ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

タグ:山田太一 ( 75 ) タグの人気記事

『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』

二人の世界(1)〜(26)(1970年・木下恵介プロ、松竹、TBS)
演出:木下恵介、川頭義郎、横堀幸司
脚本:山田太一
音楽:木下忠司
出演:竹脇無我、栗原小巻、あおい輝彦、山内明、文野朋子、東野孝彦、三島雅夫、小坂一也、水原英子、太宰久雄、武智豊子、矢島正明(語り)

人に歴史あり、店に歴史あり

b0189364_13495462.jpg 山田太一初期の傑作『二人の世界』を12年ぶりに見る。前にもレビューを書いており、しかも内容がよく書けているため今回は良いかと思っていたが、やはり印象が強く、何か書いておくべきと感じる。
 何よりも善意の人々が多く出てきて心地良い。最近『スカッとジャパン』に出てくるような危ない奴に出会うことが続いて、嫌な気持ちが続いていたんだが、このドラマを見て少し気持ちが和らいだ。それにこのドラマにもちょっと危ない奴が出てきて、主人公も同様に気分が落ち込んだりしているのが、また共感を呼ぶ。前にも言ったように、ナレーションがやたら多いとか、今の時代から見るとところどころ違和感があるが、しかし素晴らしいセリフも随所に散りばめられていて、山田太一の面目躍如と言える作品に仕上がっている。全編フィルム撮影されているため、70年のカラー作品でありながら、今でも残っていたというラッキーな作品でもある(この頃ビデオで撮影された作品は、多くが失われている)。かつて改革開放前の中国でも放送されたことがあるらしく、栗原小巻は中国でも人気があるとか(竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』を参照)。もちろんこのドラマの栗原小巻、それから竹脇無我は非常に魅力的である。
 少し前に放送された『3人家族』と同じようなスタッフ、キャストで、主人公の2人の役回りも同じなんで、最初は恋愛話かと思って見ていると、第6回で突如、恋愛話が終わってしまって、その後、一体どういう方向に進むのか気になって見続けるというドラマである。前も書いたが、子供の頃、親が一生懸命このドラマを見ていて、だが僕はこの時間帯(21時から放送だったと思うが)すでに寝る時間で、そのためにテーマ曲だけが耳に入っていた。あのあおい輝彦のテーマ曲がまたメロウで良いのである。そのときも子ども心に恋愛ドラマだと思っていたのだ。
 音楽と言えば、音楽監督は木下恵介の弟、木下忠司で、音楽もあまり目立たないが非常に良い仕事をしている。ところどころ水戸黄門風になるが、それは同じ作曲家だから仕方ない。
 登場人物で言えば、物わかりの良い麗子の父(山内明)とコックの沖田(三島雅夫)が、出てくるのが楽しみになるような存在で、非常に魅力的である。あおい輝彦は『3人家族』同様、好人物を演じているが、今回は『3人家族』よりやや引いた位置付けという感じである。
 また、冒頭のタイトルバックが非常に上品なのも良い。ジャン・コクトーのリトグラフが部分部分映されるだけの映像だが、落ち着きがあって、心が安まる。テーマ曲と合わせて、本編に対する期待感を膨らませるような役割も果たしている。
 今回、何本かずつ連続で見たために、途中、少し気が抜けたような気がした回もあったが、ストーリー上それなりにいろいろと困難が出てきて、いろいろな人々の善意で助けられるという展開は、適度な緊張感が続いて、連続ドラマとしてはこれ以上ないくらいよくできていると思える。気持ちが暗くなって人を信用できなくなったらもう一度見ようかと思えるような「素敵な」ドラマである。
 せっかくなので、すべての回のストーリーを簡単にまとめておこうと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』
竹林軒『遙かなり 木下恵介アワー』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』
竹林軒出張所『3人家族 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』

--------------------------
主な登場人物
二郎(竹脇無我)
麗子(栗原小巻)
麗子の弟、恒雄(あおい輝彦)
麗子の父(山内明)
麗子の母(文野朋子)
レストランのコック、沖田(三島雅夫)
二郎の友人、関根(東野孝彦)

第1回から第6回は出会い・恋愛編。
第1回
 アルマンド・ロメオのコンサート会場。チケットを持っていないにもかかわらず一番高い料金を払うから中に入れてくれないかと支配人に無茶な申し出をするサラリーマンの二郎(竹脇無我)。ここで、同じような申し出をしに来た麗子(栗原小巻)と出会う。結局2人ともコンサートには入れなかったが、意気投合し、その夜、赤坂のあるレストランで一緒に食事をする。ここのコック(三島雅夫)とも親しくなる。2人は翌日も会う約束をする。

第2回
b0189364_13495968.jpg 翌日2人は昼食を共にする。その場で二郎は、麗子に特別なものを感じていることから真剣に付き合いたいと麗子に言い、麗子も賛同する。だが麗子には婚約者がいた。しかしその日のうちに、麗子はその婚約の解消を相手に伝える。麗子の弟(あおい輝彦)、父母(山内明、文野朋子)が心配して動揺する。

第3回
 数日後の土曜日の夜、2人は会って、遅くまでデートする。麗子の帰りが遅くなったため、父母が心配し麗子を責める。麗子は二郎のことを話し、知り合ったのは5日前だが「結婚しても良いと思っている」と語る。近いうちに父母に二郎を会わせることを誓う。ちなみに二郎は会社の寮で一人暮らし。同僚の関根(東野孝彦)に麗子のことを打ち明ける。翌日、父から二郎の職場に連絡が入り、次の日に麗子の家で面会することを約束する。
 その日のうちに麗子の弟の恒雄が会社まで出向き、姉と別れろと迫る。
(物わかりの良い父のセリフ「(娘のことが)長年一緒の家にいた仲だ。(帰宅が遅くなって)気になったって仕様がないだろ」が良い。『夏の一族』にも似たセリフがあった。)

第4回
 翌日、二郎が、麗子の家にあいさつにやってくる。良い雰囲気である。

第5回
b0189364_14011098.jpg 第4回の続き。麗子の家。良い雰囲気だったが二郎が(出会って6日であるにもかかわらず)結婚したいと切り出したために急に空気が冷え込む。父母は早すぎると言うのである。麗子と二郎を責める。返事は今すぐできない、あらためて返事すると言われ、二郎は暗い顔で家を後にする。その後、父母は麗子を「世間知らず」と責めるが、麗子も父母に「気持ちは変わらない」と訴える。
 二郎の帰り道、弟の恒雄が後をつけてきて話があると切り出す。二人でとあるバーに入る。恒雄は別れろと迫るが、二郎は真剣だと訴える。恒雄はその後、酔っ払ってベロベロになり、二郎に介抱されてしまう。
 二郎の田舎の家族も、二郎の兄は、何だか癪だ(弟が東京でいい目を見ていることに少しひがみがある)が、父母は賛成という風景。
 ところが、その後いきなり結婚披露宴のシーンに移る。「細かないきさつはもう十分だろう。結局二人は思い通りにしたのである。三ヶ月経った、晴れた冬の日曜日であった。」というナレーションが入る。そして無事に披露宴が終わる。
(当初、恋愛にまつわるあれこれが最後まで続く恋愛ドラマだとばかり思っていたのだが、このナレーションでそうでないことが明らかになる。)

