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竹林軒出張所

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『毎日がアルツハイマー』(映画)

毎日がアルツハイマー(2012年・NY GALS FILMS)
監督:関口祐加
撮影:関口祐加
出演:関口宏子、関口祐加(ドキュメンタリー)

あるお年寄りを取り巻く家族の記録

b0189364_18070520.jpg 老齢の親が、ある日突然認知症に……というケースは今ではまったく珍しい事例ではなくなり、いつ身の回りで起こってもおかしくはない出来事になった。そのためもあり、現在、認知症を扱ったドキュメンタリーや本は増えてきている。この映画もそういったドキュメンタリーで、ある映画監督が、自身の母の変わっていく様子をカメラに収めるという当事者目線の作品である。
 このドキュメンタリーに登場する「母」は監督の母親であり、二世帯住宅に住んでいる。2階には監督の妹家族が住んでおり、母親は1階に一人暮らししている。母親の夫(つまり監督の父)は10年前に他界。こういう状況で、娘でありこの映画の監督でもある関口祐加は、この母の様子がおかしいという話を妹から聞く。要するに認知症の症状が出始めたということなんだが、この話を聞いて、オーストラリア、シドニー在住の娘(つまり監督ね)は日本への移住、つまり母との同居を決意する。実はシドニーには息子が1人いるんだが、仕方がないので、この息子は別れた夫に預けることになった(このあたりの事情はよくわからないが)。
 母に寄り添うように母の様子を撮影していくと同時に、その母の周辺、つまり自身の家族の周辺もあわせて撮影対象になる。母が少しずつずれていく様子も当然描かれ、こういう映像は正直見ていて辛く、見るこちら側も戸惑ってしまうんだが、本編に登場する精神科の新井先生の言葉、「認知症であっても問題があるのは脳の5%だけで、認知症になっても一瞬一瞬はまとも。ただ時間の継続の中でそれが続かないだけ」という言葉がいくらか救いになる。
 作者のツッコミが随所で字幕として出てくるなど、全体にユーモアが漂う作りになっており、そのあたりがこの作品の大きな特徴である。ただ基本は映像日記みたいな内容であり、極論すれば、あるお年寄りを取り巻く家族の記録というような映画である。もちろん作者の問題意識やメッセージ性は伝わってくるんで、それだけで終わっていないのは確かだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『いま助けてほしい 〜息子介護の時代〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『野田明宏先生のファンの皆様へ』
竹林軒出張所『老人漂流社会(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『エンディングノート(映画)』

# by chikurinken | 2018-11-27 07:06 | 映画

『すばらしい蒸気機関車』(映画)

すばらしい蒸気機関車
(1970年・たかばやしよういちプロ)
監督:高林陽一
脚本:高林陽一
撮影:高林陽一
音楽:大林宣彦
ナレーション:見上良也(ドキュメンタリー)

音楽の違和感だけが耳に付いた

b0189364_18021830.jpg 日本国内のいろいろな蒸気機関車を紹介するドキュメンタリー。「日本国有鉄道が現有する記録を基に自由に構成したもの」というコンセプトらしい。全国で撮影された蒸気機関車の映像を編集して、1本の作品にしましたというのがこの作品である。
 特定の線ごとにある程度まとめられた映像集が小編みたいな感じで繋げられている。登場する主な機関車は、B20、C61(鹿児島機関区)、C57(宮崎機関区)、C55、D60、D50(筑豊本線)、D51(大畑ループ線)、C59、C62(呉線)、C58、9600(宮津線)、D51、C58(伯備線)、C57、D51(山陽本線)C11、C57、8620(梅小路機関区)、C58(奈良線)、C60(熊本機関区)、D51、D60、D50(直方機関区)、C12(西舞鶴機関区)、C56(木次線)、C11(倉吉線)、9600(米坂線)、8620(花輪線)。その間に、機関車の説明、動輪がどうとか製造台数が何台だったとかそういった解説が入る。また途中に、女性モデルと機関車を一緒に映したプロモーションビデオ風の映像が入る。背景には機関車の歌が入り、さながらカラオケの背景映像みたいなクリップが出てくる(杉田靖子という人が歌っているらしい)。歌も変だし、この映像も演出の意図がよくわからない。
 音楽は、無名時代の大林宣彦が担当しているらしいが、総じてかなり違和感のある(恥ずかしさを感じる)音楽である。冒頭からして「うれしいひな祭り」の替え歌みたいな音楽が耳に付く。プロモーションビデオ風のシーンに登場した「す・ば・ら・し・い・機関車よ〜」と繰り返すテーマ曲(みたいな歌)もかなり奇妙な感じがある。音楽の主張が強すぎて映像に合っていないと感じる。
 映像は先ほども言ったように蒸気機関車とその周辺の風景ばかりで、蒸気機関車ファンには垂涎の映像かも知れないが、僕のような門外漢にとっては実に退屈なシーンが続く。周辺風景の映像は確かに懐かしさを誘うが、どの機関車も僕には同じに見えるし、まったくもって面白さは感じない。釜に石炭をくべるシーンは小さな子どもの頃から好きだった(なぜか知らない)ため、そのシーンはほぼ唯一心地良かった。また映像は、概ね春夏秋冬の順に並べられていて、季節感を感じられるようにはなっている。
 先ほども言ったように、鉄道好きには堪らない映画なんだろうが、僕にとっては音楽の違和感だけが耳に付いたのだった。やはり鉄道マニア向けの映画なんだろうなと思う……ま、当然だが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ある機関助士(映画)』
竹林軒出張所『裸の太陽(映画)』
竹林軒出張所『さびしんぼう(映画)』

