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竹林軒出張所

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タグ:映画 ( 708 ) タグの人気記事

『仁義なき戦い』(映画)

仁義なき戦い(1973年・東映)
監督:深作欣二
原作:飯干晃一
脚本:笠原和夫
出演:菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、田中邦衛、渡瀬恒彦、伊吹吾郎、金子信雄、木村俊恵

「殺伐」を絵に描いたような映画

b0189364_20505497.jpg 戦後まもなくの「広島ヤクザ抗争」を描いた映画。
 ヤクザ同士の壮絶な報復合戦、殺し合いを生々しく描く作品で、組の間、派閥の間のもめ事をなんとか丸く収めようと奮闘する仁義の人、主人公の広能昌三(菅原文太)の生き様が描かれる。正義のない世界で義を通そうとするあたりは、これまでの東映ヤクザ映画と同様だが、実際の抗争劇をリアルに描いた点が当時新しく、そのためにかなり話題になった映画である。
 全編息つく間もなく展開され、やるかやられるかみたいな緊張感がずっと持続するため飽きることはない。ただ群像劇で登場人物が多いため、誰が誰やらよくわからなくなり、劇中で名前で呼ばれてもあまりピンと来ないという場面が多かったのも事実。それに当然だが殺伐とした映画で、あまり楽しいというような映画でもない。
 ましかし、登場人物がどれも特徴的で、魅力あふれる人物像になっているのは、この作品の大きな魅力である。主人公の広能がこの後どうなるか気になるところだが、この『仁義なき戦い』は結局第5シリーズまで続き、さらには新シリーズも3作作られているため(広能は新シリーズ第1作まで登場)、ずっと生き延びるってことなんだろう。
 なおこの作品の原作は、飯干晃一原作ということになっているが、本当のオリジナルは広能のモデルである美能幸三が獄中で書いた手記らしい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『仁義なき戦い 広島死闘篇(映画)』
竹林軒出張所『青春の門 (東映版)(映画)』
竹林軒出張所『昭和残侠伝 唐獅子牡丹(映画)』
竹林軒出張所『昭和残侠伝 死んで貰います(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『ザ・ヤクザ(映画)』
竹林軒出張所『女囚701号 さそり(映画)』

by chikurinken | 2019-09-18 06:50 | 映画

『女囚701号 さそり』(映画)

女囚701号 さそり(1972年・東映)
監督:伊藤俊也
原作:篠原とおる
脚本:神波史男、松田寛夫
出演:梶芽衣子、横山リエ、夏八木勲、渡辺文雄、扇ひろ子、渡辺やよい

歌舞伎ですな、こりゃ

b0189364_17565675.jpg 梶芽衣子の当たり役、ナミが出演するシリーズ最初の作品。『キル・ビル』のクエンティン・タランティーノが多大な影響を受けたという映画で、今回初めて見た(『キル・ビル』ではこの映画のテーマ曲〈『恨み節』〉がテーマ曲として使われている)。
 最初からあまり期待はしていなかったが、しかしストーリーがあまりにいい加減でご都合主義なのには参った。こんなストーリーにしてしまったらどんなことでも成立してしまうというような代物である。
 主人公の松島ナミ(梶芽衣子)は、警視庁の麻薬検査官をやっている杉見(夏八木勲)に騙され棄てられたことから、杉見を刺そうとするが、傷害未遂で捕まってしまい刑務所に入れられた。彼女が入った刑務所は、暴力がはびこる過酷な環境であるが、ナミは、杉見への復讐を遂げたいという執念で何度も脱走を企て、その都度つかまり、しかも過酷な拷問を受ける。そのため刑務所内では札付きとして扱われるが、なぜかわからないがその過程で徐々にスーパーウーマン化し、どんな拷問でも黙って耐えられるようになっていく。しかも独居房に入れられたら入れられたで、そこに潜んでいた女囚人、実はナミの秘密を探るために潜入した女刑務官までも性的に支配してしまう始末(何だか本当によくわからない展開)。他の刑務官たちは執拗にナミを拷問にかけるが、その目的がよくわからないし(単にいじめるためではないようだ)、とにかくありとあらゆるものが説明不足でご都合主義的に展開する。それでも半裸の女性を拷問したり、暴行したり、レズシーンもあったりするため、その趣味の男向けの一種のポルノ映画として見れば、これはこれで十分成立している。
 結局、刑務所内であれやこれやあって、ナミはご都合主義的に脱走しシャバに出て、どこで手に入れたかわからないが謎めいた格好をして、恨みを晴らしていく。要するにストレスを溜めて最後に晴らすという典型的な復讐パターンの映画で、おそらく作り手が見せたい場面というのがあってそれを繋いでいく、大事な場面だけを強調して後は辻褄などを一切無視して適当に並べるという、言ってみればかなり稚拙な作りになっているわけである。見せたい場面というのも、非常に様式的で、リアリティもへったくれもあったもんじゃない。奇妙な照明の中で、決めポーズみたいなショットがあって、目的を遂げて最後に見得を切るというようなパターンである。完全に歌舞伎の世界である。
 エロなシーンやドンパチのエンタテイメント的なシーンもあるし、歌舞伎のような荒唐無稽な映画として見ればそれで済むんだろうが、それでも舞台じゃないんで、映像でこういったことをされてしまうと、僕などは途端に白けてしまう。リアリティがなさすぎで、もう無茶苦茶と感じるのである。こうなってしまうと、真剣に作品に向き合うことができなくなる。そういうわけで、僕にとってはまったく取るに足りない映画なのだった。
★★