第6回
 二郎と麗子、新婚旅行から帰る。喧嘩したようで、雰囲気が悪い。だがさすが新婚、その日のうちに仲直りする。

第7回から第16回までは新婚・転職編であり、次の開業編への導入。
第7回
 新婚生活は、麗子にとっては、夜遅い夫を待つというもので、砂を噛むような味気ない面もあった。一方二郎は、関根と共に、新しい合成樹脂プラントの輸出権を得るという非常に大きな仕事に関わることになる。非常に忙しくなるが、その中でも時間を割いて、平日の夜、2人で外食することになる。店は、初めてのデートのときに行ったあの赤坂のレストラン。ここであのコック、沖田にあいさつし、結婚したことを知らせる。沖田に大歓迎され、ボトルワインまでおごってもらう。(このコックが、見ていて楽しくなるようなキャラクターで、登場するのが楽しみになる。)
最後のナレーション「甘い、思い出しても懐かしい一夜であった。しかしその一夜は、そのときの二人には思いもよらぬほどの深い意味を潜めていたのであった。」

第8回
 新婚生活。麗子は幸福を感じている。かつての麗子のフィアンセが訪れたり、二郎の友人の関根が飲みに来たりする。一方二郎は、手がけていた仕事が結局他の会社に渡り駄目になってしまったのだった。
最後のナレーション「その仕事の失敗は、二郎たちのミスではなかった。重役たちの決定の甘さに原因があった。しかし原因とかかわりなく、それが二人を思いがけない運命に導いていくのである。」

第9回
 二郎と関根が、重役の代わりに仕事の失敗の責任を負わされ、花形の営業部から総務部へ異動させられることが決まる。関根は、嫌気がさして会社を辞め、作曲家になるべく、修行することにする。一方二郎は、関根みたいな夢もない上、嫌なことがあったからといって辞めてしまうのは本意ではないということで、異動を受け入れることにする。二郎は麗子に異動になったことを告げる。二郎は、異動になった後、仕事に張り合いを感じることができず、砂を噛むような毎日を送る。辛い思いを共有したいと思う麗子だが、二郎は弱みを見せたくない。二人の気持ちがすれ違う。
最後のナレーション「しかし二人は、離れて立ったままであった。会社での辛い思いを二人で抱き合って慰め合うのではあまりに屈辱的ではないか、という思いが二郎を麗子に近づけなかった。」

第10回
 総務の仕事は単純作業。麗子は、二郎の左遷について母に言えない。二郎は家では明るく振る舞う。「なぜ辛さを見せないのか」と思う麗子。
 夜、近所にできたというスナック(軽食やアルコールを出す喫茶店)に二人で出かける。スナックは若い夫婦が二人でやっていた。良い感じの店だと二人で話し合う。
最後のナレーション「何気ない土曜日の夜のひとときであった。しかし、そこで見た若夫婦の働く姿が思いがけなく強い印象を残した。時が経って、その印象が一つの力となるのである。」

第11回
 家で少し言い合いをする二郎と麗子。
 二郎「慰めてもらってニヤニヤ会社に行かれるかい」、麗子「本当に今の仕事が不満なら他にどういう生き方でもできる」、二郎「甘っちょろいこと言わないでくれよ。辞めりゃ簡単さ。不満なら辞める、また辞める、だけどどこの会社に行ったってそう変わりゃしないんだ。だから我慢してるんじゃないか、生活ってのはそういうもんだ」、二郎「僕だっていろいろ考えてるんだ。青臭いこと言わないでくれよ」。
 翌日、麗子は一人で近所の例のスナックに行って少々和む。夜、二人で浅草で外食して仲直り。二郎の大学の入学式の後、父と飲んだという店(この店の話は山田太一のエッセイに出てくる。脚本家自身の経験が反映している)。二郎「夕べ言ったことを何遍も考えた。辞めないでいる理由もない。もう少し自分の世界を広く考えたい」などと言い、転職について考えると言う。麗子も賛同する。

第12回
b0189364_13500285.jpg 結局、二郎は会社を辞めることに決める。麗子は父にそのいきさつを説明する。辞めたら生活が厳しくなるかも知れないため、自分も仕事をしたいので仕事を紹介してくれないかと依頼する。
 二郎、友人の関根にも決心を告げる。関根は、商売を始めたらどうだなどと軽口を叩く。二郎、その言葉が少し引っかかって、商売について考えるようになる。麗子はこの話を聞いて、小さい店を持って二人で働けたら素敵だなどと言う。
 翌日、二郎は屋台でラーメンを食べ、屋台の店主(加藤嘉)の話を聞く。この店主も元勤め人で脱サラして屋台を始めたという。店主「脱サラしたときの自由だという気持ちが忘れられない」。脱サラして商売を始めることにリアリティが出てくる。二郎「一発ドカンと何かやりたくなったな」。このとき商売を始めることをはっきり決意する。翌日、麗子にそのことを伝える。開業資金について具体的に考えるようになる。二郎「親父に相談しようと思う」。麗子「時間かけて少しでも良いお店にしましょう」。
最後のナレーション「威勢の良い決心の仕方ではなかったが、二人の前にまったく見当の付かない新しい世界が開け始めていた。期待と不安とが二人の間を流れた。静かな朝であった。」

第13回
 二郎、実家に帰り、会社を辞めてスナックを開店したいということ、金を貸してほしいということを伝える。兄、一郎はいきり立って金はないと言い、父も何も言わない。だが翌日帰郷する段になって、父が定期貯金が近いうちに満期を迎えるのでその200万円を貸すと言う。ただし一郎の手前があるため利子を取ると言う。兄は帰り際に二郎を呼び、50万円無利子で貸すという。(兄貴、頑固だが良いところがある。)
最後のナレーション「250万の借金と自己資金50万、あわせて300万円の目安は付いたが、それだけでスナック開店は無理であった。しかし、漠然とした転職という希望から、もう一歩具体的な領域に足を踏み入れたのである。そのことが、二人を明るくさせていた。」

第14回
 工作機械の会社(社長はタコ社長、太宰久雄)で勤めを始めた麗子。二郎は、退社後、スナックの実務について教える学校に1カ月間通うことにする。
 二郎、会社を辞めて新しい商売を始めるということを、麗子の父母に直接会って話す。具体的なプランが決まったら教えてくれと話す父。プランが良ければ金を出すとまで言う。(物わかりの良い父である。)
最後のナレーション「二郎は、麗子の両親の目に自分がどのように映ったかがわかるような気がした。不確かな夢を追う男。しかし絶対に成功してみせる、見ていて欲しいと二郎は思った。」

第15回
 友人の関根が自宅にやってくる。習ったばかりの料理で関根を接待する二郎。関根はその後、金を無心するつもりでここに来たと言う。音楽の師匠がアメリカに行ってしまい生計を立てていた仕事ができなくなったというのだ。二郎は侠気を出して5万円貸してしまう。後でその金額のことで二郎と麗子は喧嘩する。
 翌日も喧嘩の状態が続くが、夜、二郎は上機嫌で帰ってくる。来月会社を辞めてしまい、来月から1月間、他のスナックに見習いに行くことにしたと言う。自然に仲直りしてしまう二人。失恋して遊びに来ていた恒雄は、一人取り残された形になる。
最後のナレーション「二人の世界が大きく変わろうとしているところだった。取り残されて恒雄は孤独の中にいた。」

