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竹林軒出張所

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『NYタイムズの100日間』(ドキュメンタリー)

NYタイムズの100日間
〜トランプ政権とメディアの攻防〜 前編
後編
(2018年・米RADICALMEDIA/MOXIE FIRECRACKER FILMS)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

第四権力のプライド

b0189364_18541900.jpg アメリカの有力新聞、ニューヨーク・タイムズの編集部に密着するドキュメンタリー。原題は『THE FOURTH ESTATE The First 100 Days(第四権力 最初の100日間)』である。邦題の『トランプ政権とメディアの攻防』は、番組のニュアンスをあまり正確に表していないと思う。メディアの攻防というほどのシーンはあまりなく、基本線は新聞社の密着ドキュメンタリーである。
 密着する期間は、タイトル通り、トランプが大統領に就任してからの100日間で、史上かつてない破天荒というか非常識な人間が大統領になっただけにいろいろと問題が噴出して、編集部もてんてこ舞いである。中には大統領選前からトランプの担当だった女性記者もいて、大統領選が終わったら解放されて生活に余裕ができると思っていた(下馬評ではヒラリーが圧倒的に有利だったため)ところ、予想外の結末になったためいまだに忙しさから解放されていない。小さい子どもからも始終電話が入るような生活がいまだに続いていて、心身共に疲れ果てている。一方で、トランプはマスメディアを敵視しており、ニューヨーク・タイムズはまさにその標的になっている。ニューヨーク・タイムズの方もトランプとの対決姿勢(というより権力に対する批判的な姿勢)を貫いている。
b0189364_18543494.jpg このドキュメンタリーでは、編集長、編集者、代表などさまざまな関係者の話がふんだんに聴ける上、彼らが締切と戦いながら、日夜激務に追われている様子が映し出される。もちろん激務であっても、編集者の士気は非常に高く、仕事にもプライドが感じられる。映画『大統領の陰謀』に出てくるような編集部の有り様が映し出されて、非常に興味深いところである。
 この作品は、何かを告発するというタイプの作品ではなく、むしろ状況をそのまま描いていくというタイプの詩的な要素も持つ作品で、ドキュメンタリーというより映画に近く、元々映画として制作・公開されたのではないかと感じる。そのためにタイトルバックなども割合凝っていて、少しばかり映画風であった。何よりプロデューサーの名前が20人近く出てきたのに驚いた。制作協力している放送局、製作局が多かった(15の団体名が示されていた)せいかも知れないが、指揮系統は一体どうなっていたのか非常に気になるところである(だからと言って完成度が損なわれているというようなこともなかった)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『“フェイクニュース”を阻止せよ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『路上のソリスト(映画)』
竹林軒出張所『“強欲時代”のスーパースター D・トランプ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドナルド・トランプのおかしな世界(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-11-30 07:53 | ドキュメンタリー

『ショパン・時の旅人たち』(ドキュメンタリー)

ショパン・時の旅人たち 第一回国際ピリオド楽器コンクール
(2018年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