参考:
竹林軒出張所『仁義なき戦い 広島死闘篇(映画)』
竹林軒出張所『仁義なき戦い(映画)』
竹林軒出張所『同棲時代(ドラマ)』

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 以下、以前のブログで紹介した『キル・ビル』についての評(再録)。

(旧ブログ2005年1月22日の記事より)
キル・ビル vol.1(2003年・米)
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、ダリル・ハンナ、千葉真一、風祭ゆき、栗山千明、ジュリー・ドレフュス

b0189364_9495437.jpg 「深作欣二に捧げる」という字幕が冒頭に出る。なるぼど深作欽二ね。確かにそういう映画です。
 30代以上の日本人が見たらいっそう楽しめるかも知れない。かつてのアニメやB級時代劇のパロディというかオマージュというか、とにかくそういうのが満載。音楽や効果音、映像なども凝っていて、いろいろ発見する楽しみがある。
 こういう殺伐とした映画は好みが別れると思う。はっきり言って私は嫌いだが、それでも随所に楽しめる要素がちりばめられており、思わずニヤッとしてしまう。
 端役で出ている風祭ゆきの名前が、冒頭のテロップで主役級の役者と同等に並べられていた。日活ロマンポルノでものすごい演技をしていた女優であるが、タランティーノも日活ロマンポルノを見たのだろうか。何となく、タランティーノが同世代の日本人映画ファンであるかのような錯覚を持ってしまう。
 蛇足であるが、主役級のアメリカ人がしゃべる奇怪な日本語はいただけない。あのトツトツとした日本語を聞くと興が冷める。そもそも、こんな(外国人がしゃべるには)無理のある台詞を、日本語がしゃべれない役者にしゃべらす方が問題だ。日本向け上映については、その部分だけ日本人の声優に吹き替えてもらった方が良いんじゃないかと思った。
★★★

by chikurinken | 2019-09-16 06:56 | 映画

『早春』(映画)

早春(1956年・松竹)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
美術:浜田辰雄
出演:池部良、淡島千景、岸恵子、高橋貞二、笠智衆、山村聡、藤乃高子、杉村春子、浦辺粂子、加東大介、三井弘次

こうなるともう文化財

b0189364_18554077.jpg 夫婦の危機を描く小津映画。主人公のスギ(池部良)がキンギョ(岸恵子)という女性と不倫関係になり、妻(淡島千景)との間がギクシャクするというのが中心となるストーリー。一方でサラリーマンの悲哀が副次的に描かれる。
 セリフを含め、非常によく練り上げられた脚本という印象で、文学的な香りさえする。あちこちにあるアイロニーを効かせた簡潔なセリフも非常に印象的である。
 今回見たのはリマスター版で、かつて見たときに感じた画面の汚さはまったくなく、特に画面の揺れがないのが非常に良い。映像が格段に美しくなっているため、本来の小津作品が持つ端正で上質な絵作りというものがよく伝わってくる。
 キャストでは岸恵子が非常に美しいのが印象的。キャスティングで面白いのは、小津の前作の『東京物語』で親子だった笠智衆と山村聡が、元同僚でほぼ同年代になっていたりするあたりで、似たような世代のずらし方は『麥秋』と『東京物語』の間にもあったが、違和感がないのが不思議である。加東大介は『秋刀魚の味』同様、戦友の役、杉村春子は『お早よう』同様、ご近所のおばさん役と、後の映画の原形みたいなものも見受けられる。この映画では、同じく常連の高橋貞二がユニークな役どころで大変良い味を出している。
 戦後の小津映画は、演出がしっかりと行われていて端正であるため、どのキャストの演技にも破綻がなく、抜群の安定感を感じさせる。作り手の意図が隅々にまで浸透しており、毎度のことながら上質さを感じる。こういった特徴は、『麥秋』と『東京物語』以降だろうが、こうなるともう文化財である。
 カメラは例によって安定していて動かないが、会社内のシーンでカメラが前に移動するというシーンが2、3箇所(すべて同じ場所を撮影したもの)あった。他のシーンが動かないので逆に違和感を感じたほどであるが、意図がわからなかった。今見る限りでは、このシーンもカメラは動かない方が良いのではないかと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえった「東京物語」』
竹林軒出張所『麥秋(映画)』
竹林軒出張所『彼岸花(映画)』
竹林軒出張所『浮草(映画)』
竹林軒出張所『お早よう(映画)』
竹林軒出張所『秋日和(映画)』
竹林軒出張所『秋刀魚の味(映画)』
竹林軒出張所『小津安二郎・没後50年 隠された視線(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『絢爛たる影絵 小津安二郎(本)』
竹林軒出張所『青春放課後(ドラマ)』


