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竹林軒出張所

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特別展「建仁寺」……そしてロビーでの皮算用

b0189364_10372836.jpg 先日、岡山県立美術館特別展「建仁寺 -- 高台寺・圓徳院・備中足守藩主木下家の名宝とともに --」に行ってきた。てっきり巡回展かと思っていたが、どうやらここだけで開催ということらしい。いつもはしょぼい展示ばかりでなんだろなーという感じなんだが、今回は随分気張ったようだ。山陽新聞社の130周年記念事業ということらしい。
 とりわけ、建仁寺方丈の大壁画を掛軸にした海北友松の「雲龍図」、「琴棋書画図」、「花鳥図」の3点(8+6+7幅の計21幅)が圧巻。他にも、「なんでも鑑定団」でお馴染みの曽我蕭白や伊藤若冲の軸もある。有名な「豊臣秀吉像」や俵屋宗達の「風塵雷神図屏風」も来る。ただし「風塵雷神図」は最後の1週間だけらしく、まだ展示されていなかった。展示予定の場所には複製が置かれていた。この絵は以前京都で見たしそのときも対して感慨がなかったから、僕としてはなくても別にかまわない。ともかく、県立美術館としては相当がんばった展覧会のようである。
 こういう展覧会の場合は大抵そうなんだが、ほとんどのお客さんは、最初の展示物から順路に従って見ていくので、順路の前の方(つまり最初とその次くらいの展示室)がやけに混んでいる。一般的にこの辺に目玉作品が展示されることはないので、こういうところはスルーして、お目当ての作品の前に早々と移動するのがよろしい(そっちの方が空いていたりする)。今回の展覧会は休日ということもあって意外に混んでいたことだし。

 そういうわけで十分堪能してからロビーに出た。ロビーには例によってお土産物屋というか記念品ショップがあり、普通であれば展示物関連の絵はがきなんかが売られているんだが、今回は単独展示だったせいもあるのか、展示品関連の絵はがきはほとんどなかった。大量に売れ残っても困るからしようがないんだろうが、何点か買おうと思っていただけに残念。
b0189364_10425741.jpg 絵はがきはなかったが、壁に現代作家の(複製ではない)本物の版画が何点か掛けられて、展示販売されていた。ほとんどが木版画とリトグラフで、平山郁夫のなんかもあったんだが、値段に驚嘆しながら見ていたわけだ。もちろん買う意志なんかまったくないから見るだけだったんだが、なんだか展示販売担当の男性店員から話しかけられそうな感じで嫌だなと思いつつ、彼からは少し距離を置くようにしていた。その店員の傍にデッサン風の絵があって、なかなかよく描けているんで(失礼!)少し興味をおぼえていたんだね。で、店員が他の客と話をしている隙にちょっと盗み見(ってほどのもんじゃないけど)していたわけだ。東某という作家で、どうやらリトグラフのようだ。単色なのでたぶん一版なんだろう。値段は8万数千円で、すでに売約済みであった。「51/158」という版番号が書かれている。
 盗み見していたら、会話が終わった店員がいきなり僕に話しかけてきた。セールス・トークになったらかなわないなと思いながら彼の話を聞いていたんだが、すでに売れていたせいか販売の勧誘は一切なく、どちらかと言うと、美術好き、話し好きのおやっさんという感じで、印象は良かった。
 彼によると、何でもこの作家さん、中国で活躍している人気作家で、東京の某デパートの個展では、ほとんど完売だったという。店員は、この作家がいろいろな賞を取っているということもしきりにアピールしていた。この作品は、版番号は51だが、それまでの50点は、中国各地の美術館などに寄贈しているということで、51が最初の版になるらしい。これはすでに売れているので、今から買うということになると「52/158」です、もう初版は売れましたからね……とうれしそうに語っていた。まあこっちには買う気なんかないんだがね。しかし僕にはそんなことよりこの「/158」というのが気になる。これは158枚プリントしたことを表すんだが、通常は50とか100とか切りの良い数字を使うものだ。で、それを訊いてみたんだが、なんでも「158」というのは中国で縁起の良い数字らしく、それで、中国に関係の深いこの作家は「158」にしているんだということ。
 いやしかし、下賤な話だが、たとえば売値の半分が作家に行くとして(その後あるギャラリーのオーナーに話したらもっと行くだろうと言っていた)、予定の108枚が売れたら400万円以上の金額が作家の元に入ることになる。見たところ、6号程度のデッサンで、もしかしたらデッサンをコピーしてリト板に転写しているんじゃないかというような作品である。僕自身もこの技法をよく使っているんで、余計この作品に興味があったんだが、この程度のデッサンであれば描くのにせいぜい2時間、製版に1時間程度である。刷りは他人に(もちろん実費で)やってもらうわけで、そういう風に考えると、大変効率的な商売であることには違いない。
 先述の「ギャラリーのオーナー」にこの話をしていると、彼は「許せませんね」とポツリと言った。