# by chikurinken | 2018-11-26 07:01 | 映画

『人間革命』(映画)

人間革命(1973年・東宝)
監督:舛田利雄
原作:池田大作
脚本:橋本忍
音楽:伊福部昭
出演:丹波哲郎、芦田伸介、仲代達矢、新珠三千代、稲葉義男、森次晃嗣、山谷初男、佐原健二、渡哲也、佐藤允、雪村いづみ、黒沢年男

これは映画ではなく教材である

b0189364_18582519.jpg 創価学会の池田大作の著書が原作の映画。僕はあの団体にはまったく何の利害も関心も持っていないため、元々この映画にもまったく興味がなかったんだが、子どもの頃「にんげんかくめいっ!」とやたら連呼するCMが記憶に残っていたのと、スタッフとキャストが豪華であるということを最近知ったため、あまり見る機会もない映画であるし、今回見ることにした。見たのは、BSの日本映画専門チャンネルで放送されたものである。
 宗教団体の映画ということなんで、教条を押し通すような映画でなければ良いな、スペクタクルがあれば良いななどと思っていたが、残念ながら予想通りの映画だった。創価学会を作った戸田城聖という人の半生を描くんだが、この人の半生自体(治安維持法違反で投獄されはしたが)あまりドラマチックな要素がなく、この人に思い入れがない人にとってはまったく見所がないと言って良い。この戸田という人が、獄中で悟りを開き、出獄、そして終戦を経て、その思想の広報活動を行うというストーリー。後半は、延々とその説法のシーンが続き、戸田役の丹波哲郎が語り尽くす。丹波哲郎の講義はなかなか迫力があって良いが、内容については大して興味が湧かない上、ただただ講義し続けるシーンが綿々と続くため、信者以外の人間にとって面白いわけがない。よくぞこんな映画を劇場公開したなというような代物である。断じて言うが、これは(一宗教の)教材であり(通常の概念の)映画ではない。要するに関係者の間だけで見るような素材である。もっとも公開時に劇場に足を運んだのはもっぱら学会員だっただろうし、全国の劇場を学界が貸し切りしたものだと考えれば、それはそれで東宝側のビジネスとしてはOKだったのかも知れない。しかしそれにしてもだねぇ……(ここは丹波哲郎風の言い方で)。
 この映画、製作費も配給収入も当時日本映画界でトップクラスだったようで、そのことが当時話題になったことは記憶している。ただ、製作費は(金のある)宗教団体からおそらく金が出ているわけだし、配収の方も、会員がチケットをたくさん買わされた(そしてそれを一般人に無料で配付した)ことが容易に想像されるため、それについては十分合点が行く。言ってみれば元祖・角川商法みたいな映画で、当時斜陽産業だった映画界にとっては、こういったスポンサーは上客だったことが想像される。ただそういうような製作姿勢は決して後の世からすると褒められたものではないし、作品の内容も推して知るべしである。はっきり言って、個人的にはまったく見る必要がなかったし、時間の無駄だったとも思う(もっとも彼らの考え方の一端には触れられたような気がする)。橋本忍まで動員してこんなPVばりの映像を作ってしまうというのは、いやしくも映画という芸術に携わる企業の姿勢としてはきわめて恥ずかしいことだと言わざるを得ない。
★★

参考:
竹林軒出張所『二百三高地(映画)』

# by chikurinken | 2018-11-25 07:58 | 映画

『俺たちの旅 二十年目の選択』(ドラマ)

俺たちの旅 二十年目の選択(1995年・ユニオン映画)
脚本:鎌田敏夫
演出:齋藤光正
出演:中村雅俊、金沢碧、秋野太作、田中健、上村香子、岡田奈々、森川章玄、石井苗子、神田うの、左時枝、平泉成

