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竹林軒出張所

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『続あ・うん』(1)〜(5)(ドラマ)

続あ・うん (1)〜(5)(1981年・NHK)
演出:深町幸男、加藤郁雄
脚本:向田邦子
出演:フランキー堺、杉浦直樹、吉村実子、岸本加世子、岸田今日子、池波志乃、永島敏行、秋野暢子、殿山泰司

秀逸なキャラクターが魅力

b0189364_18214671.jpg 1980年にNHKで放送された『あ・うん』が好評だったせいか、翌年に続編が作られた。『あ・うん』と同様、昭和初期(昭和十年代)のとある家族の肖像が娘の視点で描かれる。続編も前作と同様、娘役の岸本加世子の味のあるナレーションで話が進行していくが、父の友人が母に恋している設定なわけで、娘に語らせるには内容が生々しい。
 基本的な家族構成、周辺の人々との関係は前作とほぼ同様だが、山師の祖父(志村喬)がすでに死んでいる点が異なる。代わりにその腹違いの弟(笠智衆)という立場の老人が登場して、いろいろと事件を巻き起こす。
 続編で中心となる事件は、父(フランキー堺)と友人(杉浦直樹)の喧嘩別れや、前作同様、娘(岸本加世子)の恋(相手はロシアの演劇に凝っている大学生)などだが、基本的には淡々と話が進んでいくホームドラマである。前にも書いたが(竹林軒出張所『父の詫び状(本)』を参照)、このドラマに出てくる登場人物、作者の実際の家族をよく投影しているように思える。そのためもあってか、登場人物の言動には非常にリアリティがある(ただし行動については、リアリティがあるとはあまり言えなさそうである)。何よりこのドラマ、キャラクターがどれも秀逸で、ドラマの大きな魅力になっている。中でも少々怪しげな人物、たとえば「金歯」や「イタチ」などが味わい深い。あちこちにくすぐり笑いの要素が散りばめられていることもあり、本作は前作より楽しんで見ることができたような気がする。なお、最終回には志村喬がゲスト出演する。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『あ・うん (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『父の詫び状(本)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(ドラマ)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく パートⅡ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』
竹林軒出張所『胡桃の部屋 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『思い出トランプ(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の名前 向田邦子漫画館(本)』

by chikurinken | 2018-09-13 07:20 | ドラマ

『続・夢千代日記』(1)〜(5)(ドラマ)

続・夢千代日記 (1)〜(5)(1982年・NHK)
脚本:早坂暁
演出:深町幸男、渡辺紘史
音楽:武満徹
出演:吉永小百合、樹木希林、秋吉久美子、石坂浩二、いしだあゆみ、壇ふみ、緑魔子、長門勇、中条静夫、中村久美、あがた森魚、夏川静枝、加藤治子、菊地優子、松本ちえこ、岸部一徳

第1シリーズほどではにゃあでにゃあ

b0189364_16253221.jpg 『夢千代日記』発表の翌年に放送された続編。
 舞台設定は前シリーズを踏襲しており、そこにいろいろな闖入者が登場して、いろいろと事件を巻き起こすという「いかにも続編」という展開である。闖入者の多くは不幸な女たちで、いしだあゆみ、菊地優子、松本ちえこが彼らを演じる。不幸な女たちと言えば、他のレギュラー陣も不幸な女たちで、今回もその不幸に拍車がかかる。秋吉久美子の「金魚」は、育てている子どもをとられそうになるし、樹木希林の「菊奴」もどん底につき落とされる。ただしこの菊奴のキャラは、強烈で非常に面白く、ドラマ随一の特異な人物である。不幸な役回りにしなくても良かったんじゃないかという気もするが、不幸なりに強烈なキャラは維持している。
 石坂浩二扮する上村は、このシリーズでは夢千代が恋をする対象になるが、元々は闖入者の一人である女子中学生と関連した存在である。この上村、ストリップ小屋の背景を描くために鳥取からこの町に呼ばれてきた絵描きの役だが、偶然にも、問題のあった女子中学生の俊子(菊地優子)とこの町で出会うという、やや無理のある設定になっている。偶然の設定を使用するとその数に比例してドラマが浅くなるわけで、こういう偶然はいただけない。いしだあゆみも不幸な闖入者の役回りで、自らの不倫のために離婚に追い込まれるという中年女性の役どころで、この役柄、なんと同時期に作られた『駅 STATION』や『北の国から』と共通である(どれもいしだあゆみが演じている)。いしだあゆみの鉄板キャラだったのか?
b0189364_16354499.jpg 何だかあれこれがパターン化しているような印象で、そのためもあり、前作ほどのインパクトはなかった。この後『新・夢千代日記』と続いてこの『夢千代』シリーズは完結する。たしか第3シリーズもこれまで一度見ていると思うんだが、まったく記憶がない。もしかしたら見ていないのかも知れないが、第3シリーズは全10回と長いし、今回の第2シリーズがもう一つだったこともあり、あらためて見る気は、今のところあまり起こらない。
プラハ国際テレビ祭大賞受賞、第19回ギャクシー賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夢千代日記 (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『花へんろ 風の昭和日記 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『刑事(ドラマ)』
竹林軒出張所『修羅の旅して(ドラマ)』
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『映画女優(映画)』