特異な解説者を得たこのドキュメンタリーは
格別な仕上がりになった


b0189364_18010775.jpg 5年に一度ワルシャワで開催されるショパン国際ピアノ・コンクールはピアノ演奏家の登竜門として有名だが、2018年、同じワルシャワで古楽器を使用したピアノ・コンクールが新たに開催されることになった。これがショパン国際ピリオド楽器コンクールで、その模様を追いかけたのがこのドキュメンタリー。最近ドキュメンタリーで時折目にする「コンクールもの」である。
 このドキュメンタリーも、他のコンクールものあるいはグレート・レースものと同じように、数人の参加者にスポットを当てて、ファイナルまで追いかけていくというアプローチだが、ただ一つ他のドキュメンタリーと違うのは、参加者の1人(川口成彦)が非常に雄弁に(まるで解説者であるかのように)心境や古楽器のピアノについて語ってくれることで、それがためにこのドキュメンタリーは他と一線を画すすばらしい仕上がりになっている。
b0189364_18024161.jpg このコンクール、「ピリオド楽器コンクール」というだけあって、使用されるのは、ショパンの時代に使用された古楽器のピアノ(いわゆるピアノフォルテ)である。ショパンの時代はピアノが大幅に改良された時代であり、ショパンも時代ごとに何種類かのピアノを使い分けていたと考えられている。つまり作曲した楽曲によって、想定されているピアノが異なっている可能性があるということである(竹林軒出張所『ピアノの詩人ショパンのミステリー(ドキュメンタリー)』を参照)。このコンクールでは、参加者が、4台あるピアノフォルテから楽曲に合った任意の1台(もしくは数台)を選択し、それを演奏していくという方法論が採用されている。したがって単に演奏がうまいと言うだけではだめで、音色やショパンの楽曲に対する理解なども問われることになる。表現力がトータルで試されるわけで、そういう点ではなかなかに意欲的なコンクールと言える。
 コンクールは2018年9月1日から2週間に渡って実施された。事前にDVD書類審査で選抜された30人が1次審査を受け、その中の15人が2次審査に進む。2次審査では、ピアノ・ソナタなどトータルで50分に渡って演奏し、その中からさらに選ばれた6人が最終審査に臨む。最終審査では18世紀オーケストラと協奏曲を共演するという流れになる。
 このドキュメンタリーで密着する参加者は、先述の川口成彦の他に、マ・シジャ(中国)、ディナーラ・クリントン(ウクライナ)、クシシュトフ・クションジェク(ポーランド)で、最終審査まで残る者もいれば、1次審査で落ちる者もいる。それぞれ感じること、抱えていることがあり、そのあたりにこの種のドキュメンタリーの目玉があるのが一般的だが、このドキュメンタリーについては、先ほども言ったように川口成彦のキャラクターがすばらしく、そのあたりが一番の見所になっている。
b0189364_18010179.jpg なんといっても、非常に穏やかな好青年であり、感じていることやどのあたりが演奏のポイントかなどについてかなり細かく説明してくれる。特にピアノフォルテに対する理解と情熱がすばらしく、それぞれの楽器でどのような音が鳴るか、自分がどのように表現したいか、そしてコンクールの場でそれを表現することにどのような難しさがあるかなど、非常に丁寧に説明してくれるのである。このコンクールが実況されて専属解説者がいたとしても、ここまでの解説は不可能ではないかと感じる。しかも、たとえばモデレーター(弱音器)を使うことで表現がどのように変化するか実際に演奏して見せてくれたりする。プレイエル、エラール、ブッフホルツなど、コンクールで使われたピアノフォルテについてもそれぞれの特徴を解説してくれ、その上で彼のコンクールの演奏を楽しむことができるため、コンクールのウチとソトの両方からコンクールに迫れるような感覚さえある。しかもこの川口氏、最終審査まで残ったため、視聴者はこのコンクールを隅から隅まで楽しめるようになっている。コンクールものでここまで徹底したものはかつてなかったんじゃないかと思う。それもこれもすべて、この川口氏という特異な演奏家のおかげである。
 ちなみにこの川口氏、オランダ在住で、18世紀オーケストラにも出入りしていたため、最終審査で共演したオーケストラの面々とも顔見知りだった。団員から「ファイナルまで来たの、すごーい」みたいなノリで激励されており、とても愛されているというような印象を受けた。演奏にも人間性が滲み出るということは良くあるが、そのあたりもこの人の魅力だったんじゃないかと思う。今後、川口氏と18世紀オーケストラの共演も十分あり得るため(CDを含めて)、今から楽しみにしたいところである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ピアノの詩人ショパンのミステリー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カリスマ指揮者への道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ストラディバリウスをこの手に!(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのショパンコンクール(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホグウッドのモーツァルト』

by chikurinken | 2018-11-29 07:00 | ドキュメンタリー

『こんばんは』(映画)

