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竹林軒出張所

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「元気を出して」の元気が出ない話

b0189364_12212645.jpg 薬師丸ひろ子のデビュー・アルバムに 『古今集』 というのがある。もう25年も前に出たものだ。当時まだCDが普及する前で、僕はカセット・テープ版を持っていた。薬師丸ひろ子が演技だけでなく歌でもなかなか面白い存在であることを証明したアルバムで、巷でもかなり話題になり、しかも相当売れたという印象がある。
 薬師丸ひろ子の中でも結構メジャーなアルバムだと思っていたので、図書館とかレンタルの店に置いてあるだろうと思うとさにあらず、どこにもなく、だからと言って(前に持っていたから)今さら買うのも少ししゃくだし……というわけで永らくそのままになっていた。個人的に少し思い入れがあるアルバムなので、なんとか手元に置きたいとは思いつつ、そろそろ買おうかなと思っていたところ、すでに品切れ状態になっていたのだった。
 ところが最近、とあるネット・レンタル・ショップにあることが分かり、やっと借りることができたという状態である。もちろん過去何十回も聴いているので、今聴いたところでとりたてて感慨があるわけでもないが……そこはそれ、やはり懐かしさはある。
 この中に「元気を出して」(作詞・作曲:竹内まりや)という曲が入っていて、その後、竹内まりやの歌がヒットしたようだが、僕にとってはやはり薬師丸ひろ子の「元気を出して」なわけである。なんと言ってもしみじみとささやくような歌い方が良い。竹内まりや版を最初聴いたとき、その演歌調な歌唱に、腰を抜かさんばかりだった(かなりオーバーだが)。演歌歌手でもないのになぜこういう歌い方をするのか皆目わからぬ。励ましの歌なんだから励ますように優しく歌うが良かろう。というわけで、やはり薬師丸ひろ子版である。特に彼女の場合、詞を刻むように丁寧に歌うので、本当に励まされているようで心持ちが良い。
 そういう丁寧な歌唱のせいもあり、歌詞カードを一切見ていなかったこともあって、この歌はてっきり「女→男」の歌かと思っていたのだ。どうやら「女→女」の励ましソングであることを知ったのは数年前である。
 ちょっと歌詞を見てみようか。

涙など見せない 強気なあなたを
そんなに悲しませた人は 誰なの?
終わりを告げた恋に すがるのはやめにして
ふりだしから また始めればいい
幸せになりたい 気持ちがあるなら
明日を見つけることは とても簡単

少しやせたそのからだに 似合う服を探して
街へ飛び出せばほら みんな振り返る
チャンスは何度でも 訪れてくれるはず
彼だけが 男じゃないことに気付いて

あなたの小さな mistake いつか想い出に変わる
大人への階段を ひとつ上ったの
人生はあなたが 思うほど悪くない
早く元気出して あの笑顔を見せて

 「女→女」であることを決定づけるのは「彼だけが 男じゃないことに気付いて」だけだ。普通に考えればこの「気付いて」は命令形である。だが薬師丸ひろ子の歌だと、「気付いて」が連用形であるかのように聞こえる(僕には聞こえた)。つまりどういうことかというと、その前のフレーズまでが「相手に対する励ましの言葉」で、このフレーズが自分を主人公にしたつぶやき……つまり、失恋した彼を励ましている自分がいるが、同時にその彼だけが男じゃないことに気付く自分もいるという状況である。従って「女A→男」だが、「男→女B」だった「男」が「女B」に失恋という複雑な(だがよくドラマなんかになる)状況を表していると思い込んでいたわけだ。そういうわけで僕はこの歌がわりと好きだったんだが、「女→女」の励ましソングであると気付いてから急激に醒めていったのだった(作者の意図が「女→女」であるのは、間違いない)。とはいうものの、薬師丸ひろ子のささやくような歌唱は好きで、今でもよく聴いている曲である。竹内まりやのはほとんど聴かない。
# by chikurinken | 2009-12-19 12:23 | 音楽

『巨匠たちの肖像 ヒッチコック』(ドキュメンタリー)