by chikurinken | 2018-09-11 07:24 | ドラマ

『夢千代日記』(1)〜(5)(ドラマ)

夢千代日記 (1)〜(5)(1981年・NHK)
脚本:早坂暁
演出:深町幸男、松本美彦
音楽:武満徹
出演:吉永小百合、樹木希林、秋吉久美子、林隆三、楠トシエ、大信田礼子、緑魔子、長門勇、ケーシー高峰、岡田裕介、中条静夫、伊佐山ひろ子、中村久美、あがた森魚、夏川静枝、加藤治子

贅沢至極! 申し分ない!

b0189364_18464577.jpg 言わずと知れた早坂暁の代表作。1981年にNHKの『ドラマ人間模様』の枠で放送された。
 山陰地方(ドラマでは「裏日本」と呼ばれている)の湯里という小さな温泉町が舞台。その町で芸者の置屋を営む若い女将(兼芸者)が主人公の夢千代(吉永小百合)である。夢千代は、母が妊娠中に広島で被曝した、つまり胎内被爆者であり、そのために白血病の症状で苦しんでいる。その毎日の症状を主治医に報告するために日々の日記をつけていて、その日記の内容が、このドラマのナレーションとして使われるという、なかなか凝った設定になっている。タイトルもそれにちなんだものである。
 この夢千代の周囲で起こるあれこれの事件がモチーフとして現れ、同時に、白血病を始めとする、夢千代が抱えるいろいろな問題があぶり出されていくという縦糸と横糸の関係が実に見事で、脚本の見本みたいな素晴らしい作品に仕上がっている。夢千代によって語られる「(夢千代の)置屋が問題のある芸者ばかり抱えている」というのもなかなか可笑しいセリフである。(いわくのある登場人物が多いことに対する)作家の言い訳みたいにも聞こえる。
 キャストは非常に豪華で、だからといってビッグネームが揃っているというわけではないんだが、非常にうまい役者、変わったキャストが揃っている。吉永小百合は当時36歳で、非常に美しい。奇跡的と形容しても良いぐらいの美しさで、このドラマが吉永小百合の代表作であることはもう間違いない。b0189364_18464126.jpg長門勇や中条静夫、ケーシー高峰、林隆三など周囲を固めるキャストはきわめて個性的で、実在する人物であるかのようなリアルな存在を見事に演じている。樹木希林、伊佐山ひろ子、加藤治子らの力のある女優たちもいかんなく実力を発揮している。珍しいところでは、歌手のあがた森魚、楠トシエあたりで、2人ともドラマの中で歌唱がある。あがた森魚は「赤色エレジー」まで歌っており、第5話の「最后のダンス・ステップ」も良い味が出ていた(「最后のダンス・ステップ」は緑魔子と共演!)。夢千代の元恋人役の岡田裕介は、この後東映のプロデューサー業に転じ、映画版の『夢千代日記』では製作者として参加している。
 シナリオについては今さら言うまでもない。早坂暁の代表作であるのは間違いないが、しかしそれにしても、まったく飽きさせない舞台転換、セリフ回しなど、昨今のドラマとはまったく次元が異なるとすら思う。しかも武満徹が音楽を担当しているというのも贅沢至極である。当時の日本のドラマの最高水準とも言える作品ではないかと思う。
第14回テレビ大賞優秀番組賞、第8回放送文化基金賞奨励賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『花へんろ 風の昭和日記 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『刑事(ドラマ)』
竹林軒出張所『修羅の旅して(ドラマ)』
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『映画女優(映画)』

by chikurinken | 2018-08-23 07:45 | ドラマ

『花へんろ 特別編 春子の人形』(ドラマ)