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 以下、以前のブログで紹介した『早春』のレビュー記事。

(2005年11月20日の記事より)
b0189364_18581817.jpg早春(1962年・松竹)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
出演:淡島千景、池辺良、岸恵子、高橋貞二、笠智衆、山村聡、浦辺粂子、加東大介

 小津映画には珍しく事件が起きる(と言っても大した事件ではないが)。珍しく緊迫感がある。若々しさがあって良い。まさに「早春」のイメージ。
 岸恵子が抜群によろしい。『ローマの休日』のヘプバーンのようなみずみずしさがある(と言ったら言い過ぎか)。でもちょっと悪女。その辺がまた良い。小津安二郎も、岸恵子がいたく気に入ったらしく、次回作で起用する予定だったのが、デヴィッド・リーンに先に持って行かれたらしい。この映画も見るのは2回目だが、前に見たときより、はるかに楽しめた。
 ちなみに主演の2人(池辺良と岸恵子)は豊田四郎の『雪国』でも共演している。
★★★★

by chikurinken | 2019-08-28 06:55 | 映画

『浮草』(映画)

浮草(1059年・大映)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:宮川一夫
美術:下河原友雄
音楽:斎藤高順
出演:中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、野添ひとみ、笠智衆、三井弘次、田中春男、入江洋吉、高橋とよ、桜むつ子、賀原夏子、島津雅彦

映像美が光る小津映画

b0189364_19435722.jpg 小津安二郎が大映で撮った唯一の映画。大映で撮ったことから、撮影監督として大映所属の宮川一夫が加わることになった。ドキュメンタリー番組、『キャメラマンMIYAGAWAの奇跡』で紹介されていたように、(通常の小津映画ではあり得ないような)俯瞰のカットが冒頭部分に1箇所あったが、まったく違和感はなく、カットは全編小津映画風という印象である。ユーモラスなカットもあって(最初の灯台と一升瓶のカットも笑える)、撮影についてはグレードが高いと感じる。
 ストーリーは、旅役者の嵐駒十郎(中村鴈治郎)の一座が、とある港町に巡業に来るというところから始まる。ただしこの港町、嵐駒十郎の内縁の元妻(杉村春子)が息子(川口浩)と一緒に住んでいるという土地で、駒十郎にとっては特別な場所である。駒十郎自身は現在一座で役者をしている愛人(京マチ子)がおり、その愛人が元妻に嫉妬を感じて、いろいろと小さな事件が起こるという、そういう話である。
 映像は、港町……というより漁村というイメージだが、その風景をよく捉えており、非常に美しい。(うちの親戚が漁村にあって、小さい頃ときどき通っていたこともあり)懐かしさも感じる。全編乾いたユーモアが漂っていてそれが心地良かったんだが、最後の方で非常に湿っぽくなって、それが僕としては少々納得がいかない。女優(この映画では若尾文子)が両手で顔を覆って泣くというシーンは、他の小津作品(『東京物語』や『晩春』)でも見受けられ、おそらくこういう演出は監督の好みなんだろうと思うが、この映画については、こういうシーンは省いてドライな感じで終わった方が良いんじゃないかと僕自身は考えてしまう。
 小津映画には出ない大映俳優、京マチ子、若尾文子、川口浩がどれも非常な好演で、そのあたりは、さすがに小津映画と感じさせられる。彼らにとっても小津映画に出演したことは一生の財産であったろうと思う。中村鴈治郎は、『小早川家の秋』でも主演しているが、存在感は抜群。しかも今回は歌舞伎役者を演じるわけで、楽屋落ちみたいな設定である。ただし鴈治郎が舞台で演じるシーンは1つも出てこない。契約の問題なんかがあったんだろうかと勘ぐってしまうが、途中楽屋のシーンで出てきた歌舞伎のメイクはさすがとうならされるような立派なものだった。また他の小津映画の常連、高橋とよや三井弘次も登場。三井弘次は、この映画のオリジナル版の『浮草物語』で主演クラスの役(座長の息子の若者)を演じていたらしく、この映画で演じていたヤクザ野郎と立場が大違いで驚きである。また、『お早よう』の子役も同じく子役で出ている(島津雅彦)。
 小津映画らしく細部まで目が行き届いた立派な映画で、やはりなんと言ってもこの映画、映像の美しさが特に目を引く。見ていて心地よさを感じるほどで、それだけに最後の方の湿っぽいシーンが余計引っかかるのである。なお今回この映画を見たのは(おそらく)4回目だが、毎度ながら何かしら新しく感じるところがあるのはさすがである。中でも土砂降りのシーンは特筆もので、この映画の目玉と言えるシーンではないかと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『キャメラマンMIYAGAWAの奇跡(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『彼岸花(映画)』
竹林軒出張所『お早よう(映画)』
竹林軒出張所『秋日和(映画)』
竹林軒出張所『秋刀魚の味(映画)』
竹林軒出張所『麥秋(映画)』
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえった「東京物語」』
竹林軒出張所『小津安二郎・没後50年 隠された視線(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『絢爛たる影絵 小津安二郎(本)』
竹林軒出張所『青春放課後(ドラマ)』

