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竹林軒出張所

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タグ:マンガ ( 102 ) タグの人気記事

『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』(本)

行動経済学まんが ヘンテコノミクス
佐藤雅彦、菅俊一、高橋秀明著
マガジンハウス

行動経済学の事例集、だが玉石混交

b0189364_20294405.jpg 行動経済学の事例をマンガにしてわかりやすく読者に提示しようという試みの本。著者は、『ピタゴラスイッチ』でお馴染みの佐藤雅彦、およびその弟子の菅俊一。作画は、「バザールでござーる」の広告に関わった高橋秀明が担当。絵自体は50年以上前のギャグ・マンガを思わせるようなクラシカルなもの。
 内容はアンカリングとかハロー効果とか、あるいは認知的不協和の解消まで入っていて盛りだくさん。これを23話の短編マンガにまとめている。
 『サザエさん』的なほのぼの世界を使った事例集であるため、読みやすくわかりやすいが、第21話の「無料の威力」の話とか第23話の「双曲割引」の話など、事例があまり適切でないものもちらほらある。こういった「失敗例」については、事例が適切でないばかりか、面白味もない。そのため、行動経済学に興味を引こうという目的に叶っておらず、むしろマイナスになっているような気さえする。意図や目的は素晴らしいし十分評価に値するんだが、必ずしもその意図が実現されているとは限らない点が残念である。ただ第1話の「アンダーマイニング効果」や第2話の「感応度逓減性」など非常によくできた箇所もある。どうやら後になるほど質が落ちているようで、もしかしたらネタ切れだったのかも知れない。
 あまりインパクトはないし、内容的にも全面的に賛成ではないが、行動経済学への入口としては良いかも知れない。ただ先ほども言ったように行動経済学の魅力を低減させるような内容も含まれているため注意が必要ではある。
★★★

参考:
竹林軒出張所『予想どおりに不合理 増補版(本)』
竹林軒出張所『不合理だからうまくいく(本)』
竹林軒出張所『(不) 正直な私たち』(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『なぜあの人はあやまちを認めないのか(本)』

by chikurinken | 2018-02-13 07:29 |

『夢十夜 (近藤ようこ版)』(本)

夢十夜
夏目漱石原作、近藤ようこ著
岩波書店

マンガ化、映像化の鑑

b0189364_16462753.jpg 夏目漱石の『夢十夜』をマンガ化したもの。『夢十夜』は、今さら言うまでもないが、「こんな夢を見た。」で始まる幻想的な10本の短編小説を集めた短編集(出だしが異なるものもある)。シュールレアルな作品であるため、マンガ化には適した題材と言える。実際この本は、マンガ化作品として非常に良くできている。
 原作の『夢十夜』は30年ばかり前に読んだが、第六夜の運慶の話以外まったく憶えていない。運慶の話は高校の教材でよく取り上げられるものであり、前に読んだときもこの話が第一の目的だったわけだが、そのせいかどうか知らないが他のものについては一切記憶がない。今回マンガを読んでみたが、第三夜の「子どもを背負って森を歩く話」がほんの少しだけ頭の隅にあっただけで他は一切憶えていなかった。元々が幻想的で筋が通った話でないため記憶に残りにくいのだろうと思う。しかし今回画像の形でこうして見せられると、イメージが鮮明になって内容についても印象に残りやすくなる。それを考えると、非常に優れた企画と言える。なんせ岩波書店が出した本である。岩波がマンガというのも珍しいが、何より漱石作品の多くを世に出してきた岩波の手による本というところに大きな意義がある。言ってみれば本来の版元からお墨付きをいただいたわけである。
 実際、著者の近藤ようこは、原作を決して台無しにすることなく、原作の持つ味わいを最大限に再現している。有名作品のマンガ化ということになると世間の見方は厳しくなるものだが、これだけのものができれば、世間に言わせることは何もあるまい。『五色の舟』同様、この作家のポテンシャルは計り知れない。マンガ化、映像化の鑑である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『五色の舟(本)』
竹林軒出張所『原作と映画の間』