花へんろ 特別編 春子の人形(2018年・NHK)
原作:早坂暁
演出:平山武之
脚本:冨川元文
出演:坂東龍汰、芦田愛菜、田中裕子、尾美としのり、中西美帆

花へんろを安っぽく仕上げました

b0189364_17362897.jpg 早坂暁の代表作『花へんろ』を現代風に作り直したスピンオフみたいなドラマ。
 ストーリーは、『花へんろ』からごく一部分を取り出して恋愛ものに仕立て上げましたというようなものであるが、オリジナルの『花へんろ』と多少人物の設定が違っている。広島で死ぬ春子は、オリジナル版では姉だったがこのドラマでは妹である。このドラマでは、主人公(早坂暁自身の投影:坂東龍汰)と春子(芦田愛菜)との間で恋愛感情が芽生えるというような面はゆい話に変わっている(なお、主人公と春子には血のつながりがない)。無理やり恋愛ものに持っていったような風もあり、そのためもあってドラマとしてはきわめて陳腐な話になってしまった。
 それに加々美幸子のナレーションも、ドラマの中での語り手の位置付けが不明で、そのために非常に説明的でベタな語りになってしまっている。下手なドキュメンタリーのナレーションみたいになってしまい、地に足が付いていない感じさえして、ドラマの語りとしてはまったく冴えない。こういった過剰に説明的なナレーションなら、むしろない方が良いと思う。
 また、オリジナル版とかなり似たシーン(主人公と母との別れのシーン)も再現されていたが、オリジナル版のシーンがものすごく感動的に仕上がっていたのに、このドラマでは、まったく面白味がなく味のないシーンになっていた。書き手が違うとこうも違うのかと逆に感心した。この「リメイク版」はあらゆる部分が安っぽく、もちろんあの時代と今の時代のドラマの水準の違いみたいなものも勘案すべきなんだろうが、それにしても……である。オリジナル版『花へんろ』に対する冒涜のようにすら思える。
 このドラマの唯一の見所は芦田愛菜で、彼女は大変魅力的だったが、彼女を活かしたいんだったら(リメイクでなくて)普通の青春ドラマで良いんじゃないのと思う。それから、映画の『ダウンタウンヒーローズ』みたいなシーンもあって(あの映画は早坂暁の自伝的小説が原作)、製作者側は多分に意識したんだろうが、そのあたりも特に感じるところはなかった。『ダウンタウンヒーローズ』の主要なキャストである尾美としのりが、このドラマで父親役として出ていたのもその辺が関係したのかどうだかわからないが、ドラマ自体がつまらないため、それについても何の感慨も湧かない。
★★★

追記:
 先ほど、早坂暁にちなんで作られた別のドキュメンタリーを見たところ、このドラマ『春子の人形』は、早坂暁の実際の経験を基にしたドラマで、早坂のたっての希望で作られたらしい。血のつながりのない妹が広島で原爆で死んだというのも事実らしく、ただオリジナル版の『花へんろ』を書いたときは、(早坂にとってその事実が重すぎて)これに触れることができなかったという。今の時代に次の世代に伝えるべきと感じてこのドラマを企画したというのが真相のようだ。ただしだからと言って、このドラマ自体が安っぽいという事実には変わりはない。

参考:
竹林軒出張所『花へんろ 風の昭和日記 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』

by chikurinken | 2018-08-22 07:36 | ドラマ

『花へんろ 風の昭和日記 総集編』(ドラマ)

花へんろ 風の昭和日記 - 第一章、第二章、第三章総集編
(1985〜88年・NHK)
演出:深町幸男他
脚本:早坂暁
出演:桃井かおり、河原崎長一郎、加藤治子、藤村志保、沢村貞子、中条静夫、小林亜星、樹木希林、森本レオ、佐藤友美、小倉一郎、永島暎子、イッセー尾形、三田村邦彦(語り:渥美清)