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 以下、以前のブログで紹介した『浮草』のレビュー記事。

(2005年10月21日の記事より)
浮草(1959年・大映)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:宮川一夫
出演:中村雁治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、野添ひとみ、笠智衆、高橋トヨ

b0189364_19440294.jpg 松竹の監督、小津安二郎が大映で撮った異色の映画。見るのはこれで三度目だ。実は1934年に自身で撮った『浮草物語』のリメイクである。だが、できは断然こちらの方がよい(と思う)。
 なにしろ、役者陣が素晴らしい。それに宮川一夫のカメラワーク! 常に小津とコンビを組んでいる厚田雄春ではないので、いつもと違う雰囲気も若干あるかも知れない。そのためかキネマ旬報のベストテンでは、『浮草物語』が1位であったにもかかわらず、こちらは10位以内にも入っていない。しかし、この映画が、小津安二郎の最高傑作の1つであることは疑いのないところだ。
 構図も非常におもしろい。最初のありきたりの数カットでさりげなくウィットを見せるあたり、なかなかうならせる(同時に笑えるが)。
 他の小津映画にまず出ることがない大映の俳優陣、京マチ子、若尾文子、川口浩も新鮮だ。この時代の有名監督は、どうしてこうも役者を美しく撮れるのか不思議なくらいだ。豊田四郎の『甘い汗』を見たとき、京マチ子と佐田啓二が並んで歩く後ろ姿にほれぼれとしたが、そういう立ち居の美しさは、この映画でもさりげなく表現されている。
 映像については、他の小津映画以上に感性的な映像表現が多いように思う。押しつけがましさがなく心地良い。
 雨のシーンは大変インパクトがあり、最初に見たときから忘れることができない。忘れられない台詞も結構ある。シナリオも洗練を極めている。心地良さが後々まで残る、何度も見たい映画である。
★★★★☆

by chikurinken | 2019-08-27 07:43 | 映画

『あらくれ』(映画)

あらくれ(1957年・東宝)
監督:成瀬巳喜男
原作:徳田秋声
脚本:水木洋子
美術:河東安英
出演:高峰秀子、上原謙、森雅之、加東大介、仲代達矢、東野英治郎、宮口精二、三浦光子、千石規子、志村喬