by chikurinken | 2018-01-27 07:46 |

『ニューヨークで考え中』(本)

b0189364_23431414.jpgニューヨークで考え中
近藤聡乃著
亜紀書房

癒やし系ニューヨーク滞在記

 マンガ家であり画家でもある近藤聡乃のエッセイ・マンガ。
 ニューヨーク在住6年の著者が、のんびりしたニューヨーク生活をのんびりした画風で描くというもの。基本的に見開き2ページで1本、計70本プラス最初と最後にそれより長い2本(「未踏の地」と「続・未踏の地」)が収録されている。70本の見開きマンガは、元々Webマガジンおよび本人のWebサイトで公開されていたもので、最初と最後の2本は書き下ろしである。
 ニューヨークでの生活がネタであり、ニューヨークで感じた文化ギャップなどが紹介される。絵は「癒やし系」、セリフなどの文字もすべて手書きでこちらも「癒やし系」と言える。ネタ自体は概ね面白いが、大爆笑などというものはない。要するに「癒やし系」である。
 面白かったネタは、日本語を勉強し始めたアメリカ人の彼が、ひらがなとカタカナを憶えたばかりで、練習でいろいろな日本語を読もうとするというエピソード。彼「ビ……ジ……ネ……ス……」、私「ビジネスね」、彼「ビジネス?」、私「?……ああ……businessね」、彼「businessか!! OH!」となる。そうして、私「「日本人の英語」が通じないわけだよなぁ」と納得するという話。逆バージョンの話は英語を学習するときにもあるから妙に納得してしまった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『谷崎万華鏡(本)』

by chikurinken | 2017-10-25 07:42 |

『谷崎万華鏡』(本)

谷崎万華鏡
山口晃、高野文子、榎本俊二、今日マチ子、山田参助、近藤聡乃、古屋兎丸他著
中央公論新社

山口晃、高野文子、近藤聡乃が目玉

b0189364_17530365.jpg 谷崎潤一郎の小説をマンガ化した一種のアンソロジー。内容は、久世番子「谷崎ガールズ」、古屋兎丸「少年」、西村ツチカ「人間が猿になった話」、近藤聡乃「夢の浮橋」、山田参助「飈風」、今日マチ子「痴人の愛」、中村明日美子「続続蘿洞先生」、榎本俊二「青塚氏の話」、高野文子「陰影礼賛」、しりあがり寿「瘋癲老人日記」、山口晃「台所太平記」。
 高野文子としりあがり寿以外の作家はほとんど知らなかったが、まず彼らの画力と表現力に驚いた。今のマンガ界はこんなに才能が集まっているのかと感心する。特に「台所太平記」の山口晃はその画力に驚いた。こんな画力のあるマンガ家が存在していたとはまったく知らなかったが、その後調べたところ、若手画家の山口晃であることが判明。この人の絵は前から画力と飄逸さが面白いと思っていたので、このマンガについても、さもありなんである。それよりこの人がマンガを描くということ自体が驚きであった。この作品は特に質が高いが、紙面の都合もあり、26ページのダイジェスト的なものになっている。こういったダイジェストではなく、全編を翻案したものをぜひ描いてほしいものである。
 高野文子にも(ファンである身としては)当然触れておくべきだが、なんせ随筆(「陰影礼賛」)をマンガ化しており、それだけで本書の中で異色な存在なんだが、できあがった作品はほとんど挿絵と言っていいもので、原文の隣に絵が入っているという内容である。ただしそれでも詩的な情緒が現れているのがやはり高野文子作品で、これはこれで味わい深い。
 前半は、特に谷崎の変態的な作品ばかりが出てきて、古屋兎丸の「少年」や榎本俊二の「青塚氏の話」はちょっと辟易してしまうが、漫画としては両者とも質が高い。古屋兎丸は丸尾末広の作品をきれいにしたような絵で、線が非常に美しい。今日マチ子の「痴人の愛」は解釈が新しいが、原作の味はよく再現されていてうまくまとまっていると思う。近藤聡乃の「夢の浮橋」も印象的で、セリフがすべて手書き文字で、幻想的な内容とマッチしている。
 谷崎作品のアンソロジーとしては微妙ではあるが、今の若いマンガ作家のハイレベルな作品を目にあたりにすることができるという点で大いに価値のある本である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ニューヨークで考え中(本)』
竹林軒出張所『瘋癲老人日記(映画)』
竹林軒出張所『痴人の愛(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『刺青(映画)』
竹林軒出張所『卍(映画)』
竹林軒出張所『春琴抄(映画)』
竹林軒出張所『つれなかりせばなかなかに(本)』
竹林軒出張所『蓼喰う虫(本)』