十分の一の総集編

b0189364_19574791.jpg 先頃脚本家の早坂暁が亡くなったためか、代表作『花へんろ』の「特別編」というドラマが製作され、先日(18年8月)放送された(僕自身はまだ見ていない)。それに合わせて過去NHKで放送された『花へんろ』の第一章から第三章までがまとめて放送された。「まとめて放送」といっても、元々は各章45分×6回(第一章のみ7回)分のドラマであり、これをすべて放送するとなると放送する方も見る方も大変という判断だったのか、なんと各章を30分にまとめたダイジェスト版が放送されたのだった。つまり855分がなんと90分になっているわけで、ほぼ十分の一。まさにスーパー・ダイジェストである。
 僕自身は放送時『花へんろ』を見ていないため、DVDで見ようと思い図書館で借りたこともあるが、なんせ長いので結局見ずに返したことがたびたびあった。たださすがに十分の一のダイジェストを最初に見てしまうというのも少々気が引ける……。というわけで少し悩んだのだが、これは見て正解だった。非常によくできた面白いドラマであることがわかる。しかもダイジェストで展開がやたら早いので、まったく飽きることがない。もちろん、物足りない箇所、というか、見ていて辻褄が合わない(ように思える)箇所があるんだが、かなりの分量がカットされていることを考えるとこれも致し方ないところである。
 このドラマ、早坂暁の自伝的作品であるため、早坂暁にとっても畢竟の代表作と言っても良かろう。内容も非常に重厚で、全編反戦思想が貫かれている。また主演の桃井かおりにとっても畢竟の代表作と言える。特に若い頃の桃井かおりは、破天荒な性格の役柄が多くて、なかなか好きになれなかったが、こういう重厚な役柄もできるのかと今回あらためて感心した。それにキャストが超豪華なのも驚きである。また随所に俳句が入るのも味がある。ドラマ的な起伏もあり、非常によくできたシナリオで、この作品も80年代を代表する名作ドラマに数えられるのではないかと思う。
 今回総集編をすべて見終わって、これはやはり全編しっかり見るべき作品であったかなと感じる。とは言え、今回ダイジェストで見なかったら、一生見る気が起こらなかったかも知れないんで、総集編を見たこと自体はまったく後悔することはない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』
竹林軒出張所『夢千代日記 (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『刑事(ドラマ)』
竹林軒出張所『修羅の旅して(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-08-20 07:57 | ドラマ

『ボクの就職』(1)〜(12)(ドラマ)

ボクの就職(1994年・TBS)
演出:大岡進、山口恒成、戸高正啓
脚本:竹山洋
出演:緒形直人、渡瀬恒彦、かたせ梨乃、伊東四朗、水島かおり、忌野清志郎、茅島成美、土屋久美子、白島靖代、竹野内豊、大森嘉之、小野武彦、斉藤洋介、渡辺真紀子、住田隆

魅力的なキャラクターが光る

b0189364_17561935.jpg 割合ありきたりの設定のホーム・ドラマではあるが、しかしキャラクターが非常にうまく描かれていることから、出色のドラマに仕上がっている。今回見るのは初回放送時、再放送時に続いて3回目だが、おかげで今回も十分楽しめた。
 主人公は新卒でレトルト食品企業に入社した若手営業マン(緒形直人)で、エリート銀行員の父との確執や、会社での理不尽な扱い、営業マンとしての奮闘努力がストーリーの中心になる。一種のサクセス・ストーリーであるが、全編に渡り笑いの要素がある他、あちこちに見所がある。同時入社の2人が要領の良いエリート(竹野内豊)と体育会系(大森嘉之)で、2人とも立ち回りがうまく、その点主人公がいろいろなところで出遅れたりするのも、見ていて非常に身につまされる設定で、多くの視聴者の共感を呼ぶと思う。知らないうちに社内の派閥抗争に巻き込まれたりというのも、非常にありがちである。そう言えば緒形直人、かつてNHKの『新橋烏森口青春篇』でも似たようなサラリーマン役を好演していた。当時の緒形直人、新人サラリーマンにうってつけの役者だったのかも知れない。
 緒形直人の他、渡瀬恒彦、かたせ梨乃、伊東四朗あたりの主演クラスはどれも素晴らしい演技で言うまでもないが、周りの脇役も味のある良い演技をしている。中でも異色なのは忌野清志郎で、主人公の義理の兄を演じている。このキャラクター、社会にあまり適用できないタイプで、いつも義理の父に怒られてばかりいる。ほぼ毎回「申しわけありません」というセリフが口から出てくる。結局はミュージシャンとして生きていくことを決意するんだが、そういう設定であるため、番組の中でも清志郎の生歌がかなり出てくる。最後の最後には、テーマ曲の「サラリーマン」を(ザ・タイマーズのメンバー、三宅伸治・川上剛・杉山章二丸らと)ライブで歌うという味のある趣向もある。最初の放送時にこのドラマを見た時、僕自身、忌野清志郎のことをあまり知らなかったため、てっきりこのドラマのキャラクターのようなだめ人間かと思っていたほどで、それを考えるとこのドラマの清志郎は名演技と言えるかも知れない(ただしセリフはやや棒読みである。存在感は抜群であるが)。
 後半はやや無理やりなストーリー展開になるが、演出やシナリオがよくできていて、ドラマ的な面白さもふんだんに盛り込まれている。何より完成度が高く質が高い。なかなかこれだけの完成度を持ったドラマはないと思うんだが、残念ながらDVDは発売されていない。
 今回、BS-TBSという冴えない民放BS局で3週間に渡って放送されたものを見たんだが、毎度ながら、民放BS局はもう少しこの手の国内ドラマを放送したら良いのにと思う。民放BS局のラインナップと言えば、チープな韓国ドラマと通販番組ばかりで、これで放送局としての存在価値があるのかと思わせられるようなものばかりである。BS-TBSについて言えば、7月はこの番組の他、ビートたけしが主演した名作、『大久保清の犯罪』も放送していて、少しは悪しき風潮を見直す機運が出てきたかと感じているが、この傾向がいつまで続くかはわからない。
★★★★