特別展建仁寺 -- 高台寺・圓徳院・備中足守藩主木下家の名宝とともに --
会場:岡山県立美術館
期間: 2009年7月17日(金) -- 2009年8月23日(日)
# by chikurinken | 2009-07-25 10:47 | 美術

『マネー資本主義第4回』(ドキュメンタリー)

マネー資本主義第4回 ウォール街の“モンスター” 金融工学はなぜ暴走したのか
(09年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

b0189364_8382795.jpg リーマン・ショックに端を発する経済破綻の原因を究明しようとするシリーズの第4回。金融工学の導入によってどのように投資市場が拡大し、これがどのように経済破綻につながったかについて解明を試みる。
 このドキュメンタリーでは、「金融工学」を原子爆弾になぞらえて、開くべきではないのに開いてしまったパンドラの箱のようなものとして描いている。つまり正しく活用すべきものでありながら人間の手を超えた巨大な存在としての「金融工学」である。僕としてはそのあたりにすこし違和感を感じた。「金融工学」はそんなに立派なものなのか。これを科学と呼ぶことができるのだろうか。どんな現象でも数学的に解明できるなどという発想自体が非常に傲慢で、本来的な意味で科学的でないんではないか。見ながらそういう疑問を感じるのだが、それに対する答えはなかった。このドキュメンタリーで描かれる人々、つまり「金融工学」に群がって熱狂する人々が、新興宗教関係の人のように見えて仕方がなかった。

★★★
# by chikurinken | 2009-07-24 08:24 | ドキュメンタリー

おとこごころをくすぐる歌

b0189364_1212939.jpg少女期

歌:森田つぐみ
作詞:千家和也
作曲:大野克夫

(あなたにあえて 何かが わかりかけました
何かを つかみかけました)

あなたの前に 出る時だけは
飾りや嘘の ない娘でいたい
涙に濡れた くちづけの中
みつけたものを 大事にしたい
難しい事は 分からないけれど
好きなんです 心から愛しています
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです

あなたの胸に 抱きとめられて
静かに夢を 見る娘でいたい
小鳥が羽根を 休めるように
その手の中で 眠っていたい
恥じらいも何も 忘れそうなほど
好きなんです 何処までも信じています
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです
女の子に生まれたこと
あなたを知ってから 誇りなんです

 またまたアイドル歌謡で恐縮です。
 森田つぐみって人はリアルタイムではほとんど知らなかった。最近、『ベスト歌謡曲100』というアルバムで初めて歌を聴いたんだが、この『少女期』は詞がなかなか男心をくすぐる。「女の子に生まれたこと あなたを知ってから誇りなんです」だと。ちなみに作詞者は千家和也というオッサンで、当時の森田つぐみみたいな乙女が作ったかと思ったら大間違い。残念!
 この千家和也という人、他にも麻丘めぐみの『めばえ』、山口百恵の『ひと夏の経験』や『ささやかな欲望』など、男心くすぐりまくりの乙女歌を作詞している。奥村チヨの『終着駅』なんかもこの人らしい。なかなかの実力派です。
 森田つぐみの歌唱は非常に素直で丁寧。レコード・ジャケットの写真や歌い方から総合すると、優等生タイプの女の子をイメージしているのかなという感じだ。この歌詞に非常に合っていて、一つの表現として見てもかなり質が高い。
 僕の記憶の中には「森田つぐみ」という名前以外ほとんど残ってないので、あまり売れなかったのだろうか。iTunesに入れて1カ月半で30回近く聴いているので、僕にとっては相当フェイバリットな部類に入るんだが。少女期を歌う森田つぐみの映像も見てみたいものである。