第16回
 二郎、ついに会社に辞表を出す。退職の日、二人だけでささやかに自宅でパーティ。
(恒雄の恋愛のエピソードが並行して進んでいるが、これについては省略)
最後のナレーション「新しい世界へ踏み出す二人にしては呑気すぎる夜であったが、ともあれこれが、二郎のサラリーマン生活、最後の夜であった。」

第17回から第26回までが開業・奮闘編。
第17回
 二郎、スナックの見習い勤めを始める。麗子、好奇心から見に行く。二郎、カウンターに入って、それらしく立ち振る舞っている。ホットケーキまで作って麗子に出す。二郎はそれなりに自信をつけている。
 二郎、物件探しを始める。

第18回
b0189364_14011366.jpg 二郎が目星をつけた物件を、麗子、麗子の父母が、二郎と一緒に見に来る。
 この物件に一端は決めるが、その後、父が、自分も100万円出資するから、やはり高くてももっと良い物件を探してみないかと言う。「君たちが新しいことを始めるのを見ていると、自分も肩入れしたくなる。だから無利子、無期限で100万円貸す。君たちの夢にかけたい、仲間に入れてもらいたい」と言ってくれる。(良い義父である)
 あらためて店探しを始める二人。そんな折、恒雄が新しい物件を探してくる。現在スナックで、店主がスナックを辞めるから貸しに出すという。そのために居抜きで借りられる。条件は良く予算的にも何とかなる。結局ここに決めるが、前オーナーがスナックを辞めるということが気にかかって、近所のおばさんに話を聞く。何でもこれまでこの物件を借りてきた人々の夫の方が次々に不幸に見舞われてきたという不気味な事実が判明。今のオーナーも夫が入院して仕事ができなくなったという。家族会議の結果、しかるべき神事を行うなどして、この物件を借りようということになる。
最後のナレーション「こうして店が決まった。若い二人には似合わなかったが、占い師の言うとおりにした。女の怨みを鎮めるという神社の神主を招いたのである。これから店を直し、開店の支度である。いよいよ二人の新しい人生であった。」

第19回
 店の改装、開店準備が進み、いよいよ翌々日開店という運びになる。二郎の兄が、開店祝いで上京する。良い店だと祝ってくれる。
 翌日、関根がやって来て、借金を返す。仕事が順調に進み出したことも報告。夜、新しい店に関係者を呼んで、開店パーティを開く。
 いよいよ開店の日を迎える。朝早く目を覚ましてしまう二郎。いろいろと考えてしまう。
最後のナレーション「結局7時半には店へ来ていた。あと3時間半で開店である。二人は黙りがちに、しかしクルクルと働きながら、新しい世界の出発の時を待った。」

第20回
 開店初日風景。最初の客は変な若者で、コーヒーを頼むが結局何も飲まずに出ていく。客は昼頃から大勢訪れ、昼食時が終わるとめっきり客足が減る。客の流れが初めてわかる。恒雄が連れてきた学生たち、家族連れなど、いろいろな客がやってくる。夜は夜で、一人で入ってくる客が多く静かになる。最後の客は、読書している、感じの良い客(小野寺昭)である。こうして初日の営業が終わった。
最後のナレーション「開店の日の売上は、20,530円。予想以上の成績である。このまま順調にいけば、借金もそれほどかからずに返せるかに見えた。明るい夜であった。胸の膨らむ1日であった。」

第21回
 翌日の昼間、麗子の父が店にやって来る。麗子は、テレビかステレオを入れるという話になっているという話を父にする。父は、テレビを入れないという選択肢もある。客がテレビを入れてくれと言っても、すべての客に対応することはない。客本位になるのも良いが店がお客さんを選ぶことも必要じゃないか。自分の店はこう行きたいという個性みたいなものが欲しいじゃないかと言う。(良いセリフである。)
 夜、近所の若者たちがやって来て大きな声でギャンブルの薄っぺらい会話をしている。うるさいため、昨日の読書の客も早々に帰ってしまう。しかもこの若者たち、支払をツケで頼むと言う。二郎は受け入れようとするが、麗子が切れてしまい、うちは掛け売りはお断りしていますと言って追い返してしまう。
 麗子「店の方で客を選ぶ権利がある、あんな人にニコニコするのはいやだ、店の方針をはっきり決めて、格みたいなものを作った方が良い」と二郎に言う。そんなことじゃやっていけないと二郎。麗子「近所を見てみたところ、あまり良いものを食べる場所がない。良いものを出すなど、思い切って店の特色を出してみたらどうだろう」と言う。二郎は、「甘いことを言う」と言って怒る。どうしてそんなことが我々にできるのか、そんなことを考えるのは5、6年早いと言うのだ。
 その後、開店してから1カ月経った。なんと10軒と離れていない近所にスナックができることがわかる。テーブルが5、6個あり、しかも大きなクーラーを入れ、ジュークボックスも置くという。
 新しい店の存在が気になる二郎、あのレストランのコック、沖田に、新しい料理について相談してみることにする。店の特色を出すという麗子の提案について、考えてみようというのである。
最後のナレーション「なぜか、赤坂のレストランで「料理だけが生きがいだ」と言ったあのコックの姿が突然蘇って、二郎を呼ぶのであった。あの屈託のない楽しげな姿。」

第22回
b0189364_856623.jpg 二郎、赤坂のレストランを訪れて、コックの沖田と話をする。何かこれはという一品を出したいからアイデアがあったら教えてもらえないかと言う。沖田は快諾する。
 二日後、沖田が店を訊ねてくる。しかも近所の店のリサーチ済みで、二郎と麗子はいたく感心する。
 翌日の夜、店の営業中、近くに新しくできるスナック「うぐいす」の若い店主、本木(小坂一也)とその父親(内田朝雄)がやって来てあいさつする。父親の方はドスが利いた感じ。「うぐいす」の方は、開店に備えて、店先で大々的に宣伝活動。サービス券を配付したりする。
 その後、再び沖田が、食材を持って開店前にやって来る。美味しいカレーを伝授すると言う。いろいろと考えたがスナックに適した一品というとやはりカレーかということになったと言う。
最後のナレーション「沖田は楽しげに新しいメニューの準備を始めたのであった。」

