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竹林軒出張所

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『日本プラモデル六〇年史』(本)

日本プラモデル六〇年史
小林昇著
文春新書

懐かし系の本だが十分楽しめる

b0189364_18070431.jpg 戦後日本のプラスチックモデルの歴史について時系列で記述した本。
 『日本プラモデル興亡史』『田宮模型の仕事』と内容が似ていると思いながら読んでいたら、案の定、この著者、この2冊の編集を担当していた人らしい。内容はこの二著とかなり重複しているが、この二著がプラモデルの販売者と製作者という立場から書かれた本である一方で、この本が第三者的な視点で書かれた本であることを考えれば、この本にもそれなりに存在価値はあると思う。当然、この本に井田博氏も田宮俊作氏も登場する。
 この本に対する僕のスタンスは、基本的に「懐かし系」ということになる。したがって、読んでいて懐かしいと感じられればOKである。特にイマイのサンダーバード2号やタミヤのミリタリープラモのくだりは、子ども時代にかなりはまったグッズなんで懐かしさもひとしお。こういったプラモがどういったいきさつで登場したかも本書でしっかり触れられている。その後の時代のガンプラやミニ四駆なんてことになると、僕にはまったく縁がなく、懐かしさも皆無であるため、当時の風俗の歴史としてしか関心が湧かないが、それでも記述が簡潔で読みやすいため、十分楽しめたのだった。ただ全体的に内容は薄めかなとは思う。日本プラモ史の記述は正味150ページで、その後に田宮俊作氏のインタビューと年表が続く。それでなんとか200ページ……という、やや安易さを感じさせる新書ではある。
★★★

追記:
 アマゾンのレビューによると70年代以前の記事に事実誤認が多いらしい。まったく気が付かなかった(そもそも僕にそれほど知識があるわけでもないが)。どこら辺が誤りか指摘してほしいものだ。

参考:
竹林軒出張所『日本プラモデル興亡史(本)』
竹林軒出張所『田宮模型の仕事(本)』
竹林軒出張所『マルサン ― ブルマァクの仕事(本)』

# by chikurinken | 2019-02-26 07:06 |

『日本人の質問』(本)

日本人の質問
ドナルド・キーン著
朝日文庫

朝日版ドナルド・キーン・エッセイ集

b0189364_16251352.jpg 日本文学者、ドナルド・キーンのエッセイ集。表題作「日本人の質問」、「日本人の投書」、「入社の弁」は朝日新聞の連載、または紙上で発表されたエッセイだと思うが、残りについては初出が書かれていないため不明である。なお上記の3作は「Ⅰ」に分類されており、都合「Ⅳ」まである。詳しくはわからないが、「Ⅱ」が日本文化や日本文学についての講演やエッセイ、「Ⅲ」が芸術関係のエッセイ、「Ⅳ」が仏教や宗教に関するエッセイのようである(ただし「Ⅳ」には山片蟠桃についてのエッセイもあり一概に宗教と言えるかどうか微妙である)。元々は朝日新聞社から出されたエッセイ集のようだが、初出の記録がないのはあまり感心しない。
 一番面白かったのは「Ⅱ」の講演録で、中でも「日本古典文学の特質」が非常に充実していた。内容は『日本文学史 近世篇〈一〉』と一部重複しているため、『日本文学史 近世篇〈一〉』の発表前後に行われた講演が出典ではないかと思われる。また同じく「Ⅱ」の「明治の日記」についても、『百代の過客〈続〉』のダイジェストのような内容で、おそらく『百代の過客〈続〉』の発売前後に朝日新聞に書かれたエッセイではないかと思う。
 後は「Ⅱ」の講演録「日米相互理解はどこまで進んでいるか」と「Ⅲ」の「谷崎源氏の思い出」が興味深い内容であった。後者については、谷崎源氏(谷崎潤一郎が翻訳した源氏物語)を読んでみたいと感じさせるような内容充実のエッセイである。
 多少寄せ集めの感があるが、それでもやはりドナルド・キーンの作らしく、目を引く叙述が多い。最初のエッセイの「日本人の質問」についても、一般的な日本人はこういうのが割合好きなんで、これだけを取ってみても(ドナルド・キーンに興味のない)普通の人は楽しめるかも知れない。少なくとも『日本語の美』よりは読み応えがあった。
★★★☆

追記:
 昨日(2019年2月24日)ドナルド・キーン氏が亡くなったという報道があった。享年96歳。随分お年だったし、まもなくお召しが来るのではと思っていたのでさほど驚きはないが、氏が非常に優れた研究者であったことに疑いの余地はない。
 僕は一昨年あたりからキーン氏の著書を読み続けているが、以前も書いたように「目からウロコ」の書が多い。現在も『日本文学史 近世篇〈二〉』を読んでいるところで、氏が亡くなっても、読むものに事欠くことはしばらくはないが、それにしても(著書からお見受けする限り)大変立派なお方であり、また超一流の日本文学研究者である。これは間違いない。謹んでご冥福をお祈りしたい。