参考:
竹林軒出張所『森田つぐみ登場!』
# by chikurinken | 2009-07-23 12:03 | 音楽

讃岐裕子の『ハロー・グッバイ』

b0189364_1030426.jpg 讃岐裕子というアイドル歌手が歌った『ハロー・グッバイ』という歌を聴きたくて音源がないものか探しているんだが、CDも現在出ておらず、なかなか手に入れることができない。この歌は、もともとアグネス・チャンのシングル・レコード『冬の日の帰り道』のB面の歌(1975年、タイトルは「ハロー・グッドバイ」)で、それを77年に讃岐裕子がカバーしたもの。さらにその後柏原芳恵が再びカバーしてヒットしたようだ(81年)。柏原芳恵バージョンについては、ほとんど知らない。当時テレビも見ていなかったし、歌謡界にもまったく興味がなかったから。ただ、柏原カバーについては印象が悪い。当時、アイドル歌手がカバー曲を(さも自前の歌であるかのように)シングルで出すというのがちらほらあったが(『まちぶせ』(81年)、『素敵なラブリーボーイ』(82年)など)、そのどれもがこちらの気持ちを踏みにじるようなもので、とても気分が悪かった。それに企画が安直すぎるっちゅうの。
 まあ、そんなことはどうでもよい。『ハロー・グッバイ』だ。讃岐裕子の『メリー・ゴーラウンド』という再発CDがあって、これが出回っているにはいるんだが、なにぶん復刻されたのが10年以上前でとうに絶版状態。入手するのはほぼ不可能である。『ハロー・グッバイ』が単独で入っているCDも『Jアイドルアンソロジー』(EMIミュージック)というコンピレーションで出てはいるが、まったく買う気にはならない。6枚組15,750円というもので、しかも他の曲(約100曲)はほぼ不要だもんで。
 僕の場合、基本的にiTunesやiPodに入れて聴きたいんで、音質はどうでもいいからなんとかMP3(またはAAC)形式で入手する術はないかということで、iTunesストアなどでもチェックしているんだがまったく出てこない。カセット・テープに入っているものでも残っていれば、変換する術もあるというものだが、それすらすでになくなっている。
 ところが、先日YouTubeに『ハロー・グッバイ』が登録されていることが分かった。歌の再生中、画面にはシングル・レコード・ジャケットがずっと表示されるという、ビデオとしてはどうかなと思うような動画ではあるが、こっちは音楽だけが欲しいので最適と言えば最適。で、これをなんとかMP3に変換する方法はないかいろいろ調べていたところ、flashビデオから音だけを抽出するソフトがやはりあるようで、それを使ってみた。iExtractというソフトがそれで、インターフェイスがものすごくわかりやすく、抽出作業が当たり前のように完了した。おかげでiTunesに『ハロー・グッバイ』を加えることができたのだった。iExtractの作者さん、『ハロー・グッバイ』をアップロードしてくれたお方、ありがとう。
 讃岐裕子の『ハロー・グッバイ』、さわやかな歌声がとても良い。

注1:当方MacOS X環境です。
注2:こういうものには著作権法上の問題が常につきまといますが、著作権うんぬんと言い張るなら、売り手の責任としてちゃんと継続的に発売しておくべきじゃないかと、1ユーザーとして思っております。
注3:讃岐裕子版の『ハロー・グッバイ』もカバーですが、B面からのカバーということで、意味合いはまったく違うと思います。当時僕はアグネス・チャンのシンパでしたが、彼女の『ハロー・グッドバイ』は讃岐版が出た後に知ったくらいです。

参考:
竹林軒出張所『讃岐裕子、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!』
竹林軒出張所『ゆけゆけ裕子、どんとゆけ!』
竹林軒出張所『復刻終結宣言 またはメリー、メリー・ゴー・ラウンド』
# by chikurinken | 2009-07-22 10:26 | 音楽

『ケンとカンともうひとり』(本)

b0189364_8171093.jpgケンとカンともうひとり 松下竜一 その仕事27
松下竜一著
河出書房新社

 松下竜一の子ども向けの小説で、自身の家族、子どもたちをモデルにしたもの。自然に親しむ優しさにあふれた家族が子どもの視点から描かれており、自分の子ども時代を懐かしく思い出した。子どもたちを見つめる作者の目も慈しみに満ちていて優しい。
 文章にちりばめられた情景描写が非常に美しく、まさに珠玉のような名編である。
 童話作家としてもそのポテンシャルを示した松下竜一会心の著。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『暗闇の思想を(本)』
竹林軒出張所『明神の小さな海岸にて(本)』
竹林軒出張所『ルイズ 父にもらいし名は(本)』
竹林軒出張所『あぶらげと恋文(本)』
竹林軒出張所『五分の虫、一寸の魂(本)』
竹林軒出張所『潮風の町(本)』
竹林軒出張所『小さなさかな屋奮戦記(本)』
竹林軒出張所『仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記(本)』
# by chikurinken | 2009-07-21 07:59 |

リニューアル・オープン

b0189364_930052.jpg 介護ライターの野田明宏氏のホームページがリニューアルしました。僕も製作に一枚かんでおります。BiND(ホームページ作製ソフト)とID(フラッシュ動画作成ソフト)というソフトを使って作りました。とっても使いやすいソフトで感覚的にホームページを作ることができます。ただしその分あまり融通が利きません。どこで折り合いを付けるかという問題ですね。まあ、ご覧くださいませ。
 リンク:野田明宏ネット

