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竹林軒出張所

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『パンダコパンダ』(映画)

パンダコパンダ(1972年・東京ムービー)
監督:高畑勲
原案:宮崎駿
脚本:宮崎駿
美術監督:福田尚郎
撮影監督:清水達正
声の出演:杉山佳寿子、熊倉一雄、太田淑子、山田康雄

今となっては結構見所が多い

『パンダコパンダ』(映画)_b0189364_10250021.jpg 1972年の日中国交正常化の影響で、2頭のパンダ(カンカンとランラン)が上野動物園に贈られたことから、世の中は一躍パンダ・ブームになる。そのパンダ・ブームにあやかって作られたと思われるアニメ映画である。
 監督が高畑勲、原案と脚本が宮崎駿という今をときめくビッグネームが関わった作品ということで、一部で注目を集めている作品でもある。ストーリーは、主人公の一人暮らしの少女、ミミ子の元に、ある日突然パンダの親子がやってきて、ミミ子の父親代わり、息子代わりとしてミミ子の家に住みつくという話(かなり強引な設定)。なお、このパンダの親子、ミミ子と普通に日本語で会話ができる。ただしこのパンダ親子、動物園から抜け出してきたということで、それがその後の騒動につながる。おとぎ話みたいな話でストーリー自体はどうということはない。
 絵の方はござっぱりと描かれている。キャラクターデザインは、前に見たときは気が付かなかったが、72年に放送されていた『ど根性ガエル』にそっくりである。後の高畑風あるいは宮崎風の味はない。72年当時、東京ムービーで『ど根性ガエル』が製作されていたため、それと関係があるんだろうが、詳細についてはわからない。しかも最後の方に出てくる人混みの中に、『ど根性ガエル』のキャラクターであるひろしと京子ちゃんまで出てくる。実は他にもオバケのQ太郎や『ルパン三世』のルパンと次元大介も出てきていて(当時『新オバケのQ太郎』と『ルパン三世』も東京ムービーが製作していた)こちらはすぐにわかったが、ひろしと京子ちゃんは、キャラクターがあまりに似ているんでなかなか見分けられなかった(何度も見直して気が付いたのである)。
 それからパンダとミミ子との関わり方が『となりのトトロ』にそっくりなのも見所の一つである。設定自体も『トトロ』によく似ており、『トトロ』の原形と考えても差し支えなかろう。逆にいえば『トトロ』は『パンダコパンダ』の焼き直しということである。
 総じて子ども向けのたわいもないアニメだが、上記のように(高畑、宮崎が巨匠となった)今となっては結構見所があって面白い。当時は「東宝チャンピオンまつり」で上映されたそうで、併映は『ゴジラ電撃大作戦』と『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』だそうな(ウィキペディア情報)。僕はドンピシャの世代ではあるが、この3作品については当時の記憶はまったくない。前年の「東宝チャンピオンまつり」(『ゴジラ対ヘドラ』がメイン)は劇場に見に行ってるんだが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『となりのトトロ(映画)』
竹林軒出張所『決戦 ! 南海の大怪獣(映画)』
竹林軒出張所『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ(映画)』
竹林軒出張所『母をたずねて三千里 完結版(ドラマ)』
竹林軒出張所『崖の上のポニョ(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『空飛ぶゆうれい船(映画)』
竹林軒出張所『夢と狂気の王国(映画)』
竹林軒出張所『魔女の宅急便(映画)』
竹林軒出張所『吾輩はガイジンである。(本)』

# by chikurinken | 2019-08-10 10:26 | 映画

『夢と狂気の王国』(映画)

夢と狂気の王国(2013年・ドワンゴ)
監督:砂田麻美
脚本:砂田麻美
出演:宮崎駿、鈴木敏夫、西村義明、庵野秀明、高畑勲、宮崎吾朗(ドキュメンタリー)