元祖・同窓会ドラマ

b0189364_16202884.jpg 1975年代に日本テレビで放送された群像ドラマ、『俺たちの旅』は当時の若者たちの間で絶大な支持を得た。カースケ(中村雅俊)、オメダ(田中健)、グズ六(秋野太作)という3人の若者が同じアパートで同居し、あれやこれやの青春を繰り広げるというドラマで、僕自身は正直言ってそんなに面白いとは思わなかったが、成績優秀の同級生、ヤマナミ君が「『俺たちの旅』おもしろい!」と訴えていたのが印象に残っている。
 こういった人気を集めた群像ドラマであれば、当然「その後の姿」というのもドラマとして格好の素材になるわけで、そういう類の続編は他のドラマでもたびたび作られている。で、今回、最初の『俺たちの旅』放映から20年後に作られた『二十年目の選択』というタイトルの続々編(10年後バージョンもある)が放送されたんで、それを見たわけである。
 中身は、カースケ、オメダ、グズ六が40台になっており、それぞれエラくなっているという話で、それでもそれぞれ少しずつ問題を抱えていて人生に迷うというような風にストーリーは展開していく。ただし基本は、以前の登場人物が集まって過去を懐かしむというのが話の芯の部分になる「同窓会ドラマ」である。したがってオリジナルの『俺たちの旅』にかなりの思い入れがない限り、大して面白くはない。ストーリーもバカバカしくて惹かれる部分はあまりない。随時70年代のフォーク音楽が流れるのもいかにも「同窓会ドラマ」という感じがして片腹痛い。
 脚本は鎌田敏夫で、これはオリジナル版と共通である(『俺たちの旅』が鎌田敏夫作だということはまったく知らなかった)。鎌田敏夫は『男女七人夏物語』みたいな同様の群像ドラマも書いていて、しかもあのドラマでもこういった類の同窓会ドラマが作られたように記憶しているが、そうすると鎌田敏夫は群像同窓会ドラマの巨匠なのか。しかもどの作品も、浅くて面白味がないという点も共通している(あくまで個人の感想です)。それでも当時世間ではこういったドラマが人気を集めていたわけで、(僕から見ても)ブラウン管を濁す程度の役割は十分果たしていた。ということであれば僕がことさらいろいろ言う必要もないんだろう。ただこのドラマについては、取って付けたようなシーンが多い上、セリフに面白味がないとか気恥ずかしいセリフが多かったりとか、そういうことは見ていて感じたんで、それについてはここで書いておこうかなと思った次第である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『舞踏会の手帖(映画)』
竹林軒出張所『わたしのペレストロイカ(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2018-11-24 07:20 | ドラマ

『君は海を見たか』(1)〜(11)(ドラマ)

君は海を見たか (1)〜(11)(1982年・フジテレビ)
脚本:倉本聰
演出:杉田成道、山田良明
音楽:朝川朋之
出演:萩原健一、高橋恵子、伊藤蘭、田中邦衛、柴俊夫、六浦誠、小林薫、梅宮辰夫、下條正巳、平泉征、高岡健二

難病患者を家族に持つ人間の心理描写が見事

b0189364_18434264.jpg 若くして妻を亡くした仕事人間のサラリーマン(萩原健一)が主人公。現在小学生の子ども(六浦誠)がおり、家では妹(伊藤蘭)が母代わりで子どもの面倒を見ている。そういう状況で、子どもが病気で入院することになった。その後、子どもがウィルムス腫瘍という難病であることが判明。当初は、それでも仕事優先で邁進していたが、やがてそれが原因(上司の親心である)で進行中の大きなプロジェクトの担当から外される。はじめは子どもとの接し方が分からないなど(長いことまともに相手していなかったため)いろいろと壁に突き当たるが、徐々に子どもと接する時間が長くなり、心も通い合うようになる。余生3カ月と診断されているため、子どもの残りの人生を充実させようと奮闘するようになるというようなストーリー展開になる。ごく大雑把に言うとそういう内容だが、他にも主人公の再婚がここに絡む他、子どもを失うという事実を前にして狼狽する親の心情がうまく描かれていて、しかも子どもの教育の問題にも踏み込んでいる。そのため、中身はかなり充実している。
b0189364_18445923.jpg 実はこのドラマ、この10年以上前に日本テレビでも製作されているらしく、しかもその後映画化までされたため、この作品で3回目のドラマ化ということになる。言ってみればリメイクだが、『北の国から』でヒットを飛ばした半年後に、同じフジテレビの『金曜劇場』の枠で放送された作品であるため、かなり力が入っている。シナリオの完成度も高く、ドラマとしては割合ありきたりな「不治の病」テーマでありながら、悲劇にとどまらない奥深さが全編漂っている。さまざまな問いかけもあり、それは『北の国から』と共通するテーマであったりもするんだが、非常に意欲的という印象である。
 キャストは、『前略おふくろ様』の萩原健一と梅宮辰夫に『北の国から』の田中邦衛など。萩原健一は『前略おふくろ様』と違って落ち着いた演技で迫真である。梅宮辰夫の課長も異色の役(部下が休み返上で仕事に駆けずり回っているにもかかわらず、休日はきちんと取るような非会社人間)どころを淡々と演じていて好感が持てる。他にも、ゲスト的に小林薫、戸川純、水沢アキ、長谷川初範、大友柳太朗、ガッツ石松、芹明香らが単発で出てくるなど、キャストは結構豪華である。『中学生日記』で風間先生を演っていた湯浅実が医師として登場するのも新鮮である。
b0189364_18440142.jpg ドラマの中で使われている谷川俊太郎の詩『生きる』も大変効果的で良い。またテーマ曲のショパンのワルツ第10番もうまい使われ方で感心する(朝川朋之の編曲も非常に良い)。同じ倉本聰作品の『風のガーデン』でもショパン(夜想曲第20番)をアレンジしたものが使われていたが、あれよりも数段上品で良い。全体に渡って(特に後半)隙のない佳作で、黄金時代の倉本聰+フジテレビの勢いを感じさせるドラマであった。今見てもあまり古さを感じさせないという点も、完成度の高さを反映しているのではないかと思う。もっとも病院で医師がタバコを吸ったりするのは時代だなーと思う。当時、このドラマが終わった後、同じ枠で放送されたドラマが山田太一の『早春スケッチブック』(これも死がテーマ)であったというのもすごい。金曜劇場、今考えると非常に豪華であった。
★★★★