 リニューアル関連でもう一つ。大分県別府市にあるラクテンチがリニューアル・オープンしたということ。といっても、2004年にいったん縮小リニューアルしており、しかもその後休園しているため、今回が二度目のリニューアル・オープンということになる。
 asahi.com記事「別府の老舗遊園地「やめないで」声受け新装オープン」
 「ラクテンチ」と言えば、九州東部で子供時代を過ごした人にとってはまさに楽天地で、初めて訪れたときは楽天地ならぬ驚天動地であった(かなりオーバーではあるが)。それまで、デパートの屋上が最大の遊戯施設であった当時の僕は、本格的な遊園地に行ったのはこれが初めてで、しかもラクテンチには動物園まで併設されていて、それはそれは(本当の意味で)パラダイスであった。ケーブルカーというものに乗ったのも初めてであった(ラクテンチはケーブルカーでアクセスする)。リフトを初めて見たのもここである(なぜかリフトがあったのだ)。象に乗ったのもここが初めてである(というより後にも先にもそれっきり)。
 それが数十年経って(ナイトスクープ的な意味で)パラダイス化していると聞いて、寂しさもあったが、時代の趨勢でしようがないという気もしていた。それでも復帰に対する要望が多数あったということで今回リニューアル・オープンの運びとなったらしい。おそらくわれわれの世代が懐かしさから要望を出したんだと思う。しかしやはり、大規模で豪華なテーマパークが日本中のあちこちにあって比較的簡単にアクセスできる今となっては、生き残るのは難しいんじゃないかと思う。懐古趣味だけで運営していくのは無理だろう。よほどの吸引力を作り出さない限り、近い将来パラダイス化するのは目に見えている。パラダイス化してしまうと、寂しさどころではなく、悲しみや哀れみを誘うようになる。「懐かしい」で終わっているうちが華ではないかと思うんだが……。
 リンク:別府ラクテンチ

懐かしのケーブルカー。これに乗ってアクセス……

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象の花子さん。乗せていただきました……お世話になりました……僕は大人になりました

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「別府ラクテンチ」のホームページより引用

# by chikurinken | 2009-07-20 09:27 | 日常雑記

『ブックカフェものがたり』(本)

b0189364_19243189.jpgブックカフェものがたり
矢野智子、今井京助ほか著
幻戯書房

 これも、とばし読みするつもりで借りて全部読んでしまった本。
 ただしこれは、ムックに近い本で、雑誌感覚で読むべき本だと思う。
 今はやりのブックカフェ9店舗について、その開店のいきさつや利益を生み出す方法などを当事者から聞き出している。ブックカフェなどの開業を考えている人が読めば大変役に立つと思われる。ちなみに僕は一切そういうことは考えていない。それでも、それぞれの店の歴史はそれなりに面白いものである。
 終わりの方にブックカフェ開業講座があるが、これもあるブックカフェのオーナーによる経験談で、前半部分の続きと考えることができる。このタイトル(「ブックカフェ開業講座」)を見ても分かるが、やはりこの本の対象は、ブックカフェ開業を夢想している人になるんだろう。ちなみに僕はまったくそういうことは考えていない。あ、さっきも言ったか……

★★★
# by chikurinken | 2009-07-19 19:26 |

カバー曲にまつわるあれこれ

b0189364_12572049.jpg 最近、カバー曲のCDが多い。
 おそらく、金を持っている中高年層のサイフを当て込んでいるのだろうが、安易と言えば安易である。
 僕はカバー曲が結構好きで、聴くチャンスがあれば、借りたり買ったりしてよく聴いているのだが、さすがにこれだけ出てくると、ひどいものも出てくる。うまい人が歌えばカバーも別の味わいが出たりして面白いのだが、あまりうまくない人というか表現力が欠如している歌手が歌うと、これは完全にカラオケになってしまう。下手なカラオケは聴きたくないもんね。
 個人的な印象では、カバー曲ブームの走りになったのが中森明菜の「歌姫」シリーズではないかと思う。最初の『歌姫』が1994年、その後『歌姫II』(2002年)、『歌姫III』(2003年)、『艶華』(2007年)と続いて、2008年には『フォーク・ソング〜歌姫叙情歌』が出た。このシリーズの中森明菜は、声がくぐもって歌詞が聴き取りにくいのだが、最初の『歌姫』と『歌姫II』は、別解釈ということでそれなりに面白くもあった。
 だがしかしこれだけ立て続けに出せば、うまく歌えない歌も歌わなければならなくなるわけで、昨年出た『フォーク・ソング』に至っては無惨なものである。声は出ていないし何も表現できていないし、ホントにカラオケになってしまった。鼻歌みたいなものまである。人に聴かせる歌じゃない。しかも、近々また続編が出るらしい。こういうことが続くと、むしろキャリアに傷が付くような気がするがどうだろう。
 カバー集を製作する当事者は、カバー集を出す前にその意義をよく考えた上で出していただきたいと切に思う。