巨匠たちの肖像 ヒッチコック<サスペンスの深層>
(2009年・NHKエデュケーショナル)
NHK-BS-Hi プレミアム8

b0189364_18595336.jpg 「巨匠たちの肖像」はいつもチトモノタリナイものばかりであるが、このヒッチコックの回については、非常に良かった。彼の人となりだけでなく、作品における工夫や効果なども、実際の映像を使って解説しており、非常にわかりやすい。やはり映像には映像である。
 これまで、ヒッチコック作品については、本で解説を読んだりしているんだが、何となくぼんやりというか、実作を直接目の前にして解説してもらうのでなければよくわからない。それは過去に見ている作品の場合でも同様である。だから同時進行でここはこうなんだと言われるとなるほどと思ってしまう。また過剰な思い入れによる過剰な解釈も少なく(一部あったが)、正攻法で作品解説に努めていたのも良い(このシリーズの他の回は過剰な思い入れが多い)。
 題材として『サイコ』と『鳥』を扱っていたが、ヒッチコックの才能と技術、革新性などがよくわかり、これまでにない解説映像になっていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『レベッカ(映画)』
竹林軒出張所『サイコ(映画)』
竹林軒出張所『知りすぎていた男(映画)』
竹林軒出張所『マーニー(映画)』
竹林軒出張所『泥棒成金(映画)』
竹林軒出張所『ロープ(映画)』
竹林軒出張所『めまい(映画)』
# by chikurinken | 2009-12-17 19:00 | ドキュメンタリー

『迷走 碁打ち・藤沢秀行という生き方』(ドキュメンタリー)

b0189364_112295.jpg迷走 碁打ち・藤沢秀行という生き方
(2009年・NHKエデュケーショナル)
NHK教育 ETV特集

 囲碁界のことはよく知らないが、藤沢秀行(ふじさわしゅうこう)という怪人がいたらしい。今年5月に亡くなったらしいが、最後の無頼派と呼ばれた碁打ちだそうで、借金まみれでアルコール依存、愛人を数人かかえ、子どもも9人という経歴を持つ。棋聖のタイトルを6期守ったそうで、囲碁における実力、実績とも抜群である。だが、棋聖戦でもアルコール依存状態で対局したこともある。本人の弁によると手が震えて碁石が持てなかったらしい。
 ともかく、そういう破天荒な藤沢秀行についてのドキュメンタリー。交友関係を持つ映画監督の故・相米慎二、俳優の寺田農、ライバル棋士達、そして秀行によって多大な迷惑を被った妻、子どもたちが登場し、藤沢秀行の人となりを明かしていく。もちろん、真の人間性などドキュメンタリー1本見たからといって理解できるわけではないが、多彩な角度から藤沢秀行を照らし出していく試みは面白い。人間の不可解な部分はそのまま残しながら、1人の人間の歴史とその時代を淡々と語る手口は、派手さはないが職人芸のような手堅さがあり、好感が持てる。1時間半通じて、最後まで目を離すことができなかった。よくできたドキュメンタリーだ。
ETV特集 『迷走 碁打ち・藤沢秀行という生き方』

★★★☆
# by chikurinken | 2009-12-16 11:03 | ドキュメンタリー

愛の黄昏

 先日YouTubeで歌手の奥村愛子のことを検索していたら、奥村愛(バイオリニスト)の映像が出てきた。
 「黄昏のワルツ」を舞台で演奏している映像で、今は亡き羽田健太郎のピアノとオーケストラがついている。二重協奏曲みたいな編成で、おそらく元ネタは『題名のない音楽会』ではないかと思う。ちょっと試みに聴いてみたんだが、心にしみいる演奏でしびれてしまった。
b0189364_9433224.jpg 奥村愛は、一般的にはいわゆるヴィジュアル系ソリストの範疇に入れられるんだろうが、僕がかなり気に入っている演奏家の1人である。それまでほとんど演奏している姿を映像で見たことがなかったので、「ヴィジュアル系」かどうかは僕にとってはほとんど無縁だった。要は、演奏が良くて聴いていたのだ。彼女の場合、曲の個性を打ち出すというより、演奏家の持つ温かい内面が曲からわき出るようで、やさしさにつつまれているような感覚を覚える。奇しくも彼女が「人間性の出るような演奏をしたい」とテレビで語っていたが、そういう方向性を目指しているのも少し驚きだった。もうできてるじゃないか。
 ただ、この「黄昏のワルツ」は、どちらかというと曲の個性が打ち出された迫力のある演奏で、CDで聴く演奏とは少し感じが違う。元々、NHKで放送されていた『にんげんドキュメント』のために加古隆が作曲したテーマ曲で、原曲はバイオリン、ピアノ、オーケストラの編成である。奥村愛はこの曲が気に入っているようで、 『愛のあいさつ』 『ポエジー』の2枚のCDで取り上げている。『愛のあいさつ』の方がバイオリン+ピアノ・バージョンで、『ポエジー』の方がオーケストラ付きのフル・バージョンである。YouTubeの映像は2003年放送分ということなので、『愛のあいさつ』のプロモーションを兼ねた出演だったんだろうが、フル・バージョンである。やはりフル・バージョンにこだわりがあって『ポエジー』に再録したのだろうか。でも、バイオリン+ピアノ・バージョンも良い演奏である。
 ちなみに奥村愛子も僕のお気に入りだが、彼女を知ったのも、Amazonで「奥村愛」を検索しているときであった。奥村愛のブログでも「奥村愛子」のことをちらと書いていたので、本人にも多少の認識はあるんだろう。ともかく、奥村愛は、僕にとって次に出るアルバムを楽しみにしている貴重な演奏家である。

