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竹林軒出張所

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『三国志 完結編 遙なる大地』(映画)

三国志 完結編 遙なる大地(1994年・シナノ企画)
監督:勝間田具治
脚本:笠原和夫
出演:渡瀬恒彦、あおい輝彦、山口崇、青野武、石田弦太郎、鶴ひろみ、津嘉山正種(アニメーション)

物足りなさは残るが
全体をよくすくっている


b0189364_20063515.jpg 90年代に巨額の費用を投じて作られた『三国志』のアニメ化作品。92年から3年間かけて1年に1本ずつ発表されており、これはその完結編である。
 諸葛孔明のいわゆる「天下三分の計」を実現し、蜀の地を支配することができた劉備であるが、荊州の奪還を目指す呉と全国統一を目指す魏の圧力は強く、結局荊州は呉に奪還され、しかもその地を守っていた関羽まで倒される。その後、関羽の弔い合戦として荊州の再奪還を目指し劉備と張飛は軍を進めようとするが、張飛は暗殺され、劉備軍も大敗を喫して、しかも体調が悪化し、やがて死去する。魏の曹操も病で死去し、三国時代の第一世代は姿を消す。劉備なき後は諸葛孔明が蜀の軍事を一手に率い、南進してきた曹丕(曹操の息子)の魏と戦う。魏との戦いは、魏の軍師、司馬懿仲達との決戦になるが、やがて孔明も戦地で死去する……という具合にストーリーは進んでいく。こうして主役クラスの人間が途中で次々に消えていき、次の世代に移っていくわけだが、覇を競う人々が現れては消えていくのが歴史であるということがあらためて実感される。
b0189364_20063962.jpg 完結編も2時間半に及ぶ結構な大作であるが、前にも書いたように、元々が相当な大著であるため、これでもかなりダイジェスト的になってしまう。この完結編では、「泣いて馬謖を斬る」と「死せる孔明、生ける仲達を走らす」の逸話はしっかり押さえているが、それでも間がかなり省略されているため、蜀の武将や呉の武将など、登場人物たちが唐突に出てきて消えていくため、主役クラスの登場人物以外にはあまり感情移入できない。そのあたりはしようがないとは言え、物足りない箇所である。かと思うと鳳姫(関羽の娘)のエピソードが非常に細かかったりして、多少のアンバランスさは感じる。このエピソードは、やけに湿っぽいし、個人的には不要だと思うようなものであった(一番の見所という見方もあるかも知れないが)。
 キャストは、曹操の渡哲也がこの頃病気療養していたため、弟の渡瀬恒彦に代わっている。他は第一部、第二部とほぼ同じである。
 この三作を総括すると、やはり『三国志』入門という当たりに落ち着く。物足りなさは残るが、全体をよくすくっていると言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『三国志 第一部 英雄たちの夜明け(映画)』
竹林軒出張所『三国志 第二部 長江燃ゆ!(映画)』
竹林軒出張所『三国志 (1)〜(30)(本)』

by chikurinken | 2019-06-26 07:06 | 映画

『三国志 第二部 長江燃ゆ!』(映画)

三国志 第二部 長江燃ゆ!(1993年・シナノ企画)
監督:勝間田具治
脚本:笠原和夫
出演:渡哲也、あおい輝彦、山口崇、石田弦太郎、青野武、柴田秀勝(アニメーション)

もどかしさはあるが
うまくまとめられている


b0189364_19352684.jpg 90年代に巨額の費用を投じて作られた『三国志』のアニメ化作品。三部構成になっており、第二部は「長江燃ゆ!」。タイトルから推測できるように赤壁の戦いが本作のハイライトである。
 曹操は漢王朝を事実上支配するようになるが、一方で劉備は、名声は上がるが、拠点を持たないままの浪人状態である。しかも曹操から命を狙われるようになる。いったん徐州城に入った劉備だが、曹操に敗北し、再び拠点を持たない浪人の身になる。そんな折、名軍師、諸葛孔明に出逢い、荊州から蜀へと進むべきことを進言される。孔明という優れた軍師を得た劉備であったが、なおも曹操から責められ夏口城まで引き下がることになる。しかし孔明の知略によって曹操軍を呉に向かわせ、呉と曹操軍を戦わせることに成功する。これが赤壁の戦いで、これについても孔明の知略によって曹操を倒し、しかも呉の将軍、周瑜まで計略で倒す。こうして曹操はついに荊州を手にする。
b0189364_19353095.jpg 全体にダイジェスト的だが、有名なエピソードは押さえられており、十分楽しむことができる。随時、大陸風の胡弓を使ったメロディが背景に流れ、雰囲気を盛り上げている。なお諸葛孔明の声を演じるのは、俳優の山口崇(本人が希望したという)で、颯爽とした孔明を好演している。全体を支配する空気は、義の劉備(関羽、張飛)、実の曹操という対抗軸で、正義漢の劉備が気持ち良い。ただダイジェスト的であるという制約のために、背景がよくわからない登場人物が数多く登場し(周瑜などもそう)、そのあたりが少々もどかしいところである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『三国志 第一部 英雄たちの夜明け(映画)』
竹林軒出張所『三国志 完結編 遙なる大地(映画)』
竹林軒出張所『三国志 (1)〜(30)(本)』