カバー曲集で非常によくできていると思ったもの
原田知世『カコ』『summer breeze』
山崎ハコ『十八番』
高橋クミコ『世紀末の円舞曲』
諫山実生『ハナコトバ〜花心詩〜』
アンジェラ・アキ『ONE』
純名りさ『ミスティ・ムーン』(カバー集というよりスタンダード集ですな、これは)

カバー曲集でよくできていると思ったもの
おおたか静流『恋文』
オムニバス『Queen's Fellows: Yuming 30th Anniversary Cover Album』
原由子『東京タムレ』
中森明菜『歌姫』
岩崎宏美『Dear Friends II』
# by chikurinken | 2009-07-18 13:01 | 音楽

『仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記』(本)

b0189364_10383525.jpg仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記
松下竜一著
朝日新聞社

 1985年に大分県中津市で開催された「'86豊のくにテクノピア」に、市民団体が結集して反核パビリオン、非核平和館を出し、大変な反響を呼んだ。その顛末記がこの本。
 この「'86豊のくにテクノピア」自体、そもそもドロナワ式でいい加減に計画された博覧会だったが、通常であればこういう企画に反対の立場の人間が集まって、逆にこれを利用して反核の催しをやろうじゃないかという話になった。その中心人物の一人、松下竜一が、『草の根通信』(市民運動関係者および賛同者向けの機関誌)で、その経過を毎月リアルタイムに報告したものを集めたものが本書である。
 同時進行であるためか臨場感が伝わってくる上、こういう催しにつきものの「お祭り」感までがひしひしと伝わってくる。いろいろな問題が出てはそれを市民の頭と手で解決していく姿は非常に爽快である。記述もさらりとして簡潔な表現であるため、とても読みやすく、本当に自分が現場で立ち会っているかのような感じ、まさに疑似体験になる。やはりこのあたりは書き手の力量によるんではないかと思う。
 結果的に、「テクノピア」がおざなりで貧相なもので終わったのに対し、「非核平和館」の方は非常に評判が良く、よくこれだけのものができましたねといろいろな人に言われたらしい。もちろん、わずか半年でこれを実現するに当たり相当な苦労もあったんだろうが、そういうものをすべてひっくるめて楽しんでいたということがよくわかる。何かを大勢で作り上げる喜びや感動がよく伝わってきた。
 少しもったいないのは、地味な装丁と読みづらさを感じさせるレイアウトである。何かのパンフレットみたいな装丁で、中を開いてみると行間が狭く字面が堅いレイアウトが出てくる。普通であればとても読む気にならない。それに写真も見づらく、第一印象は良くない。内容がすばらしいだけに非常に惜しいところである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『暗闇の思想を(本)』
竹林軒出張所『明神の小さな海岸にて(本)』
竹林軒出張所『ルイズ 父にもらいし名は(本)』
竹林軒出張所『あぶらげと恋文(本)』
竹林軒出張所『五分の虫、一寸の魂(本)』
竹林軒出張所『潮風の町(本)』
竹林軒出張所『小さなさかな屋奮戦記(本)』
竹林軒出張所『ケンとカンともうひとり(本)』
# by chikurinken | 2009-07-17 10:37 |