参考:
竹林軒出張所『日本文学史 近世篇〈一〉(本)』
竹林軒出張所『百代の過客〈続〉(本)』
竹林軒出張所『百代の過客(本)』
竹林軒出張所『日本人の美意識(本)』
竹林軒出張所『ドナルド・キーン自伝(本)』
竹林軒出張所『ドナルド・キーン わたしの日本語修行(本)』
竹林軒出張所『日本語の美(本)』
竹林軒出張所『私が愛する日本人へ(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-02-25 07:24 |

『私家本 椿説弓張月』(本)

私家本 椿説弓張月
平岩弓枝著
新潮文庫

『椿説弓張月』の雰囲気を味わえる

b0189364_15583180.jpg 曲亭馬琴の『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』を平岩弓枝がアレンジした小説。
 『椿説弓張月』は鎮西八郎為朝(源為朝)の大冒険譚で、九州、京都、伊豆大島、四国、琉球を舞台にした壮大なスペクタクル巨編である。源為朝は源為義の八男(源義朝の弟)で、保元の乱に際して朝敵になり結果的に伊豆大島に流されるが、伊豆を実質的に支配したため、国司の恨みを買って追討されたというのが史実である。『椿説弓張月』では、この実話を踏まえた上で、為朝が理性と正義の豪傑であり、行く先々で正義を貫くが、歴史に翻弄されてあちこちをさまよい歩き、各地域の悪人と対峙していくというようなストーリー展開になる。
 この『私家本』についても馬琴版『椿説弓張月』を大体において踏襲しているらしく、細かな違いはあるが、概ね『椿説弓張月』の雰囲気は味わえるようだ。僕は今回、先日読んだ『現代語訳 南総里見八犬伝』と同じような感覚でこの書に当たったわけだが、流行作家が書いたものだけに非常に読みやすかった。ストーリーは勧善懲悪かつ荒唐無稽で、必ずしも手放しで称賛できるものではないが、ハリウッド映画的な面白さはある。単純なドラマが好きな人には格好の読みものになるかも知れない。
 例によって登場人物も大量に現れ、わかりにくくなる箇所もあるが、『八犬伝』に比べれば登場人物の数ははるかに少ないこともあり、まだましな範囲である。正しい人、正しくない人がはっきりと分かれているため、そういう点でもわかりやすい。馬琴の作を読んだとは言えないが、読んだような気にはなる。源為朝のこともまったく知らなかったので教養にもなった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『寿の日(ドラマ)』
竹林軒出張所『現代語訳 南総里見八犬伝 (上)(本)』
竹林軒出張所『現代語訳 南総里見八犬伝 (下)(本)』
竹林軒出張所『春色梅児誉美 マンガ日本の古典31(本)』

# by chikurinken | 2019-02-23 07:58 |

『歎異抄 (現代語訳版)』(本)

歎異抄 (現代語訳版)
金山秋男訳
致知出版社 いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ

親鸞思想の斬新さが分かる

b0189364_20361658.jpg 浄土真宗の開祖、親鸞の弟子である唯円が、親鸞の悪人正機の思想を分かりやすくかみ砕いて紹介する書が『歎異抄』である(著者については異論もあるようだ)。この本で紹介されている悪人正機説は「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」という文句が非常に有名で、要するに、自力に頼らず阿弥陀如来に完全に帰依すれば誰でも極楽往生を遂げられるという思想である。善悪という価値観自体人間が作った価値観であるため、それを超越した存在である阿弥陀如来にとっては一切関わりがない。阿弥陀如来の前で100%謙虚になって全幅の信頼を寄せさえすれば誰でも往生できるという考え方(だと思う)。現代人も自然の前で100%謙虚になれば、昨今のような環境破壊もないだろうが、そういうことすら考えさせられる本でもある。それにしても悪(や世俗)を否定しない考え方は斬新である。当時、浄土宗(および浄土真宗)の僧たちが迫害を受けたというのも頷ける気がする。
 各章ごとに現代語訳と原文、その後の解説が続くという構成である。現代文は割合平易な日本語ではあるが、内容自体が結構難しいし、非常に抹香臭いというか、宗教的な記述が多く(宗教書だから当然なんだが)、必ずしも読みやすくはない。たとえば「阿弥陀さまの本願に救われて念仏する身となって、やり遂げようという慈悲は、私たち凡人が、本願の力により人間の思いを超えた阿弥陀さまの大いなる慈悲の心で、思うように生きとし生けるものを救うというものです」(第四章)のような文章があるが、決して分かりやすいとは言えないと思う。ただそれでも最後まで読むと、言わんとすることは概ね分かってくる。また『歎異抄』がどのような意図で発表されたか、このタイトルの意味は何か、どういう構成になっているかなどについて丁寧な解説があるため、『歎異抄』入門として良い素材になっている。『歎異抄』を読んでみたい、内容に触れてみたい、悪人正機説がどういうものなのか知りたいなどという人々には適していると思う。
 なおこの『いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ 歎異抄』だが、前序、第一章から第十八章、後序、流罪記録まで一通り収録されている。おそらく原作のすべての内容が収録されているんじゃないかと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『石田梅岩「都鄙問答」(本)』
竹林軒出張所『風姿花伝 (現代語訳版)(本)』
竹林軒出張所『現代語訳 南総里見八犬伝 (上)(本)』

# by chikurinken | 2019-02-22 07:35 |

『ヒグマを叱る男』(ドキュメンタリー)

