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竹林軒出張所

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『私たちは売りたくない!』(本)

私たちは売りたくない!
”危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭

チームK著
方丈社

私も打ちたくない!

『私たちは売りたくない!』(本)_b0189364_08345362.jpg Meiji Seikaファルマという製薬会社に勤務する有志の人々が、mRNAワクチン、特にレプリコンワクチンの危険性を訴える本。主な著者は、同社でMR(医薬情報担当者:医療機関に出入りする製薬会社の営業職のようなもの)を務めている人と思われる。
 この著者であるが、かつて同僚であった影山晃大氏がコロナワクチンを接種して3日後に死去したことで、コロナワクチンの危険性を実感し、このような悲劇が二度と起こらないようにという願いから、今回の本書による告発に至ったという(チームKという名前も影山晃大氏の名前にちなんだもの)。
 特に彼らの勤務先のMeiji Seikaファルマは、自己増殖型のレプリコンワクチンを国内で開発販売することになっており、得体が知れない上、しかもコロナワクチン以上に危険と思われるこの「ワクチン」を見切り発車的に売り出すことで、影山氏のようなワクチン被害者が増え、下手をすると(ワクチン薬害訴訟の結果として)同社の存続さえ危ぶまれる状況になるのではという危惧を抱いたことも大きな動機になっている。
 本書では、かつて日本中で接種されたmRNAワクチン(いわゆるコロナワクチン)の機序に加え、ワクチン被害の状況、そしてそれが広く伝えられていない現状を報告する。著者の周辺でもコロナワクチン接種後数日で突然死した人が何人かおり、コロナワクチンの危険性を身をもって実感しているようである(自らは数回ワクチン接種しているという)。コロナワクチンについては、通常であれば臨床試験などで10年以上かかるはずの開発機関がわずか1、2年で見切り発車的に使われたこと、そしてあちこちに体調を崩す人々や死亡した人々が出たこと、ワクチン接種が始まってから日本の年間死者数が跳ね上がったことなどを取り上げており、本来であれば誰もが疑問を感じるべき事例であるにもかかわらず、そのまま触れられずに過ぎていることに疑問を持っているようである。しかもレプリコンワクチンという、危険性が未知で得体の知れないものが、世界に先駆けて日本で流通しようとしている、しかもそれを担当するのが自社ということで、危機感を募らせているというのが、本書の主旨である。
 記述も平易で読みやすく、取り上げられるデータなども、一般的に広く流通しているものばかりで奇異さはまったくない。十分な説得力もあるため、(今さらではあるが)コロナワクチンに疑問を持った人々には格好の本と言えるかも知れない。特にレプリコンワクチンの危険性については、非常に参考になるのではないだろうか。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『コロナワクチン その不都合な真実(本)』
竹林軒出張所『ワクチン幻想の危機(本)』
竹林軒出張所『薬害「コロナワクチン後遺症」(本)』
竹林軒出張所『新型コロナワクチン 誰も言えなかった真実(本)』
竹林軒出張所『コロナワクチン失敗の本質(本)』
竹林軒出張所『コロナワクチン 私たちは騙された(本)』
竹林軒出張所『コロナ利権の真相(本)』
竹林軒出張所『新型コロナワクチンの光と影(本)』
竹林軒出張所『子どもへのワクチン接種を考える(本)』
竹林軒出張所『新型コロナワクチン 副作用が出る人、出ない人(本)』
竹林軒出張所『新型コロナとワクチンのひみつ(本)』
竹林軒出張所『もうワクチンはやめなさい(本)』
竹林軒出張所『ワクチン神話捏造の歴史(本)』
竹林軒出張所『ワクチン副作用の恐怖(本)』
竹林軒出張所『子宮頸がんワクチン事件(本)』
竹林軒出張所『乳幼児ワクチンと発達障害(本)』
竹林軒出張所『京大 おどろきのウイルス学講義(本)』

# by chikurinken | 2025-02-07 07:34 |

『台所太平記』(本)