ヌード・クロッキー

b0189364_12181341.jpg 先日、ヌード・クロッキー会に参加してきた。クロッキーというのは速写という意味だそうで、短時間で対象を描画することである。「クロッキー」ということばを使ってネットで画像検索すると、いろいろな作品が表示される。やはりよくできたものは人に見せたいということか。
 かつてやたら人物デッサンをやりたくなった時期があって、あちこちでデッサン会みたいなものがないか探していたのだが、なかなか見つからなかった(東京や大阪だといくらでもあるんだろうが)。で、なかばあきらめていたんだが、いつも出入りしている美術館で、半年に1回ずつヌード・デッサン会(厳密にはクロッキーの会だが)が行われていることが分かって、前回から参加しているというわけだ。個人的にはヌードでなくても良いんだがね……いや、ホント。
 前回、たかだかヌードとたかをくくっていたこともあって、あえなく撃沈。あまりの口惜しさに、その後しばらくヌードばかり練習していた。今回は、その轍を踏むことのないよう、何度も練習を積んでからクロッキー会に臨んだのだった。
 今回は、10分のポーズを6回、その後40分のポーズ、20分のポーズを2回というメニューだった(間に適宜休憩が入る)。前回は10分と40分だけだったが、10分のクロッキーと言えばしょせん練習のための描画という感じで、なんだかもの足りない。というわけで、今回20分のポーズを入れてくれるよう僕からお願いしたんである。
 さて、いざモデルさんが入場してくると、室内に緊張が走る。やがて時間になり、ガウンのような簡素な服をはらりと脱ぐ。室内の緊張感がピークに達する瞬間である。いきなり公の場で女性が裸になる瞬間は通常であれば目にすることはなく、考えてみれば相当異様な光景である。初めてのときはさすがにビックリというか少し引いてしまったが、今回は余裕しゃくしゃくである。
 さて、いざ裸体が現れると、非常に恰幅の良いモデルさんであることがわかった。ルノワールがこの場にいればさぞかし喜んだだろう。今回が初めてであれば少しガッカリしていたかも知れないが、まあこういうのもアリかなと割り切ることができた。以前、銅版画の師匠に、ダンバラ・モデルのデッサン会の経験を聞いていたが、僕もついに同じレベルに達することができたわけだ(違うか)。
 ところがこのモデルさん、ポーズが非常に自然で、なかなか描きやすい。さすがプロ!という感じである。でもプロであるならば、もう少しスマートになるという選択肢もあるんじゃないか……などと考えながら、クロッキーに臨んだ。極力、このモデルさんの体からあふれ出るエネルギーを描きとろう(つまりはリアルに描こう)ということで、6+1+2枚のクロッキー(およびデッサン)ができあがった。あらかじめヌードの練習をしていたせいか、今回は前回のように惨敗ということはなく、そこそこのできかなと思えるようなものができた。そういうわけで、気分良く、美術館を後にすることができたのだった。
 そうそう、描画中、モデルさんがこちらを向く姿勢のときに、描き手を意識するかのような雰囲気が発生し、結果的に画家とモデルの葛藤といった状況が生み出された。まあ、僕の気持ちの上でそう感じただけだから、モデルさんはなんにも感じていない可能性が高い。だが、なかなかスリリングで面白い状況であった。そういう意味でも良いモデルさんだったんではないかと思う。またいつかこのモデルさんに対峙したいものだが、次回はもう少し細くなっていただけると大変ありがたい。あまりに太い方だと、人を描いているというより物体を描いているという感じになってしまうもので(その方が本来的には正しいのかも知れないが、僕は人を描きたいのだ)。ひとつよろしくお願いしたい。

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恰幅の良いモデルさん……20分、鉛筆


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変な位置からのクロッキー……10分、黒チョーク
# by chikurinken | 2009-07-16 12:12 | 美術

『小さなさかな屋奮戦記』(本)

b0189364_13204579.jpg小さなさかな屋奮戦記 松下竜一 その仕事29
松下竜一著
河出書房新社

 松下竜一の盟友である梶原得三郎氏夫妻をモデルにした小説。
 曲がったことの嫌いな梶原氏が小さな魚屋を開店し奮闘する姿、それを支える妻とのふれあいなどを淡々と、ときにユーモラスに記述している。松下竜一の、盟友に対する優しい視線が心地良い。
 『5000匹のホタル』や『ケンとカンともうひとり』などの松下童話に通じる作品で、語り口もそれに近い。正直なところ、インパクトに欠け少し退屈した部分もある。おそらく語り口がその原因ではないかと思う。面白い要素もあり、よくできてはいるんだが、松下竜一の著作ということでどうしても期待が高くなってしまう。とは言え、梶原氏の実直さは非常に気持ち良く爽快でさえある。世の中がこういう人ばかりになれば、さぞかし暮らしやすくなるんだろうが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『暗闇の思想を(本)』
竹林軒出張所『明神の小さな海岸にて(本)』
竹林軒出張所『ルイズ 父にもらいし名は(本)』
竹林軒出張所『あぶらげと恋文(本)』
竹林軒出張所『五分の虫、一寸の魂(本)』
竹林軒出張所『潮風の町(本)』
竹林軒出張所『仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記(本)』
竹林軒出張所『ケンとカンともうひとり(本)』
# by chikurinken | 2009-07-15 13:22 |

関ヶ原参戦の記(後編)