ヒグマを叱る男(2018年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

自然とは何か……について考える

b0189364_20392432.jpg 以前、『ワイルドジャパン 魔法にかけられた島々』というドキュメンタリーで、知床の漁師のそばにヒグマが近寄っていた映像が出て驚いたことがあるが、おそらくあの映像に登場していた人々が、このドキュメンタリーの主役なんではないかと思う。
 世界遺産に認定されている知床半島のルシャという海辺の地域は、漁民が漁の拠点として使用しており、漁民用の番屋が置かれている。そこは沖に出て定置網で鮭を獲る漁民の基地として機能しており、漁民はその番屋で飯を食い酒を飲み風呂にも入る。むろん鮭を陸揚げする場所で、漁民の仕事場でもある。ここまでは通常の漁場とあまり変わらないが、ただ一つ違うのは、ここではヒグマが近所を日常的にうろついているということである。あるいは水揚げの後に残された鮭が目的であったりするわけだが、基本的に漁師の側も、ヒグマについてはよほど近づかない限り放任している。必要以上に近づいた場合は「コラッ」などと言って威嚇し追っ払う。ヒグマの方も威嚇されたらその場を立ち去る。この漁場のリーダーが大瀬初三郎という人で、この威嚇行為、元々はこの人がやり始めたらしい。
 最初に大瀬氏がこの漁場に入ったのは60年前だったらしいが、そのときはヒグマが近づいたときはハンターが射殺していたという。ただ、放っておいてもヒグマが人に即危害を加えるわけではないことが徐々にわかってきたため、それ以降は漁師の側も彼らを放置し、近づきすぎた場合に限って威嚇するという風に態度をあらためてきた。ヒグマの方も、幼少時からこの習慣に馴染んだ新世代ヒグマが登場するに至り、怒られたら自然とその場を立ち去るようになってきたという。現在、この周辺に数十頭のヒグマが集まってくるが、漁師と棲み分けし共存しているというのが現状である。
 一方で、世界遺産を認定するユネスコからは、漁のためにこの周辺に作られた人工物(橋など)を撤去するように求められている。自然遺産を極力自然の形に戻せということらしいが、大瀬氏の言い分は、現在のような形で人とヒグマが共存していること自体が自然の形であり、人の営みも自然の一部であると感じているため、現状をよく知りもしないこういった第三者の圧力に対しては、大瀬氏も大いに抵抗を感じている。ただ同時に、漁師の側も徐々に高齢化しており、大瀬氏のいわゆるこの「自然」の状態も少しずつ変わっていく可能性がある。こういったあれこれの知床事情を紹介しているのがこのドキュメンタリーである。当初はあまり期待しないで見ていたが、実際には見所が多く、いろいろと考えさせられる作品だった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ワイルドジャパン(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-02-20 07:39 | ドキュメンタリー

『「津軽」 太宰治と故郷』(ドキュメンタリー)

「津軽」生誕100年 太宰治と故郷
(2009年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集

『津軽』を題材にした紀行ドキュメンタリー

b0189364_18152323.jpg 太宰治に関するドキュメンタリー。
 太宰は、太平洋戦争中の1944年、1カ月近く、故郷の津軽に戻り、実家に戻ったり旧知の人々に会ったりしている。作家としての名声が高まってきた時期で、彼にとっては帰郷することに人生の一区切りみたいな意味あいがあったのだろうか。もちろん、迷惑をかけ続けた実家の兄に対するあいさつを兼ねていたことは想像に難くない。その帰郷のいきさつを綴った自伝的小説が『津軽』で、このドキュメンタリーでは、その『津軽』を題材に、そこに至るまでの太宰の生涯をあわせて辿っていく。
b0189364_18151909.jpg 太宰の足跡を辿るナビゲーターは村田雄浩で、村田は、この番組の最初の放送時に、『津軽』を題材にした演劇(青森で上演されたもの)に太宰治役で参加しており、この番組に参加したのもその縁である。ナレーションの方は久米明が担当し、例によって大変味があるナレーションなんだが、斜陽館(太宰の生家)を擬人的に演じる(「私は斜陽館!」みたいなナレーション)という立場で太宰について語るのが少々珍妙である。NHKは時折こういう稚拙な演出をするが、毎度のことながら、普通に客観的な立場のナレーションではダメなのかと疑問に感じてしまう。
 番組自体は紀行ドキュメンタリーであり、太宰治や津軽に関心がない向きにはあまり面白くないかもしれないが、僕自身はこのドキュメンタリーを通じて『津軽』に大いに関心を持った。いずれ読んでみようと思っているが、読むに当たって、今回映像で目にしたような情景が目に浮かべばそれはそれで大いに助かるわけである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『富嶽百景・走れメロス 他八篇(本)』
竹林軒出張所『お伽草紙・新釈諸国噺(本)』
竹林軒出張所『青空文庫の「ヴィヨンの妻」を読む』
竹林軒出張所『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ(映画)』

# by chikurinken | 2019-02-19 06:16 | ドキュメンタリー

『中国の小学校で今何が?』(ドキュメンタリー)