『風立ちぬ』製作の舞台裏

『夢と狂気の王国』(映画)_b0189364_19592091.jpg 『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』の製作に追われるスタジオジブリに密着するドキュメンタリー。監督は『エンディングノート』の砂田麻美。
 『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』は、同じ日に公開すべく当時同時進行で製作されていたが、結局、高畑勲の仕事が例によって遅れたため、『風立ちぬ』の方が早く公開された。だが同時進行で仕事が進められていたのは事実で、このドキュメンタリーからもそれが窺われる。ただし、このドキュメンタリーでは、『かぐや姫』の方の製作現場はまったく出てこない。高畑勲も最後の最後まで出てこない。ほぼ宮崎駿に密着という形で話が進行し、遅れる『かぐや姫』にプロデューサーの鈴木敏夫と西村義明が振り回されるエピソードがそれに継ぐ。締切を守れない高畑勲については、宮崎駿をはじめとする他のメンバーたちは結構辛辣な言葉を発するが、それでも宮崎にとって高畑の存在は大きく、今の姿を形作る原動力になったというようなことがドキュメンタリーの中で語られたりする。高畑勲に対してはちょっとアンビバレントな感情を持っているようで、これは他のメンバーにも共通する感情のようである。
 『風立ちぬ』については、宮崎駿がすべてコンテを描いて、それを周りのスタッフがアニメーション化していくという流れで仕事が進んでいた。要するに宮崎駿がストーリーと構成のすべてを作り上げるということなんだが、他のスタッフと同時進行で仕事が進んでおり、つまりはどういうストーリー展開になるのかは(宮崎駿を含めて……らしいが)誰も知らないで仕事を進めているということなのだ。僕自身はこれを知って、宮崎駿作品のストーリーにまとまりがないのは、こういう行き当たりばったりの作り方をしているからかと納得したのだった。
 同じ頃のジブリを撮影した、似たようなテイストの宮崎駿のドキュメンタリーが過去にNHKでも放送されていたために、この作品についてはあまり新鮮さはなかったが、ま、しかし製作現場にかなり密着しているという点では大いに評価できる。宮崎のすぐ側に近づいていることが映像から窺われるため、途中で宮崎から「邪魔だ」などと怒られたりしないかと思ってヒヤヒヤしていた(怒られたのかも知れないが画面には出ていない)。一方で高畑勲については、話題としては出てくるが本人はまったく映像に登場せず(先ほども言ったように最後の最後にちょっとだけ出てくる)違和感を感じていたが、どうやら高畑勲に製作者側が怒られたからというのが真実のようである(ウィキペディア情報)。やはり怒らせたんだなと妙に納得した。それから宮崎駿が阿部晋三政権に相当な脅威を抱いているという点も新鮮だった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ジブリと宮﨑駿の2399日(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『高畑勲、「かぐや姫の物語」をつくる。(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『エンディングノート(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (3)〜(7)(本)』
竹林軒出張所『未来少年コナン (1)〜(12)(アニメ)』
竹林軒出張所『となりのトトロ(映画)』
竹林軒出張所『魔女の宅急便(映画)』
竹林軒出張所『パンダコパンダ(映画)』
竹林軒出張所『ゲド戦記(映画)』
竹林軒出張所『コクリコ坂から(映画)』
竹林軒出張所『久石譲 いま世界で奏でる音楽(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ストップモーションアニメを紡ぐ(ドキュメンタリー)』

 以下、以前のブログで紹介した、ジブリ映画の評の再録。
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(2006年12月7日の記事より)
ハウルの動く城(2004年・スタジオジブリ)
監督:宮崎駿
原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
脚本:宮崎駿
音楽:久石譲
声の出演:倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、加藤治子、原田大二郎

『夢と狂気の王国』(映画)_b0189364_19593018.jpg お馴染み、宮崎駿のアニメ。
 相変わらず、おもちゃ箱をひっくり返したようなごちゃごちゃさというか、猥雑さというか……まあ、よく作り込んではいる。ただ、これまでの作品と似通った部分が結構出てきて、『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』を彷彿とさせるようなシーンが多かった。また、ストーリーも少しパターン化していて、起承転結に忠実なのは変わっていない。途中、ハウルの正体(?)が明らかになるあたり、複雑でついて行けなくなった。『千と千尋の神隠し』でもそういう箇所があり、2回目に見たときに納得したが、あれと同じようなパターンか。やたら飛ぶシーンが多いのも宮崎アニメらしい。
 もう1つ、声優の起用に疑問を持った。『となりのトトロ』でもそうだったが、声の主の顔が浮かぶような起用はどうかと思う。倍賞千恵子の娘役はいかがなものだろうか。木村拓哉も声がくぐもっていて、声優としてはパッとしない。美輪明宏は、登場人物とイメージが少し重なっていたこともあり非常に良かった。『もののけ姫』以来の起用だが、前作でも存在感があり、その辺が評価されてのことか。
 トータルで見て、『千と千尋の神隠し』のレベルからは少し落ちるかなという感じ。楽しめるには楽しめるが。
 そうそう、相変わらず映像はキレイで素晴らしいの一言です。
★★★☆
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(2005年12月19日の記事より)
柳川堀割物語(1987年・二馬力)
監督:高畑勲
製作:宮崎駿
脚本:高畑勲
声の出演:加賀美幸子、国井雅比古