台所太平記
谷崎潤一郎著、山口晃挿絵
中公文庫

変態性のない、ほのぼのする谷崎作品

『台所太平記』(本)_b0189364_08260613.jpg 谷崎潤一郎のエッセイ風の小説で、自宅に来ていた何人かの女中(今で言う家政婦みたいなもの、ただし住み込み)を題材にして、彼らの身辺と、主人公、千倉磊吉(おそらく著者の投影)との関係などを紹介していく作品である。以前読んだ『谷崎万華鏡』で、画家の山口晃がマンガ化していたものを読んでこの小説に関心を持っていたが、今回文庫化されているのを見つけて買って読んでみた。ちなみに、表紙と挿絵は、山口晃があの本に描いていた絵が適宜切り取られて使われている。
 『谷崎万華鏡』の「台所太平記」は、それぞれの女中の特徴が非常にうまく描かれていて楽しめたが、同時に主人公の一家が、衣食住から縁談に至るまで、彼女たちの生活の面倒をしっかり見ていたのが印象的で、現在の家政婦とは趣が異なっていたのに非常に驚いた。こういう関係は、千倉家のみに限らなかったはずで、当時の女中奉公が花嫁修業の一環だったということがよくわかった。当然現在ではこういう関係性はないが、一方で主人の家の側がこの千倉家のようにもののわかった人々でなければ、女中の方もやっていけなかったのではないかと思う。人によっては暴行を働く者もあるわけで、事実、この作品に登場する初という女中は、前の勤め先で主人に手をつけられそうになった(つまり暴行を受けそうになった)という話である。
 その初をはじめ、個性的な女中が何人も登場し、中には、謎めいた行動をする者、同性愛者で女中同士関係を持った者、癲癇(てんかん)を患っていた者、美人で我が強い者など、単なる人間観察にとどまらない面白さがある。また山口晃の挿絵もユーモラスで非常に味わい深く、登場人物に対するイメージを喚起する上で大いに役立っている。『谷崎万華鏡』では「詳しくは書かないので小説をお読みください」というようなフレーズがあったが、マンガでも原作のほとんどを網羅できており、しかもその雰囲気もよく再現できていたことが本書を読んでよくわかる。そういうことを考え合わせると、あのマンガ化は極上だったと言える。マンガを読んでから原作を読むという過程がこれほどしっくり来る例もなかなかあるまい。そのため、今回、十二分に楽しむことができた。
 この文庫版に付属していた解説(松田青子という人のもの)が、記述が差別的であることを繰り返し指摘していて、その偏狭さに少々いらだつ。時代背景を考えあわせると、記述自体に差別的な意識を感じることは決してなく、早い話が時代感覚の違いに行きつくわけで、そんなことは改めて言われるまでもなく読んでいるときでも気が付くのだ。そういうことを気にするのであれば、過去の小説などは読めなくなるわけで、そういう点を踏まえた上で接するのが大人の読み方というものである。この解説で繰り返し行われている指摘はむしろレベルの低さを感じさせ、こんな解説なら不要だと思わせる。文庫版の『谷崎万華鏡』(『谷崎マンガ 変態アンソロジー』というすごいタイトルになっている)に載っていた、山口晃と近藤聡乃の対談(こちらは優れもので非常に面白かった)でも掲載すれば良かったのにと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『谷崎万華鏡(本)』
竹林軒出張所『蓼喰う虫(本)』
竹林軒出張所『瘋癲老人日記(映画)』
竹林軒出張所『痴人の愛(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『刺青(映画)』
竹林軒出張所『卍(映画)』
竹林軒出張所『春琴抄(映画)』
竹林軒出張所『つれなかりせばなかなかに(本)』
竹林軒出張所『THE 陰翳礼讃(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『Chronicles of My Life(本)』
竹林軒出張所『私と20世紀のクロニクル(本)』

# by chikurinken | 2025-02-05 07:23 |

『西洋の敗北』(本)