by chikurinken | 2019-06-25 07:34 | 映画

『三国志 第一部 英雄たちの夜明け』(映画)

三国志 第一部 英雄たちの夜明け(1992年・シナノ企画)
監督:勝間田具治
脚本:笠原和夫
出演:渡哲也、あおい輝彦、石田弦太郎、青野武、津嘉山正種(アニメーション)

『三国志』はアニメでも大作になってしまう

b0189364_16290743.jpg 90年代に巨額の費用を投じて作られた『三国志』のアニメ化作品。三部構成になっており、この「英雄たちの夜明け」は第一部である。
 三部あわせて都合7時間程度の大作ではあるが、元々が相当な大著であるため、これでもダイジェスト的になってしまう。第一部は、劉備玄徳、曹操孟徳の活躍が中心に描かれる。
 漢王朝末期、張角率いる黄巾賊が反乱を起こし、諸国で略奪、放火、殺戮など傍若無人の振る舞いを働く(そういうふうに描かれている)。そこで、こういった悪辣な黄巾賊に対抗するため、各地に義勇軍が結成され、それが離合集散しながら、やがて黄巾の乱は鎮圧される。そのときに頭角を現したのが劉備とその義兄弟の関羽、張飛の一派、そして曹操である。劉備は、義に溢れるその人間性で名を挙げるようになり、曹操は軍事力で台頭してくる。一方で漢王朝は董卓、呂布一派に牛耳られるようになり、やがて反董卓・呂布の勢力が曹操を中心に結成され、呂布を政権から追い出すことに成功する(董卓は呂布に殺される)。
 混乱もいったんは収まったかに見えたが、各地で有力な武将が軍閥として君臨する群雄割拠の状態になり、軍閥同士でも離合集散が起こるという戦乱の時代を迎える。第一部では、劉備が曹操の配下に入り、呂布が曹操によって処刑されるというあたりまで話が進む。また少年時代の諸葛孔明が登場するが、呉の孫策はまだ名前しか出てきていない。
b0189364_16291104.jpg このアニメ作品自体は、全編丁寧に作られており、キャラクターデザインも悪くない。ごく時折であるが、表情の描写が素晴らしい箇所があって感心する。この作品を見るのは今回が二度目で、前回は『三国志』自体についてよく知らなかったため、勉強の目的で見たのだが、(長すぎないという点を考えると)そういう目的が一番合っているようにも思える。現時点では可もなく不可もなしという印象ではあるが、決して見て後悔するような作品でないのは確かである。
 声は、プロの声優が多数起用されているのはもちろんであるが、渡哲也やあおい輝彦など、有名な俳優も起用されている。渡哲也が曹操、あおい輝彦が劉備だが、ジブリ作品のような違和感はまったくなく、二人とも非常にうまく演じている。これもこの作品の魅力の1つである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『三国志 第二部 長江燃ゆ!(映画)』
竹林軒出張所『三国志 完結編 遙なる大地(映画)』
竹林軒出張所『三国志 (1)〜(30)(本)』

by chikurinken | 2019-06-24 07:28 | 映画

『聖☆おにいさん』(アニメ)

聖☆おにいさん(2013年・SYM製作委員会)
監督:高雄統子
原作:中村光
脚本:根津理香
出演:森山未來、星野源(アニメーション)

