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竹林軒出張所

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タグ:映画 ( 637 ) タグの人気記事

『シェルブールの雨傘』(映画)

シェルブールの雨傘(1963年・仏)
監督:ジャック・ドゥミ
脚本:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーヴォ、マルク・ミシェル、エレン・ファルナー、アンヌ・ヴェルノン

人生ってそんなもんだ……

b0189364_20415888.jpg ジャック・ドゥミ、ミシェル・ルグラン・コンビのミュージカル映画。『天使の入江』『ロシュフォールの恋人たち』の間に作られたのがこの映画で、ドゥミとルグランの代表作である。
 この映画、ほとんどすべてのセリフが歌仕立てになっていて、ミュージカルというより、どちらかと言うとオペラに近い。最初はこういう形式に多少違和感を感じるが、見ているうちに慣れるし、慣れたらなんということはない。そういう意味でもオペラみたいな感じである。
 この映画、これまで見逃していた名画のうちの1本で、今回満を持してという感じで見た。期待がかなり高かっただけに少々拍子抜けの感じがなきにしもあらずだが、完成度の高い非常によくできた映画ではあると思う。少し変わったアングルから地面を撮影している冒頭の雨のシーンも味があり、ユニークさを感じる。
 ストーリー自体は、それほど大きな波乱が起こるわけでもなく、ごく日常的な風景が進行していく。男女の出会いや別れがモチーフの恋愛映画だが、恋愛云々というより市井の人々の人生模様みたいな要素が強いように思う。見終わって「人生ってそんなもんだ」などと思ってしまう。
 なお、登場人物が歌っている部分は、ことごとく歌手による吹き替えらしい。主演のカトリーヌ・ドヌーヴの歌はすべて、「ふたりの天使」でお馴染みのダニエル・リカーリが歌っている。メロウな主題曲が特に有名で、この曲だけが独立してあちこちで歌われている。ミシェル・ルグランの代表作である。
第17回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『天使の入江(映画)』
竹林軒出張所『ロシュフォールの恋人たち(映画)』
竹林軒出張所『ローラ(映画)』
竹林軒出張所『ロバと王女(映画)』
竹林軒出張所『ロワール渓谷の木靴職人(映画)』

by chikurinken | 2018-07-28 07:41 | 映画

『ニュールンベルグ裁判』(映画)

ニュールンベルグ裁判(1961年・米)
監督:スタンリー・クレイマー
原作:アビー・マン
脚本:アビー・マン
出演:スペンサー・トレイシー、バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、モンゴメリー・クリフト、マクシミリアン・シェル、マレーネ・ディートリッヒ、ジュディ・ガーランド