第23回
 沖田がカレーを実際に作ってみると、非常に旨く、二郎は感心しきりである。麗子は「今日仕込んだカレーを売るのが嫌になった」とまで言う。また沖田はハンバーガー弁当のアイデアも用意し、そのレシピも授けてくれる。沖田は、こうして頼られるのが嬉しいと語る。(沖田の善意が気持ち良い。)
ナレーション「その日の6時に新しいスナックは開店した。流行歌を流し店のしつらえも俗悪で、住宅の多いこのあたりには似合わない気がしたが、客の入りは良かった。主人の客あしらいも慣れていて、競馬であろうと、野球、麻雀、競輪から女の話までやすやすと相手になる男であった。同じやり方で競っても二郎に勝ち目はなかった。自分は自分のやり方でやり通すしかない。とにかく明日からだ。ハンバーガー弁当とカレーライスで勝負するのだ。」
 二郎と麗子、宣伝ビラを配ったりポスターを出したり広報活動をする。
 当日、開店前に「うぐいす」の親子がカレーを食べさせてくれと言ってやって来て試食していく。昼時はいつものように満員だがカレーの評価はわからず。ハンバーガー弁当も7個売れただけで、少々ガッカリ。昼が過ぎるといつものように暇になる。ところが午後になって、ハンバーガー弁当を20個買いたいという、近所の会社勤めの女性が来る。昼買って食べたら美味しかったために社長が社員におやつとして出すと言い出したらしい。最初の反響。
 翌日、沖田に報告しに行く。謝礼を渡そうとすると拒まれる。「あんたがたに喜んでもらえて、この10年の間で一番楽しい思いをした。これからも肩入れさせて欲しい」と言う。
最後のナレーション「ところがその翌日、商売敵の新しいスナックは、10円安いカレーライスとカツサンド弁当を売り始めたのであった。」

第24回
 「うぐいす」の方は、マスターが客あしらいがうまく、しかもテレビを入れているため、若者のたまり場みたいになっている。二郎と麗子は、それに少し危機感を持っている。テレビを入れた方が良いんじゃないかと思う。開店前に沖田がやって来て相談に乗る。
「問題はあなたがたがそういう店にしたいかということだ。店の方針というものが大事であって、客に合わせていたら切りがない、こっちで客を選ぶ気でなくちゃ」と言う。「店が人生の舞台なんだから客の顔色でどうにでもなるようにしてはいけない。旨い料理で評判を取っていくつもりだったんだからそれで辛抱していかなくちゃ。無理して客に合わせたんじゃ店を開いた甲斐がない。」
 さらに沖田、3人であちらの店に行ってみてカレーを食べてみようと提案する。結局3人で食べに行く。味は到底問題にならないことがわかる。沖田は後に「しかし不味かったねぇ」と言って大笑いする。「あんなものは競争にも何にもなりはしない。10円安くたって、そんなの問題じゃない。相手が繁盛してもそんなものは一時だ。味一本」。
 その夜「うぐいす」の本木が、酔っ払ってやって来る。ビールを頼むが、昼間のことに文句を言い、突然二郎を殴りつける。捨て台詞を吐いて出ていく。
 翌日開店前に、本木親子がやって来て謝りに来る。体面上謝ってはいるが、愚痴や脅迫めいたことまで口上していく。その日の午後、いつもなら客足の少ない時間帯に学生が20人ばかりやって来てカレーを食べた。昨日の騒動のときに店にいた客が、昨日の騒動を「カレーの味に嫉妬した同業者が嫌がらせに来た」という評判にして友人を連れてきたのである。
 昼時の込み方が日増しに激しくなってきた。美味しいという評判が広がっているのがわかった。その後、とある新聞に店のカレーの記事が載る。

第25回
 店は順調。
 麗子が妊娠したことがわかる。思わず「困ったなぁ」と口走る二郎。これが原因で夫婦喧嘩になる。

第26回
 麗子、つわりで店に立てないことが多くなる。恒雄が手伝ったりアルバイトのウェートレスを雇ったりする。人を使うことを考えなければならなくなる。
 二郎と麗子、沖田を中華料理店に誘い、お礼をする。その場で沖田が、別の有名レストランから引き抜きの話があると言う。だが今さらレストランを移るより、むしろレストランを辞めて、二郎と麗子の店を手伝いたいと言う。あの店を手伝うことは、張り合いもあるしやりがいもある。今金銭面では不自由はないため、月給5万円でしばらく雇ってもらえないかと言う。「若い人が一生懸命働いてだんだん大きくなる、そういうのを手伝ってみたい」と言う。二郎、「願ってもないこと。あまり良い話なんで信じられない」と言って歓迎する。
 二郎の実家の兄、父母が上京し、店を見に来る。その後、麗子の実家で麗子の両親を交えて、二郎と歓談。(大団円1。)
 店では突然の貸し切りが入り、沖田が助っ人でやってきて腕を奮う。(大団円2。)
最後のナレーション「確かに何もかもがこれからなのである。何一つ終わったものはなく、二人の世界は明日に向かって開けていた。子供が生まれる。他人と一緒の仕事が始まる。レストランに変えていく計画がある。こうした物語の終わりこそ二人にふさわしいと私たちは思った。」
 今までのいろいろなシーンが回想風に流れ、テーマ曲が流れる。(良いエンディングである。)

by chikurinken | 2018-10-01 07:48 | ドラマ

『終りに見た街』(1982年版)(ドラマ)

終りに見た街(1982年・テレビ朝日)
演出:田中利一
原作:山田太一
脚本:山田太一
出演:細川俊之、中村晃子、なべおさみ、菊地優子、山越正樹、酒井晴人、ハナ肇、樹木希林、蟹江敬三

「終りに見た夢」じゃなかったのか

b0189364_21054014.jpg 山田太一のファンタジー小説をドラマ化した作品。脚本も山田太一。
 この作品は、1982年にテレビ朝日で作られたものだが、リメイク版が2005年に同じ局で作られており、僕はかつてそちらで見た(竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』参照)。内容は、両方でほとんど同じという印象で、キャストや映像、道具立てが違っているくらいではないかと思う。キャストについても、当然それぞれで異なるが、どちらも同じようなキャラクターで一貫しており、このあたりは脚本家の意向がかなり働いていると見た。しかしこれだけ完璧に作り直すんだったら、あまりリメイクの意味はないんじゃないかなどと逆に考えたりする。もっともこの82年版『終りに見た街』の映像が残っているかどうかはわからないわけで、残っていないんだったら、こういう類のリメイクの意味あいは十分あることになる。しかし82年という時代を考えれば残っているような気がする。なんせ当時は家庭用ビデオデッキが流通していたんだから。今回見たのも、YouTubeにアップロードされていたもので、元々は家庭用デッキで録画されたもののようである。画質はかなり悪いが、現実にテレビ朝日が山田ドラマをDVDなどの形式で発売していないし放送もしないんだから、仕方がない。見れるだけありがたいというものである。
 先ほども言ったように、前に見たリメイク版とかなり似ているため、取り立てて違う感想はないのだが、しかし今回見てみた感じでは、前回見たときのような解釈で良いのか、少しわからなくなった。というのも、ラストシーンが、中間部(つまり戦時中のシーン)からそのまま継続して流れているため(主人公の髪型、格好などが共通している)、大どんでん返しオチではなくなる。そうすると、一種のパラレル・ワールドみたいな意味あいになるのか。2005年版でラストシーンがどうなっていたかあまり憶えていないのでなんだが、そのあたりがよくわからない。クエスチョンがいろいろと残る作品だった。個人的には、大どんでん返しオチにして「終りに見た街」ならぬ「終りに見た夢」にした方が絶対に面白いとは思うが。リメイク版を見たとき唯一最後のオチで救われたような作品だったのに、今回それが欠けていると感じたため、面白さも中位なり……という感じで終わってしまった。何より、疑問ばかりが頭の中に残って大層気持ちが悪い。
1982年度テレビ大賞優秀番組賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

by chikurinken | 2018-06-14 07:05 | ドラマ

『3人家族』 (1)〜(13)(ドラマ)