こんばんは(2003年・イメージ・サテライト)
監督:森康行
撮影:川越道彦
出演:倍賞千恵子(ナレーション)、ドキュメンタリー

もっと自由で良いじゃないか

b0189364_17563855.jpg 公開時に地域のホールで見て非常に感動したドキュメンタリー映画である。すばらしい映画ではあるが、DVDが広く出回っているわけでもなく(販売はされているようである)、再び見るチャンスはもうないかと諦めていたが、何と近くの図書館にDVDがあった。いつも利用している図書館ではあるが、こういうことがあると、あらためてその価値を思い知るというものである。
 この作品は夜間中学校の1年間に密着したもので、おそらくありのままの夜間中学をそのまま垣間見せてくれるドキュメンタリーと言って良い。夜間中学といえば、1993年に山田洋次が『学校』という映画で題材にしており、この映画もそれなりにヒットしたんだが、その映画の先生のモデルになったという見城慶和という先生もこの映画にありのままの姿で登場している。
 この映画の舞台になるのは、墨田区立文花中学校夜間学級である。この映画撮影時、夜間中学は全国8都府県に35校あり(「しかない」と言う方が適切か)、文花中学校はその中の1校ということになる。この中学校には、15歳から92歳まで約80名の(8カ国の)生徒が通っているという。幼い頃戦争や仕事のために教育を受けられなかった高齢の人々や、不登校になった若者、在日外国人など、その背景は多岐に渡る。確かなことは、初等・中等教育を必要としている大人が実際に存在するということである。
 僕を含め、ともすれば自分の位置が世界の標準であると勘違いしがちだが、普通に小中高校を卒業して大学まで行けるというのは、立場的にはラッキーとも言える。実際には、さまざまな理由で教育を受けられないという人々もいるし、世界的に見ればそういう境遇の人の方が多いのかも知れない。したがってそういう人々の現実を生のまま見せられるということは、いろいろな立場の人が存在するということをあらためて認識させられるわけで、それこそがドキュメンタリーの存在価値の1つである。
 ほとんどの日本人にとって、夜間中学はおそらく一生関わることはないだろう。しかしこういった学校の存在が人々の役に立っていることはこの作品を見れば一目瞭然。それどころか、ここには本来教育が果たすべき役割があるとも言える。老齢の生徒が語っていた「ここには足の引っ張り合いがない。自分がわからないところは他の人が助けて教えてくれる」という言葉が印象深い。教育ってのは本来そういうものではないかと思う。いつから足の引っ張り合いが教育現場のスタンダードになったのか、逆に疑問に感じたりする。
 この映画に登場する生徒の中には、小学校で不登校になり人と話ができなくなった15歳ぐらいの伸ちゃんという少年もいて、彼が高齢者中心の学級に入ってくる。彼は、永らく引きこもりだったせいか、学校には一切行けなかったんだが、この学校(文花中学校夜間学級)であれば行けるかもということで、2時間だけ(それでも途中まで)通うことになった。伸ちゃんは、他の人とまったく会話をしないし、表情もあまり変えることがない。他の老生徒がいろいろと話しかけるんだが、とにかく反応がない。普通だったらこういう人間と関わると「返事せんかい!」と怒る人間が出てきてもおかしくないんだが、皆彼の境遇をよく理解した上で優しく接する。最後の方のシーンでは、この彼が、何ヶ月後かわからないが、話ができるようになっていて、しかも今までできなかった行事への参加もできるようになっていることが紹介される。驚きの結末で、教育が本来果たすべき役割というものがはっきりと明示されていて、大変気持ちが良い。
 この映画を見て感じるのは、日本の学校があまりにも同調圧力が強すぎるのではないかということである。こういった、割合自由な環境で生徒たちが楽しみながら勉強して、しかも一定の成果が上げられるのであれば、もっと自由でも良いんじゃないかと思う。僕自身、以前この映画を見てからというもの、こういった(普通のルートを外れた)教育について関心を持ち、関連するドキュメンタリーや本にも接してきたが、あらためてこの映画を見るとこのようにまたいろいろ考えることが出てくる。それにもっとこういった環境を増やすべきではないかとも(当然ながら)思う。こういう風にあれこれ考える機会を与えてくれるというのもドキュメンタリーの存在意義である。そういう意味でも、このドキュメンタリー映画が非常にすばらしい作品であること、これは間違いない。
2003年度キネマ旬報ベストテン文化映画第1位
第58回 毎日映画コンクール 記録文化映画賞
第1回文化庁映画賞文化記録映画大賞
第13回日本映画撮影監督協会 J.S.C賞他受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『学ぶことの意味を探して(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『本当は学びたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『みんなの学校(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『まちがったっていいじゃないか(本)』

by chikurinken | 2018-11-28 07:56 | 映画

『毎日がアルツハイマー』(映画)

毎日がアルツハイマー(2012年・NY GALS FILMS)
監督:関口祐加
撮影:関口祐加
出演:関口宏子、関口祐加(ドキュメンタリー)

