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竹林軒出張所

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『引き裂かれたイレブン』(ドキュメンタリー)

引き裂かれたイレブン 〜旧ユーゴのサッカー選手たち〜
(2000年・オランダ NPS/PVH)
NHK-BS1

『引き裂かれたイレブン』(ドキュメンタリー)_b0189364_11162591.jpg 1991年に旧ユーゴスラビアからクロアチアが独立し、サッカーのナショナル・チームも2つに別れることになった。
 独立直前の1990年5月13日、ユーゴスラビア国内リーグのディナモ・ザグレブ(クロアチア側)対レッドスター・ベオグラード(セルビア側)戦で、セルビア側のフーリガンが暴動を起こすという事件があった。このとき、ザグレブで出場していたボバンは、セルビア側の警官に暴行を働いたというかどでその後しばらく出場停止になるのだが、少なくともこの事件がユーゴにおけるサッカーでの分裂を決定づけることになったようだ。当然ナショナル・チームに対しても敵意が起こり、選手間の内紛はないにしても、相手側選手に対する観客からの敵意はある。
 たとえばクロアチア側で開催されたユーゴ・ナショナル・チームの試合にあっては、ユーゴ・チーム(当時は自国)に対し大ブーイングが巻き起こり、ユーゴ国歌斉唱の際もヤジやブーイングでかき消されるほどで、試合開始前などは、1人の選手が他の選手に「2万人の敵を相手に試合しよう」と声をかけていたほどだ。このあたりもこのドキュメンタリーで放送されていた。当時の監督はイビチャ・オシムで、チームを見事にまとめていたが、さすがに内戦が起こり自分の身も危険にさらされることになると、辞任せざるを得なくなる。こうして、ユーゴ・ナショナル・チームは分裂したのであった。
 このドキュメンタリーでは、その過程を、映像を交えながら、当事者のインタビューで丹念に構成していく。登場するのは、オシム、ボバンの他、ミヤトビッチ、ミハイロビッチ、サビチェビッチなどで、インタビューは2000年の時点に行われている。
 このドキュメンタリーの軸になっているのは、2000年に行われたユーロ予選のユーゴ対クロアチアのホーム&アウェー戦で、ドキュメンタリーの最初と最後にこの2試合が登場する。予測されるとおり、それはそれはすごい雰囲気で、サッカーどころではないのではないかと感じられる。
 実はこのあたりの事情はオシム関連の本で以前読んでいたので、僕自身はあまり目新しさはなかったが、事情をあまり知らなければ結構ショッキングなドキュメンタリーなのではないかと思う。
 なお、僕が見たのはNHK-BS1で放送された50分バージョンだが、85分のバージョンがDVDで発売されているようだ。
★★★

参考:DVD『引き裂かれたイレブン〜オシムの涙〜』
# by chikurinken | 2009-11-21 11:17 | ドキュメンタリー

『暗闇の思想を』(本)