『夢と狂気の王国』(映画)_b0189364_19592679.jpg (福岡県の)柳川の水路が荒れ果て、コンクリートで覆うという話が出て、そうしたところ、ある役人(広松伝という人)が水路を清掃し始めることでやがて市民を巻き込み、荒れた水路が徐々に以前の姿を取り戻しつつある……という話を以前新聞で読んだ。
 このドキュメンタリー映画では、そのあたりも詳細に扱っている(事実はさきほどの話とは多少異なる)が、柳川の水路のさまざまな側面を多面的に扱っており、さながら柳川百科事典のような趣がある。全11章構成で、対象の掘り起こし方が、映画というより書籍に近い。特にDVD化されて、各章にランダムアクセスできるようになったため、マルチメディア百科としての価値がこれまで以上に高くなっている。
 冗長な章がある上、しかも内容が複雑すぎてついて行けない箇所もある。だが、柳川堀割の原理や歴史など、内容は多岐に渡る上、非常に濃密である。映像も美しい。
 『千と千尋の神隠し』の作者(宮崎駿)の頭の中には柳川の水路があったのではないか(ハクのことね)とふと思った。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『廃市(映画)』

# by chikurinken | 2019-08-09 06:59 | 映画

『湾生回家』(映画)

湾生回家(2015年・台湾)
監督:ホァン・ミンチェン
出演:湾生の人々(ドキュメンタリー)

湾生の台湾に対する思い入れがテーマ

『湾生回家』(映画)_b0189364_20231414.jpg 幼い頃、台湾の地で育った(現)日本人の人々の話である。
 台湾は、日清戦争の後、清国から大日本帝国に割譲され、それ以降日本の植民地となる。そのため、太平洋戦争終結までは日本の一部としてその版図に組み込まれていた。だが帝国日本の敗戦、崩壊とともに台湾は中華民国の施政下に入れられ、その後蒋介石の国民党が大陸を追われて台湾に逃れたため、台湾は中華民国国民党によって支配されることになる。
 この間に台湾で生活をしていた人々も当然社会の影響を受けざるを得ないわけで、戦前に台湾で生まれ(または移住し)台湾で幼少時代を過ごした本土の人々の多くは、日本の敗戦後、内地に戻ることになった。彼らにとって台湾は生まれ故郷であるため、今でも台湾に対して特別な思い入れがあるんだそうだ。ということで、このドキュメンタリーに登場する台湾生まれの日本人(湾生)たちはたびたび台湾の故郷を訪れ、旧交を温めたり懐かしい土地を訪れたりしている。こういった人々の活動に密着するドキュメンタリー映画である。
 元々台湾で作られた作品で、日本公開後、クチコミで評判が広がっていったという話を聞いて興味を持ち、今回この作品を見てみたんだが、正直言ってそれほどの感慨はなかった。湾生の人々が台湾に対して持つ思い入れの深さはわかるが、「故郷」という観点から見ればそれも当然であるように感じる。また、戦後台湾に残った当時の子どもと日本に引き揚げた親との親子関係なども描かれれ、この作品の見所の一つになっているが、僕個人はそれほど感じるところはなかったというのが正直な感想。真摯な映画で、もちろん悪くはないが、2時間近くの上映時間を長く感じたというのも事実である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『明治天皇〈三〉(本)』
竹林軒出張所『日中“密使外交”の全貌(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-08-08 07:22 | 映画

『旅するダンボール』(映画)

旅するダンボール(2018年・pictures dept.)
監督:岡島龍介
撮影:岡島龍介
編集:岡島龍介
ナレーション:マイケル・キダ(ドキュメンタリー)