結局は異文化ギャップに落ち着く

b0189364_20041433.jpg マンガ『聖☆おにいさん』の劇場アニメ作品。
 ドラマ版はコントで終始していたが、あれよりも原作の味が活かされていると思う。何本かのエピソードによるオムニバス風の構成である。
 天界から東京・立川に休暇でやって来たイエスとブッダの日常を描くというストーリーで、例によって、視聴者(読者)の持つ(聖人としての)イメージと、作品で提示される(日常者としての)イメージのギャップを楽しむというもの。だが、基本的には来日した外国人が見る日本の風景みたいなものがベースになっているように思う。そういう意味では、聖人でなく穏やかな外国人が主人公でも似たような話になると感じる。BOSSのCM「宇宙人ジョーンズ」みたいなもんで、大きな素材を持ってきた割には、結局、話の中心は異文化ギャップに落ち着いてしまうということになる。
 いくつかのエピソードの中では、街のクリスマスの喧噪にはしゃぐイエスのエピソードがユニークで面白かったが、これはイエスでなければ成立し得ない話である。あとは異文化ギャップのネタがほとんどで、それほど目を引くものはなかった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『聖☆おにいさん(映画)』

by chikurinken | 2019-03-28 07:03 | 映画

『映画 聲の形』(映画)

映画 聲の形(2016年・京都アニメーション)
監督:山田尚子
原作:大今良時
脚本:吉田玲子
声の出演:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章(アニメーション)

重いテーマと美しい映像

b0189364_17261691.jpg 障害者の差別、学校でのいじめ、生きづらさなどをテーマにしたアニメーション映画。
 小学生時代、聴覚障害の転校生、西宮硝子をいじめ、その後それが原因で逆にクラス全員のいじめに遭うようになった少年、石田将也の物語。この石田少年、小学校から続くいじめのため、高校生になっても周囲と溶け込めず孤立した生活を送っていたが、あるとき西宮に再会し、そこから少しずつ人生が変わっていくというようなストーリーである。
 学校での生きづらさや閉塞感、人間の成長などが描かれ、テーマが非常に意欲的である点に目を瞠る。登場人物がステレオタイプである点や一部行動がきわめて唐突である点が少々残念ではあるが、こういう重いテーマに積極的に取り組んでいるのは評価に値する。また、何より映像が非常に美しい。日本のアニメーションの水準の高さを見せつけられるようである。プロットもよくできていて、見ていて飽きさせないストーリー展開はなかなかのものである。
 この映画、興収が23億超えたらしく、かなりのヒットになった。こういった重いテーマでも、アニメーションであれば若い人々が見るということなのか、それとも若い層が(いじめという)テーマを身近なエピソードと捉えたのか、そのあたりはわからないが、それでも日本の興業の可能性を垣間見せられた気はする。個人的には『けいおん!』を彷彿させる、いかにもアニメ少女みたいなキャラクターがあまり好きではないが、こういう要素も実は集客の要因になっているという可能性はある。
日本映画批評家大賞アニメーション部門作品賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『名もなく貧しく美しく(映画)』
竹林軒出張所『典子は、今(映画)』
竹林軒出張所『この世界の片隅に(映画)』

by chikurinken | 2019-03-04 07:25 | 映画

『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』(映画)

百日紅 〜Miss HOKUSAI〜
(2015年・「百日紅」製作委員会)
監督:原恵一
原作:杉浦日向子
脚本:丸尾みほ
キャラクターデザイン:板津匡覧
美術監督:大野広司
声の出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、筒井道隆(アニメーション)

江戸を再現した映像が見所

b0189364_18185904.jpg 杉浦日向子原作のマンガ『百日紅』のアニメ化作品。キャラクターデザインは原画とまったく異なりほぼオリジナル。原作は大分前に読んだんだがあまり内容を憶えていない。そのために詳しいところは何とも言えないが、ストーリーもキャラクターの性格付けも原作と大分違っているような気がする。映画版のストーリーは、小さいエピソードを連ねたようなもので、もしかしたらそれぞれに似たような話が原作にあったのかも知れない。
 ストーリーは、葛飾北斎とその娘、お栄の周辺で展開するさまざまな出来事が軸になっている。ストーリーについては特にどうと言うことはないが、日本のアニメ作品らしく、背景などの描写が非常に美しく、季節感も巧みに再現しているのは見事である。タイトルにもなっている百日紅(さるすべり)や椿などの花の色がアニメ映像の中で美しく映えており、人物に当たる光や夕焼けなど、自然の描写も実に美しい。江戸の町をそのまま再現したような風景描写もすばらしく、こういった表現はアニメならではと言って良い。江戸にタイムスリップして疑似体験しているかのような映像はこの映画の目玉である。
 声の出演は、名のある俳優がやっているが、必ずしもはまっているとは言えず、声優を普通に使った方が良いのではないかと思った。お栄の杏も北斎の松重豊ももう一つしっくり来ない。唯一例外的にうまいと感じたのが濱田岳の英泉で、有名な俳優を使ったりするのは(ジブリ映画をはじめとして)近年よくあることだが、結果的に作品の価値を損なっているようにしか思えないものもあり、そういうのは作品作りに対するアプローチとしていかがなものかと思ってしまう。
アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門審査員賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『江戸古地図の旅(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『石川英輔の本、5冊』
竹林軒出張所『大江戸庶民いろいろ事情(本)』

by chikurinken | 2019-01-05 08:16 | 映画

『ファンタスティック・プラネット』(映画)