「18禁」映画らしいが
どこが「18禁」なのかわからない


b0189364_18590192.jpg 徳田秋声原作の同名タイトル小説の映画化作品。一人の男勝りの女、お島(高峰秀子)が、結婚相手から逃げたり、別の男と結婚して離縁したり、愛人を作ったりしながらも何とか生き延びていくというストーリーである。
 この時代に女が自立しようとするとこうなる、というような自然主義的な話である。途中ダメ男が大量に出てきて、『浮雲』『稲妻』『放浪記』などの成瀬巳喜男作品を彷彿させるが、ストーリー自体も『浮雲』や『放浪記』と似ている。登場する男たちの多くがダメ男ではあるが、主人公のお島(高峰秀子)が男たちをダメにしてしまうという側面もあり、そのあたりはなかなか厄介である。原作のストーリーは長そうだが、映画では割合うまく端折ってうまくまとめられている。ただ最初から主人公が不快な思いをするシーンが続き、見続けるのは少し骨が折れる。自然主義だからしようがないと言えばしようがないわけであるが。
 監督が成瀬巳喜男、キャストが高峰秀子、森雅之、加東大介という成瀬映画の常連組で、まさしく『浮雲』の再現になっている。仲代達矢はデビュー当時だったためか、チョイ役である(最後に大きな役割を果たすことになるが)。
 この映画は特に、東京の街並みのセットがよくできており、大正時代をよく再現できていることに感心した。物売りが始終街中をうろうろするのも情緒があって良い。
 この作品は当時「18禁」に指定されていたらしい。しかし18禁に相当するようなシーンは皆無で、なぜ18禁映画になったのかわからない。もしかしたら、ティーンエイジャーの女の子に対して、この映画の登場人物みたいな「あらくれ女」になるなよというメッセージのつもりなのかも知れないが、そんなもん大きなお世話である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『浮雲(映画)』
竹林軒出張所『放浪記(映画)』
竹林軒出張所『稲妻(映画)』
竹林軒出張所『女が階段を上る時(映画)』
竹林軒出張所『乱れる(映画)』
竹林軒出張所『めし』(映画)
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』

by chikurinken | 2019-08-26 06:58 | 映画

『パンダコパンダ』(映画)

パンダコパンダ(1972年・東京ムービー)
監督:高畑勲
原案:宮崎駿
脚本:宮崎駿
美術監督:福田尚郎
撮影監督:清水達正
声の出演:杉山佳寿子、熊倉一雄、太田淑子、山田康雄

今となっては結構見所が多い

b0189364_10250021.jpg 1972年の日中国交正常化の影響で、2頭のパンダ(カンカンとランラン)が上野動物園に贈られたことから、世の中は一躍パンダ・ブームになる。そのパンダブームにあやかって作られたと思われるアニメ映画である。
 監督が高畑勲、原案と脚本が宮崎駿という今をときめくビッグネームが関わった作品ということで、一部で注目を集めている作品でもある。ストーリーは、主人公の一人暮らしの少女、ミミ子の元に、ある日突然パンダの親子がやってきて、ミミ子の父親代わり、息子代わりとしてミミ子の家に住みつくという話(かなり強引な設定)。なお、このパンダの親子、ミミ子と普通に日本語で会話ができる。ただしこのパンダ親子、動物園から抜け出してきたということで、それがその後の騒動につながる。おとぎ話みたいな話でストーリー自体はどうということはない。
 絵の方はござっぱりと描かれている。キャラクターデザインは、前に見たときは気が付かなかったが、72年に放送されていた『ど根性ガエル』にそっくりである。後の高畑風あるいは宮崎風の味はない。72年当時、東京ムービーで『ど根性ガエル』が製作されていたため、それと関係があるんだろうが、詳細についてはわからない。しかも最後の方に出てくる人混みの中に、『ど根性ガエル』のキャラクターであるひろしと京子ちゃんまで出てくる。実は他にもオバケのQ太郎や『ルパン三世』のルパンと次元大介も出てきていて(当時『新オバケのQ太郎』と『ルパン三世』も東京ムービーが製作していた)こちらはすぐにわかったが、ひろしと京子ちゃんは、キャラクターがあまりに似ているんでなかなか見分けられなかった(何度も見直して気が付いたのである)。
 それからパンダとミミ子との関わり方が『となりのトトロ』にそっくりなのも見所の一つである。設定自体も『トトロ』によく似ており、『トトロ』の原形と考えても差し支えなかろう。逆にいえば『トトロ』は『パンダコパンダ』の焼き直しということである。
 総じて子ども向けのたわいもないアニメだが、上記のように(高畑、宮崎が巨匠となった)今となっては結構見所があって面白い。当時は「東宝チャンピオンまつり」で上映されたそうで、併映は『ゴジラ電撃大作戦』と『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』だそうな(ウィキペディア情報)。僕はドンピシャの世代ではあるが、この3作品については当時の記憶はまったくない。前年の「東宝チャンピオンまつり」(『ゴジラ対ヘドラ』がメイン)は劇場に見に行ってるんだが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦 ! 南海の大怪獣(映画)』
竹林軒出張所『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ(映画)』
竹林軒出張所『母をたずねて三千里 完結版(ドラマ)』
竹林軒出張所『崖の上のポニョ(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『空飛ぶゆうれい船(映画)』
竹林軒出張所『夢と狂気の王国(映画)』
竹林軒出張所『吾輩はガイジンである。(本)』

by chikurinken | 2019-08-10 10:26 | 映画

『夢と狂気の王国』(映画)

夢と狂気の王国(2013年・ドワンゴ)
監督:砂田麻美
脚本:砂田麻美
出演:宮崎駿、鈴木敏夫、西村義明、庵野秀明、高畑勲、宮崎吾朗(ドキュメンタリー)

