岡山の
ギャラリーグロスで、今日から「アーリング・ヴァルティルソン メゾチント銅版画展」が始まった。

早速見学に行った。そうそう、知らない人のために説明しておくと、メゾチントというのは、銅版画の1技法で、通常の銅版画が白地に黒の絵ができるのに対し、メゾチントでは黒地に白の絵ができる。あらかじめ、真っ黒になるように処理しておいた銅板を、少しずつ削りながら白い部分を広げていくという技法である。
このアーリング・ヴァルティルソンというお方は、現時点で当代最高のメゾチント作家なのではないかと僕などは思っている(単に他の作家を知らないだけかも知れない)。僕もこのヴァルティルソンの「ねぎ」という作品を知って、自分でもメゾチントをやってみたほどだ。彼の作品を見ると、メゾチント表現の可能性をうかがうことができる。
今回の展覧会は、グロスでは2004年以来5年ぶりの開催で、90年代の終わりから最新作までの15点が展示されている。例の「ねぎ」も展示されていた。前の展覧会のときも見ているはずなのだが、当時は銅版画にまったく興味がなかったため、全然印象に残っていない。銅版画に興味がない普通の人にとっては(かつての僕も含めて)大したインパクトを感じないのかも知れない。ただ(銅版画から離れて)静物画として見てもなかなか存在感がある作品が多く、一見の価値はあるのではないかと思う。
今回の展示を見るに当たり、上の「ぶどうのある配置」にも下の「ねぎ」にも見られる細かい白の表現に関心があったのだが、何となく白の絵の具で着彩しているような印象を受けた。グロスのマスターによると、プレス(印画)する前に爪楊枝を使って黒インクを取り除いているのではないかという話で、なるほどそういう技法があるのかと納得した。ただ、作品によっては絵の具を塗っているのではないかと感じられるものもあり、真相はよくわからない。ともかく、いずれこの爪楊枝技法を試してみたいと思う。
「アーリング・ヴァルティルソン メゾチント銅版画展」
ギャラリーグロス(岡山市北区富田町)
2009年6月26日〜7月11日

前回(2004年)の展覧会のハガキ:「ねぎ」↑