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竹林軒出張所

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『光る君へ』(ドラマ)

光る君へ(2024年・NHK)
脚本:大石静
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう他
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、佐々木蔵之介、南沙良、岸谷五朗、国仲涼子、矢部太郎、信川清順、瀧内公美、段田安則、上地雄輔、井浦新、三浦翔平、竜星涼、秋山竜次、町田啓太、金田哲、渡辺大知、本田大輔、ユースケ・サンタマリア、吉田羊、本郷奏多、塩野瑛久、高畑充希、見上愛、ファーストサマーウイカ

時代考証がなかなか秀逸

『光る君へ』(ドラマ)_b0189364_11011878.jpg NHK大河ドラマで平安貴族の時代が扱われると聞いて、はたしてドラマとして成立するのだろうかと思ったが、それなりには成立していた。何より時代考証がしっかり行われていて、当時の文化が割合うまく再現されていると感じた。このあたりは優れた点である。
 ただ、ストーリー、特に紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)のロマンスのあたりが作りすぎでわざとらしく、ちょっと見てられないという箇所も多かった。しかも途中から(脚本家が飽きたのか知らないが)さらにあざとい方向にストーリーが流れていき、紫式部が刀伊の入寇に遭遇して、しかも懇意にしていた男が紫式部の命を守るために死ぬなど、もうあり得ない展開になってきて呆れてしまう。さすが大石静というシナリオである。
 このようにストーリーには難があるものの、先ほども言ったように当時の風俗が再現されているのはポイントが高い。陣定(じんのさだめ)の様子や受領階級の生活様式、宮中での生活がかなり詳細に描かれ、もちろんこれがどの程度正確かはにわかに断定できないが、現在の学術レベルを反映したものになっているのではないかと思う。そのためあまり不自然さがなく、その点については非常に見どころが多かった。ただ『蜻蛉日記』が、辛い女性の声を代弁するために意識的にフィクション風に書かれたものだというような、強引な解釈をドラマの中で行っていたのはいかがなものかと思う。また、紫式部と清少納言が親しい間柄で始終行き来していたように描かれていたのもやり過ぎではないかと感じた。このあたりは脚本家のオリジナルの部分なんだろうが、風俗考証の部分と異なり安直さを感じられる部分であった。要は時代考証と歴史再現以外はあまり見どころがなかったということになるのか。
 それに音楽もラフマニノフ風の大げさなものでかなりうるさく感じる。シナリオ、音楽、演出を含め、全体的に気合いが空回りしているようにも感じられた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『源氏物語の時代(本)』
竹林軒出張所『平安人の心で「源氏物語」を読む(本)』
竹林軒出張所『私が源氏物語を書いたわけ(本)』
竹林軒出張所『愛する源氏物語(本)』
竹林軒出張所『げんじものがたり(本)』
竹林軒出張所『源氏物語 (上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『あさきゆめみし完全版 (1)〜(10)(本)』
竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 紫式部日記(本)』
竹林軒出張所『源氏物語 浮舟(映画)』
竹林軒出張所『新源氏物語(映画)』
竹林軒出張所『百代の過客(本)』
竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 蜻蛉日記(本)』
竹林軒出張所『風と雲と虹と 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『草燃える 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『平清盛 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『鎌倉殿の13人 (2)〜(48)(ドラマ)』
竹林軒出張所『太平記 (4)〜(27)(ドラマ)』
竹林軒出張所『黄金の日々 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『麒麟がくる』(6)〜(44)(ドラマ)』
竹林軒出張所『どうする家康(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『徳川慶喜 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『獅子の時代 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜 (1)(ドラマ)』

# by chikurinken | 2024-12-23 07:53 | ドラマ

『日曜劇場 にっぽんのパパ』(ドラマ)

日曜劇場 にっぽんのパパ(1970年・北海道放送)
原作:小松左京
脚本:岩間芳樹
演出:船越一幸
出演:フランキー堺、八千草薫、佐山泰三、亀田秀紀、金井大、村井洋