ファンタスティック・プラネット(1973年・仏、チェコ)
監督:ルネ・ラルー
原作:ステファン・ウル
脚本:ローラン・トポール、ルネ・ラルー
アニメーション

映像がファンタスティック

b0189364_17160263.jpg 一部で伝説的な存在になっているSFアニメ映画。
 未来社会が舞台だと思われるが、地上では人間(と似たような種族)はすでに弱者になっている。世界を支配しているのは、ドラーグ族という(人間から見て)巨人族で、しかも高等文明を持つ。人間は、ドラーグ族にあるいは愛玩されたりもするが、基本的に駆逐されるべき存在である。人間族は、異常な速度で繁殖することからドラーグ族にとって厄介な存在になっており、それを勘案すると現代社会におけるネズミみたいな存在と言えるのか。その人間族が、いよいよドラーグ族に撲滅させられそうになり、それで反乱を起こす……というようなストーリーになる。
 今ではSFで良くあるストーリーと言えば言えるが、この映画は元祖みたいな存在かとも思う。それに何より、映像が非常にユニークで、奇妙な生物、植物が次々に登場して、相当な気持ち悪さも漂う。しかしそうは言ってもユニークであることには変わりなく、そのあたりは『エイリアン』のギーガーを思わせるような部分もある。いずれにしても、キャラクター・デザインはかなりのものである。映像の芸術性も高く、やはり独特の映像がこの映画の一番の魅力で非常に「ファンタスティック」である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『時の支配者(映画)』
竹林軒出張所『ラ・ジュテ(映画)』

by chikurinken | 2018-10-05 07:15 | 映画

『アリーテ姫』(映画)

アリーテ姫(2000年・アリーテ製作委員会)
監督:片渕須直
原作:ダイアナ・コールス
脚本:片渕須直
出演:桑島法子、小山剛志、高山みなみ、沼田祐介、こおろぎさとみ、佐々木優子(アニメーション)

映像の美しさ、世界観の完成度は特筆もの

b0189364_16045421.jpg ダイアナ・コールスの『アリーテ姫の冒険』が原作のアニメーション映画。『この世界の片隅に』の片渕須直の長編映画監督デビュー作である。
 映画自体は片渕作品らしく、非常に丁寧な作りで、シナリオレベルでも緊張感が漂い、優れた作品と言える。ただ、『マイマイ新子』とも共通しているが、ストーリーが複雑というかこんがらがっていてわかりにくい部分がある。この映画についても、見終わった後にクエスチョンマークが頭の中に飛来する。決してわからないことはないのだが、何かモヤモヤが残る。ストーリー自体は童話で、ある国の姫が魔法使いにさらわれるが、その困難を自力で乗り越える、という実に単純なものであるにもかかわらずである。要するに、あちこちのディテールにややこしさが残るわけだ。このややこしさの源泉の1つは、セリフだけで状況を説明し過ぎているためだとも思うが、その点、もう少し配慮があったら良いのではと思う。また原作からかなり改変されているため、たとえば「3つの難題」がまったく中途半端なまま宙ぶらりんになっていたりするのも、モヤモヤ感に繋がっているのではないかと思う。庶民を愛する姫という性格付けにしても、姫の魅力は増すが、そもそも無理があるような気がする。シナリオをもう少し整理したいところである。
 とは言え、映像の美しさ、世界観の完成度は特筆もので、そういう点では宮崎駿作品のレベルと言える。今回、この監督の長編劇場映画を3本見たが、どれもすばらしいできで、今後が非常に楽しみな人である。監督の年齢を考えると、3作というのはあまりに寡作であるが、『この世界の片隅に』が成功したため、今後は作品も増えることが予想される。今後に期待したい。ただしシナリオ監修については、誰かちゃんとした人にやってもらった方が良いと思う。
第1回「新世紀東京国際アニメフェア21」劇場映画部門優秀作品賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『この世界の片隅に(映画)』
竹林軒出張所『マイマイ新子と千年の魔法(映画)』

by chikurinken | 2018-04-03 07:04 | 映画

『マイマイ新子と千年の魔法』(映画)