中国の小学校で今何が?(2018年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

急激な改革におののく

b0189364_18515686.jpg 中国の最新教育事情。
 中国は、改革開放以降、大学進学者が増えていったため、受験競争が激烈化し、そのためにどの学校も点数至上主義の「応試教育」を推進することになった。同時に「一人っ子政策」のために親から過剰に甘やかされる子ども達(「小皇帝」と呼ばれる)が増えたことと相まって、子ども達、そして彼らに対する教育の将来を危ぶむ声が増えている。学校でのいじめ、家庭内暴力の増加なども、教育の見直しを促すきっかけになっているらしい。
 このような状況に対応するため、全国的に新しいタイプの学校が増えつつある。この種類の学校は「応試教育」に偏らないカリキュラムを採用しており、中には1日中『論語』などの古典を読ませて暗誦させるという古典至上主義の学校もある(ラテン語まで履修科目に入っていて驚く)。このタイプの学校は富裕層向けであるが、一部の地域では一般の小学校でも改革が進んでおり、読書をやたらに推進するなどという新しいタイプの教育を展開している。ただし教師の方は、「応試教育」を勝ち抜いてきたエリート教師ばかりであり、こういった新しいタイプの教育になかなか馴染めず苦労しているという面もあるようだ。
 このドキュメンタリーで紹介されるのは中国の事情ではあるが、日本でも似たような教育の問題があることは周知の事実。それに伴い、似たような教育制度批判がこれまで長年に渡って展開されており、政府による教育改革も常に行われてきている(その多くは無意味だが)。だからこうやったよそ様の教育事情をあげつらうようなドキュメンタリーはどうかとも思うが、だがしかし彼らが日本と違うのは、改革が急激でかなり極端な形に突っ走る傾向があるという点で、そのあたりは注目に値する。
 日本では、国民が保守的で変化を嫌うせいか改革はほとんど進まず、改革したとしても結局形だけで終わってしまい、それに対して誰も責任を負わないということがきわめて多い。中国や韓国の事情を聞くと、かなり急激にどんどん改革が進むんで、僕など見ていて本当にやっちゃって大丈夫かと思うことも多い。この番組で紹介されている中国の教育改革もかなりの問題を生み出すことは見ていて明らかで(先ほどの古典至上主義教育の学校では文字の読み書きが普通にできない子ども達まで出ているらしい)、今後も相当数の被害者を生み出すと思われる。こういう過程を経た上でおそらく全体として良い塩梅の制度に落ち着くんだろうが、犠牲を伴う大きな変化を経て理想に至るという形態も、一定の合理性はある。その点、問題をいつまでも先送りにして解決できない日本に比べると(特に問題が大きいときなどは)、こういった大胆なアプローチは大きな長所になる。日本と同じような問題を抱えながら、異なるプロセスで解決に至ろうとするという大陸的な大胆さは、日本でもある程度は取り入れる必要があるんじゃないかと思うがいかがだろうか。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『中国 教育熱のゆくえ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『中国人の本音(本)』
竹林軒出張所『中国人一億人電脳調査(本)』
竹林軒出張所『テレビに映る中国の97%は嘘である(本)』
竹林軒出張所『塾講師にだまされるな!(本)』

# by chikurinken | 2019-02-18 07:55 | ドキュメンタリー

『高所恐怖症を克服せよ』(ドキュメンタリー)

高所恐怖症を克服せよ
(2015年・英Maverick Television)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

これで克服できたのか疑問

b0189364_16314543.jpg 高所恐怖症の人10人を集めて、高所恐怖症を克服させようとするドキュメンタリー。
 実際に行う治療法は何のことはなく、要は高いところに上がらせてそれで高所に慣れさせようというものである。だが、このドキュメンタリーによると、この方法は科学的に治療効果が証明されているらしいのである(ほんまかいなと思う)。
 で、実際にこの10人に対して3日間のトレーニングを課し、数メートルのはしご段から始めて、最後は90mの高さのタワー(しかも手すりのない場所)まで上がらせる。参加者の中には良い歳をしたおじさんもいて、しかもこの人、途中で怒り出したりするんだが、そんなにイヤならこんなトレーニングやめたら良いのにと思ったりする(高所恐怖症ぐらいであれば、日常生活でそれほど支障を来すこともあるまい)。
 最後にもう一度最初のはしご段に上らせて高所恐怖症が克服できたか試すかと思ったが、そういったシーンは結局なしで、この10人が高所恐怖症を克服できたかどうかはわからずじまいになってしまった。何ともお粗末。
 そもそも素材自体からして『探偵!ナイトスクープ』のデキの悪いネタ(「できない」ネタ)レベルであり、しかも内容もどうと言うことはなく、高い場所で怯えている人の反応を視聴者が楽しむという程度のものであって、考えようによっては悪趣味である。一部(どうしても足を踏み出せない仲間が励まして何とか前に進ませるというような)『ポセイドン・アドベンチャー』を彷彿させるようなシーンもあったが、大げさな行動の割には端で見ていてそれほど大層な場面でもないし(3階の高さの足場まではしご段を使って上がるというもの)、見ていて少しばかりバカバカしくなる。正直、ドキュメンタリーと言うのもはばかられるようなくだらない番組だと感じた。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『めまい(映画)』
竹林軒出張所『ポセイドン・アドベンチャー(映画)』
竹林軒出張所『「反復練習が上達を生む」の実証 - 「ひたすら一万回」』