by chikurinken | 2017-10-24 06:52 |

『五色の舟』(本)

五色の舟
津原泰水原作、近藤ようこ著
KADOKAWA/エンターブレイン

近藤ようこによって完成された
幻想的な世界観


b0189364_20492768.jpg 津原泰水という作家の同名短編小説をマンガ化したもの。元々SFやホラーを書いている作家らしいが、この小説は幻想小説という分類に入るのか。SF的でもあるが、かなり不可思議な世界である。
 太平洋戦争下の日本(広島をはじめとする中国地方)で、各地を巡業している見世物小屋一座の話。足のない男(父親的な位置付け)、小人症の少年(長男的な位置付け)、シャム双生児の生き残りの娘、そして腕のない少年(主人公)という構成の一座で、その後、膝が逆向きに付いている若い女性(母親的な位置付け)も入ってくるが、彼らは「家族」として互いに信頼を寄せて船上で暮らしている。
 そこに牛の体と人間の顔を持ち未来を予言する謎の生き物「くだん」の噂を聞きつけた父親が、その「くだん」を仲間として自分の一座に引き入れようと、くだんを求めて巡業の旅を続ける。最終的にくだんに辿り着くが、そこで意外な秘密が明かされ、意外な結末で終わるというストーリー。一種のパラレルワールドものと言えるかも知れないが、非常に特異な世界が描かれている。それが近藤ようこによって、独特の不思議な世界が構築されているというのがこの本である。
 素材自体は、映画『泥の河』やシャム双生児のベトちゃんドクちゃんあたりから持ち寄ったんだろうと思われる。『典子は、今』に出てきたようなシーンもあり、おそらくあの作品の影響もあることが考えられる。そもそも主人公の少年が辻典子さんとよく似た障害を持っている。津原泰水と近藤ようこは僕と近い世代で、社会的な体験を共有しているためか、こういった素材についてはあまり意外性は感じないが、若い世代がこの作品に触れたらさぞかし驚くんじゃないかという気もする。
 近藤ようこの作品は、絵があまり好きではなかったため、今まで接することはなかったが、(この作品については)醸し出される世界観が独特で、決してないがしろにできない作家であると感じた。以前、大友克洋と近藤ようこの作品を採用した雑誌は潰れるなどというジンクスというか噂(出所は不明)を聞いたことがあるが、大友克洋は言うまでもないが、近藤ようこも要注目である。それは間違いない。
第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『典子は、今(映画)』
竹林軒出張所『夢十夜 (近藤ようこ版)(本)』

by chikurinken | 2017-10-23 06:49 |

『更級日記 平安時代の元祖文系オタク女子の日記』(本)