『北の国から』リアル版

『日曜劇場 にっぽんのパパ』(ドラマ)_b0189364_20435470.jpg 小松左京原作(『木静かならんと欲すれど……』 )の日曜劇場。原作が小松左京ということでSFかと思ったがさにあらず。非常にユニークな展開の日常的な物語だった。
 東京に住む家族がこの物語の中心人物だが、彼らの名前も奮っていて、それぞれ「パパ」、「ママ」、「一郎」、「二郎」となっている。この一家が、夏休みを利用して、北海道にある知人の開拓村を訪れることになった。その知人というのが、その開拓生活に見切りをつけてその村を脱出した人で、今は空き家となったその家を自由に使って良いと手紙で伝えてきたのだった。なおその知人が、その開拓村の最後の住人だったため、今はその開拓村には誰も住んでいない。
 そういう状況で当地を訪れる一家だったが、周囲に何もないため開拓民のようなサバイバル生活を始めることになる。だが、パパが思いの他こういうサバイバル生活を堪能し、家族もそんなパパの姿に尊敬の念を抱く。当初は2週間程度の予定だったが、ここに長く住み続けたいというパパの希望を受け入れ、数カ月そこで暮らし続けるというようなストーリーである。
『日曜劇場 にっぽんのパパ』(ドラマ)_b0189364_20435812.jpg 『北の国から』の原形のような物語だが、しかし結論は大きく異なり、かなり現実的な終わりを迎える。非常に良くできたストーリーと感じる。演出もしっかりしていて、原作の面白さを十分に引き出している。フランキー堺の「パパ」、八千草薫の「ママ」もリアルな存在で、すばらしい質感を引き出している。当時40前の八千草薫が非常に美しく、しかも都会的なマダムの姿からモンペ姿や野良姿まで披露しており、とても魅力的である。ある意味、「八千草薫劇場」と言っても良いような演出で、演出担当者の思い入れが伝わってくるような作品である。
 今あまり見る機会はない作品だが、ぜひ公開の機会を増やしてもらいたい秀作である。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『北の国から (1)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『北の国から (13)〜(24)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ふるさと (1)、(2)、(3)(本)』
竹林軒出張所『うちのホンカン(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 春遠からじ(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』

# by chikurinken | 2024-12-20 07:21 | ドラマ

『日曜劇場 旅ゆけば』(ドラマ)

日曜劇場 旅ゆけば(1975年・北海道放送)
脚本:田中陽造
演出:長沼修
音楽:深町純
出演:堀内正美、鈴木ヒロミツ、坂口良子、梅津栄、岸田今日子

鈴木ヒロミツが「人間なんて」を熱唱

『日曜劇場 旅ゆけば』(ドラマ)_b0189364_08342249.jpg 北海道放送製作の東芝日曜劇場。
 マザコンのひ弱な男(堀内正美)が車で北海道を旅するが、そこでヒッピー風の男(鈴木ヒロミツ)に出会い、徐々に旅の計画が狂ってあらぬ方向に行ってしまうというような話。ストーリーはやや作りすぎで絵空事という印象で、あちこちに無理を感じる。
 キャストはなかなか魅力的で、マザコン男の堀内正美、ヤクザなヒッピーの鈴木ヒロミツ、芯がしっかりした気の強い女子役の坂口良子と、どれもキャラクターによく合っている。かつて吉田拓郎がラジオで語ったところによると、(ミュージシャン仲間である)鈴木ヒロミツはかなり乱暴な男で、付き人にも頻繁に暴力をふるっていたということだが、ドラマの役もそれにかなり近い粗暴な性格で、素に近そうなイメージである。しかもドラマの中では吉田拓郎の歌(「人間なんて」)を熱唱するという、なかなか奮った演出もある。
『日曜劇場 旅ゆけば』(ドラマ)_b0189364_20323417.jpg また途中、北海道の大地をヒロミツと堀内正美が徒歩でさまようようなシーンがあったが、当時よく放映されていたモービル石油のコマーシャル(鈴木ヒロミツと仲間がさまよい歩くもので、「クルマはガソリンで動くのです」というフレーズが一世を風靡したやつ)を髣髴させるものだった。あのシーンも製作者が意図して撮ったのではないかと思う。
 目に留まるような箇所もあるにはあったが、総じて可もなく不可もなくというようなドラマで、そういう点では東芝日曜劇場らしいドラマと言えるのかも知れない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 林で書いた詩(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 春のささやき(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ダイヤモンドのふる街(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 天使を乗せたタクシー(ドラマ)』

# by chikurinken | 2024-12-18 07:34 | ドラマ

『日曜劇場 二代目』(ドラマ)