3人家族 (1)〜(13)(1968年・木下恵介プロ、松竹、TBS)
演出:木下恵介、中川晴之助、川頭義郎、横堀幸司
脚本:山田太一
出演:竹脇無我、栗原小巻、あおい輝彦、沢田雅美、三島雅夫、賀原夏子、中谷一郎、菅井きん、遠藤剛、川口恵子、矢島正明(ナレーション)

ザ・ホームドラマ!

b0189364_15514432.jpg 12年ぶりの『3人家族』。
 前回見たときの印象は以前書いたが(竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』を参照)、今回見てみて、改めてその面白さに感心。キャラクターがどれも魅力的で、いかにもホームドラマという優しさ、安心感がある。ド派手な事件はなく、単に2つの家族の日常が描かれるだけだが、しかし我々見る方の現実というのは概ねそういうものである。これこそがリアリティというものだ。ただ、偶然が多いのが少々難点で、主人公の男女の偶然の出会いはまだしも、それぞれの弟と妹が偶然出会うということになると、ちょっと無理がある。いくら双方の家族が横浜に住んでいるとしてもだ。ただこれがないとストーリーが成り立たなくなるので、致し方ないといえば致し方ないわけだが。
 それからナレーションがかなりしつこく入ってくるのが、今の感覚からいくと古臭く感じるが(NHKの朝のドラマではいまだにやっているが)、テレビ番組に対する視聴者の集中度が低いことから、意図的に入れたということらしい(竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』を参照)。ナレーションを担当するのは矢島正明で、これは『逃亡者』を意識してのことである(これも脚本家が語っている)。
 メインのプロットは、主人公の美男、雄一(竹脇無我)と美女、敬子(栗原小巻)の恋愛で、そこに男の仕事、女の結婚などが絡んでくる。同時に他の家族の生活も絡んできてそれがサブプロットになる。すべてが自然に展開するので、わざとらしさがまったくない。大変よくできたドラマである。雄一は、仕事でのし上がるために女と付き合ってなんかいられないなどとうそぶいているのだが、敬子の余りの美貌に心が揺れ動いてしまう。ま、相手が栗原小巻なら当然だろう。そのくらい栗原小巻が美しい。また演技も自然で素晴らしい。演技について言えば、どの出演者も一流で、演技していることを意識させられることが一切ない。あおい輝彦が演じる弟、健(たけし)がまた非常に魅力的な登場人部で、現在自宅浪人中だが、家事全般を引き受けていて、家族に対し食について小姑みたいに細かいことを言ったりするが、少々ボーッとしたところもあって、周囲を明るくする。画面に出てくるのが楽しみになるようなキャラクターで、栗原小巻の美貌とあわせてこのドラマの大きな魅力になっている。竹脇無我のクールさが、この弟と好対照をなしているのも良い取り合わせである。好対照と言えばもう一方の家族の妹、明子(沢田雅美)も敬子と対照的で、きわめて現実的な存在であり、コントラストが効いている。名優の三島雅夫、賀原夏子、菅井きんについては今さら言うまでもない。
 他にも画面に登場する、4本足テレビとか編み機とか魔法瓶とかの調度品が非常に懐かしい。電話が引けたと言って喜んでいるような情景も懐かしさを感じる。そういう懐かしさもあって、見ていて暖かい気持ちになるんだろうかとも思う。いつまでも見ていたくなるような優しいドラマである。
 せっかくなので、ストーリーを簡単にまとめておこうと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』
竹林軒出張所『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』

--------------------------
柴田家(3人家族)
父:耕作(三島雅夫)
長男:雄一(竹脇無我)
次男:健(あおい輝彦)

稲葉家(3人家族)
母:キク(賀原夏子)
長女:敬子(栗原小巻)
次女:明子(沢田雅美)

第1回
b0189364_15515268.jpg 商社の通信部勤務のサラリーマン、雄一が、電車の中で何度か美女、敬子に目を留める。雄一の弟は自宅浪人、父は定年間近であるが先日課長に就任という、男ばかりの3人家族。
 雄一は営業部への配転を希望、同時に会社の留学試験に受かって海外赴任するという夢がある。そのために日夜勉強の日々。ただしこの制度、独身が条件ということで雄一は「女なんか眼中にない」と自分に言い聞かすように言う。そんな雄一だが、ある日帰りに路上でまたまた敬子を見かけ、会釈を交わす。また別の日、出先のレストランでも顔を合わす。雄一は運命的なものを少し感じる。

第2回
 健が近所の祭り囃子に参加。同じく参加している元同級生の女の子(洋子)目当てである。雄一は、勉強を優先すべきですぐに辞めるよう叱る。兄は堅物で実力主義で、健はそのことを批判する。
 一方、敬子の家族。妹と母との3人暮らしであることがわかる。敬子も雄一のことが気になっている。雄一も敬子のことが忘れられない。

第3回
 霞ヶ関インフォメーションセンターに勤務する敬子に、強引に迫る男の客が現れる。写真家の沢野(中谷一郎)で、突然敬子を食事に誘う。
 健は結局、父の勧めで祭の宵夜に行く。その夜酔っ払って「洋子さーん」などと叫ぶ。翌日家政婦(菅井きん)が臨時で呼ばれる。この家政婦、少々出しゃばりで見舞いに来た洋子と健を取り持とうとするが、洋子の方はつれない。
 一方、沢野はたびたび敬子を誘う。夜、帰りの電車で雄一と敬子、再び顔を合わせる。

第4回
 雄一の家に旧友が彼女を連れてきて、婚約したと言う。「俺は今それどころではない」と自分に言い聞かせる雄一。
 例の家政婦が仕事でもないのにまた柴田家にやってくる。柴田家が気に入ったようだ。

第5回
 朝の満員電車で雄一と敬子が出会う。いきなり体が接するぐらい近くになり、軽く口を利く。ところが駅を出たとたん、雄一は気のないそぶりで敬子を残して去っていく。「女と付き合っていてはいけない」という考えのためだが、敬子はかなりムカッとする。

第6回
 雄一を忘れようとする敬子。一方、「付き合っていてはいけない」と思いつつ敬子のことが頭から離れない雄一。
 予備校の後期課程に申し込みに行った健が、同じく申し込みに行った明子と出会って、意気投合する。日曜日に江ノ島に行こうという話になる。同じ日、雄一は留学試験。

第7回
 健と明子のデートに、敬子もやってくる。健は敬子の美しさに参ってしまい、写真をとりまくる。明子は不機嫌。敬子は2人に気を利かせて、その場を去り、鎌倉の昔の友人に会いに行く。その友人から結婚、子育てで気が滅入っていると聞かされる。「よほどいい人じゃないと結婚しちゃダメ」などと言われる。