更級日記 平安時代の元祖文系オタク女子の日記
菅原孝標女原作、清水康代著、川村裕子監修
双葉社

b0189364_19330347.jpg更級日記ダイジェスト

 『更級日記』のマンガ版。『更級日記・蜻蛉日記 ― NHKまんがで読む古典2』でも『日本人なら知っておきたい日本文学』でも『更級日記』をマンガ化していたが、どちらも中途半端で、ほとんど物語オタクだった若い頃の話で終わっていた。一方でこの清水康代版は、菅原孝標女が『更級日記』を書くようになったいきさつまで網羅しており、ほぼ全体をカバーしている。また随時原文も掲載されているため、古文の苦手な人の古文入門書としても適している。先の2冊と比べると後発であるだけにそれなりの特徴がなければ存在意義がないわけだが、この本は原作を網羅しているという強みがある。また『更級日記』のテーマ性も再現していて、味わい深い。世の無常も感じられる。
 作画はそれほどきれいではないが、登場人物の描きわけもちゃんと行われているし、『更級日記』入門、古文入門の素材としては格好の本であると言える。ところどころ『日本人なら知っておきたい日本文学』とかぶる表現があるが、あの本が参考文献リストに載っているので、適宜拝借したのかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『更級日記・蜻蛉日記 ― NHKまんがで読む古典2(本)』
竹林軒出張所『日本人なら知っておきたい日本文学(本)』

by chikurinken | 2017-08-01 07:32 |

『殷周伝説 太公望伝奇 (1)〜(22)』(本)

b0189364_21041610.jpg殷周伝説 太公望伝奇 (1)(22)
横山光輝著
希望コミックス

伝説的な軍師、太公望の一代記

 横山光輝の遺作。古代中国の王朝、殷が、紂(ちゅう)王の暴政により、周の武王によって倒される過程を描く。原作は、明代に書かれた『封神演義』と『史記』。『封神演義』自体、妖怪とか仙人とか出てくる話である(らしい)ため、このマンガも歴史物語風でありながら、随所にオカルト的な要素が出てくる。『史記』や『三国志』のような話を期待していると少し当てが外れるかも知れない。
 ストーリーは、元々が伝説的な話であるため少々荒唐無稽だったり、後半は戦闘シーンばかりが延々と続き、さながら水島新司の甲子園マンガみたいで少し辟易するが、太公望呂尚が登場するあたりはなかなか見応えがあった。なんせ、長年仙人修行を続けて娑婆に戻ったばかりの呂尚が、嫁さんから仕事をしろなどと迫られて商売を始めたりする(しかも商売はあまりうまく行かない)。もちろんその後、呂尚は周の国で作戦参謀として頭角を現すんだが、その辺の落差は、よくあるエピソードとはいえ、なかなか面白い。
b0189364_21045301.jpg また登場人物がやけに多くなるのも、他の中国文学ものの横山マンガと共通で、まるで『水滸伝』である。おかげで主要登場人物以外ほとんど頭に入ってこなかった。登場人物の描き分けは割合されていたとは思うが、いかんせん、味方も敵も次から次へと登場してくるんで、こちらの頭がついていかない。
 作品のレベルとしては、たとえば途中かなり絵が荒れていたりして(これでも単行本化前にかなり加筆訂正が行われたらしい)、『三国志』『史記』には遠く及ばない。だがこのマンガの完結後、横山氏が事故死したため、結局これが遺作になった。編集者によると、横山氏はこの後『孫子』のマンガ化に意欲を示していたということで、そういう点でも非常に残念である。横山版の『孫子』にも興味があるところだが、ないものはしようがない。少なくとも殷と周の関係や、太公望呂尚などについてかなり知ることができた点、このマンガも十分評価に値する。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『史記 (横山光輝版)(本)』
竹林軒出張所『三国志 (1)〜(30)(本)』
竹林軒出張所『項羽と劉邦 (1)〜(3)(本)』
竹林軒出張所『水滸伝 (1)〜(6)(本)』
竹林軒出張所『平家物語 (上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『元禄御畳奉行の日記 (上)(下) (横山光輝版)(本)』

by chikurinken | 2017-03-24 07:02 |

『ドミトリーともきんす』(本)

ドミトリーともきんす
高野文子著
中央公論新社

こちらが読みたいものと大きく異なる

b0189364_7542432.jpg 高野文子のマンガということになると非常に期待してしまうが、この作品は面白くない。朝永振一郎、湯川秀樹、牧野富太郎、中谷宇吉郎の4人の著作を紹介していくというコンセプトのマンガだが、マンガにする必然性があまりないため、マンガ的な面白さは皆無である。
 「ドミトリーともきんす」という名前の寮にこの4人が若い学生として住んでいて、寮母のとも子、その娘のきん子と関わり合うという設定で工夫は見られるが、なにせ紹介される著作がかれらのエッセイみたいな本であるため、その本の内容自体が面白いと感じない。それが最大の難点である。著者自身がかれらの著作を気に入って、それでマンガ化を試みたということらしいのだが、面白さはまったく伝わってこなかった。
 残念ながら、高野文子らしい繊細な感性もなければ、絵としての面白さもあまりない。個人的に非常に好きな作家だけに、次回作には期待したいと思う。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『火打ち箱(本)』
竹林軒出張所『夏休みが終わります』
by chikurinken | 2017-01-25 07:54 |