 『徳川家康』の方は、DVDが出ていないものとずっと思っていたんだが、こちらもTSUTAYAにあることが分かり、早速借りてきた。関ヶ原の戦いでは、間諜の役でちょっとだけ映っているシーンがある(これも絶対に本人しかわからないが)。そのシーンは是非見てみたい。
 こちらのDVDでも、例によってドラマ部分は飛ばし合戦シーンをスキャンしながら見た。このドラマでもいろいろなことが甦ってきて懐かしくなる。三方ヶ原の戦いは出たことすら憶えてなかったが、このDVDを見て思い出した。京都近郊の河原(宇治川だったと思うが)で撮影されており、主役の人達も来てたよなあなどと思いながらね。そうそう、こういうドラマにありがちだと思うがほとんどのシーンは、京都近郊で撮影されております。浜辺のシーンは琵琶湖で、川辺のシーンは宇治川で撮影します(場所もほぼ決まっているようだ)。城が出てくるシーンは彦根城ですね。『徳川家康』では、彦根城がいろいろな城として登場しています。しれっと「……城」というテロップまで付いている。どれも一緒だっつーの。
 こちらは、ドラマ部分が割に面白くて、合戦シーンのみを見るつもりだったにもかかわらず、下巻に至ってはほとんど見てしまった。女好きの家康(松方弘樹)という設定も面白い。豊臣秀吉を緒形拳が演っているのもなかなかである。緒形拳の豊臣秀吉は、NHK大河ドラマでも再三再四演じられていて「ザ定番」である。真田広之の石田三成も実務家として表現されており、これも「ザ定番」になるんじゃないかというようなデキである。ちなみに監督は降旗康男で、『駅 station』や『鉄道員』を撮った人である。
b0189364_15384520.jpg そうそう、関ヶ原でした。間諜のシーンは申し訳程度に出演していた。「本人しかわからない」というより「本人にもわからない」というレベルであった。
 関ヶ原では、他にもいろいろな陣営の足軽として参加しているはずなんだが、どこの陣営で出ていたかほとんど憶えていない。というより、出ていたときからわからなかったのか……。この衣装を着けてくれと言われるままに走り回っているわけだから、関ヶ原マニアでなければわかるまい。ただ、石田三成の部下になったことはぼんやりと記憶している。関ヶ原の最後のシーンで、石田三成が劣勢を感じながら突進を命じるんだが(これがハイライトになっている)、そのシーンを見ながら思い出した。
 そうだそうだ、この中に俺はいたんだ……俺も討ち死にしたんだ……
 なにやらあの世からの回想のようだが、そういった中でドラマは終了し、家康様が天下を取ったのだった。なかなか面白いドラマだった。正月にゴロゴロ見るドラマとしてはなかなか良いんじゃないかと思った。

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この後、撃たれて手前に落下するのはプロのJACの人。僕はなんとか逃げおおせた……(笑)

# by chikurinken | 2009-07-14 15:41 | 映像

関ヶ原参戦の記(前編)

b0189364_9234550.jpg 僕は、関ヶ原の戦いに参加したことがある。他にも桶狭間、三方ヶ原、小牧・長久手に参加し、長篠は少し曖昧だがたぶん出たんじゃないかと思う。さらに時代を下って、幕末の戊申戦争や西南戦争、神風連の乱にも参加している。
 何をほざいているのだと思われるかも知れないが、つまりテレビ映画のロケの話で、エキストラとして出ていたというわけ。
 かつて京都に住んでいたとき、金欠のためバイトに明け暮れていたのだが、秋から冬にかけて東映京都で大々的にエキストラを募集していたことがあって、これに応募した。撮影が終わるまで拘束されるが(逆に早く終わったらその時点で解放→報酬減)大半が待ち時間で、しかもいざ仕事といっても走り回ってるだけなので、大変楽で割の良い仕事である。特に始めたばかりの頃は、目新しいことばかりで結構楽しい。当時、民間キー放送局が年末年始に長時間ドラマを始めた頃で、ほとんどのキー局がこういった類のドラマを放送していたんじゃないかと思う。そのうちの多くが東映京都で製作されていた。そのとき製作されていた二大大作が『田原坂』(日本テレビ系)と『徳川家康』(TBS系)で、この撮影が当時の東映京都でメインになっていたため、僕も関ヶ原や桶狭間に従軍(参加)することになったわけである。
 画面に映るようなエキストラはプロがやるので、われわれバイトは足軽として後ろの方をワーワー言いながら走り回っている。足軽だから、脚絆や股引、簡単な鎧を着けて笠をかぶるという出で立ちで、髷なんかは当然付けない。撮影中に笠が取れたら現代風の髪型が登場してぶちこわしになるので、それだけは気をつけなければならない。桶狭間では大雨が降っていた(人工的に降らせていた)ので疲労が蓄積して大変だったものだ(遠い目……)。
 参加したドラマをもう一度見てみたいとは思っていたんだが、どのレンタル店にもDVDが置かれていないようで半分あきらめていたところ、先日、近所のTSUTAYAで『田原坂』を発見した。というわけで『田原坂』のDVDを借りて見てみた。もちろん、ドラマ部分は飛ばしながら、合戦シーンのみに集中するのである。だから6時間くらいのドラマだが、40分くらいで見終わった。撮影中、本格的な鎧甲を着けて参戦(参加)したシーンが1つだけあって、神風連の乱なんだが、そこにしっかり僕が映っていた(ような気がする)。家人に教えても、はぁ?ってなもんで、まったく感動はないようだ。そういえば、実際の放送時にもビデオに撮って友人に見せたんだが、似たような反応だった。「これ俺!」などといっても、大笑いされて「絶対本人じゃなきゃわからない」と言われた。
 とは言っても久々にこの合戦シーンを見ると、いろいろな記憶が甦ってくる。なんだか懐かしくなった。
(つづく)