第8回
 柴田家に電話が引ける。
 健、江ノ島で撮った敬子の写真を兄に見せる。写真を見て驚く雄一。「誰だ、この人は」と言ったまま、外に出て行く。動揺を隠せない。

第9回
 引けた電話がやっと開通して、健はうれしい。父の職場、兄の職場に用もないのに電話をかけて、顰蹙を買う。その後、雄一が家にかけ直し、ついでを装って、敬子の名前や職場を聞き出す。
 その後、雄一が敬子の職場に「健の兄」として電話し、デートの約束を取り付ける。やっと2人でデート。喫茶店で会って食事し、同じ電車で帰る。言葉少なではあるが、心地よさを感じる2人。

第10回
 敬子はその後雄一をデートに誘うが、雄一は忙しいということで断る。一度は会わないことにした雄一だが、敬子の妹の明子からたきつけられるようにして、再び敬子を食事に誘う。その席で、今は結婚できないなどと語って敬子の反感を買う。
 沢野の元恋人が敬子の職場にやってきて、嫌がらせをする。その後、付き合っていた男2人とも(つまり雄一と沢野)失ったような気がして味気なさを感じる敬子。だが、沢野はその後も敬子の元にやってきた。

第11回
b0189364_15514862.jpg 健は、クリスマスにかこつけて洋子に告白するが体よく断られてしまう。その後、明子から自宅のクリスマス・パーティに誘われ、傷心の状態で赴く。兄の雄一も誘われたが、仕事の付き合いで行けない。敬子はガッカリする。一方で沢野から高価な花が敬子の元に届く。
 後で雄一は、健からその話を聞いて、心が動く。沢野は敬子に再び会いに来て、真剣に付き合いたいと言う。

第12回
 敬子が雄一をお茶に誘う。結婚について話をする。
 雄一、一次試験に合格する。

第13回
 二次試験の準備で勉強に邁進する雄一。敬子とも会わず。敬子の方は何だかモヤモヤする。そういう折に、13年前に失踪した敬子の父親が母親に会いに来る。母親は怒って追い返すが、敬子の職場にも顔を見に来る。敬子は結局会わず。

 続きは、また機会がありましたら。

by chikurinken | 2017-11-21 06:50 | ドラマ

『本当と嘘とテキーラ』(ドラマ)

本当と嘘とテキーラ(2008年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:佐藤浩市、夏未エレナ、柄本明、樋口可南子、山崎努、塩見三省、戸田菜穂、益岡徹、六平直政

山田太一の教育論が反映されたドラマ

b0189364_06412175.jpg テレビ東京最後の山田ドラマ。同時に山田作品としては最後の花火みたいな作品でもある。翌年の『ありふれた奇跡』以降は迷走状態である。
 企業の研修や不祥事の後始末などのコンサルタント業を行っている男(佐藤浩市)は、常に本音を隠して顧客に接するよう指導している。合い言葉が「テキーラ」で、これを口にすると口角が上がって笑顔になるため、接客のキーワードとして常にこの言葉を意識するよう指導する。企業の不祥事についても、不都合な部分を隠し通して建前だけで通すのが彼のやり方である。
 そんな折、自分の娘の同級生が自殺し、それに娘が絡んでいることがわかってくる。娘や遺族との関わりの中で、本音を隠して建前だけで生きていく「テキーラ」主義で良いのかという疑問が沸いてくるという流れで話が進んでいく。
 このドラマも芸術祭参加作品であること(同時に受賞作品であること)を考えると、賞狙いの作品と言える。内容は娯楽性を持っていて面白い作品ではあるが、芸術指向が強いのは確かで、この頃の他の軽薄なドラマとは明らかに違う。テレビ東京の山田作品は概ねそういう傾向がある。ただしそのためかかなり力が入っている作品で、テレビ東京には今後もこういった重厚な作品に取り組んでほしいと感じる。松原信吾の演出も手堅くて良い。
 キャストは、今回は常連組で固められている。柄本明は、『せつない春』『小さな駅で降りる』と同じく、騒いで周囲に波風を立てるちょっと不気味な(その後好人物に転換する)存在を好演している。山崎努もテレビ東京版山田ドラマにはよく出てくるが、今回も(セリフは多いが)特別出演くらいの短めの登場。樋口可南子は、『小さな駅で降りる』と違い、これも周囲に波風を立てる存在。ひどく取り乱す演技が素晴らしい。夏未エレナという女優は今回初めて見たが、落ち着いた良い演技をしている。
 作者の主張が随所に出てくるのも、このドラマを良いものにする要因である。山田太一の教育論は、『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』でもわかるが、まったく押しつけがましくなく、しかも納得する部分が多いんだが、このドラマにも同様の主張が出てきて、ドラマに味を添えている(「学校での多少の問題は、子どもにとってむしろ乗り越えるべき課題になる」などというセリフが出てくる)。全体的に少々小ぶりではあるが、見る者をグイグイ引っぱっていくような部分は山田ドラマ健在と言えるもので、よくまとまった良いドラマと言える。
2008年日本民間放送連盟賞最優秀受賞、文化庁2008年度芸術祭優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-10-01 06:41 | ドラマ

『香港明星迷』(ドラマ)

香港明星迷(2002年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:薬師丸ひろ子、室井滋、山本未來、山崎努、イーキン・チェン、堺雅人、岡田眞澄、徳井優、クリステル・チアリ

山田ドラマらしく題材がユニーク

b0189364_08020920.jpg 『せつない春』『奈良へ行くまで』『小さな駅で降りる』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第4弾。これも放送時見たんだが、あまり良い印象を持っていなかったドラマである。今回見たら、それなりにインパクトのある作品で、やはり山田作品は侮れないと感じた次第。
 フランスの有名靴ブランドの日本支店で、営業部長をやっている女性(薬師丸ひろ子)が主人公。この主人公、イーキン・チェンという香港の歌手に入れ込んでおり、たびたび香港に行っている。ところが実は彼女自身、会社のマーケティング方針を変える(どうしても変わらなければ自ら新ブランドを立ち上げる)という野望を持っていて、そのために香港に渡ってあれこれと画策していたのだった。しかしこのことが明るみに出て、しかもこれは本社の意向に反することであり、両者の間に確執が生まれるというストーリー。他に、香港で知り合うイーキン・チェン・ファンの女性(山本未來、室井滋)との関係(友情や裏切り)もサブプロットになっており、プロットは重層的である。見た後もそれなりに心地よさが残る。
 キャストは山田ドラマとしては珍しい俳優が多い。常連の山崎努は特別出演扱いである。遣り手営業部長役の薬師丸ひろ子は当時38歳で、なかなか魅力的である。また1999年製作の『玩具の神様』ではチョイ役だった堺雅人は割合重要な役で出ている。このあたりから顔が売れるようになったのではないかと思われる。
 受賞歴もなく比較的地味な作品ではあるが、テレビ東京作の前3作にひけをとらない快作で、2時間飽きさせないのはさすがと言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-30 08:02 | ドラマ

『小さな駅で降りる』(ドラマ)

小さな駅で降りる(2000年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
音楽:久石譲
出演:中村雅俊、樋口可南子、堤真一、牧瀬里穂、奥貫薫、根岸季衣、柄本明、佐藤慶、山崎努、前田亜季