追記:
 なおこのドラマ、タイトルバックも秀逸である。あまりに面白いんで、僕は毎回見た(普通のドラマでは大体飛ばすんだが)。日本の美術作品(浮世絵や若冲など)がふんだんに使われていて(意図はよくわからないが)やたらゴージャス感があり、しかも上品なユーモアもある。何より、登場人物が主人公の目線から見た役割ごとにまとまって出てくるため、回数が進んでいくうちに味わいが増してくる。ちなみにこのタイトルバック、ザ・テレビジョン第1回ドラマアカデミー賞タイトルバック賞というよくわからない賞を受賞したらしい。

参考:
竹林軒出張所『こんな歌もあります--「原発賛成音頭」』

by chikurinken | 2018-07-22 07:55 | ドラマ

『白鯨』(ドラマ)

白鯨 前編・後編(2010年・独襖)
監督:マイク・バーカー
原作:ハーマン・メルヴィル
脚本:ナイジェル・ウィリアムズ
撮影:リチャード・グレートレックス
出演:ウィリアム・ハート、イーサン・ホーク、チャーリー・コックス、ジリアン・アンダーソン、エディ・マーサン

『白鯨』見るなら、これ

b0189364_19505971.jpg アメリカ文学『白鯨』のドラマ化作品。ドラマ化といっても、手間も金もかかっており、まったく映画と遜色ない。劇場公開されてもまったく違和感はない。キャストも映画人が揃っている。ただし、監督のマイク・バーカーはドラマの人で、このドラマの前年に『シーウルフ』という海洋ドラマを作っている。この2本のドラマ、どちらも舞台が海で、しかもスタッフがかなり共通しているんで(DVDのジャケットもそっくり)、もしかしたら合わせ技で2本まとめて作ったのかも知れない。
 『白鯨』については、以前グレゴリー・ペックがエイハブ船長を演じている1956年作の映画をテレビで見たことがあるが、エイハブ船長の狂気ばかりが強調されているようであまり良い印象は持たなかった。このドラマ版では、エイハブ船長は多少狂気がかってはいるが、しかし行動に整合性がとれていて、船員たちとの葛藤もしっかり描かれている。また、詩的な表現もところどころにあり、原作の味がかなり残されているのではないかと感じた(原作は読んでいないので詳細はわからない)。
b0189364_18193495.jpg それに何より、帆船や海、クジラなどの映像表現が素晴らしく、非常にリアルな映像が展開され、それがこのドラマの大きな魅力になっている。CGを多用しているのではないかと思うが、CG映像に往々にして見られるような違和感はほとんどない。また当時の風俗がしっかりと描かれているなど、細かい部分にも目が行き届いていて、ドラマ化作品としてはかなり水準が高いのではないかと感じる。何よりインパクトのある表現が随所にあって、そういう一つ一つのシーンが記憶に残る。そういう意味でも、優れた映像化作品と言えるのではないかと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『クロムウェル 英国王への挑戦(映画)』
竹林軒出張所『レ・ミゼラブル (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年ドラマ版)(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-07-20 07:49 | ドラマ