日曜劇場 二代目(1970年・TBS)
脚本:橋田壽賀子
演出:山本和夫
出演:吉永小百合、杉村春子、松山英太郎、山口崇、園田裕久、小池寿子、加藤嘉

率直に言って底が浅い

『日曜劇場 二代目』(ドラマ)_b0189364_13450996.jpg 吉永小百合が主演の東芝日曜劇場の1本。
 当時25歳の吉永小百合、日活映画時代のような娘役で、ドライな現代っ子という設定。母(杉村春子)は木場で材木問屋を営んでおり、従来型の営業方法を続けているが、だんだん時代の流れにそぐわなくなってきているという背景である。母の方は娘に仕事を継がせたいと思っていないが、娘の方は、現代的な経営にシフトすべきと考え、経営の勉強などもしている。
 基本的なストーリーは、親子関係と世代交代というあたりに落ち着くが、全般的にあらゆることがありきたりな上、描き方も表層をなぞったようなもので終始しており、大して面白味はない。杉村春子の演技もありふれたもので、唯一の見どころは、若い吉永小百合ということになるのか。
 橋田壽賀子のドラマはそんなものと言ってしまえばそれまでだが、もう少し何とかならないのかというのが素直な感想である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 乙姫先生(ドラマ)』
竹林軒出張所『寿の日(ドラマ)』
竹林軒出張所『春までの祭(ドラマ)』
竹林軒出張所『夢千代日記 (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『愛と死をみつめて(映画)』

# by chikurinken | 2024-12-16 07:15 | ドラマ

『名盤保存委員会』というYouTubeチャンネル

『名盤保存委員会』というYouTubeチャンネル_b0189364_09214420.jpg

 『名盤保存委員会』というYouTubeチャンネルが最近ひっそりと開設されました。始めたのは私です(したがって委員は私1人)。
 ドラマのテーマ曲などの音楽をジャケット写真付きで公開しています。レコードから取り込んだ音楽もあります。こういった作品群の著作権は私自身には当然ありませんが、著作権が問題になるような案件についてはYouTubeが管理しているらしく(おそらく放送などと同じように著作権団体に対してまとめて著作権料を支払っているのではないかと考えられるため)問題になることはないようです。
 私自身は、これまでレコードやテレビ放送から音を取り込んで個人的に聴いていたわけですが、そのおすそ分けのつもりです。
 このチャンネルを始めたのは、これまでの数々の映像や音源が失われているという現実があるためで、こういった場所で公開していればどこかで保存され、万一完全に失われた場合にも残されていくのではないかという思惑があったためです。そのため、あまり世間で公開されていないような音源を中心に公開していくつもりでいます。絶版になって入手しにくい音源などもその対象です。
 現在、坂田晃一作曲の作品、ドラマのテーマ曲が中心ですが、レコードから取り込んだ音源は結構マメにノイズを除去している他、ボリュームの調整などもそれなりに手をかけた上で公開しています。もっとも、私にはこういった曲の著作権はありません、何度も言いますが。1音楽ファンの応援みたいなものだと考えていただければと思います。そもそも収益目的ではないので「チャンネル登録、高評価」も別にしていただくなくてかまいません。コメントもオフになっていて書き込みできなくしています。
 公開しているものには珍しいものもいくつかあり、希少性もあるのではないかと自負しています。たとえばドラマ『冬の花火』のテーマ曲は、『冬の花火』自体がなぜかなかなか再放送されないため結果的に貴重なものになっているのではないかと思います。また、『判事よ自らを裁け』もめったに放送されないドラマのテーマ曲で、しかも一柳慧が音楽を担当しており、かなりの希少性があります。現時点で再生数は少ないようですが。
 歌唱については、東郷由紀『朝日のあたる家』などいかがでしょう。この曲は、かつてラジオのCMでよく流されていたために古い世代には馴染みがあるにもかかわらず現在デジタル化されていないというものです。すでにYouTube上にアップされているものがあるのですが、音があまり良くないため、レコードから取り込んだ音源をジャケット写真と一緒に公開しました。さらにダークダックス『商船学校寮歌』も美しいハーモニーがすばらしくお奨めです。これもレコード音源から録音したものです。
 このように(私には著作権はありませんが)それなりに手がかかっているわけで、そういう点で一定の価値はあるのではないかと考えています。興味があるようでしたら一度覗いてみてください。このブログでもときどき関連する曲にリンクしたりしているので、そちらからもアクセスできます。

参考:
YouTube『名盤保存委員会』
竹林軒出張所『テレビの音声をiTunesに登録して聴く方法』
竹林軒出張所『Macで音の取り込みをやってみた』
竹林軒出張所『レコード大作戦』

『判事よ自らを裁け』OP主題曲



# by chikurinken | 2024-12-13 07:17