歴史に名高いいわゆる「ニュルンベルク裁判」
ではない


b0189364_19162254.jpg 名画だということもあって以前この映画を一度見てはいるが、バート・ランカスターの落ち着いた演技以外あまり記憶に残っていない。てっきり1945年の(ナチス政権の幹部を裁いた)いわゆる「ニュルンベルク裁判」を扱っている映画だと思っていたが、映画の中の裁判の途中で1948年のベルリン封鎖が出てくるため、あの「ニュルンベルク裁判」ではないことに途中で気付いた。過去一度見ているので、もっと早く気付いてもおかしくないのだが、うかつにも気付かなかった。そもそも被告が、法律関係者(元法務大臣とか裁判官とか)のみであるため、あちらと異なるのは明らかななんだが、ボーッと見ていたためか以前は気付かないまま終わってしまったのだった(チコちゃんに「ボーっと見てんじゃねーよ!」と怒られそうだが)。そういうわけで、強いて言うなら「ニュルンベルク継続裁判」の1つがこの映画のオリジナルの舞台ということになる。ただし、実際のところ、この映画のストーリーはほぼフィクションのようである。その割には細かい部分が非常によく考え抜かれていてよくできており、その点は感心する。てっきり、これもドラマ版の『東京裁判』みたいに基になった話があるのかと思っていた。
 映画では、この裁判の首席判事としてアメリカから呼ばれてきた田舎判事(スペンサー・トレイシー)が、ニュルンベルグに入り、裁判に関わって、その後ニュルンベルグを去るまでが描かれる。セリフ中心でストーリーが進められるため、会話劇のような内容である。舞台はほとんど法廷である。法廷では緊迫感が漂うやりとりが行われ、そういう点でも実にアメリカ映画らしい法廷劇と言える。
 元々は90分のドラマだったらしいが、これを倍の3時間に延ばして映画にしたのが、この作品ということらしい。だがさすがに3時間は長く、途中かなり眠くなった。キャストは割合豪華で、モンゴメリー・クリフトやジュディ・ガーランドが、法廷に呼び出される証人役で登場する。2人とも風貌が、他の映画のイメージと大分違っていたため最後まで気が付かなかった。またマレーネ・ディートリッヒが軍人の妻として登場する。ディートリヒは、戦後すぐのドイツが舞台の『異国の出来事』でも、同じような存在感のある役回りを演じていて、それと重なるキャラクターである。途中、街の中から「リリー・マルレーン」が流れるシーンも多分にディートリヒを意識した演出なのかも知れない。
 この軍事裁判については、勝者による一方的な政治的裁判という見方が貫かれており、また独裁政権下で人はどう振る舞うべきかというような問いかけも終始行われるなど、問題意識が高い作品である。そのためにエンタテインメント的な要素がやや少ない。そのせいで映画の長さが余計堪えることになる。何度かに分けて見る方が良かったかも知れないなどと、見終わった今になって考えている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ドラマ 東京裁判 (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『招かれざる客(映画)』
竹林軒出張所『老人と海(映画)』
竹林軒出張所『山猫(映画)』
竹林軒出張所『間諜X27(映画)』

by chikurinken | 2018-07-26 07:15 | 映画

『OK牧場の決斗』(映画)

OK牧場の決斗(1957年・米)
監督:ジョン・スタージェス
原案:ジョージ・スカリン
脚本:レオン・ウーリス
出演:バート・ランカスター、カーク・ダグラス、ロンダ・フレミング、ジョー・ヴァン・フリート、ジョン・アイアランド

事実は映画よりも陳腐

b0189364_18523037.jpg 1881年にアリゾナ州トゥームストーンで起こった、O.K.コラルの銃撃戦を映画化した作品。原題は『Gunfight at the O.K. Corral』で、まさしく「O.K.コラルの銃撃戦」。ただし「コラル」などという言葉が日本人には分かりにくいということで、「OK牧場」という名前が使われたというのが真相のようである(ウィキペディア情報)。
 この銃撃戦自体は、それ以前(1946年)にジョン・フォードが『荒野の決闘』で扱っており、1964年の『シャイアン』にも一部取り上げられている。保安官のワイアット・アープとその兄弟、それからドク・ホリデイが、無法者のクラントン兄弟と銃撃戦を繰り広げるというのが大まかなストーリーで、基本的な扱われ方は同じである。細かい部分は、こちらの映画の方が実話に近いらしい(どうでも良いことだと思うが)。
 この映画では、アープ(バート・ランカスター)とホリデイ(カーク・ダグラス)の友情が話の中心になる。それぞれ恋人がいて、そのあたりの人間関係は『荒野の決闘』とよく似ている。当然、最後の銃撃戦がハイライトで、そこに至るまでの過程がストーリーとして描かれるわけだが、『荒野の決闘』ほどの魅力はこの映画には感じなかった。アクション西部劇の範疇を出ないというイメージで、エンタテイメントの映画と割り切って見るべき映画と言える。それなりに面白いが、あまり心に残るようなものはなかった。これも「有名な映画を見た」という事実がものを言う映画と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『シャイアン(映画)』

by chikurinken | 2018-07-24 07:52 | 映画

『チャタレイ夫人の恋人』(映画)

チャタレイ夫人の恋人(1982年・英仏)
監督:ジュスト・ジャカン
原作:D・H・ロレンス
脚本:クリストファー・ウィッキング、ジュスト・ジャカン、マルク・ベーム
出演:シルヴィア・クリステル、シェーン・ブライアント、ニコラス・クレイ、ベッシー・ラヴ