『新十郎捕物帖 快刀乱麻』(25)(ドラマ:音声のみ)

新十郎捕物帖 快刀乱麻
第25話 空手の約束は空手形
(1973年・朝日放送)
演出:西村大介他
原作:坂口安吾
脚本:佐々木守他
出演:若林豪、池部良、花紀京、河原崎長一郎、植木等、野川由美子、尾藤イサオ、志摩みずえ

音声だけでも十分楽しめます

b0189364_928133.jpg 1973年に朝日放送系列で放送された『新十郎捕物帖 快刀乱麻』第25話「空手の約束は空手形」の音声がYouTubeにアップロードされており、今回時間ができたので聴いてみた。
 前にも書いたが、『新十郎捕物帖 快刀乱麻』は、最終回以外映像が残っておらず、よほどのことがない限り見ることはできない。ところが、かつて第21話「鳥と鳥とをとりちがえ」と第23話「唐獅子牡丹に血汐がボタン」の音声がYouTubeで公開されていたことから、これを聴くことができ、音声だけでも雰囲気は味わえるということがわかった。ただしどちらも、ドラマの中の一部であったため(第23話の方はわずか4分35秒)、本当に「雰囲気のみ」という感じである。ところが、前の2話をアップロードしていたのと同じ人(ASKDFHJOEIHというお方)が、その後、第25話もアップロードしたようで、今回聴いたのはこれということになる。しかもこの25話については、ほぼ全編収録されている。間のCMも入っているというおまけ付きで、今聴くと当時のCMも非常に新鮮である。ただ音声だけであるため、ほとんどラジオドラマみたいなものである。
 ストーリーは基本的に殺人事件の謎解きに終始するが、それを繋ぐ人物関係がなかなかコントめいていて楽しい。中でも勝海舟(池部良)、泉山虎之介(花紀京)、海舟の愛人である小糸(志摩みずえ)の掛け合いが秀逸である。おそよ(野川由美子)とそれを取り巻く中年男たち(花紀京、河原崎長一郎、植木等)の関係性も面白い。こういうところがこのドラマの一番の魅力だったんだろうとあらためて感じた。
 それから名物のストップ・モーションもあり(竹林軒出張所『内田喜郎と快刀乱麻』を参照)、もちろん画像は見ることができないが、登場人物が「バンザーイ」と叫ぶシーンで笛が鳴って、ドラマが停止し、佐藤慶の「万歳」についての解説が入る。なんでも「万歳」は元々「まんさい」と読まれていて、「ばんざい」と読むようになったのは、仮名垣魯文の『高橋阿伝夜刃譚』に「万歳」と書いて「ばんざい」とフリガナが付けられているのが最初で、これが我が国の「ばんざい」の始まり。この読みが一般化したのは帝国憲法発布式典のときからで、ちなみに「まんさい」を「ばんざい」と読むようにしたのは外山正一博士の発案だというような豆知識が披露される。ウーン、勉強になる。
 いずれにしても、終始楽しい雰囲気が漂っており、ミステリーで、ともすればおどろおどろしくなるようなストーリーでありながら、少し抜けた三枚目的な人物が緩和剤になって、面白い味を醸し出している。それに舞台が明治時代というのもユニークである。すでに映像も残っていないんであるから、これなどリメイクに持って来いの素材だと思うがどうだろう。もちろん、今の時代に合うかとか今の視聴者がこれを楽しめるかとか、そういったことについては、当方は一切関知しないからそのつもりで。
★★★☆

参考:
YouTube『快刀乱麻 第25話 空手の約束は空手形 前半』
YouTube『快刀乱麻 第25話 空手の約束は空手形 後半』
竹林軒出張所『「快刀乱麻」を聴く』
竹林軒出張所『内田喜郎と快刀乱麻』
竹林軒出張所『明治開化 安吾捕物帖(本)』

by chikurinken | 2018-07-02 07:33 | ドラマ

『おいしいコーヒーのいれ方Ⅰ』(ラジオドラマ)

おいしいコーヒーのいれ方Ⅰ〜キスまでの距離〜
(1997年・NHK)
NHK-FM 青春アドベンチャー
演出:千葉守
原作:村山由佳
脚色:佐藤ひろみ
出演:内田健介、長谷川真弓、大高洋夫