追記:
 舞台美術家の妹尾河童が「アートディレクター」として名を連ねていて、どういう風にこの番組に関わっていたのかは詳しく分からないが、途中一瞬出てきた子ども部屋(ヨットのキャビン風)の透視図が彼の作であることは見てとれた。この子ども部屋の内装ももしかしたら彼がやったのかも知れない。

参考:
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『あっこと僕らが生きた夏(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』

# by chikurinken | 2018-11-23 07:42 | ドラマ

『光と影を映す』(本)

光と影を映す
山田太一著
PHP研究所

本になるとこう変わる

b0189364_17314190.jpg NHK-BSでかつて放送された『100年インタビュー 脚本家 山田太一』を書籍化したもの。当初の危惧通り、やっぱり出た。内容についてはかつてこのブログでも紹介し、しかも内容についてもそのまま一部書き起こしたため、個人的にはあまり目新しさはないが、どういう風にまとめられているか興味があったため、今回読んでみた。
 元の番組、つまり『100年インタビュー』が非常によくできており、内容も充実していて面白かったため、この本の内容も推して知るべしで、内容的には非常に興味深い。あの番組を見られなかったが見たかったという人にとっては格好の素材と言える。
 今回は、語られた内容がどのように編集されているかというのが僕にとっての一番の関心事であったため、そういう視点で本書に当たったわけだが、僕が前回書き起こした部分と比較すると、出版用の録音の書き起こしというのがこういう風に行われるのかというのが非常によくわかる。山田太一によって語られた話が、この人の魅力を損なわない程度に変更された上でわかりやすく書き起こされている。その結果、非常に読みやすい文章になっている。僕が書いたときは一言一句ほぼそのまま取り上げたため、多少の読みづらさはある。ただあの独特の遠慮がちな語り口が入っているという面白さもある。僕としては自分で書き起こしたものの方が面白いと思うが、本としてそのまま書くのが良いとはおそらく言えないだろう(山田太一自身も、この原稿であれば、かなり手を入れるんじゃないかと思う)。その点で、非常に良い按配でまとまっている本と言える。
 ブログに掲載したのは、この本の8ページから39ページくらいまで、第1章から第2章までに相当する。テレビで放送されたものより本書に収録されている内容の方が多いが、これは放送時にカットされた部分だと思う。放送されなかった(と思われる)内容は他にもあちこちにあって、そういう意味では、あの番組を見た人もこの本を読む価値はあるということだ。いずれにしても良くまとめられていて、インタビュー本としては上出来であると思う。ただし本自体については、字がかなり大きいため、内容は薄目という印象である(なんせ1時間半の放送を本にしたんだから)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー ロナルド・ドーア(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『夢追い漫画家60年 (100年インタビュー)(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2018-11-22 07:31 |

『英単語の語源図鑑』(本)

英単語の語源図鑑
清水建二著、すずきひろし著、本間昭文絵
かんき出版

語源から英単語を憶えようという本
絵が多いため記憶に残りやすい


b0189364_18055575.jpg 語源を利用して英単語を憶えようというアプローチの本で、入試参考書と考えた方が良いのかも知れない。
 『語源でふやそう英単語』『語源でわかった! 英単語記憶術』などの本と同じコンセプトだが、大きく違うのはイラストがふんだんに使われているという点である。したがってイメージが沸きやすい、つまり暗記しやすいということになる。イラストは丸に点々で顔みたいな単純なもので、面白味はあまりない。取り上げられている単語も少ないし、優しい単語だけでなくかなり難しい(英検一級レベルの)単語もそれなりに混ざっている。それを考えると大学受験のためにこの本に取り組んで全部憶えようとするのは無駄が多いような気もする。むしろ、大学受験とは関係なく英語の勉強をしたいという層が一番のターゲットになるのかも知れないが、そういう点で多少どっちつかずの中途半端さは残る。
 まあしかし、たとえ拙いにしてもイラストで印象付けようという試みはきわめて的を射ている。大量の単語をリストで並べられてもまず憶えることはできないだろうし。その上、索引も付いているなど、良い本を作ろうという工夫も見受けられる。そういう点で、語源学習入門としては格好の本になっているのではないかと思う。アマゾンのレビューによると(少なくとも第4刷までは)誤植が多いという話であったが、僕が買った第7刷では、誤植に気が付かなかったんで、随分改善されているのではないかと思う。そのあたりも出版に対する真摯さが窺われる。
 なお収録されている単語は約1000だが、そのうち3分の1は派生語として紹介されているだけなんで、実質的には5、600語というところかな。ただこういうコンセプトの本であればそれで十分なような気もする。語源辞典風の本が必要だというのであれば、『語源中心英単語辞典』みたいな本を常時手元に置いておくのも良いのではないかと思う(ただしこの本、必ずしも使いやすいわけではなく、調べたいが収録されていないという単語も目立つ。良い本だとは思うが)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『語源でふやそう英単語(本)』
竹林軒出張所『語源でわかった! 英単語記憶術(本)』
竹林軒出張所『英語の語源の話(本)』
竹林軒出張所『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史(本)』
竹林軒出張所『ひらがなでよめばわかる日本語のふしぎ』(本)
竹林軒出張所『日本人のための日本語文法入門(本)』