妖艶、シルヴィア・クリステル

b0189364_17094585.jpg ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』は、これまでたびたび映画化されているが、これは僕の知る限り2回目の映画化作品である。主演が『エマニエル夫人』で一世を風靡した妖艶なシルヴィア・クリステルであり、原作が猥褻で物議を醸した『チャタレイ夫人の恋人』であることを考えると、どういうコンセプトの映画か容易に想像が付く。そしてその予想の通りの映画で、ソフトコア・ポルノと言って良い作品である。もちろん、日活ロマンポルノみたいに意味のない性交シーンはなく、原作に沿った作りになっているのは大変好感が持てるが、ラブシーンが中心みたいな印象はどうしても受ける(ただし数はそんなに多くない)。
 80年代の一般映画として考えると、原作同様「大胆な性描写」と言って良いんじゃないかという表現である。しかもこれがなかなか美しく撮影されていて、シルヴィア・クリステルの美しさと相まって非常に魅力的な映像である。ただし残念なのが、きわめて不自然なぼかしが随所に入っていたことで、この野暮なぼかしのせいで余計いやらしさを感じる。僕が見たのはBS(シネフィルWOWWOW)で放送されたものだが、今の時代にぼかしを入れるか!と突っ込みたくなるくらいあちこちに出てきてかなり見苦しい。ただし、DVDについては『ヘア解禁版』なんてのもある(これも少し恥ずかしいタイトルだが)。
 この『チャタレイ』は全体で100分程度であり、当然のことながら、ストーリーもかなり端折られている。何より本来あるべき結末が出る前に唐突に終わってしまうので、かなり物足りない印象が残る。もちろんこの映画のような展開にしてしまうと、どういうオチにするのか難しいところではある。やはり、前にも書いたように、クリフォード・チャタレイ氏にもう少し悪い人間になってもらわないことには収まりが悪い。夫が善人だと、単なる裏切り不倫話になってしまう。そうすると、主人公のコニーがただの愚かな女になってしまい、逆に憐れさが残ってしまう。それもまたありだが、そうするとテーマが大きく変わってきて、もはや別の話になってしまうような気がする。2015年のドラマ版『チャタレイ夫人の恋人』はまさにそれで、あんな作品なら作らない方が良いくらいである。
 僕自身は、『チャタレイ』をこれまでドラマ版もあわせて4本見てきたわけだが、一番デキが良かったと思えるのは『レディ・チャタレー』、その次が1993年ドラマ版というところではないかと思う。ただし映像だけを取ってみれば、このシルヴィア・クリステル版もなかなか捨てがたいと言える。でもさすがに『チャタレイ』はもう結構。一応今回で見納めである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『レディ・チャタレー(映画)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年ドラマ版)(ドラマ)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(2015年ドラマ版)(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-07-08 07:09 | 映画

『小間使の日記(ルノワール版)』(映画)

小間使の日記(1946年・米)
監督:ジャン・ルノワール
原作:オクターヴ・ミルボー
脚本:バージェス・メレディス
出演:ポーレット・ゴダード、バージェス・メレディス、ハード・ハットフィールド、ジュディス・アンダーソン、フランシス・レデラー、レジナルド・オーウェン

どれをとってもあまり感じることがない
ブニュエル版を見たいものだ


b0189364_18563723.jpg 『小間使の日記』と言えば、ルイス・ブニュエルの映画が有名だが、あのジャン・ルノワールがそれ以前に、同じ話を映画化していたのだった。寡聞にして知らなかったが、それもそのはず、公式記録によると日本未公開らしい。「日本未公開」と言っても実際にはDVDが国内で発売されているため、いくらでも見ることができる。
 特筆すべきはもう一つ、この映画がアメリカ製であるということである。原作はフランス文学で、監督もフランス人でありながら、全編セリフは英語である。しかも少し(当時の)ハリウッド映画風で、軽めである。
 主役のセレスチーヌは、『モダン・タイムス』の主演女優にしてチャップリンの3番目の(内縁の)妻、ポーレット・ゴダードが演じる。他の俳優についてはまったく知らない人間ばかり。演技はどの俳優もやや大ぶりで、あまりリアルな感じはない。演出も本来のストーリー自体の流れから少々はずれているんじゃないかというような印象を受けた。このあたりはルノワールの他の映画とも共通する印象である。そのためもあって、主人公、セレスチーヌの行動が何やら一貫していないような変な感じがした。素人考えではあるが、もう少し作りようがあるんじゃないかと考えてしまった。このあたりは原作に当たるか、他の映画に当たるかしないと確認できないんで、いずれはブニュエル版も見てみたいと思う。
 ストーリーは、反階級主義みたいな話だが、自由主義フランスで書かれた原作であることを考えると、それほど違和感はない。しかしそのためか問題性もあまり伝わってこない。階級制度の問題はやはりイギリスなんかの専売特許なんではないかとあらためて思う次第だ。
 いずれにしても、演出、キャスト、ストーリーと、どれをとってもあまり感じることのない、面白味のない作品であった。もちろんあくまで個人の感想ではある。
★★★