# by chikurinken | 2009-07-13 09:28 | 映像

『崖の上のポニョ』(映画)

b0189364_15265038.jpg崖の上のポニョ(2008年・東宝)
監督:宮崎駿
脚本:宮崎駿
出演:山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ、奈良柚莉愛、土井洋輝、柊瑠美

 宮崎駿の映画はほとんど見ているし、テレビアニメの『未来少年コナン』もリアルタイムで全部見た。そういうわけで宮崎アニメは一部を除いておおむねシンパシーを感じている。だが今回の『崖の上のポニョ』はもの足りなかった。
 今作は、純粋に子供向けであると感じた。もっとも制作側は子供向けのつもりで作っているんであろうが、これまでの作品、『天空の城ラピュタ』、『魔女の宅急便』、『千と千尋の神隠し』などは、大人(つまり僕ですが)をうならせるような要素があったように思う。
 エヴァンゲリオンを思わせるような破滅テーマだが、風呂敷を広げた割には適当かつ予定調和的に収束したという印象を持った。破滅的な割にみんなやけに明るいし。破滅テーマであればもう少し血なまぐささが必要だと思うが、そういうのはそもそも宮崎駿の守備範囲ではない。たとえ荒唐無稽な話でもリアリティは必要である。リアリティがなければ、子供の作り話と同じである。
 背景も、色鉛筆かパステルか判然としないが、少し浮いており、違和感がある。奇をてらいすぎのような気がする。いつもの宮崎アニメの、目を見張るような背景表現ではなくこちらも残念。ただ、全編通して色彩は非常に美しい。次回作に期待(もう作らないって言ってるらしいが)。

★★★
# by chikurinken | 2009-07-12 15:22 | 映画

『漢字の相談室』(本)

b0189364_1302136.jpg漢字の相談室
阿辻哲次著
文春新書

 漢字に関する雑学本だろうってことでとばし読みするつもりで借りたんだが、全部読んでしまった。
 漢字に関連する設問(質問)に対して著者が答えるという方式で、漢字にまつわるあれこれが紹介される。たとえば、「私の知人の「たかはし」さんは普通の「高橋」ではなく、あまり見かけない字形で書くことになっています。普通に「高橋」と書くと機嫌が悪くなることすらあるのですが、なぜそんな書き方があるのでしょうか?」(この質問自体少し人を喰っていて面白いが)とか「新常用漢字の試案の中に「しんにょう」の形を含んだ漢字が三つありますが(「遜」「遡」「謎」)、いずれもしんにょうの点がふたつになっています。これまでの常用漢字では「道」とか「進」のように点がひとつだったのが、これからは点ひとつとふたつが混在することになるのでしょうか」などといった質問がそれぞれの章の最初に書かれていて、それを軸に漢字の話が進められる。
 前者の答えは、「明治の戸籍作成時に担当者が書いたものがそのまま残っているため」だという。要は癖や間違いが発端ということのようだ。後者の答えは、戦後の占領軍による政策と清代の漢字辞典である『康煕字典』との矛盾の結果こういう事態が発生したということだ(わかりにくいでしょうが、非常に複雑な事情があります。詳細を知りたい方は本書を読んでください)。回答は明快で、その背景についても詳しくかつ面白く解説されていて、語り口も楽しい。大学の教養過程の講義のようで、気楽に読み進められる。テレビ業界に対するボヤキなんかも入っている。
 どの章でも、漢字の深遠な歴史が語られていて、漢字の奥深さを実感することができる。また、漢字を取り巻く環境の複雑さ(特に日本において)も思い知らされる。単なる雑学本にくくることができない本で、非常に奥深い好著である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『漢字再入門(本)』
竹林軒出張所『漢字伝来(本)』

# by chikurinken | 2009-07-11 13:02 |