# by chikurinken | 2019-02-16 07:31 | ドキュメンタリー

『“死の壁”に挑む』(ドキュメンタリー)

“死の壁”に挑む
(2017年・英Screen Dog)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

“死の壁”には挑まない

b0189364_20015657.jpg イギリス人の冒険家が、「死の壁」の異名を取るアイガー北壁に挑むというドキュメンタリー……かと思ったら、悪天候で断念し、しようがないのでイタリア側のとある山に登ったというドキュメンタリー。この山も結構な断崖なので登頂は困難だったが、しかし「アイガー北壁」を謳ったドキュメンタリーなのに、全然違う山に登ってもね……ということで、正直わけのわからない作品になっていた(ただし原題は「STEVE BACKSHALL VS THE VERTICAL MILE」となっており「死の壁」はまったく謳っていない)。
 この山(名前は失念)へのアタックが厳しかったことは映像から推測できるし、珍しい映像のようではあるが(カメラの進歩を感じさせる映像)、登頂シーンは何だかダラダラ続くし、映像を通じて困難さがあまり伝わってこない。全体的に編集がうまくないという印象で、見所もあまりない。そのため、良い映像もあるにはあるが冒険ドキュメンタリーとしては質が低く、見ていて飽きてしまった(元々はシリーズものの1本のようである)。
 だがやはり一番問題なのは、先ほども書いたように『BS世界のドキュメンタリー』で放送されたこの日本版のタイトルであり、本当であれば「死の壁”は断念」となるべきで、そういう点でまさしく羊頭狗肉であった。宣伝文でも「アイガー北壁に挑む」ことを謳っていて、事情がまったくわかっていない人(おそらくこの作品を見ていない人)がこの番組の広報を担当していたんじゃないかとすら感じる。(タイトルを含み)実にお粗末な広報で、視聴者をなめているのではないかとも思える。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『ヒマラヤ8000m峰 全山登頂に挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『手足をなくしても(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『デナリ大滑降 究極の山岳スキー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドキュメンタリー3本』「エベレスト 世界最高峰を撮る」
竹林軒出張所『劔岳 点の記(映画)』

# by chikurinken | 2019-02-15 07:01 | ドキュメンタリー

『学校』(映画)

学校(1993年・松竹)
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:冨田勲
出演:西田敏行、竹下景子、裕木奈江、中江有里、萩原聖人、新屋英子、翁華栄、田中邦衛、神戸浩、渥美清

安い映画だが存在意義は十分

b0189364_18133310.jpg 山田洋次が描いた夜間中学の実態。
 『こんばんは』の見城慶和先生が一部モデルになっているらしい。93年に公開されてヒットし、夜間中学の存在を世の中に知らしめた作品でもある。日本語の読み書きができないまま大人になった人々や、中学に通えなかった人々が、中学校(あるいは小学校)の学習課程を履修できるようにする機関、それが夜間中学である。現在その必要性が高まっていることもあり、文科省も各県に1校設けることを目標にしていると聞く。そういう動きを推進した映画として画期になった作品と言って良い。
 ただし映画の中身ということになると、最後まで通して見られる作品ではあるが、随所に安直さというか安っぽさを感じる。舞台は、卒業式を間近に控えた夜間中学の授業であり、それぞれの生徒(7人)のこれまでを振り返るという回想形式のドラマになっているんだが、この種の回想形式自体、ともすれば安っぽくなりがちである。スチール写真からして作り物風で安っぽさを感じるようなものだったため、見る前からある程度は想定できたが(だから今まで見なかったんだが)、そういう点で予想に違わない作品だった。それに案の定、話が過剰に理想化されているのも引っかかる部分で、フィクションだから仕方がないと言われると確かにそうだが、もう少し抑えの効いたストーリーにできなかったのかとも思う。
 とは言え、先ほども言ったように日本の教育において大きな画期になったのは間違いなく、おそらく山田洋次の意図もそのあたりにあったのではないかと思うんで、映画として安かろうが、存在意義は十分にあるとは思う。
第48回毎日映画コンクール日本映画優秀賞他
第17回日本アカデミー賞最優秀作品賞他受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『こんばんは(映画)』
竹林軒出張所『学ぶことの意味を探して(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『本当は学びたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『みんなの学校(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-02-13 07:13 | 映画

『日本フィルハーモニー物語』(映画)

日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章(1981年・エヌ・アール企画)
監督:神山征二郎
原作:今崎暁巳
脚本:神山征二郎、今崎暁巳
出演:風間杜夫、田中裕子、内藤武敏、浜田光夫、菅野忠彦、中野誠也、長塚京三、鈴木ヒロミツ、長谷直美、日色ともゑ、三谷昇、渡辺暁雄、小池朝雄、下元勉、ジェリー藤尾、殿山泰司、前田吟、佐藤オリエ、高橋克典、井川比佐志、志村喬