参考:
竹林軒出張所『大いなる幻影(映画)』
竹林軒出張所『ピクニック(映画)』
竹林軒出張所『ゲームの規則(映画)』

by chikurinken | 2018-07-07 07:56 | 映画

『蘇える金狼』(映画)

蘇える金狼(1979年・角川春樹事務所)
監督:村川透
原作:大藪春彦
脚本:永原秀一
出演:松田優作、風吹ジュン、佐藤慶、成田三樹夫、小池朝雄、草薙幸二郎、河合絃司、加藤大樹、岩城滉一、加藤健一、真行寺君枝、千葉真一

セックスとバイオレンスが売り

b0189364_20050719.jpgネタバレ注意!

 フィルム・ノワールとでも言うのか、犯罪映画である。主人公、朝倉(松田優作)は、普段はしがないサラリーマンだが、実は凶悪な犯罪者という裏の顔を持つ。ボクシングではチャンピオンになれるという逸材(という設定)であるが、そちらの方にはまったく関心を示さない。そのボクシング・テクニックは、あくまで凶悪犯罪のためのものということらしい。
 この主人公、映画の冒頭で、いきなり警備員1人を射殺して1億円強奪事件を起こす。ところが奪った紙幣の番号が当局に控えられていることが(あり得ないくらい)偶然わかり、奪った金を使えないということが判明する。そこで、これでヘロインを買って資金ロンダリングをやろうと試みる。そのために、ヤクザの事務所に殴り込んで、銃で武装したヤクザ者を全部仕留めて、ヘロインの取引を取り仕切っている市会議員の身元を突き止める(このあたりですでに無茶苦茶)。その後、その市会議員の自宅に潜入し、そこでヘロインの取引を強要する。このときも銃で武装した人間を大量に射殺する(あまりのご都合主義に呆れてしまう)。その後、この議員と、ヘロインの取引を謎の島で執り行うが、そこで待機していた、完全武装の市会議員の手先数人をこともなげに全員消し去る(こうやって簡単に全員消し去れるんなら、1億円強奪事件など起こさずに、最初からこの市会議員の家に押し入った方が良かったんじゃないのか)。こういった調子で話が進んでいく。この主人公の朝倉、後ろから銃を突きつけられても、あるいはマシンガンをぶっ放されても傷一つ負うことはない。どんな危険なシーンでも、主人公の都合の良いように話が流れ、結局、巨万の富と美形の女(風吹ジュン)を手に入れる。こんなにクールでニヒリスティックな男なのに、やっぱり金と女に落ち着くあたりが情けない。しかもその後、社長令嬢との婚約を目論むと来ている。志が低すぎりゃせんか。もしかして『BIG tomorrow』の読者か。
 ストーリーもバカバカしいし、展開も都合良すぎる。目標もレベルが低すぎて、面白味がない。無意味に殺人を犯す主人公にもまったく肩入れできないし、何なんだ、この映画は!と思い続けながら見ていた。主人公に共感できないんで、ハラハラの要素もない。結局はセックスとバイオレンスだけのバカっぽい映画に成り下がってしまっている。原作はどうなのかわからないが、この映画はまったくくだらない。せめて主人公に共感を感じられる程度には工夫してほしいものである。なお監督の村川透って人、『西部警察』の演出なんかをやっていた人らしい。確かに、なるほどね……というような演出が多かった(必然性のないカーチェイスとか……)。
★★

参考:
竹林軒出張所『探偵物語(映画)』
竹林軒出張所『早春物語(映画)』

by chikurinken | 2018-07-05 07:04 | 映画

『探偵物語』(映画)