暗闇の思想を 火電阻止運動の論理
松下竜一著
教養文庫

『暗闇の思想を』(本)_b0189364_1421938.jpg 松下竜一が、市民に愛される(気弱な)豆腐屋作家から、一般市民が眉をひそめるであろう闘う作家になる過程を描いた作。
 居住地の付近に建設が決まった豊前火力発電所に対し、それまでこの手の運動とはまったく関わりを持たなかった著者が、素朴な疑問を感じ始め、反対運動へと身を投じる過程、そしてその反対運動の進捗を描いている。
 弱い立場の市民が、自らの直感の正しさを信じ、大企業や行政に異議を唱える姿は共感を呼ぶ。著者らに私利私欲はなく(むしろ私財を投じている)、ただ自分の住環境を守りたいという、それだけの信念で動いている。保守的な住民からは孤立し、さまざまな嫌がらせを受け、それでも子ども達のためにとひたすら邁進する。企業側が作り上げた論理(「電気が足りなくなる」など)も一つ一つ検証し、突き崩していく。やがて、「環境権」(快適な環境の中で生きる権利)という概念を使い、環境権訴訟にまで踏み切る。
 この後の展開は、『明神の小さな海岸にて』『五分の虫、一寸の魂』へと続いていく。
 ちなみに、本書で著者が訴える「暗闇の思想」とは、「電気が足りなくなる」というのなら電気なしで暮らしていこう、今のままで「暗闇」の中で細々と生活していけばいいじゃないかという考え方である。今でこそその価値が見直される先進的な(でありながら素朴な)論理である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『明神の小さな海岸にて(本)』
竹林軒出張所『ルイズ 父にもらいし名は(本)』
竹林軒出張所『あぶらげと恋文(本)』
竹林軒出張所『五分の虫、一寸の魂(本)』
竹林軒出張所『潮風の町(本)』
竹林軒出張所『小さなさかな屋奮戦記(本)』
竹林軒出張所『仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記(本)』
竹林軒出張所『ケンとカンともうひとり(本)』

# by chikurinken | 2009-11-20 14:23 |

YouTube画像のダウンロード方法(Mac)、Toobleおすすめ

前にも書いたように(「昨日のつづき……そしてYouTube画像のダウンロード方法」を参照)、ここのところYouTube動画のダウンロードは随分苦労していたんだが、今日Toobleというソフトを使ったところ、今までの苦労は何だったのかというくらい簡単にできた。

Tooble
YouTube画像のダウンロード方法(Mac)、Toobleおすすめ_b0189364_1421553.jpg

 右上の検索窓にキーワードを入力すると、該当する動画(YouTubeのもの)が一覧表示され、この状態で、適当な動画にチェックマークを付けて右下の「Download」ボタンを押すと自動的にダウンロードされるという、至ってシンプルな操作で、実に簡単。ダウンロードされるファイルはMP4形式で手間いらず。しかもフリーソフトときた。拍手パチパチである。
 なお、5.99ドルのProバージョンは、動画からの音声の抜き出しも自動的にやってくれるらしい。
 ということで、僕は速攻でProバージョンを買った。たしかに、動画ダウンロード後、音声のみが自動的に抽出された。音声はwave形式で保存されるため、MP3とかAACとかに変換して使うことになる(iTunesで一発)。これならiExtract(「讃岐裕子の『ハロー・グッバイ』」を参照)も使う必要がない。
 あまりに簡単で楽なので、今後はこれを使うことになるだろう。いやいや、すでに今日、大量にダウンロードしてるんですけどねー……音だけ。
# by chikurinken | 2009-11-19 14:27 | パソコン

『ちあきなおみ ふたたび』ふたたび

 一昨日以来、ちあきなおみをいつ頃から聴き始めたんだろうとつらつら考えていた。
 もちろん子どもの頃からテレビで見ているので、「喝采」とか「夜間飛行」とかは知っていたし、古いところでは「四つのお願い」なんかだってリアルタイムで知っている。「喝采」でレコード大賞をとったときに、涙を流しながら、最後までぶれずに歌いきったのはなかなかすごみがあって、子ども心に歌手根性を感じた。だが正直なところ、昔の印象といったら、ちょっとケバくて不気味な感じのおばさん(失礼)という感じであまり好きじゃなかった。したがって数十年の間、ちあきなおみは僕の視界から消えていたんである。
 それが数年前にどこかでその歌唱力を知って、それで曲をいろいろ集めるようになった。iTunesにいつ頃入れたかわかればおおよその時期がわかるかなと思って調べてみたところ、2006年になっていた。どうやらこの頃、友川かずき経由でちあきなおみを聴き始めたんじゃないかと思うんだが正確なことはわからない。
『ちあきなおみ ふたたび』ふたたび_b0189364_13543637.jpg 友川かずきといえば(アングラ系統の)フォーク歌手で、ちあきなおみにも楽曲を提供している。一昨日写真入りで紹介した「夜へ急ぐ人」が友川かずきの作詞作曲の曲で、友川本人も歌っている。しかも友川バージョンには、ご丁寧に「夜へ急ぐ人(ちあきなおみに捧ぐ)」というタイトルが付いている。たぶんこれがきっかけでちあきなおみを聴き始め、TV番組『たけしの誰でもピカソ』(2007年2月)で放送された「ちあきなおみ特集」で、ちあきなおみのシャンソンの魅力に触れたのではなかったかと思う。だからBSで最初に放送された『歌伝説 ちあきなおみ』(2005年)は、やはりちょっと間に合っていなかったのだった。
 ちあきなおみは、演歌、ポップス、シャンソン、フォークまで幅広く歌っており、いろいろ音源も残っている。どれも高い水準で、僕はそれまで日本語のシャンソンなんか見向きもしなかったのだが、ちあきなおみがきっかけでよく聴くようになった。ジャンルを超えてどんな曲でも自分のものにして展開していくちあきワールドは、軽佻浮薄な商業音楽界にあって貴重である。