仕事が大変なら辞めたら?というメッセージが新鮮

b0189364_08132373.jpg 『せつない春』『奈良へ行くまで』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第3弾。これもテレビ東京らしくビジネスに関わる話で、テレビ東京製山田ドラマのひとつの特徴が確立されているようで大変よろしい。
 社長直属の新しい部署に起用され、仕事に忙殺される管理職(中村雅俊)とその部下(堤真一)の話。この部署、若社長が単独で行ったリストラの責任を負わされるなど、負の役割を負って社内でうとまわれはじめているだけでなく、立ち上がってから何の実績も上げていないため、メンバーたちは何とか実績を上げようと躍起になっている。そのために彼らは残業も厭わず、仕事に追われまくる日々を送っている。そこにこの2人の妻たち(樋口可南子、牧瀬里穂)が動き出し、彼らを激務から解放させるために仕事を辞めさせようと画策するという展開になっていく。過労で潰れるくらいならさっぱり辞めてしまえという山田太一のメッセージが強く打ち出されたドラマである。内容を考えると、逆にテレビ東京らしくないとも言えるか。
 もちろん現実的にそうは簡単に行かないもので、このドラマでもそのあたりで一悶着あるわけだが、会社人間にならずに人間らしく生きよう、「小さな駅で降り」たらどうだというメッセージは新鮮である。
 このドラマも放送時見ているが、内容についてはほとんど憶えていなかった。ただ、男が牛に追われまくるスペインの祭りの映像に対して、樋口可南子が「こういうことをやるのは男だけよねぇ」とコメントするシーンははっきりと明確に憶えていた。お説ごもっともで、このドラマのテーマにも重なる部分である。
2000年日本民間放送連盟賞優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-29 08:14 | ドラマ

『奈良へ行くまで』(ドラマ)

奈良へ行くまで(1998年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
音楽:本多俊之
出演:奥田瑛二、安田成美、村上弘明、佐藤慶、山崎努、石橋蓮司、篠井英介、石丸謙二郎、小倉一郎、平泉成

なぜ奈良なのかは最後までわからなかった

b0189364_18511052.jpg 『せつない春』に続くテレビ東京製作の山田ドラマ第2弾。これも経済のテレビ東京らしくビジネスに関わる話で、建設会社の談合をあぶり出した意欲作。副題に「夫が汚職に踏み切る時」というタイトルが付いていてセンセーショナルだが、結果的に見てられないほどの悲惨な状況には陥らない。建設談合については非常に面白い扱い方で、素材がはなはだ新鮮である。もっともそれだけで終わるとドラマとしては奥行きがない浅いものになってしまうが、そこはやはり山田太一、しっかり夫婦のあり方、友人との関係なども描かれて、重層的で奥行きを感じさせるものに仕上がっている。不倫を匂わせる『岸辺のアルバム』みたいな要素まで出てくるし、途中、夫が美人妻を自分の仕事のために妻に言い寄っている友人の元に行かせるなど、AVみたいなストーリー展開もあって(エロシーンはありません)、人間の関係性を描かせたら山田太一の右に出る者はないなとつい感じてしまう。ただし、なぜ最後に奈良が出てくるのかはわからない。なぜ奈良なのか、なぜタイトルにまで使われるのか、俳句みたいに直接関係のない別物を並べてそこに味を出したのではないかと推測するが、それでもなぜ奈良なのかはわからない。別に奈良でも良いし実のところそれほど気になるわけではないが、こういう使い方については随分思い切ったなーとは思う。
 今回見るのは二度目だが、内容についてはまったく憶えていなかった(この後のテレビ東京版山田ドラマ『小さな駅で降りる』『香港明星迷』『本当と嘘とテキーラ』については部分的に憶えている)。しかし内容はかなり濃密で決して侮れない作品である。なんと言っても、政治家役の山崎努、怪しいジャーナリスト役の石橋蓮司のタヌキぶりがすごい。タヌキぶりと言えば、主人公に汚職をそそのかす同僚役の佐藤慶は、これはもう放送史に残るような名演で、数ある佐藤慶出演作品の中でも屈指のタヌキキャラクターではないかと思う。また安田成美の美しさも群を抜いている。主人公のエリート同級生(村上弘明)が参ってしまうのも仕方がないという見事なキャスティングである。山田ドラマの常連が揃っている上、うまい役者が勢揃いしていて、ストーリーと言いキャスティングと言い、申し分のない贅沢なドラマである。
1997年度ギャラクシー賞奨励賞、1998年日本民間放送連盟賞最優秀賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『せつない春(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-28 06:50 | ドラマ

『せつない春』(ドラマ)

せつない春(1995年・テレビ東京)
演出:松原信吾
脚本:山田太一
出演:山崎努、清水美砂、杉本哲太、竹下景子、柄本明、萬田久子、益岡徹、久米明

テレビ東京製作だけど「山田ドラマ」
タイトル通りの「せつない」話


b0189364_18030296.jpg テレビ東京開局30周年記念ということで製作されたドラマ。テレビ東京の山田ドラマはこれが初ではないかと思うが、この後数年かけて5本製作されることになる。この当時、山田ドラマはかつてほど放送されず、山田太一自体がすでにちょっとした巨匠扱いで、だからと言って視聴率が稼げるというような存在でもなく、微妙な立場になりつつあったように記憶している。そういったわけで、山田ドラマといえば、芸術賞狙いで作られることが多くなっていたため、こういった記念番組でないとなかなかお目にかかることがなくなっていた。テレビ局と視聴者のレベルが著しく下がり始めるのもこの頃かなと思う。
 さて、製作局はテレビ東京ではあるが、ドラマの内容自体はやはり「山田ドラマ」なんであって、TBSやNHKの山田ドラマとほとんど変わらない。おそらく脚本家が多分に口を出しているせいであろうが、しかしそのために常に高水準が保たれることになる。「脚本:山田太一」というレベルではすでになく、「山田ドラマ」になってしまうという按配。しかもキャストも山田ドラマの常連が名を連ねているし、ますますどこの局で製作されたのかわからなくなる。
 山田作品で珍しいキャストといえば清水美砂や杉本哲太あたりだが、彼らがドラマの中で存在感を発揮しているのは、他の山田ドラマと共通である。この頃の清水美砂は非常に魅力的で、このドラマでもその魅力が発揮されている。清水美砂が演じるのは、足に障害を持つ女性だが、その障害のせいで恋愛を諦めかけていた彼女がなかなか素敵な男(杉本哲太)と出会うというなかなかさわやかなプロットが展開される。
 一方で、その父(山崎努)は、大企業で総会屋対策をやっていて、ヤクザ者と付き合ったり結構汚い仕事をやっている。その彼が、総会屋と手を切るという会社の方針のためにお払い箱になり、総会屋からも恨みを買うというような汚い話が同時進行で進む。なかなかよくできたプロットである。ただ偶然の要素がかなり強く、そのあたりが少々興ざめである。また、山崎努と竹下景子が(演技で)自暴自棄になるシーンも(竹下景子については似たようなシーンが『夏の一族』でもあったが)ちょっと湿っぽすぎて、いただけないかなという気がする(あくまでも個人の感想です)。しかし扱われるモチーフが企業の株主総会や総会屋で、テレビ東京らしい題材と言えば言える。こういうあたりでテレビ局側も特色を出しているのかも知れない。2時間を超えるドラマで、力を入れて作られていることもよく伝わってくる。内容も高い水準を保っており、実際にいろいろな賞を受賞している(実際、受賞にふさわしいドラマであると思う)。賞取り作家としての山田太一の面目躍如とも言えるのではないだろうか。
1995年度ギャラクシー賞奨励賞、1995年日本民間放送連盟賞ドラマ部門最優秀賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『奈良へ行くまで(ドラマ)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『本当と嘘とテキーラ(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-05 07:02 | ドラマ