探偵物語(1983年・角川春樹事務所)
監督:根岸吉太郎
原作:赤川次郎
脚本:鎌田敏夫
出演:薬師丸ひろ子、松田優作、秋川リサ、岸田今日子、北詰友樹、坂上味和、財津一郎

ヒロコのプロモ
顎の線がスッキリしていて新鮮


b0189364_18214212.jpg 女子大生(薬師丸ひろ子)と彼女のボディガードをすることになった探偵(松田優作)のラブロマンス……なのかな。ともかくこの2人が、殺人事件に巻き込まれて、あれやこれやテキトーに話が進んでいくという映画。
 ストーリーがご都合主義的で、なおかつ登場するギミックもいい加減、デタラメであるため、まったくリアリティがなく、単なる作り話で終始している。そのために見るに堪えない安いストーリーの映画になってしまった。もう少しやりようがあったんじゃないかとも感じるが、そのあたりは何とも言えない。チープなラブロマンスになってしまったのは、シナリオが鎌田敏夫だからかとも思うが(ウィキペディアによると、鎌田敏夫は実際にはあまりこの作品のシナリオを書いていないらしい)、そもそも赤川次郎の原作に何を期待できるのかということだ。商業主義の申し子のような、赤川次郎の小説に深遠さを求めること自体無理があるってもんだ。
 キャストの薬師丸ひろ子、松田優作、岸田今日子あたりは割合存在感があって良かったが、それ以外の見所はほとんどない。それを考えると、やはり薬師丸の一種のプロモーション・ビデオということになり、角川映画であることを考えると、狙いもその辺にあったことが容易に想像がつく。2時間近くがんぱって見続けたが、いろいろな点で裏切られっぱなしで、時間の無駄だったと感じる。そもそも、70〜80年代の日本映画低迷期の作品であることを頭に入れておくべきだったと思う。しかも売ったもん勝ち商業主義の権化、角川映画であった。映画で描かれる当時の軽薄短小な世相も不快で、バブルな空気に踊らされている若者が画面にたくさん出て来て、気持ち悪いったらありゃしない。この時代のケーハク映画によく出てくる、あの「チークダンス」、何とかならんかと思う。
 薬師丸ひろ子は当時19歳で、この作品が主演映画第3作という。なかなか初々しくて魅力的だが、『跳んだカップル』のときみたいな、驚くような演技はない。ただし若々しく、顎の線もスッキリしていて、現在の彼女みたいに首の周りが窮屈な感じはなく、なかなか素敵。そういうことを考えると、やはり薬師丸ひろ子が女子大生に扮したらどうなるかという想定のプロモーション・ビデオだったんだなという結論に落ち着く(ちなみに当時薬師丸は玉川大学の学生)。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春物語』(映画)』

by chikurinken | 2018-07-04 07:10 | 映画

『真珠の耳飾りの少女』(映画)

真珠の耳飾りの少女(2003年・英・ルクセンブルク)
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
脚本:オリヴィア・ヘトリード
撮影:エドゥアルド・セラ
美術:ベン・ヴァン・オズ
衣装デザイン:ディーン・ヴァン・ストラーレン
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ、エシー・デイヴィス