気恥ずかしくて聴いてられない

b0189364_09044638.jpg ラジオドラマを紹介している某サイトで非常に高い評価が付いていたために聴いてみた。ちなみにこのサイトでの『日本の異様な結婚式について』の評価はかなり低かったため、『日本の異様な結婚式』をはるかに超えるという(もちろん個人的な評価ではあるが)ラジオドラマに関心を持ったわけである。それにこのドラマ自体一般に人気があるようで、YouTubeでも公開されている。今回時間があったため、良い機会だと思って聴いてみたのだった。
 原作は、村山由佳という人のライトノベル(!)で、ストーリーははなはだありきたり。主人公の高校生が、年上のいとこ(美女)と同居するハメになり、当初は親戚かと思っていたが実は二人に血のつながりがなかったというふうに話が進む。その後、主人公はこの美女とあれやこれやあって恋愛関係になるという展開で、ストーリーを聴くと、我々世代は思わず苦笑してしまうような、おそろしく使い古されたご都合主義の素材であった。また演出も(若者の恋愛を描くということもあり)はなはだ気恥ずかしいもので、中高生ならいざ知らず、我々のようなオヤジにはどうにもこれはいただけない。もう少し抑えた演出でなければ聴くに堪えないという代物である。
 僕が今回聴いたのは1時間ちょっとに編集されたバージョンで、前後の部分を削ってうまいこと編集してあった素材だが、元々これはNHK-FMの『青春アドベンチャー』の枠で全5回で放送されたものらしい。放送当時これを聴いていたとしても、さすがに第1回を聴いてから第2回以降も続けて聴きたいとは決して思わなかっただろうと思う。ドラマや映画の感じ方なんか要するに人それぞれであり、他人が高い評価を付けたからといってそれが僕にとってあるいは万人にとって面白いとは限らないということ、今回、そのことにあらためて気付かされることになった。ラノベとか恋愛ものとか、恥ずかしいものとかが好きな人には良いだろうが、僕みたいなすれっからし人間には決して受け入れられない作品である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『さらば国分寺書店のオババ(ラジオドラマ)』
竹林軒出張所『日本の異様な結婚式について(ラジオドラマ)』

by chikurinken | 2018-06-30 09:05 | ドラマ

『阿修羅のごとく パートⅡ』(1)〜(4)(ドラマ)

阿修羅のごとく パートⅡ (1)〜(4)(1980年・NHK)
演出:和田勉、富沢正幸
脚本:向田邦子
出演:八千草薫、加藤治子、風吹ジュン、露口茂、いしだあゆみ、佐分利信、荻野目慶子、菅原謙次、三條美紀、大路三千緒、宇崎竜童、萩尾みどり、深水三章

もはやほとんど連続ドラマである

b0189364_18214278.jpg 1979年にNHKで放送された『阿修羅のごとく』の続編。『阿修羅のごとく』は、あれはあれで完結していたので、続編が必要かとどうかは微妙なところではあるが、必要でなくても好評であれば作るのがドラマのあり方。というわけで、何だか連続ドラマみたいなノリで、パートⅡが作られた(ようだ)。
 いろいろな設定は前のところからそのまま踏襲されており、同じようなゴタゴタがパートⅡでも続く。違いと言えば四女(風吹ジュン)夫妻がにわか金持ちになっている点で、それが原因で三女(いしだあゆみ)との間でいろいろゴタゴタする。姉妹ってのはめんどくさいなと思わせるようなストーリー展開である。
 キャストは概ね一緒だが、次女(八千草薫)の夫と娘が変わっている。前回は夫は緒方拳だったが今回は露口茂で、そのために軽さが軽減し、雰囲気が大幅に変わった。ほとんど「ヤマさん」である。娘は、名前が出る前の若々しい荻野目慶子が演じていて、なかなか新鮮である。相変わらず宇崎竜童が好演だが、四姉妹の演技も非常に自然で、前作以上に魅力を増している。向田邦子らしい面白いセリフもあって、ドラマとしてこなれてきているような印象がする。このシリーズも第1シリーズ同様、まだまだ続きそうな勢いで、向田邦子、もしかしたらパートⅢも書くつもりでいたのか(『パートⅢ』はないようだ)。やはり音楽とタイトルバック、そしてタイトル自体が秀逸で、このドラマの独特の雰囲気を規定している。このあたりは前シリーズと同様であるが、今回は各回のタイトルもなかなか面白味があって良かった。そういうところも含め、やはり「こなれた」という印象が強い。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(ドラマ)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(映画)』
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by chikurinken | 2018-06-15 07:21 | ドラマ