『風になれ鳥になれ』(1)〜(3)(ドラマ)

風になれ鳥になれ(1998年・NHK)
 第1話「山からの帰還」
 第2話「加害者たち」
 最終回「ふたり」
演出:黛りんたろう、加藤拓
脚本:山田太一
音楽:川崎真弘
出演:渡哲也、高嶋政伸、田中好子、坂上二郎、富田靖子、山田吾一、小林恵、草野康太、川上夏代、日下武史、梶原善、村井国夫、根岸季衣、倍賞美津子

放送時見たという記憶だけがあった

b0189364_20511246.jpg 全3話構成で、ストーリー設定は一貫しているが、それぞれの話ごとに独立したエピソードが盛り込まれるという『男たちの旅路』方式、あるいは『タクシー・サンバ』方式の山田ドラマ。
 舞台がヘリコプター運用企業というのもなかなか意外で、目の付け所が良いのは山田太一らしい。今のドラマだったらこの舞台設定だけでそれなりのドラマに持っていかれそうだが、山田ドラマではそれだけで終わらない。いろいろな問題をかかえた人がやってきて、いろいろと問題を起こす。受け立つ側、つまりヘリコプター会社側の人々も、それぞれ大なり小なり問題をかかえていて、こういったトラブルメーカーたちとシンクロしていく。非常に良く練り上げられたストーリーで、しかも山田ドラマらしくセリフに説得力があり、また面白さもある。会話劇のようなセリフが多く、セリフがつまらなかったら到底見ていられないが、どのセリフも味わいがあるので、まったく退屈しない。第1話では、日下武史が長ゼリフで老後の生活の絶望状況を滔々と語るが、舞台俳優、日下武史の面目躍如という素晴らしい演技。これに応戦するのは渡哲也で、『男たちの旅路』の吉岡司令補ばりに「語る」。良いシナリオである。脇の山田吾一のセリフも良い。
 第2話は、親子関係などが持ち込まれ、これも重いテーマであるが、(問題が解決するわけではないが)気持ちの良い終わり方をする。かなりいろいろな要素が持ち込まれて、下手をするとゴチャゴチャでとりとめがなくなるが、そつなくまとめているのは脚本家の技量である。
b0189364_20511779.jpg 第3話は、ちょっとばかりリアリティを欠いたストーリーで、少々残念。演出もありきたりで少したわいない感じさえする。さすがに傑作を3話並べるのは難しかったか。とは言え、第3話も決してダメではないんであって、第1話、第2話がよくできているため少々見劣りがするという程度である。
 キャストは、山田ドラマには珍しい面々が多く、渡哲也、田中好子、坂上二郎が過去1、2回出演している程度ではないか。ベテランの山田吾一、日下武史、村井国夫あたりは、実力者であるにもかかわらず今まであまり山田ドラマには絡んでなかったわけで、それを考えるとこの頃になって初めて(かどうかわからないが)出演するというのも逆に珍しい感じがする。とは言え、どのキャストも好演で、演出も素晴らしい。第1話の山のセットは少しチャチだったが。
 ここのところ、CSの日本映画専門チャンネルで、毎週のように山田ドラマを放送していて、定期的に(ビデオではなく)テレビ放送で山田ドラマにアクセスできる環境があるわけだが、これだけのグレードのドラマを毎週見られるという状況を思うと、なんだかすごく贅沢な気分がする。もちろんこれまで結構DVDに撮りためているし、買ったDVDもあるわけで(しかもまだ見ていないし)、そういう想いは少し矛盾していると言えるんだが、それでもしっかりしたドラマを定期的に見られるというのは非常に贅沢だと感じる。それは今みたいなドラマ不毛の時代だからこその感慨なのかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『タクシー・サンバ (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-09-03 06:50 | ドラマ

『季節が変わる日』(ドラマ)

季節が変わる日(1982年・日本テレビ)
演出:久野浩平
脚本:山田太一
出演:八千草薫、岡田真澄、小池朝雄、早川勝也、キャロライン、ハナ肇

教育についていろいろ考えるドラマ
なかなかの力作


b0189364_08131479.jpg 不登校の息子をある山間の寄宿学校に入れることにした女性(八千草薫)と、非行の娘を同じ学校に入れることにした男性(岡田真澄)が恋愛関係に陥っていくというストーリー。この学校というのが軍隊式で、子ども達のヤワな根性をたたき直すというコンセプトの施設。おそらく戸塚ヨットスクール(竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』を参照)がモデルだと思われるが、ドラマではこのような施設に対する批判精神も顔を覗かせる。一方で荒れる子どもをお払い箱にした親が見せる安心感なども描かれ、少し辛辣さも感じる。
 これも日テレ製作のドラマで、ややリズム感を欠いている上、ホテルのベッドシーンなんかは(以前の日テレドラマらしさを感じるような)ちょっと気恥ずかしい演出で、ちょっとどうよと思うようなものであったが、先が読めないストーリー展開はさすが山田ドラマである。子どもを寄宿学校に入れて親たちがよろしくやっているということには反撥も感じるが(主人公の口からもそういうセリフが語られる)、しかしこの親たちにしても、不倫ではないわけだし恋愛したって問題はないわけで、こういう(視聴者という)第三者による(一方的で)禁欲的な考え方は理不尽である。本来は。だがまあそういう感慨を持つのも自然といえば自然で、一方でそういう紋切り型の考え方をしてしまう自分が何やらみっともなくもあり、なかなか厳しいところを突かれたという感じが残る。かくのごとく、いろいろ考えるところが多いドラマで、そのあたりも山田ドラマらしいと言える。
 教育の問題は難しいし、特にこのドラマが製作された時代は不登校に対する定見がなかったこともあり、親も社会も手探り状態であったと思う。教育の歪みが校内暴力などという形で現れたのもこの少し前の時代で、教育については難しい問題が山積みであった。答えは簡単に見つからないし、今も正答があるわけではないが、社会が以前より柔軟に対処しているのは実感できる。それは教育に対して真摯に向き合った人々の成果でもあるわけで、こういった問題意識の高いドラマも一役買っていたのではないかと思う。実際山田太一には教育論(『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと』)もあり、これも大変興味深い本であった。子どもが提示してくる問題に対しては真摯に向き合うというのが唯一の方策なのかなとも思うが、このドラマでも何となくそういう方向性が示されていたように思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと(本)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-08-10 08:13 | ドラマ