西洋の敗北
日本と世界に何が起きるのか

エマニュエル・トッド著、大野舞訳
文藝春秋社

今度はトッドが大胆に「予言」した

『西洋の敗北』(本)_b0189364_18524427.jpg 人類学者、エマニュエル・トッドの新しい著作。トッドの著書については、これまでたびたびいい加減な作りの新書が出ていたが、本書は2023年10月に書かれた本格的な著作である。
 例によって人口学的見地から世界各国の状況を検討していくが、今回は、かつての家族形態に加えて、西欧の主要宗教であるプロテスタンティズム(プロテスタント主義)の退行による倫理の喪失も新たな尺度として取り入れられている。
 特に(自ら性を選ぶことができるという)過剰なトランスジェンダーにプロテスタンティズムの完全喪失が反映しており、それが米国、英国などの西洋諸国の現在の立ち位置だとする。一方で、ロシアや中国などの大家族制国家では、こういった倫理観が受け入れられず、また中東諸国やアフリカ諸国でも同様で、そのために、今回のウクライナ戦争でロシアを積極的に支援する国々が現れているのだとする。また、プロテスタンティズム的倫理観が欠如した「西洋諸国」ではすでに正しい政策決定を行うことができなくなっており、行き当たりばったりの政策に終始する上、無能な政治家・官僚ばかりがはびこる社会になっているというかなり厳しい見方をしている。で、このような尺度をツールとして使いながら、米国、英国、北欧諸国の他、ロシア、ウクライナ、東欧諸国などについて、各章で分析しており、最終的に「西洋の敗北」とウクライナの敗北を予見したのが本書ということになる。
 翻訳を担当しているのは大野舞という人で、かつてのトッドの翻訳よりはるかにわかりやすい文章にはなったが、相変わらず何を言っているのかわからない箇所があちこちにあった。原著に由来するのか翻訳に由来するのかはわからない。また、トッド自身が自らの知識基盤をそのまま投影しているために、こちらにその件に関する基礎知識がないことがたびたびあり、これまた言わんとしていることが伝わってこないことも多かった(これはかなりあった)。こういう箇所については、もっと丁寧な説明が必要と感じられる。
 本書ではウクライナの敗北を予見している(ウクライナ側の人口枯渇による)が、2025年の現状ではロシアの経済破綻の方が現実味を増しているように思われる。これは、本書執筆時とのタイムラグがあるため致し方ないが、ロシアの実質的な敗北という結果になれば、本書でのトッドの結論が間違っていることになり、各国の現状に対してどのような分析を行ったとしても途端に説得力を失ってしまう。家族形態に加え宗教的な視点を加えた分析は非常に面白い上説得力もあるが、これが万能のツールになるわけではなく、結局すべてをそれだけで片付けてしまうのは無理があるような気もする。興味深い分析であったが、全般的にとりとめがない上、やや独断的な印象も受ける。いずれにしても今後のウクライナ戦争の推移を見守る必要があると感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『帝国以後 - アメリカ・システムの崩壊(本)』
竹林軒出張所『グローバリズム以後(本)』
竹林軒出張所『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる(本)』
竹林軒出張所『問題は英国ではない、EUなのだ(本)』
竹林軒出張所『シャルリとは誰か?(本)』
竹林軒出張所『トッド人類史入門(本)』
竹林軒出張所『トッド 自身を語る(本)』
竹林軒出張所『トッド 混迷の世界を読み解く(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『トッドが語るトランプショック(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『トッド グローバリゼーションを超えて(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『第三次世界大戦はもう始まっている(本)』
竹林軒出張所『老人支配国家 日本の危機(本)』

# by chikurinken | 2025-02-03 07:52 |

『贋作の誘惑』(ドキュメンタリー)