主人公の人間的な魅力が一番の売り

『旅するダンボール』(映画)_b0189364_21230325.jpg 島津冬樹というダンボール・アーティストを主人公にしたドキュメンタリー。
 この人、ダンボール箱を使って財布やカード入れを作るという活動をしている。現在その活動が一部で評価されているらしく、新国立美術館で1個1万円で売られているらしい。あちこちでワークショップを開くなどという活動も行っている。
 このドキュメンタリーでは、こういった活動が紹介される他、島津が気に入っているダンボール(徳之島のじゃがいものもの)の製作者を訪ねるなどという旅にも密着する。だが言ってみれば、本当にこれだけのドキュメンタリーなんで、島津の人間的な魅力が、このドキュメンタリーの一番の売りということになるんだろう。僕は彼に特に関心を持たなかったし、彼の作品についてもそれほどの感慨は持たなかったため、このドキュメンタリーを存分に楽しむというところまでは行かなかった。
 なおこのドキュメンタリー、会話やインタビューなど中身のほとんどは日本語だが、なぜかナレーションだけが英語で、大変違和感がある。てっきりアメリカ製の作品なのかと思っていたが、製作者も日本人、製作会社も日本在のようである。最初から外に売り込むことを意識してつくったのかも知れないが、だがそれだったら売り込む段階でナレーションだけ入れ替えたら済むことである。日本向けの作品にナレーションを入れるってんだったら日本語で入れるのが筋で、そちらの方が利便性の点でもはるかに良いんじゃないかと思うが。もっともナレーションが日本語であったとしても、この作品に対する印象がまったく違うなどということはきっとないだろう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人(映画)』

# by chikurinken | 2019-08-07 07:22 | 映画

『のんのんばあとオレ』(1)、(2)(ドラマ)

のんのんばあとオレ (1)、(2)(1991年・NHK)
原作:水木しげる
脚本:高橋正圀
演出:兼歳正英
出演:佐藤広純、山田昌、岸部一徳、もたいまさこ、笹野高史、浜村純

水木サンの原体験
ドラマとしてはちょっと物足りない


『のんのんばあとオレ』(1)、(2)(ドラマ)_b0189364_19204898.jpg この作品がNHKで放送されたこと自体は覚えているが、そもそも放送当時見ていなかったため、これが「ドラマ愛の詩」というシリーズで、月曜日から金曜日まで連続で放送されていたというのはまったく知らなかった。ちなみに30分枠で、原作は水木しげるのエッセイである。
 今回DVDを借りて見たんだが、ドラマとしては少々物足りないという印象で、5本分収録されていたにもかかわらず2本で飽きてしまった。ただ見ているうちに原作の方を読んでみたいもんだと考えていたのも事実で、要するに原作には興味が湧くが、このドラマについてはもう一つということなのである。原作は散文のようだが、いずれ読んでみるつもりではいる。
 ストーリーは、水木しげるの幼少時の話であり、(水木が少年時に多大な影響を受けたらしい)「のんのんばあ」という老女と茂少年(水木の分身)との交流が描かれる。水木しげるのいわば原体験が描かれるため、妖怪も随所に出てきて、いかにも水木作品という雰囲気を漂わせる。なお、登場するさまざまな妖怪はアニメで表現される。
 素材は興味深いんだが、やはりドラマに華がないと感じてしまう。それに演出がありきたりであるため、あまり見続けようというモチベーションが沸かない。テンポもあまり良くない。おそらくこのシリーズ自体に(「少年ドラマシリーズ」みたいな)子ども向け番組の要素があったようで、それが大きいのかと思う。そういうことがわかっていたらまたそういう目で見たんだろうが、少なくともこのドラマからは水木作品のダイナミズムみたいなものは感じられなかった。
第7回文化庁芸術作品賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『のんのんばあとオレ (1)、(2) (マンガ版)(本)』
竹林軒出張所『のんのんばあとオレ(本)』
竹林軒出張所『ほんまにオレはアホやろか(本)』
竹林軒出張所『ねぼけ人生(本)』
竹林軒出張所『鬼太郎が見た玉砕(ドラマ)』
竹林軒出張所『水木しげるの遠野物語(本)』
竹林軒出張所『水木しげるの泉鏡花伝(本)』
竹林軒出張所『蜃気楼博士 (1)〜(12)(ドラマ)』

# by chikurinken | 2019-08-05 07:20 | ドラマ