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『マーラー 君に捧げるアダージョ(映画)』
竹林軒出張所『アルマ・マーラー ウィーン式恋愛術(本)』
竹林軒出張所『ルートヴィヒ(映画)』

by chikurinken | 2018-05-15 07:46 | 映画

『パットン大戦車軍団』(映画)

パットン大戦車軍団(1970年・米)
監督:フランクリン・J・シャフナー
脚本:フランシス・フォード・コッポラ、エドマンド・H・ノース
出演:ジョージ・C・スコット、カール・マルデン、マイケル・ストロング、カール・ミヒャエル・フォーグラー、スティーヴン・ヤング

周囲とぶつかり合う1人の奇才軍人の肖像

b0189364_16295138.jpg 第二次大戦時、ヨーロッパ戦線で活躍したジョージ・パットン将軍の戦役を描いた映画。
 パットンといえば、抜群の戦功を上げているが、一方で舌禍や問題行動が多く、そういう点では人間的に興味深い存在である。そのパットンを演じるのが、ジョージ・C・スコットで、彼もアカデミー賞主演男優賞を受賞しながら受賞自体を拒否するというなかなか見上げた男で、パットンに通じるものがあるようなないような。少なくともこの映画で描かれるパットンとは同類の人間のような気がする。
 映画は、アフリカ戦線の第2軍団の指揮を任され、この弱小軍団をたたき直すところから始まり、その後の舌禍事件や神経症兵士に対する殴打事件、それに伴う左遷などが描かれ、ストーリーは割合オーソドックスである。パットンの魅力は随所で描写され、頑固でわがままではあるが一方で愛すべき人物として描かれる。
 当然戦闘シーンもあちこちに出てきて、迫力のある映像が展開される。このパットン自身がいかにも職業軍人という人で、むしろ戦争大好きであるように描かれる(そういうセリフもある)ため、反戦メッセージが前面に出てくるという類の映画ではない。
 映画としてはわかりやすく、戦闘の展開も、アフリカ戦線や西部戦線について若干の知識があれば、それほど複雑すぎることもない。周囲とぶつかり合う1人の魅力的な才人という構図がこの映画のベースの部分にあり、こういったモチーフはいろいろな時代、いろいろな状況で見られるものであって、ドラマの主題としては面白いものと言える。したがって主人公を野球やフットボールの監督なんかに置き換えても、同じような話を作ることができる。実際この映画で描かれるパットン、どこかアメリカ人の熱血監督を彷彿させる。この間、NHK-BSの『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』で紹介されていた元広島東洋カープ監督のジョー・ルーツなんかも似たような人物像であった(ジョー・ルーツは1975年、万年Bクラスの弱小チーム、広島カープの監督になり、徹底的な意識改革をして、同年同チームのリーグ初優勝を実現する。もっともルーツは開幕してから1週間で問題行動で解任されているが、ルーツ・イズムみたいなものはチームに浸透していたという)。
1970年アカデミー作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『D-Day 壮絶なる戦い(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』

by chikurinken | 2018-05-13 07:29 | 映画

『シャイアン』(映画)

シャイアン(1964年・米)
監督:ジョン・フォード
原作:マリ・サンドス
脚本:ジェームズ・R・ウェッブ
出演:リチャード・ウィドマーク、キャロル・ベイカー、ジェームズ・スチュワート、アーサー・ケネディ、エドワード・G・ロビンソン

意欲的だが退屈

b0189364_15445790.jpg ジョン・フォードの西部劇だが、先住民(インディアン)側の視点から描かれるという少し変わった趣向の映画。
 先住民のシャイアン族は、(「条約」により)強制的に狭い居留地に押し込められていたが、この「条約」を守らない米政府当局の横暴に反旗を翻し、居留地から集団で逃亡した。その後、彼らの主張は一部認められ、居留地を彼らの母なる土地であるワイオミングに帰還することが米当局によって認められることになるが、その過程を映画化したのがこの作品である。
 西部劇ではそれまでいつも悪者として成敗されていたインディアンからの視点で描くというのは、社会的にも歴史的にも非常に価値があったが、しかしなにしろ映画自体がかなり退屈で、随分間延びした印象を受ける。もちろんジョン・フォードらしい迫力のあるドンパチもあるが、シャイアンが飢えに苦しめられ行軍するというシーンが続き(しかもあまりリアリティのある描き方ではない)、追っ手の米軍側の描写もなんだかはっきりしない。途中、ワイアット・アープやドク・ホリデイまで出てきて、コントまがいのシーンを演じたりもする。サービスのつもりかも知れないが、冴えないシーンで、不要と感じる。
 監督はジョン・フォードだが、『荒野の決闘』『駅馬車』のイメージではなく、むしろ『タバコ・ロード』のイメージに近い。いろいろな箇所で質の低さを感じる。虐げられる側からの視点はユニークだったが、企画倒れで終わってしまったという映画で、見終わるのに苦労した(小分けにして結局3日間で見終わった。途中何度もやめようかと思った)。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『ジェロニモ(映画)』
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『駅馬車(映画)』
竹林軒出張所『黄色いリボン(映画)』
竹林軒出張所『リオ・グランデの砦(映画)』
竹林軒出張所『ウィンチェスター銃'73(映画)』
竹林軒出張所『タバコ・ロード(映画)』

by chikurinken | 2018-05-11 15:46 | 映画

『シェーン』(映画)

シェーン(1953年・米)
監督:ジョージ・スティーヴンス
原作:ジャック・シェーファー
脚本:A・B・ガスリー・Jr
出演:アラン・ラッド、ヴァン・ヘフリン、ジーン・アーサー、ブランドン・デ・ワイルド、ウォルター・ジャック・パランス、エミール・メイヤー

いろいろと思い違いが多かった映画

b0189364_17541216.jpg 言わずと知れた西部劇の傑作。悪者に苦しめられているある家族の元に、訳ありの流れ者がやって来て悪者をやっつけてくれるという、映画の原点みたいな勧善懲悪のストーリー。他の映画でも似たようなストーリーは繰り返し使われ、中にはあきらかにこの映画を意識したようなものもある(『遙かなる山の呼び声』『タンポポ』など)。
 30年くらい前にNHKで見ており、モノクロ映画だとばかり思い込んでいたが、思い違いであった。かなり鮮やかなカラーである。最後のシーンは非常に有名で、ことさら触れるのも今さらではあるが、「シェーン、カムバック」というアレである。夜の設定なんだが、いわゆる「アメリカの夜」(昼間撮影して、フィルムに夜であるかのような効果を施す方法)であるため、スチル写真やなんかで見ると夜に見えない。僕自身も昼だとばかり思い込んでいたのだった。いろいろと思い違いの多い映画である。
 総じて、ストーリーにできすぎ感のあるエンタテイメント作品であり、あれこれ考えずに楽しめという類の映画である。ただ、設定上面白い狂言回しであるはずの少年ジョー役のヴァン・ヘフリンの演技がちょっとナニで、何だか気恥ずかしかった。
1953年アカデミー賞撮影賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『遙かなる山の呼び声(映画)』
竹林軒出張所『タンポポ(映画)』
竹林軒出張所『昭和残侠伝 唐獅子牡丹(映画)』
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『駅馬車(映画)』

by chikurinken | 2018-05-10 11:52 | 映画