贋作の誘惑 ニセモノVS.テクノロジー
(2022年・NHK)
NHK-BS

贋作絵画を取り巻く諸問題を広く紹介する
優良美術ドキュメンタリー


『贋作の誘惑』(ドキュメンタリー)_b0189364_08345559.jpg 現在の美術市場に贋作があふれかえっている現状について報告するドキュメンタリー。
 コレクターや美術館が美術作品を高額な金額で取引している現状は、関係のない第三者の立場から見ても、決して健全なものとは思えない。ある作品が法外な金額でやり取りされたというニュースを聞くといつもながら呆れ返ってしまうという状況があるわけだが、ただ実際には、高価な金額で取引された作品が実は贋作だったということが意外に多いという事実がこのドキュメンタリーからわかる。
 事の発端は、リヒテンシュタイン侯爵家が9億円で購入した「ヴェールを纏うヴィーナス」(クラーナハ作とされる)で、この絵に贋作の疑いがかかり、鑑定の結果、贋作の可能性が高いという結論が出された。この絵の元々の出所を探ったところ行きついたのが、自称アートコレクター、ジュリアーノ・ルフィニであった。そしてルフィニからは、他にも数々の「名画」が出ていることが判明し、サザビーズ(ルフィニから出たハルスの「紳士の肖像」を販売)、ルーブル美術館(これもルフィニから出た「紳士の肖像」を購入しようとしていた)までがルフィニ製作の絵画を本物と思い込んでいたというのである。さらにはメトロポリタン美術館がパルミジャニーノ「聖ヒエロニムス」、ロンドンのナショナルギャラリーがかつてオラツィオ・ジェンティレスキ「ダビデ」を購入していたが、これも出所がルフィニで、科学鑑定の結果、すべて現代に製作された贋作という結論が出た。つまりルフィニの贋作を鑑定士も美術評論家も見破ることができなかったわけである。こういった専門家たちは、その正体を見破れなかったことを反省するわけでもなく、自分たちの無能をさしおいて贋作師たちを激しく非難しているのだった。
 一方で現代では、科学鑑定の技術がかなり進んでおり、顔料や素材などの時代背景が分析できるようになっていて、贋作判定の精度も高くなっている。それもこのドキュメンタリーで紹介されており、近年では放射性炭素測定法まで導入されていることがわかる。つまり芸術作品の真贋がかなりの精度で判別できるようになっているのだ。
 このドキュメンタリーでは、ルフィニの他に、有名な贋作師、ベルトラッキも登場する。ベルトラッキは、近現代美術をもっぱら贋作しており、特にマックス・エルンストの作品に携わる。ベルトラッキは、贋作販売の罪で10年間収監されていたらしいが、このドキュメンタリーに非常に協力的で、その技法や製作過程まで詳らかにしている。彼のアプローチは、作家の半生をとことんまで調べ上げ、その作家が作りそうな作品を製作するというもので、決して他の作品を模写しているわけではない。こうなるとほとんど研究者のレベルで、ベルトラッキを一方的に悪者とする美術界の考え方にも疑問を抱かざるを得なくなる。
 実際のところ美術界では、現在美術作品を鑑賞のためではなく資産として取引する風潮が強く、それがために価格が高騰しているという背景がある。そもそも誰にも真贋が見分けられないような作品は、限りなく本物に近いと言えるわけで、一方的に贋作を非難するのもいかがなものかと、無関係の第三者である僕は考える。
 このドキュメンタリーでは、そういうような見方も紹介しており、もちろん贋作に肯定的とは言えないが、美術界全般の問題や風潮について広く扱っており好感が持てる。以前ベルトラッキを紹介したドイツのドキュメンタリーがあり(『贋作師ベルトラッチ』)一方的にベルトラッキを非難するような内容だったが、そのレベルより一歩先に進んでいる点で、見識の高いドキュメンタリーであると感じた。なお、ベルトラッキ製作の「贋作」はいまだに世界中の多くの美術館に所蔵されており、日本の美術館にも本物として展示されているものがあるらしい、ベルトラッキによると。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『贋作師ベルトラッチ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『偽りのガリレオ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『疑惑のカラヴァッジョ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フェルメール盗難事件(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ダビンチ 幻の肖像画(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ジュラシック・キャッシュ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スリーパー 眠れる名画を探せ(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2025-01-31 07:34 | ドキュメンタリー

『気候変動対策の“死角”』(ドキュメンタリー)

調査報道 新世紀File7 気候変動対策の“死角”
(2024年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル

ふたたび「これが調査報道か?」

『気候変動対策の“死角”』(ドキュメンタリー)_b0189364_08222217.jpeg 気候変動対策が杜撰であることは従来からあちこちで言われており、このドキュメンタリーで扱うのも同様の主張である。特に二酸化炭素の排出権取引は、問題があるものとして常に批判の対象だった。ここでは、カーボンクレジットと呼ばれている排出権取引が、データの偽装やメタン排出の野放図な管理のために実質的に二酸化炭素の削減に繋がっておらず、温暖化対策に効果を上げていないとする。
 こういうテーマに基づいて「調査報道」しているわけだが、その内容は従来型の他のドキュメンタリー作品とあまり変わらず、毎度のことだがこれを「調査報道」と呼ぶのは看板に偽りありではないだろうか。こういうところに排出権取引の偽装と似たような構造があるようにも感じる。
 排出権取引の問題を扱うのは有意義だが、内容に目新しさが少ないのと「看板の偽り」のせいで価値を損ねている。やはり『NHKスペシャル』には期待できないと思ってしまう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『カーボン・ラッシュ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『CO2と温暖化の正体(本)』
竹林軒出張所『グレタ ひとりぼっちの挑戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『"脱プラスチック"への挑戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『海に消えたプラスチック(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『中国“経済失速”の真実(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『盗撮・児童ポルノの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『オンラインカジノ 底知れぬ闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『中国・流出文書を追う(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2025-01-29 07:22 | ドキュメンタリー