参考:黄昏のワルツ/奥村 愛(YouTube)
# by chikurinken | 2009-12-14 09:44 | 音楽

『牛を屠る』(本)

b0189364_2031165.jpg牛を屠(ほふ)る
佐川光晴著
解放出版社

 これは面白い。北大を出て、編集社を1年でやめ、生活のために屠殺場に就職した著者(現在は小説家)の、屠殺場での10年間の勤務録(のようなもの)。
 職人の腕に頼る古いタイプの屠殺場、「大宮市営と畜場」に入社し、屠殺場の仕事に誇りと生き甲斐を感じながら、職人としての腕を磨いていく。ネガティブではない屠殺場の情景がきめ細かく描かれ、普段絶対に目にも耳にもすることがない屠殺場の内側を紹介している。屠殺の過程の描写はなかなかショッキングで、読むうちにぐんぐん引き込まれていくが、決して興味本位な記述ではなく、屠殺業に対する敬意が伝わってくる。まったく知らない世界をかいま見せてくれる著書で、非常に面白く、同時に勉強になる。記述は平易で読みやすい。

★★★☆
# by chikurinken | 2009-12-13 20:33 |

『資本主義崩壊の首謀者たち』(本)

b0189364_20314053.jpg資本主義崩壊の首謀者たち
広瀬隆著
集英社新書

 2008年アメリカで起こったリーマン・ショックと金融崩壊のメカニズムを簡単に説明した本。要は、一部の投資家たちが、価値の虚像を作り上げ、偽の価値をつり上げるだけつり上げてあげくにごっそり持っていったということらしい。世界中の金が、輸出する価値を持たないアメリカに、投資という名目で巧妙に吸い上げられている。それを自分の懐に入れるのがアメリカのハゲタカ投資家で、こういった連中がアメリカ政府を動かしながら、自分たちにとって有利な、うまみのあるシステムを作り出しているということ……なのかな。なにしろ内容がわかりにくい。もう少し具体的かつわかりやすく書いてもらわないとほとんどの人は理解できないんじゃないか。アメリカに巣くう「悪人」たちが次々に紹介されるが、こちらとしては、名前を聞いたことがある程度でまったく具体的なイメージが湧かない。あげくに自著の宣伝を繰り返す始末だ。理解したければそちらを読めということらしい(読んでみようとは思うが)。
 ただ、最後の「日本がとるべき新しい進路」の章で、郵政民営化はアメリカのハゲタカたちが郵便貯金をかすめ取るための手段だという説はなかなか説得力があった。著者はすぐに郵政民営化を見直さないといけないと主張している(本書は09年3月に刊行された)。現政権の政策がこれを踏襲する形になっているのはわずかな救いである。

★★★
# by chikurinken | 2009-12-11 20:33 |

『花祭』(ドラマ)

花祭(2009年・中部日本放送)
監督:堀場正仁
脚本:市川森一
出演:高畠華澄、橋爪功、大滝秀治、蟹江一平、小川弦

b0189364_1312468.jpg 奥三河に伝わる伝統芸能「花祭」をモチーフにしたドラマ。今どきのドラマにしては高水準で、真摯に作られた快作。芸術祭参加作品だそうで、そのへんは納得。
 ただ、ストーリー展開にあまり意外性がなく通り一遍の印象は残る。うまく書けてはいるがどうってことはないという、いかにも市川森一らしいドラマであった。
 花祭をモチーフにして、過疎の問題や地方文化の衰退、家族の問題などを照らし出すというのは非常に良い試みであるが、花祭にとらわれすぎているようで、なんとなく文化映画みたいになっていたのは少し残念であった。だが、昨今のどうしようもないドラマ界にあって、これだけのドラマを作ろうという意気込みがまだあるのは救いである。でもやっぱりこういうことをやるのは地方の放送局だし、やはり「芸術祭参加」などの意図があってこそなのだ。視聴率もあまり取れそうにないしね。
「花祭」ホームページ