豪華なのは入れ物だけ

b0189364_14455108.jpg 1971年、日本フィルハーモニー交響楽団が、スポンサーのフジテレビと文化放送から支援打ち切りを通告され、それに対して楽団員が労働組合を結成して対抗する。これが世にいう「日フィル争議」で、その争議をモチーフにした映画がこの作品。原作は今崎暁巳という人のルポルタージュ『友よ! 未来をうたえ』という本である。
 監督は正攻法の地味な映画ばかり撮っている神山征二郎で、この映画も予想通り正攻法で地味なドラマ。当然、日フィル争議がストーリーの核になり、組合とスポンサーの東洋放送とのもめ事、さらには日本フィルが再建していく様子が描かれる。主人公は日本フィルのヴァイオリニスト樺沢昇(風間杜夫)で、恋人の茂木伸子(田中裕子)との恋愛がサブプロットになる。さらに同僚のチェリスト(内藤武敏)の死なども盛り込まれるが、正直ドラマ的な面白さはあまりなく、あってもありきたりなもので、2時間見続けるのがかなり苦痛な作品である。今回僕が見たのは、日本映画専門チャンネルの放送だったが、現時点でDVD化されておらず、テレビ放送もこれまで行われなかったらしい。僕も存在すら知らなかったし、そもそも日フィル争議についてもよく知らなかった。
 企業や自治体が金銭的に厳しくなると、まず最初に見直されるのが文化事業で、そのため今でも似たような問題はあちこちで起こっている。少し前にも、大阪の日本センチュリー交響楽団が補助金カットで揉めた(結局カットされた)し、文楽協会も補助金カットを示唆され問題になった。そのため、オーケストラだけに限っても映画やドキュメンタリーでよく取り上げられている。だから単に争議の現場だけを劇映画にしても面白味はなかなか生まれない。『オーケストラの少女』みたいに破天荒な映画にするか、さもなければ、人間の内面に迫るなどの要素がなければドラマとしては魅力に欠ける。この映画の最大の難点はそこで、どの登場人物もあまり人間としての存在感が見受けられず、単に行動の主体として登場するだけであるため、面白味がないのである。
b0189364_14455648.jpg 映画界でもかつて東宝争議などという似たような労働問題があり、監督の神山征二郎も多少の関わりを持っていたらしく、そういう点でこの日フィル争議に共鳴したんだろうが、思い入れだけでは面白い映画にならない。キャストは今見ると豪華(しかもほとんどはチョイ役)で、よくこれだけの俳優を集めたなと思うが、仏作って魂入れずみたいな内容の乏しい作品になってしまったのははなはだ残念。最後にコンサートのシーン(『新世界』が演奏される)があり、客が一様に感動するシーンで締めるというのも音楽映画らしいが、ありきたりと言えば実にありきたりである。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『オーケストラの少女(映画)』
竹林軒出張所『オーケストラ!(映画)』
竹林軒出張所『名門オーケストラを救え(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スラムのオーケストラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』

# by chikurinken | 2019-02-12 07:45 | 映画

こんなメールが来た

b0189364_15481736.jpg 毎日のように迷惑メールは来るが、送信元が自分自身になっていたりするものが最近とみに増えてきた。相手のメールソフトで送信元に送信先のデータを表示させるというような単純な裏技を使っているんだろうが、やはり最初はかなりびっくりする。しかも文面で「お前のメールアカウントを盗んだ」などと書いてあると、思わず左右を見回したりするかも知れない。
 一昨日と昨日、「【緊急】」などというタイトルで迷惑メールが送られてきたんだが、なかなか興味深いんでここで紹介することにした。なお送信元は僕自身ということになっている。

注:カッコ内は、メールを読んだときの私のツッコミと考えてください。

【緊急】
(なんだなんだ)
悪い日本人のために申し訳ありません。
(は?)
あなたのメールアカウントをハッキングしました。
(あー)
私はあなたのコンピューターをハッキングした。
(あー……でも繰り返しがくどい。急に常体になってるし)
私はあなたがポルノを見て見る。
(意味がわからぬ。ポルノを試しに見る?、何度も見る?)
私はあなたのウェブカメラで自慰行為を記録した。
(ウェブカメラ付いてないけどね)
あなたは私に(100000円)を支払わなければなりません。
(唐突だね……なんでだ)
あなたは48時間があります。
(死亡予告みたいに聞こえる)
あなたが払っていない場合、私はあなたの隣人とあなたの家族や同僚にビデオを送信します。
(隣人、家族、同僚を割り出すのは大変だろう……10万円じゃ見合わない)
あなたはbitcoinで支払う必要があります。
(仮想通貨には関わりたくない)
私のbitcoinアドレス:
1JacuT532ozUUtoTHHuXadZrR1yDnmu32K
(身元はばれないのだろうか)
あなたはbitcoinを購入する方法をgoogleできます。
(ご親切にどうも)
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(盗っ人猛々しい)

日本人の日本語ではないのは一目して明らかで、おそらくGoogleかなんかの翻訳機能を使って翻訳したものなんだろうが、それでも原文がなかなか想像付かない。まず最初の文章の「悪い日本人のために申し訳ありません。」からしてどういうこと?と思う。つらつら考えて原文を想像したが、もしかしたら「Excuse me for my bad Japanese.」という英語なのかと思い当たった。これだと「拙い日本語で申しわけございません。」と訳すべきなんだろうが、現在の翻訳ソフトのレベルはこの程度なので、人間の頭で原文を想像しなければならないのが実情というわけ。このように原文がよく分からない箇所が多いので、こういう英語が原文ではないかという文章を試しに想像してみた。

Excuse me for my bad Japanese.
I hacked your mail account.
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Please keep your data securely in the future.