あるお年寄りを取り巻く家族の記録

b0189364_18070520.jpg 老齢の親が、ある日突然認知症に……というケースは今ではまったく珍しい事例ではなくなり、いつ身の回りで起こってもおかしくはない出来事になった。そのためもあり、現在、認知症を扱ったドキュメンタリーや本は増えてきている。この映画もそういったドキュメンタリーで、ある映画監督が、自身の母の変わっていく様子をカメラに収めるという当事者目線の作品である。
 このドキュメンタリーに登場する「母」は監督の母親であり、二世帯住宅に住んでいる。2階には監督の妹家族が住んでおり、母親は1階に一人暮らししている。母親の夫(つまり監督の父)は10年前に他界。こういう状況で、娘でありこの映画の監督でもある関口祐加は、この母の様子がおかしいという話を妹から聞く。要するに認知症の症状が出始めたということなんだが、この話を聞いて、オーストラリア、シドニー在住の娘(つまり監督ね)は日本への移住、つまり母との同居を決意する。実はシドニーには息子が1人いるんだが、仕方がないので、この息子は別れた夫に預けることになった(このあたりの事情はよくわからないが)。
 母に寄り添うように母の様子を撮影していくと同時に、その母の周辺、つまり自身の家族の周辺もあわせて撮影対象になる。母が少しずつずれていく様子も当然描かれ、こういう映像は正直見ていて辛く、見るこちら側も戸惑ってしまうんだが、本編に登場する精神科の新井先生の言葉、「認知症であっても問題があるのは脳の5%だけで、認知症になっても一瞬一瞬はまとも。ただ時間の継続の中でそれが続かないだけ」という言葉がいくらか救いになる。
 作者のツッコミが随所で字幕として出てくるなど、全体にユーモアが漂う作りになっており、そのあたりがこの作品の大きな特徴である。ただ基本は映像日記みたいな内容であり、極論すれば、あるお年寄りを取り巻く家族の記録というような映画である。もちろん作者の問題意識やメッセージ性は伝わってくるんで、それだけで終わっていないのは確かだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『いま助けてほしい 〜息子介護の時代〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『野田明宏先生のファンの皆様へ』
竹林軒出張所『老人漂流社会(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『エンディングノート(映画)』

by chikurinken | 2018-11-27 07:06 | 映画

『すばらしい蒸気機関車』(映画)

すばらしい蒸気機関車
(1970年・たかばやしよういちプロ)
監督:高林陽一
脚本:高林陽一
撮影:高林陽一
音楽:大林宣彦
ナレーション:見上良也(ドキュメンタリー)

音楽の違和感だけが耳に付いた

b0189364_18021830.jpg 日本国内のいろいろな蒸気機関車を紹介するドキュメンタリー。「日本国有鉄道が現有する記録を基に自由に構成したもの」というコンセプトらしい。全国で撮影された蒸気機関車の映像を編集して、1本の作品にしましたというのがこの作品である。
 特定の線ごとにある程度まとめられた映像集が小編みたいな感じで繋げられている。登場する主な機関車は、B20、C61(鹿児島機関区)、C57(宮崎機関区)、C55、D60、D50(筑豊本線)、D51(大畑ループ線)、C59、C62(呉線)、C58、9600(宮津線)、D51、C58(伯備線)、C57、D51(山陽本線)C11、C57、8620(梅小路機関区)、C58(奈良線)、C60(熊本機関区)、D51、D60、D50(直方機関区)、C12(西舞鶴機関区)、C56(木次線)、C11(倉吉線)、9600(米坂線)、8620(花輪線)。その間に、機関車の説明、動輪がどうとか製造台数が何台だったとかそういった解説が入る。また途中に、女性モデルと機関車を一緒に映したプロモーションビデオ風の映像が入る。背景には機関車の歌が入り、さながらカラオケの背景映像みたいなクリップが出てくる(杉田靖子という人が歌っているらしい)。歌も変だし、この映像も演出の意図がよくわからない。
 音楽は、無名時代の大林宣彦が担当しているらしいが、総じてかなり違和感のある(恥ずかしさを感じる)音楽である。冒頭からして「うれしいひな祭り」の替え歌みたいな音楽が耳に付く。プロモーションビデオ風のシーンに登場した「す・ば・ら・し・い・機関車よ〜」と繰り返すテーマ曲(みたいな歌)もかなり奇妙な感じがある。音楽の主張が強すぎて映像に合っていないと感じる。
 映像は先ほども言ったように蒸気機関車とその周辺の風景ばかりで、蒸気機関車ファンには垂涎の映像かも知れないが、僕のような門外漢にとっては実に退屈なシーンが続く。周辺風景の映像は確かに懐かしさを誘うが、どの機関車も僕には同じに見えるし、まったくもって面白さは感じない。釜に石炭をくべるシーンは小さな子どもの頃から好きだった(なぜか知らない)ため、そのシーンはほぼ唯一心地良かった。また映像は、概ね春夏秋冬の順に並べられていて、季節感を感じられるようにはなっている。
 先ほども言ったように、鉄道好きには堪らない映画なんだろうが、僕にとっては音楽の違和感だけが耳に付いたのだった。やはり鉄道マニア向けの映画なんだろうなと思う……ま、当然だが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ある機関助士(映画)』
竹林軒出張所『裸の太陽(映画)』
竹林軒出張所『さびしんぼう(映画)』