# by chikurinken | 2018-11-21 07:05 |

『雪』(本)


中谷宇吉郎著
岩波文庫

真摯な名著であるが荷が重かった

b0189364_18230599.jpg 中谷宇吉郎の『雪』といえば、名著として名高い書で、元々岩波新書旧赤版で発表されたものだが現在は岩波文庫に入っている。中谷の代表作と言っても良い著作で、雪にまつわるあれこれから自身の雪の研究に至るまでを一冊にまとめた好著である。本書の「雪の結晶は、天から送られた手紙である」という言葉はよく知られている。
 第一章「雪と人生」、第二章「「雪の結晶」雑話」、第三章「北海道における雪の研究の話」、第四章「雪を作る話」の4章構成で、第一章は雪害について書かれたエッセイで、雪の研究の必要性にまで話が至る。雪をテーマにした本の導入部分としては実に的を射た章である。第二章では、これまでの雪の結晶についての記録を紹介し(ベントレーや土井利位の『雪華図説』)、さまざまな種類の雪の結晶がどのようにできるかについて説明する。第三章は、中谷の雪の研究の具体的な紹介になる。序盤は研究をどのように行ったかという具体性のある話でなかなか楽しいんだが、後半になってくるとにわかに専門性が高くなる。雪の結晶を分類して、それがどのような気象条件でできあがるか紹介するというもので本書の圧巻と言って良い箇所である。そして最終章は、実際に雪の結晶を作ってみたという実験を紹介する。これも非常に画期的な実験だったんだろうが、専門性が非常に高いため、こういった分野に関心がなければあまり面白味は感じないんではないかと思う。内容はそれほど難しいことが書かれているわけではなく、しかも語り聞かせようというような優しい意図が文章にも感じられるんだが、いかんせんほとんど関係者向けの論文という印象で、僕はこの章を読むのにかなり難儀した。
 優れた著作であることはわかるし、著者の真摯さにも好感を持つのであるが、僕には(特に後半)少々荷が重い本だった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ドミトリーともきんす(本)』

# by chikurinken | 2018-11-20 07:22 |

『母ちゃんのごはん』(ドキュメンタリー)

母ちゃんのごはん(2017年・SBC)
SBC信越放送 SBCスペシャル
NHK-BSプレミアム ザ・ベストテレビ2018

社会的弱者は
細い蜘蛛の糸に頼るしかないのか


b0189364_15551551.jpg 千葉在住のシングルマザー、けいこさんが、子育ても仕事もなかなかままならない状況を打ち破るために、長野県青木村への移住を決意して自分たちの生活を変えていく、その過程を追うドキュメンタリー。
 話は、千葉在住時代から始まる。子どもが小さい頃は、この地域で待機児童が多かったことから子どもを保育園に預けることができず、そのために仕事もできないという状態が続いた。子どもがなんとか保育園に通える状態になっても、仕事は夜遅くなり、しかも正社員になれないため収入も少なく生活が安定しないという状況が続く。子どもと接する時間も短く、一方で子どもは保育園や学校では問題を起こしていないが、食が細かったりして心配もある。
 こういった状況で、このけいこさん、将来が見えてこない現状を打開できるならばということで、地方への移住を検討する。いくつかの地方自治体は、シングルマザーを財政面などで支援しながらその地の介護職などに就いてもらうというような制度を用意しており、こういう労働者家族招聘制度を過疎対策として活用する自治体が現在増加中ということ。引っ越しにあたり一時金を出したり、数年間定住した時点で一時金を出したりという大盤振る舞いをする自治体もある。このような自治体の姿からは、すでに日本中で過疎が大問題になっている現状というのも浮かび上がってくる。
 その中でけいこさんが選んだのが長野県青木村である。青木村では一時金などは出ないが、村営住宅が安価に提供されることから、移住者は居住費を安く抑えられるというメリットがある。また子どもが行くことになる学校の環境も非常に良い。そういう理由でけいこさんは青木村を選んだわけで、しかもその後、製造業に正社員で採用されることも決まり、豊かではないが、まともに生活できる状況に少しずつ変化していく。このような変化の過程が紹介されて、番組は終わる。けいこさんの精神的な状態、そして母子の生活が徐々に真っ当な状態に改善していることも画面に映し出され、こういった(良い方への)状況の変化が窺われ、視聴者は見ていて安堵するという内容のドキュメンタリーである。
 このドキュメンタリーでは、シングルマザーという社会的弱者を取り巻く過酷な日本の現状が、彼ら弱者の視点からあぶり出されていくが、一方で彼らが居住地を変えるという大胆な行動を執らなければ改善が望めないという状況についても紹介されていく。こういうような状況に直接関係のない僕などの部外者も(話に聞いたりはしているが)、ドキュメンタリーによる疑似体験を通じてそういう事実があることに気付くわけで、同時にそういった現状に大いに驚いてしまうのである。それでもこのけいこさんについては、まだ何とか改善できるオプションがあっただけマシという考え方もできる。他の多くの困窮している人々もこういう制度を活用できることが望ましいわけで(過疎化、少子化という社会の変動に伴ってこういったオプションが増えていくのも皮肉な話だが)、多くの人々が利用できるよう、こういう制度をもっともっと広報して周知させるべきではないかとも感じた。細い蜘蛛の糸であってもないよりはずっと良い。もちろん社会全体が、弱者にも配慮できる余裕を持つよう転換するのが理想なのは間違いないのだが。
第37回「地方の時代」映像祭2017グランプリ受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『子どもの未来を救え(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『セーフティネット・クライシス(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『たんぽぽの日々(本)』
竹林軒出張所『グッドバイ・ママ (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『プルパン あずき菓子はオモニの愛(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2018-11-19 07:54 | ドキュメンタリー