フェルメールの詩的要素が再現された
スナップショットのような映画


b0189364_22152672.jpg フェルメールの肖像画『真珠の耳飾りの少女』がどういういきさつで描かれたかという、それだけのストーリーの映画。今回久々に見た。二度目である。
 原作は短編か中編の小説ではないかと思う。ストーリーについてはドラマチックな要素はあまりなく、フェルメール家の騒動や、そこに女中として仕える主人公のグリートが受けるセクハラやパワハラがドラマの盛り上がりの部分で、ほとんどは写実的な表現に終始する。ただし写実的であっても表現方法によっては詩が生まれる(竹林軒出張所『お葬式(映画)』を参照)。この映画は、まさに全編を通じて詩であり、フェルメールの絵画のような静けさをたたえた映像が随所に登場する。また有名絵画に似せたような映像も随時登場し、ちょっとしたパロディなのかも知れないが、こういった映像にも美しさが漂う。17世紀オランダの風俗も見事に再現されており、まさにフェルメールの世界に飛び込んだようなそういう映画である。
 このように僕は撮影、美術、衣装デザインを特に高く買っているが、ただいわゆる「美術」にあまり興味がない人にとって、この映画が面白いのかどうかは少々疑問ではある。とは言え、映像の美しさは、「美術」的な要素を超えて存在するのは事実であるため、そちらが堪能できれば十分楽しめるのではないかと思う。
 これまで美術関係の映画は数々見てきたが、この作品は最高レベルの1本と言える。同じように映像面で感心した美術映画といえば、印象派の絵画を再現したかのような『田舎の日曜日』があるが、この作品などはモネとルノワールを足して二で割ったような画家が主人公だったため、印象派的な絵作りにしたことは、この『真珠の耳飾りの少女』と同様、きわめて筋が通っていると言える。この映画のスタッフも、あるいはあの映画から感化を受けて同じようなアプローチを目指したのかも知れない。
2003年LA批評家協会賞撮影賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ロスト・イン・トランスレーション(映画)』
竹林軒出張所『ブーリン家の姉妹(映画)』
竹林軒出張所『フェルメール盗難事件(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『レンブラント 描かれた人生(映画)』
竹林軒出張所『レンブラントの夜警(映画)』

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 以下、以前のブログで紹介した『真珠の耳飾りの少女』のレビュー記事。やはり同じようなことを書いている。

(2006年3月27日の記事より)
真珠の耳飾りの少女(2003年・英ルクセンブルグ)
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
撮影:エドゥアルド・セラ
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ、エシー・デイヴィス

 オランダの画家、ヤン・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」を題材にしたトレイシー・シュヴァリエの原作の映画化。だが、原作ものを単に映像化したというレベルではなく、作り手がフェルメールの絵画に直に接近しているのがよくわかる。
 この映画の一番の魅力はやはり映像である。フェルメールの世界を映像でことごとく再現しており、フェルメール好きの人ならばあちこちでニンマリしてしまうだろう。構図やインテリアだけでなく(これだけでもなかなかなんだが)、光の具合も再現されている。特に驚くのは、フェルメールの絵のタッチ(マチエールというのかな)まで似ているということ。どうやって再現しているのかわからないが、輪郭を少しぼかして若干ハレーションを起こさせるような撮り方をしているが、これがフェルメールのタッチによく似ている。全編でこういう効果を出しているわけではなく、フェルメールの絵に似た構図の箇所でのみやっているので意図的なものだと思うが、正直これはすごい! 掃除のシーンでさえも、フェルメール絵画の再現になっている。また、バルビゾン派のフェルメール風とか、横長の印象派(浮世絵)構図のフェルメール風というようなものも出てきて、なかなか面白い。
 もちろん映像だけでなく、ドラマとしても人間の機微が描かれていて、スリリングな展開もあり、まったく最後まで飽きることがない。でもやっぱり、西洋美術好きにはたまらん映画だろうなと思う。
 余談だが、この映画に登場するフェルメールの奥方が、同じオランダのヤン・ファン・エイクの絵(「アルノルフィニ夫妻の肖像」)に出てくる人物によく似ており、こういうのも意図的だったんだろうかと気になった。
★★★★

by chikurinken | 2018-06-08 07:15 | 映画

『ポセイドン・アドベンチャー』(映画)

ポセイドン・アドベンチャー(1972年・米)
監督:ロナルド・ニーム
原作:ポール・ギャリコ
脚本:スターリング・シリファント、ウェンデル・メイズ
撮影:ハロルド・E・スタイン
特撮:L・B・アボット
出演:ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレー

パニック映画の元祖
二番煎じがたくさん出たが
これを超えたものはない


b0189364_22063353.jpg 70年代にパニック映画がやたら流行ったが、その元祖とも言えるのがこの映画。豪華客船が津波に遭って転覆し、沈没する船の中に閉じ込められた乗客たちが何とか脱出しようとするというストーリー。
 僕自身は、子どもの頃映画館で予告編を見たのが最初で、特に転覆したときの船内の映像がものすごく、大変衝撃を受けた。その後、『月曜ロードショー』でノーカット版が放送されたときに見て、今回はそれ以来、つまり45年ぶりということになる。月日の流れは速いもんだ。
 この映画、基本的には脱出過程が目玉ではあるが、人間同士のぶつかり合いや希望、絶望などもうまく描かれているため、非常に見応えがある。最後まで目が離せなくなる類の映画である。なんと言ってもセットが非常によくできていて、あらゆるシーンがものすごいリアリティで迫ってくる。「作り物」という感じが一切ない。
 ジーン・ハックマンが、いかにもアメリカンな一癖ある牧師を演じていて、これが強烈。敵対する元刑事のアーネスト・ボーグナインとのぶつかり合いも素晴らしく、一番の見所である。あまり有名な俳優は出ていないが、どのキャストもよくはまっていて好演である。
 この映画、2006年にリメイクされたが(『ポセイドン』)、こちらは第27回ゴールデンラズベリー賞の最低リメイク賞にノミネートされている。どうしてこんなよくできた映画をわざわざリメイクしようとしたかわからないが、そういうリメイクの話は日本でもまあ良くある話である(竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』を参照)。ただアメリカには「最低リメイク賞」などといった遊び心に溢れた賞があり、そういう点がいかにもアメリカで、なかなか奮っていると思う。日本の映画界もその精神をまねて、つまらないリメイクはやらないようにしてほしいものである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『俺たちに明日はない(映画)』
竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』

by chikurinken | 2018-06-06 07:06 | 映画

『泥棒成金』(映画)

泥棒成金(1955年・米)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:デヴィッド・ダッジ
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
出演:ケーリー・グラント、グレース・ケリー、シャルル・ヴァネル、ブリジット・オーベール、ジェシー・ロイス・ランディス

楽しく時を過ごせる映画

b0189364_18380087.jpg ヒッチコック作品。以前見たことがあると思っていたが、結局、見たことがあるのかないのかよくわからなかった。『おしゃれ泥棒』や『シャレード』なんかとストーリーが重なっていて、よく憶えていないのだ。今回見た分についても、なんだかすぐに忘れそうな気がする。
 ハリウッド映画らしくハラハラドキドキの展開で、内容もしゃれていて面白いが、字幕のせいか一部内容についていけなかったため、最後は結構モヤモヤして終わってしまった。引退したかつての大泥棒(ケーリー・グラント)が、新たな泥棒事件の嫌疑をかけられ、それを晴らすためにあれやこれややっていくというストーリー。その過程で出会う美女がグレース・ケリーで、いかにもハリウッド映画な展開……と言えば言い過ぎか。
 とは言え、やはり随所にキラリと光るヒッチコック演出が散りばめられていて、非常に感心することしきり。そもそも冒頭部分からして奮っている。タイトルバックに出てくる旅行代理店のショット、ウィンドウ内にあるフランス旅行の宣伝文句のアップ(「France」と出てくる)、そこから急にフランスの保養地に一挙に飛んで、次に(その保養地の)ホテルでの泥棒のシーンと短いショットで繋がっていく。しかも泥棒のシーンには屋根を歩く黒猫が象徴的に使われていたりしておしゃれである(ちなみに主人公の元大泥棒は「猫」と呼ばれていた)。また、あちこちに出てくるユーモアもヒッチコックらしい。ただストーリーが少々できすぎで、途中から概ね筋書きも見えてくるし、そういう点がちょっとマイナス。
 ケーリー・グラントもグレース・ケリーもヒッチコック映画では常連(それぞれ4本、3本に出演)で、まったく違和感なく、ヒッチコックの世界を形作っている。美しい男女が出て活躍するというのもハリウッド映画の常道で、この映画もご多分に漏れない。やはりこの映画、あまりいろいろ考えたくないときなんかに見るのが適している。楽しく時を過ごしたいような場合に最適な娯楽作品と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『巨匠たちの肖像 ヒッチコック(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『レベッカ(映画)』
竹林軒出張所『サイコ(映画)』
竹林軒出張所『知りすぎていた男(映画)』
竹林軒出張所『マーニー(映画)』
竹林軒出張所『ロープ(映画)』
竹林軒出張所『めまい(映画)』
竹林軒出張所『シャレード(映画)』

by chikurinken | 2018-06-04 07:37 | 映画