by chikurinken | 2018-11-26 07:01 | 映画

『人間革命』(映画)

人間革命(1973年・東宝)
監督:舛田利雄
原作:池田大作
脚本:橋本忍
音楽:伊福部昭
出演:丹波哲郎、芦田伸介、仲代達矢、新珠三千代、稲葉義男、森次晃嗣、山谷初男、佐原健二、渡哲也、佐藤允、雪村いづみ、黒沢年男

これは映画ではなく教材である

b0189364_18582519.jpg 創価学会の池田大作の著書が原作の映画。僕はあの団体にはまったく何の利害も関心も持っていないため、元々この映画にもまったく興味がなかったんだが、子どもの頃「にんげんかくめいっ!」とやたら連呼するCMが記憶に残っていたのと、スタッフとキャストが豪華であるということを最近知ったため、あまり見る機会もない映画であるし、今回見ることにした。見たのは、BSの日本映画専門チャンネルで放送されたものである。
 宗教団体の映画ということなんで、教条を押し通すような映画でなければ良いな、スペクタクルがあれば良いななどと思っていたが、残念ながら予想通りの映画だった。創価学会を作った戸田城聖という人の半生を描くんだが、この人の半生自体(治安維持法違反で投獄されはしたが)あまりドラマチックな要素がなく、この人に思い入れがない人にとってはまったく見所がないと言って良い。この戸田という人が、獄中で悟りを開き、出獄、そして終戦を経て、その思想の広報活動を行うというストーリー。後半は、延々とその説法のシーンが続き、戸田役の丹波哲郎が語り尽くす。丹波哲郎の講義はなかなか迫力があって良いが、内容については大して興味が湧かない上、ただただ講義し続けるシーンが綿々と続くため、信者以外の人間にとって面白いわけがない。よくぞこんな映画を劇場公開したなというような代物である。断じて言うが、これは(一宗教の)教材であり(通常の概念の)映画ではない。要するに関係者の間だけで見るような素材である。もっとも公開時に劇場に足を運んだのはもっぱら学会員だっただろうし、全国の劇場を学界が貸し切りしたものだと考えれば、それはそれで東宝側のビジネスとしてはOKだったのかも知れない。しかしそれにしてもだねぇ……(ここは丹波哲郎風の言い方で)。
 この映画、製作費も配給収入も当時日本映画界でトップクラスだったようで、そのことが当時話題になったことは記憶している。ただ、製作費は(金のある)宗教団体からおそらく金が出ているわけだし、配収の方も、会員がチケットをたくさん買わされた(そしてそれを一般人に無料で配付した)ことが容易に想像されるため、それについては十分合点が行く。言ってみれば元祖・角川商法みたいな映画で、当時斜陽産業だった映画界にとっては、こういったスポンサーは上客だったことが想像される。ただそういうような製作姿勢は決して後の世からすると褒められたものではないし、作品の内容も推して知るべしである。はっきり言って、個人的にはまったく見る必要がなかったし、時間の無駄だったとも思う(もっとも彼らの考え方の一端には触れられたような気がする)。橋本忍まで動員してこんなPVばりの映像を作ってしまうというのは、いやしくも映画という芸術に携わる企業の姿勢としてはきわめて恥ずかしいことだと言わざるを得ない。
★★

参考:
竹林軒出張所『二百三高地(映画)』

by chikurinken | 2018-11-25 07:58 | 映画

『俺たちの旅 二十年目の選択』(ドラマ)

俺たちの旅 二十年目の選択(1995年・ユニオン映画)
脚本:鎌田敏夫
演出:齋藤光正
出演:中村雅俊、金沢碧、秋野太作、田中健、上村香子、岡田奈々、森川章玄、石井苗子、神田うの、左時枝、平泉成