『知床 シャチ 謎の大集団を追え』(ドキュメンタリー)

知床 シャチ 謎の大集団を追え(2018年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

見所満載
シャチに親近感が湧く


b0189364_17114069.jpg 北海道の知床半島沖にシャチが大量に棲息する海域があるらしい。確認されているだけでも400頭以上おり、人口密度ならぬシャチ口密度は世界最高レベルという。大勢のシャチの研究者たちが、一昨年から2年間に渡ってこの海域に入ってシャチの共同調査をしたらしいが、その際にこの番組のスタッフも、その舟に同行して研究者たちと一緒にシャチのさまざまな生態を映像に収めた。それをまとめて一本の番組にしたのがこのドキュメンタリーである。
 シャチが海面上に跳びはねる映像の他、親のマネをする子シャチの映像や40頭を超すシャチが横一列に並んで泳ぐ映像など、かなり珍しい(らしい)映像もある。シャチについてはいまだにわかっていないことが多く、この横一列に並ぶ行動も何のためかわからない。シャチは一般的に母系の家族単位で行動しており、少なくともこの一列の集団が複数の家族で成り立っているのは確からしい。そこである研究者は、これを集団見合い(一種の婚活パーティ)ではないかなどと推測していた。これについてはある程度説得力はあるが、まだまだ検証が必要なことは言うまでもない。
 このドキュメンタリーで紹介されるシャチの映像は、とにかく目新しいものばかりである。しかも自然の景観のみに特化して見ても、美しくて珍しく非常に価値の高いもので、そのためもあり50分が短く感じられた。NHKスペシャルで放送されるこの手の自然ドキュメンタリーは、今まで失望させられることの方が多かったが、この作品はかなり上玉の部類に入る。数年前に放送された『クジラ対シャチ』に匹敵すると言っても過言ではない。こういうことを考え合わせると、NHKスペシャルのシャチ担当が優秀ということになるんだろうか(そういう人がいるかどうかは知らないが)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『大海原の決闘! クジラ対シャチ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『深海の超巨大イカ(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2018-11-18 07:11 | ドキュメンタリー

『ツール・ド・奥の細道』(ドキュメンタリー)

ツール・ド・奥の細道 忌野清志郎
(2002年・NHK)
NHK-BSプレミアム プレミアムカフェ

忌野清志郎の元気な姿が見られる

b0189364_16591395.jpg 晩年自転車に凝り出した、今は亡き忌野清志郎が、奥の細道の足跡を辿って自転車旅をするという企画のドキュメンタリー。周りにマッサージをはじめとするサポート・スタッフが付くという状態で、若干お大尽旅行のようにも見えるが、テレビ番組なんで仕方がない。普通の自転車旅であれば、荷物も多くなるし、これだけ軽装というわけにはなかなかいかない。これは、見る上で少なくとも前提として頭に入れておくべき事項である。
 基本的には単純に自転車旅を追うというもので、もちろん清志郎だけにあちこちの出先にファンがいたり、あるいは現地で歌を歌ったり、現地の人と交流したりということはあるが、突き詰めるとそれだけの紀行番組である。芭蕉の足跡を辿ることはできるが、結局は紀行番組で終始する。言ってみれば、現在NHK-BSでやっている、火野正平の『にっぽん縦断 こころ旅』のオリジナルの番組という印象である。この番組の唯一の見所は、やはり忌野清志郎の元気な姿が見られるという点か。なおナレーションは、清志郎の熱烈なファンという竹中直人。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ちょっと憤りを感じてます……』
竹林軒出張所『本日の歌「ヘルプ!」』
竹林軒出張所『本日の歌「軽薄なジャーナリスト」』
竹林軒出張所『こんな歌もあります -- 「原発賛成音頭」』
竹林軒出張所『ラストデイズ「忌野清志郎×太田光」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『忌野清志郎 トランジスタ・ラジオ(ドラマ)』
竹林軒出張所『ボクの就職 (1)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『サヨナラCOLOR(映画)』

# by chikurinken | 2018-11-17 07:58 | ドキュメンタリー

『永平寺 禅の世界』(ドキュメンタリー)