『風立ちぬ』製作の舞台裏

b0189364_19592091.jpg 『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』の製作に追われるスタジオジブリに密着するドキュメンタリー。監督は『エンディングノート』の砂田麻美。
 『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』は、同じ日に公開すべく当時同時進行で製作されていたが、結局、高畑勲の仕事が例によって遅れたため、『風立ちぬ』の方が早く公開された。だが同時進行で仕事が進められていたのは事実で、このドキュメンタリーからもそれが窺われる。ただし、このドキュメンタリーでは、『かぐや姫』の方の製作現場はまったく出てこない。高畑勲も最後の最後まで出てこない。ほぼ宮崎駿に密着という形で話が進行し、遅れる『かぐや姫』にプロデューサーの鈴木敏夫と西村義明が振り回されるエピソードがそれに継ぐ。締切を守れない高畑勲については、宮崎駿をはじめとする他のメンバーたちは結構辛辣な言葉を発するが、それでも宮崎にとって高畑の存在は大きく、今の姿を形作る原動力になったというようなことがドキュメンタリーの中で語られたりする。高畑勲に対してはちょっとアンビバレントな感情を持っているようで、これは他のメンバーにも共通する感情のようである。
 『風立ちぬ』については、宮崎駿がすべてコンテを描いて、それを周りのスタッフがアニメーション化していくという流れで仕事が進んでいた。要するに宮崎駿がストーリーと構成のすべてを作り上げるということなんだが、他のスタッフと同時進行で仕事が進んでおり、つまりはどういうストーリー展開になるのかは(宮崎駿を含めて……らしいが)誰も知らないで仕事を進めているということなのだ。僕自身はこれを知って、宮崎駿作品のストーリーにまとまりがないのは、こういう行き当たりばったりの作り方をしているからかと納得したのだった。
 同じ頃のジブリを撮影した、似たようなテイストの宮崎駿のドキュメンタリーが過去にNHKでも放送されていたために、この作品についてはあまり新鮮さはなかったが、ま、しかし製作現場にかなり密着しているという点では大いに評価できる。宮崎のすぐ側に近づいていることが映像から窺われるため、途中で宮崎から「邪魔だ」などと怒られたりしないかと思ってヒヤヒヤしていた(怒られたのかも知れないが画面には出ていない)。一方で高畑勲については、話題としては出てくるが本人はまったく映像に登場せず(先ほども言ったように最後の最後にちょっとだけ出てくる)違和感を感じていたが、どうやら高畑勲に製作者側が怒られたからというのが真実のようである(ウィキペディア情報)。やはり怒らせたんだなと妙に納得した。それから宮崎駿が阿部晋三政権に相当な脅威を抱いているという点も新鮮だった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『エンディングノート(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (3)〜(7)(本)』
竹林軒出張所『パンダコパンダ(映画)』
竹林軒出張所『ゲド戦記(映画)』
竹林軒出張所『コクリコ坂から(映画)』

 以下、以前のブログで紹介した、ジブリ映画の評の再録。
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(2006年12月7日の記事より)
ハウルの動く城(2004年・スタジオジブリ)
監督:宮崎駿
原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
脚本:宮崎駿
音楽:久石譲
声の出演:倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、加藤治子、原田大二郎

b0189364_19593018.jpg お馴染み、宮崎駿のアニメ。
 相変わらず、おもちゃ箱をひっくり返したようなごちゃごちゃさというか、猥雑さというか……まあ、よく作り込んではいる。ただ、これまでの作品と似通った部分が結構出てきて、『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』を彷彿とさせるようなシーンが多かった。また、ストーリーも少しパターン化していて、起承転結に忠実なのは変わっていない。途中、ハウルの正体(?)が明らかになるあたり、複雑でついて行けなくなった。『千と千尋の神隠し』でもそういう箇所があり、2回目に見たときに納得したが、あれと同じようなパターンか。やたら飛ぶシーンが多いのも宮崎アニメらしい。
 もう1つ、声優の起用に疑問を持った。『となりのトトロ』でもそうだったが、声の主の顔が浮かぶような起用はどうかと思う。倍賞千恵子の娘役はいかがなものだろうか。木村拓哉も声がくぐもっていて、声優としてはパッとしない。美輪明宏は、登場人物とイメージが少し重なっていたこともあり非常に良かった。『もののけ姫』以来の起用だが、前作でも存在感があり、その辺が評価されてのことか。
 トータルで見て、『千と千尋の神隠し』のレベルからは少し落ちるかなという感じ。楽しめるには楽しめるが。
 そうそう、相変わらず映像はキレイで素晴らしいの一言です。
★★★☆
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(2005年12月19日の記事より)
柳川堀割物語(1987年・二馬力)
監督:高畑勲
製作:宮崎駿
脚本:高畑勲
声の出演:加賀美幸子、国井雅比古