★★★
# by chikurinken | 2009-12-10 13:02 | ドラマ

『切手(NHK美の壺)』(本)

b0189364_15481340.jpg切手(NHK美の壺)
NHK「美の壺」制作班編
NHK出版

 NHKで放送されている『美の壺』を出版化したムック本。切手収集の入門編として最適かと思い読んでみた。ただし僕が切手収集するわけではない。単なる興味。
 で、全編読んでみたところ、入門編として非常に良くできているという印象で、切手の面白さがよくわかった。要は、切手の魅力は図案の美しさということのようだ。美術作品をそのまま切手にしたものであっても、構図や構成を適宜変えたりしているので、作り手の美意識が出るということらしい。なるほど。
 また、凹版画(銅版画など)で刷られた切手があるという話も興味深かった。チェコスロバキア製の切手が銅版画であるという話は以前聞いたことがあったが、日本にも銅版画製の切手があるというのは今回初めて知った。しかもそのうちのいくつかは手元にある。ということで早速ルーペで確認してみた。確かに銅版画である。手触りからも銅版画であることがわかる(インクが山になっているので表面に触れてみるとわかる)。
b0189364_15523585.jpg さらに、版画家のアルフォンス・ミュシャ(切手作家でもあったらしい)が残した切手もあるなど、版画ファンからしてみるとたまらない話も紹介されていた(しかも今でも数百円で入手できるらしい。ミュシャの版画が数百円!)。というわけで、切手のさまざまな魅力が十分に伝わってきた本であった。


第1次国宝シリーズより「法隆寺」(凹版印刷)↑

★★★☆
# by chikurinken | 2009-12-09 15:57 |

万年筆画……

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 丸善にセーラーのプロフィットという万年筆が展示されていて、書き味がとても良いので以前から目をつけていた。で、とうとう先日、このプロフィット万年筆(細字)(参考:Amazonリンク)を買い求めることができた。万年筆はすでに1本持っているので、今回のプロフィット万年筆は純粋に絵画用である。
 万年筆画……カッゴよぐね?(「赤いプルトニウム」風)
 そういうわけで万年筆で絵を描くという企画である。最初は随分戸惑ったが、使っているうちに大分慣れてきた。だが逆に鉛筆の感じが遠ざかって鉛筆が使いにくくなった。万年筆以外にもいろいろペンを使ったが、やはり力の入れようなんかが違ってて少々勝手が違う。現在、僕の手は万年筆用にカスタマイズされてきている……

ジャズマン1
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ジャズマン2
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女性……なんだか新聞の挿絵みたいになった
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# by chikurinken | 2009-12-08 11:10 | 美術