永平寺 禅の世界(2018年・NHK)
NHK-BS1

現代風の演出が冴える映像ドキュメンタリー

b0189364_18135927.jpg 曹洞宗の本山、永平寺の四季の移ろいと寺での雲水(修行僧)の修行を記録したドキュメンタリー。
 全体的に詩的な映像が多く、説明的な要素は少なめである。ところどころに、寺の重役(と言って良いのかわからないが)の住職や雲水たちのインタビュー映像が交えられる。また、開祖道元の『正法眼蔵』の一節が随時流されるなど、禅への理解の助けにしようというアプローチも見受けられる。永平寺のドキュメンタリーは、これまでいくつか見てきたが、このドキュメンタリーは非常に現代風な演出で、きわめて洗練されている。映画の『ファンシイダンス』に出てきた雲水の日常の所作(洗練されていて個人的には好き)も紹介されていて、そのあたりも興味深かった。
 さらに、曹洞宗の世界的な広がりも紹介され、全米のあちこちに点在するという禅道場の映像や、ミラノの曹洞宗の禅寺(永平寺公認)の修行の様子なども紹介される。ミラノの禅寺では、永平寺とほとんど同じような修行が修行者(雲水もいるようだ)によって行われていて、しかもこの寺を開いたのはイタリア人の禅僧で、そういう点が非常に意外で斬新な感じがした。いろいろなストレスにさらされて苦しんでいる現代人にとって、禅が自身を見つめ直すきっかけになるということで、禅つまり曹洞宗が世界的な広がりを持っているということなんだそうだ。
 ただ僕の個人的な感覚で言うと、雲水の修行ということにまでなってしまうと、自身を見つめ直すというよりむしろ世間との関係を断つという方向性に向かうような気がして、これはもう現代社会とは異なる世界に行くといういわゆる「出家」になってしまい、方向性がまったく違うような印象を持っている。現代人が禅をやってみる程度であれば有益だと思うが、そこを極めていくということになると、俗世から離れる方向に行きはしないのかと、毎日禅を行っているというアメリカ人(おそらくIT関連の勤め人)を見て感じた。
 それから、このドキュメンタリーには全編ナレーションが入っているが、テレビ放送ではナレーションの声が著しく小さく、ほとんど聞き取れないレベルであった。どういうつもりなのかわからないが、こういうナレーションならばないのと同じである。僕は字幕を表示してそれを読んでいたんだが、有意義なナレーションだと感じた。それならば聞こえるように出すべきではないかということになる。もっともこれはうちのテレビ環境のことだけかも知れないが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『NHK特集 永平寺(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2018-11-16 07:13 | ドキュメンタリー

『よみがえる金色堂』(ドキュメンタリー)

よみがえる金色堂
(1970年・日映科学映画製作所)
脚本・演出:中村麟子
撮影:中山博司、石原保

記録映像に終始した作品
だが記録としての価値は十分ある


b0189364_17550975.jpg 岩手県にある中尊寺金色堂は、奥州藤原氏の栄華を反映した建物として有名で、全面に金箔が貼られた建物が現存する。おそらく現在拝観できるようになっているんではないかと思うが、行ったことがないんで詳しいことはわからない。その様子は写真では見たことがあり、金閣を思わせるキンキラキンの外観は、かつての奥州藤原氏の繁栄を今に伝えるものだと思っていたが、実はこの金色堂、昭和37年から5年かけて修理し、その際に金箔を施したもので、それ以前の写真を見るとかなりボロボロで、金色堂と言うよりもわびさび堂というような風情である。このあたりは金閣と事情は似ているようである。
 で、このドキュメンタリーは、その際の復元修理の模様を記録したもので、金色堂に使われている螺鈿細工の再現や、蒔絵を施した柱の再構築などにスポットが当てられている。興味深い点も多いが、記録映像としては割合ありきたりで、特別目を引くものはない。もちろんそれぞれの職人技は見所が多いが、1本の映像作品としては平凡である。あくまでも記録の範疇を出ない。
 それより何より、金色堂を保護するために鎌倉時代に建てられた覆堂が、コンクリートで復元されたという話(これについてはこの作品の中で少しだけ触れられている)にいささか驚いた。金色堂については、文化財を作られたときと同じ方法で再現するという原則が貫かれているらしく、これは現在の文化財保護のあり方に共通する考え方であり、十分納得できるが、覆堂についてはまったくそうではないことになる。何でも耐震性などを考慮したということだが、コンクリート建築の方が災害時は危険だという考え方もある。文化財保護という観点からも受け入れられない話だと思うが、関係者はそのあたりは平気だったんだろうか。
 現在、修復工事をしている薬師寺東塔にも、基台にコンクリートを施したなどという話を先日聞いたが、文化財保護の観点から考えると、こういった少しずれた方法論がまかり通っていることに大変違和感を感じる。これはこの作品とは直接関係ない事柄ではあるが、映像を見ていて一番気になった点であるため、ここに記しておく。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『五重塔はなぜ倒れないか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『宮大工西岡常一の遺言(本)』
竹林軒出張所『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言(映画)』