b0189364_19592679.jpg (福岡県の)柳川の水路が荒れ果て、コンクリートで覆うという話が出て、そうしたところ、ある役人(広松伝という人)が水路を清掃し始めることでやがて市民を巻き込み、荒れた水路が徐々に以前の姿を取り戻しつつある……という話を以前新聞で読んだ。
 このドキュメンタリー映画では、そのあたりも詳細に扱っている(事実はさきほどの話とは多少異なる)が、柳川の水路のさまざまな側面を多面的に扱っており、さながら柳川百科事典のような趣がある。全11章構成で、対象の掘り起こし方が、映画というより書籍に近い。特にDVD化されて、各章にランダムアクセスできるようになったため、マルチメディア百科としての価値がこれまで以上に高くなっている。
 冗長な章がある上、しかも内容が複雑すぎてついて行けない箇所もある。だが、柳川堀割の原理や歴史など、内容は多岐に渡る上、非常に濃密である。映像も美しい。
 『千と千尋の神隠し』の作者(宮崎駿)の頭の中には柳川の水路があったのではないか(ハクのことね)とふと思った。
★★★☆

by chikurinken | 2019-08-09 06:59 | 映画

『湾生回家』(映画)

湾生回家(2015年・台湾)
監督:ホァン・ミンチェン
出演:湾生の人々(ドキュメンタリー)

湾生の台湾に対する思い入れがテーマ

b0189364_20231414.jpg 幼い頃、台湾の地で育った(現)日本人の人々の話である。
 台湾は、日清戦争の後、清国から大日本帝国に割譲され、それ以降日本の植民地となる。そのため、太平洋戦争終結までは日本の一部としてその版図に組み込まれていた。だが帝国日本の敗戦、崩壊とともに台湾は中華民国の施政下に入れられ、その後蒋介石の国民党が大陸を追われて台湾に逃れたため、台湾は中華民国国民党によって支配されることになる。
 この間に台湾で生活をしていた人々も当然社会の影響を受けざるを得ないわけで、戦前に台湾で生まれ(または移住し)台湾で幼少時代を過ごした本土の人々の多くは、日本の敗戦後、内地に戻ることになった。彼らにとって台湾は生まれ故郷であるため、今でも台湾に対して特別な思い入れがあるんだそうだ。ということで、このドキュメンタリーに登場する台湾生まれの日本人(湾生)たちはたびたび台湾の故郷を訪れ、旧交を温めたり懐かしい土地を訪れたりしている。こういった人々の活動に密着するドキュメンタリー映画である。
 元々台湾で作られた作品で、日本公開後、クチコミで評判が広がっていったという話を聞いて興味を持ち、今回この作品を見てみたんだが、正直言ってそれほどの感慨はなかった。湾生の人々が台湾に対して持つ思い入れの深さはわかるが、「故郷」という観点から見ればそれも当然であるように感じる。また、戦後台湾に残った当時の子どもと日本に引き揚げた親との親子関係なども描かれれ、この作品の見所の一つになっているが、僕個人はそれほど感じるところはなかったというのが正直な感想。真摯な映画で、もちろん悪くはないが、2時間近くの上映時間を長く感じたというのも事実である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『明治天皇〈三〉(本)』
竹林軒出張所『日中“密使外交”の全貌(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-08-08 07:22 | 映画

『旅するダンボール』(映画)

旅するダンボール(2018年・pictures dept.)
監督:岡島龍介
撮影:岡島龍介
編集:岡島龍介
ナレーション:マイケル・キダ(ドキュメンタリー)

主人公の人間的な魅力が一番の売り

b0189364_21230325.jpg 島津冬樹というダンボール・アーティストを主人公にしたドキュメンタリー。
 この人、ダンボール箱を使って財布やカード入れを作るという活動をしている。現在その活動が一部で評価されているらしく、新国立美術館で1個1万円で売られているらしい。あちこちでワークショップを開くなどという活動も行っている。
 このドキュメンタリーでは、こういった活動が紹介される他、島津が気に入っているダンボール(徳之島のじゃがいものもの)の製作者を訪ねるなどという旅にも密着する。だが言ってみれば、本当にこれだけのドキュメンタリーなんで、島津の人間的な魅力が、このドキュメンタリーの一番の売りということになるんだろう。僕は彼に特に関心を持たなかったし、彼の作品についてもそれほどの感慨は持たなかったため、このドキュメンタリーを存分に楽しむというところまでは行かなかった。
 なおこのドキュメンタリー、会話やインタビューなど中身のほとんどは日本語だが、なぜかナレーションだけが英語で、大変違和感がある。てっきりアメリカ製の作品なのかと思っていたが、製作者も日本人、製作会社も日本在のようである。最初から外に売り込むことを意識してつくったのかも知れないが、だがそれだったら売り込む段階でナレーションだけ入れ替えたら済むことである。日本向けの作品にナレーションを入れるってんだったら日本語で入れるのが筋で、そちらの方が利便性の点でもはるかに良いんじゃないかと思うが。もっともナレーションが日本語であったとしても、この作品に対する印象がまったく違うなどということはきっとないだろう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人(映画)』