 僕の英訳についてはそれこそ「拙い英語で申しわけございません」というレベルだが、しかしそれにしても、文章構成自体、レベルが非常に低いと感じる。作者が英語ネイティブでないこと(または教育のない人であること)は容易に想像できる。この作者が主張していることは「お前がパソコンの前でエロサイト見ながらオナニーしているのをお前のパソコンに搭載されているウェブカメラを使って録画した、こちらにその映像があるから、ついては曝されたくなかったらビットコインを送金しろ」ということだと思うが、それにしても拙い。読み手が想像してやらないと意味が分からない。相手に内容の推測と想像を要求するような文章は一般社会では受け入れられないだろう。もっともこういった内容の文書自体、金を要求する脅迫であり同時に詐欺であるんで一般社会の通念では受け入れられないわけだが。
 ともかくユーザーの皆さんは、こういった低レベルの相手に騙されないよう気をつけていただきたい。ネット空間は善意の人間ばかりではないのだ。

参考:
竹林軒出張所『CYBER SHOCK 狙われる日本の機密情報(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-02-11 07:47 | 日常雑記

『ベトナムのひかり』(ドラマ)

ベトナムのひかり
〜ボクが無償医療を始めた理由〜
(2019年・NHK)
脚本:後藤法子
演出:本木一博
出演:濱田岳、国仲涼子、キムラ緑子、ビン・アン、レ・チ・ナ、チャン・ギィア、ヒュー・ヒエン、ホン・アン、本田博太郎、生瀬勝久

羽鳥やなくて服部やろ!

b0189364_18135315.jpg ベトナムで活動している眼科医、服部匡志をモデルにしたドラマ。
 眼科医、羽鳥志郎(濱田岳)は「神の手を持つ男」と呼ばれていたが、学界の席であるベトナム人医師に乞われて、3カ月間ベトナムに赴任し現地で治療に携わることになる。だがベトナムの現場で、医療を受けられない大勢の貧困者に出逢い、結局身銭を切って彼らに治療行為を行うようになった。それでも彼らを助けるには3カ月では足りないということになり、その後も何度も日本とベトナムの間を往復しながら、活動を続けていくようになるというストーリー。
 ドラマでは、妻(国仲涼子)との意見の相違やすれ違い、家庭を顧みず地域の活動に精を出していた父(生瀬勝久)の影響などが主要なテーマになっており、同時に現地の医師との確執、習慣の違いの戸惑いなども取り上げられる。この手のドラマとしては、割合平凡なモチーフだが、1本のドラマとして見ると、破綻もなくよくまとまっている。一部のエピソードが、使い古されたようなありきたりなものでややチープなのが気になるが、現行ドラマの中では水準が高い方と言える。途中、ベトナムの看護師から「ハットリセンセイ」と呼ばれ「ハットリやなく羽鳥や!」などという遊びのセリフがあって、笑わせてくれるのもポイントが高い。
b0189364_18135781.jpg モデルになった服部匡志という眼科医、僕はまったく知らなかったが、『情熱大陸』や『カンブリア宮殿』でも取り上げられているようで、結構有名な人らしい。こういう立派な活動をやっているのならばマスコミでもっと取り上げられてしかるべきだし、これによって協力者も増えるかも知れないとも思う。それを考えると、広報という点でもこのドラマが貢献することになるかも知れない。
 キャストでは濱田岳が好演で、情熱的で直情的な医師の役をうまく演じきっている。この人、どのドラマもまったく外れがなく、感心する。本田博太郎と生瀬勝久も良い味を出していた。珍バイクが映像で出てきたのもポイントが高い。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『反骨の外科医(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ディア・ドクター(映画)』
竹林軒出張所『それ行け!! 珍バイク(本)』
竹林軒出張所『ジェネラル・ルージュの凱旋(ドラマ)』
竹林軒出張所『ナイチンゲールの沈黙(ドラマ)』

# by chikurinken | 2019-02-09 07:13 | ドラマ

『みかづき』(1)〜(2)(ドラマ)

みかづき (1)〜(2)(2019年・NHK)
原作:森絵都
脚本:水橋文美江
演出:片岡敬司
出演:高橋一生、永作博美、風吹ジュン、黒川芽以、鎌田英怜奈、工藤阿須加、勝矢