『21世紀少年 (上)(下)』(本)

b0189364_17494486.jpg21世紀少年 (上)(下)
浦沢直樹著
小学館

ハリウッド映画のような虚しさ

 『20世紀少年』の続編、つまり後日談。連載時の事情は知らないが、たぶん『20世紀少年』から引き続きそのまま連載が続いた、つまりタイトルの付け替えだけが行われたんじゃないかと思う。『20世紀少年』の時点で一応は決着が付いたが、依然として謎を残したままで、その謎が『21世紀少年』で明かされる。つまり世界大統領の「ともだち」の正体が明かされ、地球の滅亡が回避されるといったような内容。
 個人的には「アホクサ」の状態が続いていたため、内容については正直どうということはないというのが僕の感想。『20世紀少年』の全体像が見えた、謎解きが終わったという単にそれだけの結果で、ハリウッドのアクション映画のように、読み終わった後は虚しさだけが残った。
★★★

参考:
竹林軒出張所『20世紀少年 (1)〜(22)』
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2017-01-24 07:08 |

『20世紀少年 (1)〜(22)』(本)

20世紀少年 (1)(22)
浦沢直樹著
小学館

キミは著者の大風呂敷に付き合えるか

b0189364_7372970.jpg 15年以上前のマンガで、当時結構人気があったように記憶している。映画化もされ、テレビCMで放送される映画の予告編が不気味だったことを憶えている。
 内容も、おそらくオウム真理教の一連の事件をモチーフにしたであろうストーリーで、全編に不気味さが漂う。
 70年代に少年少女時代を送った主人公たちが成長し、その同級生の中に数々の怪事件の首謀者がいるということがわかり、かつての仲間たちを集めてその究明に乗り出すというストーリー。やがてそこに不気味な宗教団体の存在が明るみに出て来てしっちゃかめっちゃかになるというふうに話が進んでいく。
 主人公たちは、概ね僕と同世代で、使われる懐かしグッズも概ね知っているし、ノストラダムスの世紀末に関する予言なども身近だったため、このマンガで扱われている世紀末の恐怖感なども身近には感じる。実際オウム真理教も、あの予言からもたらされた不安を心の中のどこかに持っていた信者が中心だったというし、モチーフとしては面白い。ただし話が進んでいくうちに、物語の空間的な広がりがあまりにないことがだんだん見えてきて少々しらけてくる。もちろん、この著者は、画力がある上、見せ方が非常にうまい(先が非常に気になる終わり方をする)ため、どんどん読み進めることはできるんだが、ストーリーがやはり安直であると感じてしまう。大風呂敷を広げてはみたが、どうしようもなくなったという感じもあるし、何より死んだことになっている登場人部が実は生きていてその後大活躍するなどというストーリーもちょっと受け入れがたい。ご都合主義的と言わざるを得ない。
 これくらい画力、表現力がある作家であれば、もう少ししっかりしたストーリーならば良い作品ができるんじゃないかと感じたりする。そういう意味では、この作家にとっては原作ものの方が良いんではないかと感じる。実際この著者の『マスターキートン』なんかよくできていて面白かった。とりあえず『20世紀少年』については、ストーリーが稚拙過ぎるという評価に尽きる。語り口があまりにうまいため22巻までひたすら引っ張られてしまったが、途中からアラが見え始め、最後の方ではアホクサという見方をしていたことをここに明記しておく。
★★★

参考:
竹林軒出張所『21世紀少年 (上)(下)(本)』
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2017-01-23 07:38 |