by chikurinken | 2019-08-07 07:22 | 映画

『十二人の怒れる男』(映画)

十二人の怒れる男(1957年・米)
監督:シドニー・ルメット
脚本:レジナルド・ローズ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:ケニヨン・ホプキンス
出演:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ、エド・ベグリー、マーティン・バルサム、E・G・マーシャル、ジャック・クラグマン

アメリカの理想的な市民

b0189364_07411669.jpg 言わずと知れたアメリカの法廷映画の傑作。ハリウッド映画を代表する傑作と言ってもよい。
 ある殺人事件を担当する陪審員12人が評議室に入って、その殺人事件について検討し、評決を出すというストーリー。三一致の法則(時、場所、出来事)が守られていて、見る方はその陪審裁判に参加しているかのような錯覚さえ覚える。
 審理対象になっているのは、素行の悪いある若者が父親をナイフで刺し殺したという事件で、弁護士が無能なせいで、どう見ても被告の有罪(ここでは死刑判決が出るという前提になっている)は明らかである。ところがこの評議室で議論が二転三転するという具合に話が進む。
 元々は1954年にテレビで1時間ドラマとして放送されたものだったらしいが、このドラマの評判が良く、これを見ていたく気に入ったヘンリー・フォンダが映画化をもくろみプロデューサーまで務めたという。元々のドラマのオリジナル脚本を書いたレジナルド・ローズも共同製作者である。
 登場人物は皆互いに名前も告げない者同士(中には自己紹介する者もいる)で、この裁判の審理のために集まっている他人同士である。職業も背景も性格も異なり、さまざまなアメリカ人から無作為抽出したようなキャラクターたちである。民主主義と正義を主張する者もいるが、悪い奴には厳罰をという保守思想の塊みたいな人間もいる。そういう人々が、1人の被告、1件の裁判のために集まって第三者の目で審議するという陪審制度の理想的な形態を描いた作品と言えば言い過ぎかも知れないが、現に脚本家のレジナルド・ローズは、陪審員になった経験を基にこの作品を書いたらしい。だが、この映画を見ていると、評議室内で真実が暴かれるなどということはめったに起こらないのではとも感じる。ヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番みたいな人間がいればまた別なんだろうが。
 そういった現実性はともかく、映画は非常に密度が高く、しかも緊迫感があって見応えがある。しかも複雑すぎず進行がわかりやすい。映画を作ろうという人であれば一度はこういった作品を作ってみたいと思う、見本のような作品である。今回見たのは4回目だが、何度見ても飽きることはない。また、陪審員制度の理想を物語っているようなラストシーンが非常に印象的で、いつまでも心に残る。
★★★★☆

参考:
竹林軒出張所『裁きは終りぬ(映画)』
竹林軒出張所『判事よ自らを裁け(ドラマ)』
竹林軒出張所『招かれざる客(映画)』
竹林軒出張所『アラバマ物語(映画)』

 以下、以前のブログで紹介したこの映画の評の再録。
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(2005年10月19日の記事より)
十二人の怒れる男(1957年・米)
監督:シドニー・ルメット
脚本:レジナルド・ローズ
出演:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コップ、エド・ベグリー、マーティン・バルサム、E・G・マーシャル

b0189364_07412168.jpg この映画、見るのは3回目だが、何度見ても、その完成度の高さにうならされる。
 ともすればややこしくなって、理解が追いつかなくなることが多い法廷劇で、これほど見る側にストレートに伝わってくるのも珍しい。台詞に無駄がなく、すべてのシーンが実にシャープで、緊迫感がある。
 最初から最後まで会話だけで大きな動きがない。それでいて最後まで目を離すことができなくなる。しかも最後に残る爽快感。最後のシーンは、数ある映画の中で、もっとも好きで印象的なシーンの1つである。
 映画脚本の1つの完成形といっても良いだろう。もちろん、演出も俳優も群を抜いていることはいうまでもない。
★★★★☆

by chikurinken | 2019-07-21 07:42 | 映画