マイマイ新子と千年の魔法(2009年・「マイマイ新子」製作委員会)
監督:片渕須直
原作:高樹のぶ子
脚本:片渕須直
出演:福田麻由子、水沢奈子、森迫永依、松元環季、江上晶真、中嶋和也(アニメーション)

あの頃の風景、子どもの世界が懐かしい

b0189364_19492300.jpg 昭和30年代の山口県防府市が舞台のアニメーション映画。原作が高樹のぶ子で、この人の出身が防府市ということなので、自伝的な話であることが推測される。
 活発な新子と、おとなしい都会的な転校生、貴伊子の触れあいや、子ども達が見る世界、彼らが作り出す遊びの世界が再現される。途中、幼少期周防で過ごした清少納言の話が出てきて、新子、貴伊子の現在の環境とオーバーラップする。今は麦畑になっている彼らの遊び場が、かつては周防の都だったという話が出て、そこに過去の都の姿が重なって現れてくる。このあたりはなかなか面白い魅力的な映像である。
 とは言え、こういった子どもの世界と空想が入り交じった話が延々と続き、ストーリーはどっちの方向に行くのか途中まで見当が付かず、まさかこのまま終わるわけではあるまいなと思いつつ、結局それなりの(あの時代にありがちな)複雑な事件が起こって収束に向かっていくという具合に展開して、物語としてきっちり完結していく。とは言うものの、現代の事件と平安時代の事件との絡み合いや、一貫して描かれる子どもの世界との関係が少々複雑すぎるきらいがあり、見終わった後はクエスチョンマークが頭の中に残る。もう少しシナリオを整理したいところである。
 映像は非常にきれいで緻密。これは『この世界の片隅に』とも共通で、この監督の特色と言える。この映像だけでも十分見る価値がある。特に中世とのオーバーラップのシーンは非常に魅力的である。映像の見所は随所にあり、この美しい映像表現はジブリの後継と言っても良いのではと感じた。いつまでも見ていたくなるような、実に魅力的な映像表現である。
 また映像とは別に、最後に貴伊子の言葉が当地の方言に変わっていたりしたのもリアルで良い。この映画は、ある意味で子ども達の成長話であり、そういうふうに捉えることで一段と魅力が増す。少々複雑でわかりにくいストーリーではあるが、あの頃の風景や、自分が子どもの時に感じたものと近い「子どもの世界」に懐かしさを感じる。個人的な好みで言うと「好き」の度合いはかなり高い。
モントリオール・ファンタジア映画祭最優秀長編アニメーション賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『この世界の片隅に(映画)』
竹林軒出張所『アリーテ姫(映画)』
竹林軒出張所『本日もいとをかし!! 枕草子(本)』

by chikurinken | 2018-04-01 07:49 | 映画

『この世界の片隅に』(映画)

この世界の片隅に(2016年・「この世界の片隅に」製作委員会)
監督:片渕須直
原作:こうの史代
脚本:片渕須直
出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世(アニメーション)

時代感覚が非常によく再現されている

b0189364_19324294.jpg 一昨年、全国的に評判になったアニメーション映画。広島から呉に嫁入りした主人公、すずが身体で経験する太平洋戦争がテーマで、原作はこうの史代の同名タイトルのマンガである。
 庶民の感覚から見た戦争はこういうものであったのかという「手触り」のようなものが感じられて、この映画についてはそういう点が非常に優れていると感じた。また、描写が非常に緻密で隙がない。リアルを伝えるのであればそういう緻密さは必須で、この映画の魅力はその「リアルさ」にある。さらに、映像が非常に美しいのも魅力である。映像表現についてはまったく申し分ない。
 また声優として出演しているのんのしゃべり方が、主人公の性格を反映し実にのんびりしていて、登場人物の魅力を増している。
 当時の生活が非常によく再現されているのもこの映画の魅力で、時代考証がしっかりなされているという印象である。こういう点でも隙がない。面白かったのは、登場人物たちが、戦争による混乱自体を災害と同格で捉えているような様子が垣間見えたことで、庶民感覚というものは確かにそうかもしれないと納得した。そういう時代感覚の再現がこの映画の最大の魅力ではないかと思う。
第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベストワン、監督賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『マイマイ新子と千年の魔法(映画)』
竹林軒出張所『アリーテ姫(映画)』
竹林軒出張所『長い道(本)』
竹林軒出張所『カラーでみる太平洋戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『戦後ゼロ年 東京ブラックホール(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映画 聲の形(映画)』

by chikurinken | 2018-03-30 07:31 | 映画