ちあきなおみの注目CD

『それぞれのテーブル』
ちあきなおみ、シャンソンを歌う!
『ルージュ』
ちあきなおみ、「中島みゆき、井上陽水、因幡晃」を歌う! 70年代のフォークソングを集めたもの。
『あまぐも』
ちあきなおみ、「川島英五、友川かずき」を歌う! 超異色作。「夜へ急ぐ人」も収録。
『大全集~黄昏のビギン~』
ちあきなおみ、何でも歌う! ポップと演歌の2枚組。ポップ盤に名作が多い。飛鳥涼作の『イマージュ』と『伝わりますか』が注目。演歌の方はほとんど聴いておりません。

参考:
竹林軒出張所『ちあきなおみ ふたたび』
竹林軒出張所『それぞれのテーブル』
# by chikurinken | 2009-11-18 13:57 | 音楽

ちあきなおみ ふたたび

 最近、俄然(一部で)注目を集めるちあきなおみだが、すでに生ける伝説にまでなっているのか、NHK-BSで2週に渡ってちあきなおみ特番が放送されることになった。先週『歌伝説 ちあきなおみ ふたたび』が放送され、ついに僕も目にすることができた。これは4年前に放送されたものの再放送だが、僕がちあきなおみに興味を持ち始めたのがその頃で、だがそのときすでに放送は終了していたのだ。その後、再放送がないものか、いつもチェックしていたが、なかなかそういう機会もなく、ついに今日の良き日を迎えることになったのだ。
 土曜日に録画したものを日曜日に見たのだが、構成がシャープで、最近のNHKに見られるような冗長さがなく、とにかく歌をたっぷり、フルコーラスで聴かそうという意図が見えて非常に良かった。拍手パチパチものである。
 来週放送されるのは、アンコール集成みたいな感じの番組だそうだが、こちらはなんとなく冗長になるんじゃないかという気がする。正直、ゲストが出てアレが良かったとかコレが良かったとか言うようなコーナーはまったく不要である。「できるだけ多くの曲をフルコーラスで」というのが衆目の願いだ(と思う)。

NHK-BS2
11月14日(土)『歌伝説 ちあきなおみ ふたたび』(終了)
11月21日(土)21時~22時59分『BSまるごと大全集 ちあきなおみ』

伝説の「おいでおいで」も放送された……
ちあきなおみ ふたたび_b0189364_9344396.jpg

「夜へ急ぐ人」より(第28回紅白歌合戦 - 昭和52年)
ちあきなおみ ふたたび_b0189364_9351761.jpg


参考:
竹林軒出張所『「ちあきなおみ ふたたび」ふたたび』
竹林軒出張所『それぞれのテーブル』
# by chikurinken | 2009-11-16 09:37 | 音楽