『朝のドラマ』風の経営話

b0189364_18372132.jpg 森絵都原作の『みかづき』のドラマ化作品。昭和30年代に千葉で学習塾を始めた夫婦の物語である。第1回は、夫婦のなれそめと学習塾の開業、第2回は夫婦と家族の問題がテーマになっている。
 当初、登場人物にモデルがあるのかと思っていたが、どうやら原作者のオリジナルのようである(未確認)。学習塾経営や家族の話が中心で、この後どれぐらい波瀾万丈があるかはわからないが、基本的にはそれほど目新しい展開はない。学習塾経営の話と言えば、かつて『名古屋お金物語2』という作品がNHKで放送されたが(「回転塾」などという発送が斬新だった)、このドラマについてはあえて言うなら『NHK朝のドラマ』風のストーリーで、『名古屋お金物語』ほどの奇抜さはない。また演出もありきたりで、ところどころオーバーアクトが存在し、例によってかなり気になる。
 個人的な興味としては、共同経営(主人公の塾は途中から他の塾と共同経営になる)の過程に興味があるが(一般的に共同経営がうまく行くとは考えられないし)、そのあたりはドラマではまったく触れられていないので、経営話として見ても芯がない印象で、あまり面白味を感じない。現時点では経営がトントン拍子に進んでいることだし、経営話にするんならもう少し波乱がなければ……とも思う。そのため、すべてが絵空事のように感じられ、リアリティもあまり感じられない。昨今のドラマの水準から考えると標準的な作品だろうかと思う。こういったドラマは消耗品のような印象さえ受ける。芸術性を求める僕のような視聴者が楽しめるドラマはもう存在しないようで、それもないものねだりになったのかとも思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『塾講師にだまされるな!(本)』
竹林軒出張所『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』

# by chikurinken | 2019-02-08 07:36 | ドラマ

『日本文学史 近世篇〈一〉』(本)

日本文学史 近世篇〈一〉
ドナルド・キーン著、徳岡孝夫訳
中公文庫

キーン先生畢生の大作

b0189364_18350860.jpg ドナルド・キーンの日本文学史。この『日本文学史』は、1976年から、近世、近代・現代、古代・中世の順に刊行が行われたらしい。結果的に相当な大作になって、文庫版でも近世篇3巻、近代・現代篇9巻、古代・中世篇6巻の全18巻構成になっている。いくらなんでもたかだか日本の文学史に長尺過ぎるだろう、決して手を出すことはないだろうと僕などは思っていたが、ついに手を出してしまったのだ。だが近世篇第1巻を読む限り、内容が非常に充実していて面白いと言わざるを得ない。当初は日本の文学史でこんなに書くべきことがあるのかと思っていたが、この1冊だけでも相当濃密であり、これまで僕なりに考えていた「日本文学史」の概念が覆されるような思いさえする。確かに、これだけしっかりしたものを書こうと思えば大著になるのも当然と感じるようになった。ドナルド・キーンの傑作であり力作である。この後も続けて読みたいと感じる(実際現在、近世篇第2巻を読んでいる最中)。
 この近世篇第1巻は、室町時代後期の連歌から書き起こされる。室町時代以降盛んになった連歌が、どのような経路で近世の俳諧連歌、ひいては松尾芭蕉に繋がるかが歴史的な側面から描かれる。この第1巻のテーマは、あえて言うならば江戸前期韻文史(特に俳句)ということになる。
 まず最初に登場する重要人物が松永貞徳で、同時にこの貞徳から始まった貞門派の俳諧が語られる。続いて、江戸時代にそれに対抗するユニークな流派として上方に登場した談林派に話が移る。貞門派や談林派の特徴が紹介されて、それが松尾芭蕉の蕉風俳諧にどのように影響したかが示され、第1巻の目玉(と思われる)松尾芭蕉へと筆は進むのである。その後、芭蕉の弟子たちの活動が紹介され、そして第1巻の最後は仮名草子(江戸初期の仮名書きの出版物)で締められる。第2巻はこれに続いて、仮名草子の流れを汲む井原西鶴に話が進むというわけである。
 俳句にはそれぞれ英訳が付けられている(元々はアメリカで出版された本のようである)。当然、著者の解釈に基づく英訳で、俳句は(一般的に韻文はそうだが)元々解釈が難しいものが多いため、著者の解釈が示されることで理解しやすくなっている。日本語への翻訳は徳岡孝夫という人が担当しているが、文章が非常に読みやすく優れた翻訳になっている点も評価に値する。
 ともかく、先ほども書いたように、内容が濃密であり、冗長な箇所が一切ない。もしこれが講義であれば、一言も聞き漏らしたくないと感じるような密度である。キーン先生の畢生の大作と言える著書で、『百代の過客』もそうだったが、読者である自分にとって新発見が目白押しの快作である。
 実は近代と中古・中世を先に読みたかったんだが、刊行順に読むのが良さそうと感じたせいで、『近世篇』から始めてしまった。もちろんこの『近世篇』もここまで書いているように非常に興味深く面白いのではあるが、僕にとっては優先順位は低かったのだ。おかげで近代と中世を読むのが待ち遠しいというのか、あっちを先に読んでおいたら良かったかななどと多少の後悔が残るのである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『百代の過客(本)』
竹林軒出張所『百代の過客〈続〉(本)』
竹林軒出張所『明治天皇〈一〉(本)』
竹林軒出張所『明治天皇〈二〉(本)』
竹林軒出張所『明治天皇〈三〉(本)』
竹林軒出張所『明治天皇〈四〉(本)』
竹林軒出張所『日本人の美意識(本)』
竹林軒出張所『ドナルド・キーン自伝(本)』
竹林軒出張所『ドナルド・キーン わたしの日本語修行(本)』
竹林軒出張所『私が愛する日本人へ(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-02-06 07:34 |