元祖・同窓会ドラマ

b0189364_16202884.jpg 1975年代に日本テレビで放送された群像ドラマ、『俺たちの旅』は当時の若者たちの間で絶大な支持を得た。カースケ(中村雅俊)、オメダ(田中健)、グズ六(秋野太作)という3人の若者が同じアパートで同居し、あれやこれやの青春を繰り広げるというドラマで、僕自身は正直言ってそんなに面白いとは思わなかったが、成績優秀の同級生、ヤマナミ君が「『俺たちの旅』おもしろい!」と訴えていたのが印象に残っている。
 こういった人気を集めた群像ドラマであれば、当然「その後の姿」というのもドラマとして格好の素材になるわけで、そういう類の続編は他のドラマでもたびたび作られている。で、今回、最初の『俺たちの旅』放映から20年後に作られた『二十年目の選択』というタイトルの続々編(10年後バージョンもある)が放送されたんで、それを見たわけである。
 中身は、カースケ、オメダ、グズ六が40台になっており、それぞれエラくなっているという話で、それでもそれぞれ少しずつ問題を抱えていて、人生に迷うというような風にストーリーは展開していく。ただし基本は、以前の登場人物が集まって過去を懐かしむというのが話の芯の部分になる「同窓会ドラマ」である。したがってオリジナルの『俺たちの旅』にかなりの思い入れがない限り、大して面白くはない。ストーリーもバカバカしくて惹かれる部分はあまりない。随時、70年代のフォーク音楽が流れるのもいかにも「同窓会ドラマ」という感じがして片腹痛い。
 脚本は鎌田敏夫で、これはオリジナル版と共通である(『俺たちの旅』が鎌田敏夫作だということはまったく知らなかった)。鎌田敏夫は『男女七人夏物語』みたいな同様の群像ドラマも書いていて、しかもあのドラマでも、こういった類の同窓会ドラマが作られたように記憶しているが、そうすると鎌田敏夫は群像同窓会ドラマの巨匠なのか。しかもどの作品も、浅くて面白味がないという点も共通している(あくまで個人の感想です)。それでも当時、世間ではこういったドラマが人気を集めていたわけで、(僕から見ても)ブラウン管を濁す程度の役割は十分果たしていた。ということで、僕がことさらいろいろ言う必要もないんだろう。ただこのドラマについては、取って付けたようなシーンが多い上、セリフに面白味がないとか、気恥ずかしいセリフが多かったりとか、そういうことは見ていて感じたんで、それについてはここで書いておこうかなと思った次第である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『舞踏会の手帖(映画)』
竹林軒出張所『わたしのペレストロイカ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-11-24 07:20 | ドラマ

『君は海を見たか』(1)〜(11)(ドラマ)

君は海を見たか (1)〜(11)(1982年・フジテレビ)
脚本:倉本聰
演出:杉田成道、山田良明
音楽:朝川朋之
出演:萩原健一、高橋恵子、伊藤蘭、田中邦衛、柴俊夫、六浦誠、小林薫、梅宮辰夫、下條正巳、平泉征、高岡健二