『坂の上の雲』のドラマ版を見た

b0189364_9354215.jpg 司馬遼太郎の『坂の上の雲』がNHKのスペシャル・ドラマとして放送されている。なんでも今年の11月、12月に第1部、来年に第2部、再来年に第3部という具合に3年連続で放送するんだそうで、2、3年目は完全に忘れ去られてしまいそうな放送スケジュールである。奇を衒うにもほどがある。大河ドラマの枠で半年間集中的に放送した方が良いと思うが。
 『坂の上の雲』は、文春文庫で8巻構成で出版されており、浪人時代、サラリーマン時代の計2回読もうとしたが、どちらも5〜6巻でやめてしまった。とにかく、話の途中で脱線することが異常に多く、読んでいるうちに馬鹿馬鹿しくなる。そもそも、小説などというのは、語り部をどの位置に置くかというのが重要なのではないかと思う。こんなに簡単に頻繁に顔を出して、余計なことをベラベラしゃべりまくるなどというのはうるさくてしようがない。語り部は、極力さりげなくあってほしい。それが良い小説だと僕は思う。現在放送中のドラマでも、語りが多くてうるさい感じがする。司馬遼太郎がいつでも顔を出すという感じで、正直言ってウザイ!
 それはさておき、ドラマは一応録画しておいたがたぶん見ないだろうと思っていた。ところが昨日たまたまテレビをつけたらこれが放送されていて、そのまま終わりまで見入ってしまった。昨日の放送は第2回目だったんだが、結局その後、第1回目も続けて見てしまうことになった。意外に面白かったのである。NHKの大河ドラマに恒例のオーバーアクト+過剰な演出は随所に見られるものの、主演の3人(本木雅弘、香川照之、菅野美穂)が実力を発揮しており、なかなか侮れない。また、最近の大河ドラマではいつもセット(大道具)がチープで見ていて苦笑することが多いが、このドラマに関しては、ロケを含めて大道具が割合良くできている。コンピュータ合成を随所に使っているのではないかと思うが、それもまったく意識させられない。
 この話は、主人公が軍人の秋山兄弟と文人の正岡子規なんで、周辺を取り巻く登場人物が多岐に渡ってその点が非常に面白いのだが、ドラマではその辺りでもすでに本領を発揮している。高橋是清や夏目漱石がさりげなく登場してきて、原作の面白い部分も表現されている。ただ、原作もそうだが、脳天気な明るさというか現実肯定はいかにも司馬遼太郎風で、軽いと言えば軽い。だが、家族で見るテレビ・ドラマとしては最適と言えるかも知れない。ともかく力の入ったドラマのようなんで、読んでいない第6巻以降をこのドラマで是非確認したいと思う。と思ったものの、第6巻以降といえば再来年放送か……。2011年と言えばすでに地デジ化も終わっている。再来年の予定を今から検討するなどとても馬鹿馬鹿しいと思うぞ。何だってこんな放送スケジュールを組んだのか、その辺をNHKに訊いてみたいものだ。

参考:
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
# by chikurinken | 2009-12-07 09:37 | ドラマ

『五分の虫、一寸の魂』(本)

b0189364_19183194.jpg五分の虫、一寸の魂
松下竜一著
現代教養文庫

 『暗闇の思想を』『明神の小さな海岸にて』の内容をユーモア小説仕立てで仕上げた一編。どこまでがフィクションかわからないが、法廷内でのやりとりが非常におかしい。松下竜一の面目躍如というか、こういったものをもっと書けば良かったのにと思えるほど、奥行きの深いユーモア・センスに驚く。豊前火力発電所建設反対闘争には、前2著で描かれた深刻な面だけでなく、こういった楽しい面もあったことを書きたかったのだと著者は述べている。確かに著者が発行していた『草の根通信』からもそういう楽しさは伝わってきたが、しかしそれでも、このレベルまで昇華させられる力量というのは瞠目に値する。
 ちなみに本書は僕が最初に読んだ松下本であり、読んだのは今回が2回目だった。実に25年ぶりである。しかも前よりもインパクトは強かった。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『暗闇の思想を(本)』
竹林軒出張所『明神の小さな海岸にて(本)』
竹林軒出張所『ルイズ 父にもらいし名は(本)』
竹林軒出張所『あぶらげと恋文(本)』
竹林軒出張所『潮風の町(本)』
竹林軒出張所『小さなさかな屋奮戦記(本)』
竹林軒出張所『仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記(本)』
竹林軒出張所『ケンとカンともうひとり(本)』
# by chikurinken | 2009-12-06 19:19 |

パノラママニア

 秋ですな。
 秋で空がスッキリということになると、たまには川辺で物思いに浸りたいと思うのは太古からの人の習性ゆえか。
 というわけで、川辺で写真を撮ったりして遊んでいます。最近凝っているのはパノラマ化で、写す方向を横にスライドしながら何枚か撮影し、それをAdobe BridgeとPhotoshopでパノラマ写真にするというもの。フォトマージという機能を使います。
 とはいうものの、いざパノラマ化しようとすると、方法をすっかり忘れている自分がいる。ここはひとつ記録として記しておこうということで……ま、備忘録代わりです。

 Bridgeを起動。
 「Tool」→「Photoshop」→「Photomerge...」。後は適当にオプションを選択すると自動的にパノラマ化される。

 で、その現物。その1。4枚の写真から(クリックで拡大します)。
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 その2。5枚の写真から。
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# by chikurinken | 2009-12-04 19:03 | パソコン

『祖国に幸せを』(ドキュメンタリー)

b0189364_13142318.jpg祖国に幸せを 女性代議士の闘い
(2006年・デンマーク Bastard Film)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