# by chikurinken | 2018-11-15 07:33 | ドキュメンタリー

『ムッシュ・カステラの恋』(映画)

ムッシュ・カステラの恋(1999年・仏)
監督:アニエス・ジャウィ
脚本:アニエス・ジャウィ、ジャン=ピエール・バクリ
出演:アンヌ・アルヴァロ、ジャン=ピエール・バクリ、ブリジット・カティヨン、アラン・シャバ、アニエス・ジャウィ、ジェラール・ランヴァン、クリスティアーヌ・ミレ

笑いあり涙ありだが
一方であれこれ放り込みすぎ


b0189364_16391560.jpg 内容はほとんど憶えていなかったが、前に見たときは大変気に入っていたようで、過去に★★★★を付けていた(竹林軒『2004年の5本:リスト』参照)。そんなに気に入った映画ならば……ということで(内容は憶えていなかったわけだが)今回もう一度見ることにした。
 芸術などにまったく造詣のない現実主義の会社社長、カステラ氏が、自身の英語家庭教師になった女性をたまたま舞台で目にして(彼女は売れない舞台女優だった)突然恋してしまう。その舞台女優クララの周辺は芸術家ばかりが集まるコミュニティで、いきなりカステラ氏、慣れていない別世界の環境に放り込まれることになるというのがメインになるストーリー。
 サブプロットがいろいろ織り交ぜられていて、カステラ氏の運転手や護衛、それからよく行くバーのバイト女性の恋模様まで絡んでくる。監督は、バーのバイト女性も演じているアニエス・ジャウィという人。しかもカステラ氏を演じたジャン=ピエール・バクリも製作に一枚噛んでいて、同時に共同脚本にも名を連ねている。舞台女優を演じたアンヌ・アルヴァロという人もフランスでは有名な舞台女優らしい。この映画の関係者たち自身が多才な人たちばかりで、映画に登場する芸術家たちの集まりは彼ら(つまり自分たち)がモデルかとも感じる。
 全編軽いタッチで、笑いやもの悲しさもある、いわゆるペーソス・タッチの作品であるが、少々こんがらがったような印象が最後まで残ったのは、サブプロットが多すぎることが原因ではないかと思うが、それでも最後はうまくまとめられていて、試聴後感は良い。だが前回見たときほどの感動はないなーと思う。良い映画ではあると思うが、前に見たときにどこにそんなに感心したのかも思い出せない。
2000年セザール賞作品賞、脚本賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『アメリ(映画)』
竹林軒出張所『仕立て屋の恋とフェリックスとローラ(映画)』
竹林軒出張所『髪結いの亭主(映画)』
竹林軒出張所『親密すぎるうちあけ話(映画)』

# by chikurinken | 2018-11-14 07:38 |

『渚にて』(映画)

渚にて(1959年・米)
監督:スタンリー・クレイマー
原作:ネヴィル・シュート
脚本:ジョン・パクストン、ジェームズ・リー・バレット
出演:グレゴリー・ペック、エヴァ・ガードナー、フレッド・アステア、アンソニー・パーキンス、ドナ・アンダーソン

テーマは意欲的だが内容が伴わない

b0189364_20535855.jpg 核戦争後の世界のありさまを描く一種の終末テーマのSF映画。北半球では核戦争のせいで人類が絶滅し、オーストラリアにはまだ放射能の影響が及んでいないため、オーストラリアの人々は普通の生活を送っている……というのが背景になっている状況である。
 主人公は、米海軍の潜水艦艦長(グレゴリー・ペック)で、たまたま海底にいたため核戦争の影響を受けず、そのままメルボルンに寄港したというような設定。この映画の舞台は1964年の設定になっていたので、てっきり1962年のキューバ危機を念頭に置いて作られた映画かと思っていたが、製作年は59年ということで、キューバ危機はこの映画の後ということになる。偶然とは言え何だかすごい話である。
 さて、このように大変興味深い話なんだが、ストーリーが何だかいい加減な上、登場人物の(オーストラリアと北米間の)移動もまるで瞬間移動したかのようで、相当ご都合主義的である。また、放射線の影響という点でも、今見るとあまり現実的ではない。何より、ドラマとしての流れが非常に悪いために、僕は最初の10分ぐらいから最後までひたすら退屈していた。描かれるモチーフも、人類の生存の可否を扱っているのは確かだが、他にも恋愛あり、レースあり、夫婦愛ありとわけのわからない多様さで、まったくまとまりがない。古い映画で今でも残っているんで名画の類だと思うが、率直に言って、見所は皆無に近い駄作と言わざるを得ない。
 テーマや主要なモチーフは非常に意欲的で、ハリウッドで作られた映画とは思えないようなものだったが、映画の内容がテーマについていけてないという、誠に残念な結果に終わっている。いろいろな点でリアリティが欠如していて、突っ込みどころが多いのも大きな問題である。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『招かれざる客(映画)』
竹林軒出張所『ニュールンベルグ裁判(映画)』
竹林軒出張所『ラ・ジュテ(映画)』
竹林軒出張所『吸血鬼ゴケミドロ(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』

# by chikurinken | 2018-11-13 07:53 | 映画