 2003年のアフガニスタン国民大会議で軍閥打倒を訴え議会から追放された女性、マラライ・ジョヤが、2005年の議会選挙に立候補し当選するまでの10日間を描いたドキュメンタリー。
 マラライ・ジョヤは、常に暗殺の危険(過去4回暗殺を企てられたらしい)と隣り合わせで、アフガニスタンの民主化を訴えて活動している。真摯で懸命なジョヤだが、現在のアフガンの国内情勢はこのような人々を押しつぶそうとする。
 このドキュメンタリーでは、ナレーションは一切なく、映像内の会話だけで淡々と進行するが、最初から最後まで緊迫した空気が張り詰めている。恐怖政治の緊迫感、民主化への人々の願いなどがあますところなく表現された傑作ドキュメンタリーである。
2006年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭シルバーウルフ賞
2007年サンダンス映画祭ワールドシネマ(ドキュメンタリー部門)最優秀賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アフガニスタンの少女、日本に生きる(本)』
竹林軒出張所『わたしが明日殺されたら(本)』
# by chikurinken | 2009-12-02 13:17 | ドキュメンタリー

『合掌造り民家はいかに生まれるか』(ドキュメンタリー)

b0189364_851195.jpg合掌造り民家はいかに生まれるか --技術伝承の記録--
(1994年・民族文化映像研究所)
演出・脚本:姫田忠義

 姫田忠義と言えば、知る人ぞ知る文化映画作家で、まさか彼の映像がシリーズで出されているとは思わなかった。本作は『映像民俗学シリーズ 日本の姿』というシリーズの1本で、このシリーズは、全部で30巻以上のビデオとDVDで構成されている。『白川郷の合掌民家 - 技術伝承の記録』という文化映画が本作のベースになっており、元の映画を半分くらいまでカットして編集したものである。
 姫田忠義の映像を通しで見たのはたぶん今回が初めてだと思うが、とにかく記録に残そうという意志が伝わってきて、後世、その映像的な価値が評価されるのは間違いない。姫田が映像に残した多くの民俗的要素はすでに大多数が日本から失われており、おそらく彼の映像がなければ振り返ることすらできないものが今の段階でもかなりあるんじゃないかと思われる。今回この映像を見て、記録に対する彼の徹底さがうかがわれ、あらためてすごい人だということがわかった。
 この作品では、田島家の移築に立ち会い、その様子を克明に追っている。なにしろ礎石を固める突き固め作業までが映像に収められている。以前本で読んだときは、薄ぼんやりしかわからなかった突き固めの過程が具体的に示されていて、非常によくわかる。まさに百聞は一見にしかずである。これだけでも感心することしきり。その後も、木組みや屋根葺きの様子が丹念に記録される。
 以前NHKで放送された合掌造りの(屋根葺きの)ドキュメンタリーよりも記録的な価値は高い。「技術伝承の記録」というタイトルの名に恥じない作品である。惜しむらくは、途中、展開が速すぎてついていけなかったことである。DVDという特性を利用して何度も後戻りしながら見た。元々の映像をカットしているため、致し方ないといえば致し方ない。

★★★☆
# by chikurinken | 2009-12-01 22:20 | ドキュメンタリー

『ぼくに死刑と言えるのか』(本)

b0189364_2072757.jpgぼくに死刑と言えるのか もし裁判員に選ばれたら
北尾トロ著
鉄人社

 裁判の傍聴記でお馴染み、僕にとっては「オンライン古本屋のおやじさん」でお馴染みの北尾トロ氏が、裁判員制度について真剣に考察した本。中身は雑多でムック本に近い(見た目は普通の本)。
 裁判員制度が始まるに当たり、自身でも裁判員を疑似体験してみようということで、熊本の模擬裁判に参加したり、傍聴しながらも裁判員になったつもりで量刑について真剣に考えたりする。このあたりの態度が実に真摯で、目の前のことを自分のこととして消化しようという態度が伺え、大変好感が持てる。もちろん、内容も充実しており、全編通じて出てくる傍聴記では、自分を裁判員の立場に置き換えながら、公判を実況する(ただし公判は、裁判員制度以前のもの)。笑える箇所もあるが、おちゃらけた感じはまったくない。公判傍聴記は阿蘇山大噴火のもの(どちらかと言えば笑い中心)しか読んだことがないが、北尾トロ氏のものも何冊か読んでみようかと思わせるものがあった。
 途中、「死刑」関連書でお馴染み、映像作家の森達也との対談もある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『死刑(本)』
# by chikurinken | 2009-11-29 20:08 |