難病患者を家族に持つ人間の心理描写が見事

b0189364_18434264.jpg 若くして妻を亡くした仕事人間のサラリーマン(萩原健一)が主人公。現在小学生の子ども(六浦誠)がおり、家では妹(伊藤蘭)が母代わりで子どもの面倒を見ている。そういう状況で、子どもが病気で入院することになった。その後、子どもがウィルムス腫瘍という難病であることが判明。当初は、それでも仕事優先で邁進していたが、やがてそれが原因(上司の親心である)で大きな進行中のプロジェクトの担当から外される。はじめは子どもとの接し方が分からないなど(長いことまともに相手していなかったため)いろいろと壁に突き当たるが、徐々に子どもと接する時間が長くなり、心も通い合うようになる。余生3カ月と診断されているため、子どもの残りの人生を充実させようと奮闘するようになるというようなストーリー展開になる。ごく大雑把に言うとそういう内容だが、他にも主人公の再婚がここに絡む他、子どもを失うという事実を前にして狼狽する親の心情がうまく描かれていて、しかも子どもの教育の問題にも踏み込んでいる。そのため、中身はかなり充実している。
b0189364_18445923.jpg 実はこのドラマ、この10年以上前に日本テレビでも製作されているらしく、しかもその後映画化までされたため、この作品で3回目のドラマ化ということになる。言ってみればリメイクだが、『北の国から』でヒットを飛ばした半年後に、同じフジテレビの『金曜劇場』の枠で放送された作品であるため、かなり力が入っている。シナリオの完成度も高く、ドラマとしては割合ありきたりな「不治の病」テーマでありながら、悲劇にとどまらない奥深さが全編漂っている。さまざまな問いかけもあり、それは『北の国から』と共通するテーマであったりもするんだが、非常に意欲的という印象である。
 キャストは、『前略おふくろ様』の萩原健一と梅宮辰夫に『北の国から』の田中邦衛など。萩原健一は『前略おふくろ様』と違って落ち着いた演技で迫真である。梅宮辰夫の課長も異色の役(部下が休み返上で仕事に駆けずり回っているにもかかわらず、休日はきちんと取るような非会社人間)どころを淡々と演じていて好感が持てる。他にも、ゲスト的に小林薫、戸川純、水沢アキ、長谷川初範、大友柳太朗、ガッツ石松、芹明香らが単発で出てくるなど、キャストは結構豪華である。『中学生日記』で風間先生を演っていた湯浅実が医師として登場するのも新鮮である。
b0189364_18440142.jpg ドラマの中で使われている谷川俊太郎の詩『生きる』も大変効果的で良い。またテーマ曲のショパンのワルツ第10番(遺作)もうまい使われ方で感心する(朝川朋之の編曲も非常に良い)。同じ倉本聰作品の『風のガーデン』でもショパン(夜想曲第20番(遺作))をアレンジしたものが使われていたが、あれよりも数段上品で良い。全体に渡って(特に後半)隙のない佳作で、黄金時代の倉本聰+フジテレビの勢いを感じさせるドラマであった。今見てもあまり古さを感じさせないという点も、完成度の高さを反映しているのではないかと思う。もっとも病院で医師がタバコを吸ったりするのは時代だなーと思う。当時、このドラマが終わった後、同じ枠で放送されたドラマが山田太一の『早春スケッチブック』(これも死がテーマ)であったというのもすごい。金曜劇場、今考えると非常に豪華であった。
★★★★

追記:
 舞台美術家の妹尾河童が「アートディレクター」として名を連ねていて、どういう風にこの番組に関わっていたのかは詳しく分からないが、途中一瞬出てきた子ども部屋(ヨットのキャビン風)の透視図が彼の作であることは見てとれた。この子ども部屋の内装ももしかしたら彼がやったのかも知れない。

参考:
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『あっこと僕らが生きた夏(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-11-23 07:42 | ドラマ

『光と影を映す』(本)

光と影を映す
山田太一著
PHP研究所

本になるとこう変わる

b0189364_17314190.jpg NHK-BSでかつて放送された『100年インタビュー 脚本家 山田太一』を書籍化したもの。当初の危惧通り、やっぱり出た。内容についてはかつてこのブログでも紹介し、しかも内容についてもそのまま一部書き起こしたため、個人的にはあまり目新しさはないが、どういう風にまとめられているか興味があったため、今回読んでみた。
 元の番組、つまり『100年インタビュー』が非常によくできており、内容も充実していて面白かったため、この本の内容も推して知るべしで、内容的には非常に興味深い。あの番組を見られなかったが見たかったという人にとっては格好の素材と言える。
 今回は、語られた内容がどのように編集されているかというのが僕にとっての一番の関心事であったため、そういう視点で本書に当たったわけだが、僕が前回書き起こした部分と比較すると、出版用の録音の書き起こしというのがこういう風に行われるのかというのが非常によくわかる。山田太一によって語られた話が、この人の魅力を損なわない程度に変更された上でわかりやすく書き起こされている。その結果、非常に読みやすい文章になっている。僕が書いたときは一言一句ほぼそのまま取り上げたため、多少の読みづらさはある。ただあの独特の遠慮がちな語り口が入っているという面白さもある。僕としては自分で書き起こしたものの方が面白いと思うが、本としてそのまま書くのが良いとはおそらく言えないだろう(山田太一自身も、この原稿であれば、かなり手を入れるんじゃないかと思う)。その点で、非常に良い按配でまとまっている本と言える。
 ブログに掲載したのは、この本の8ページから39ページくらいまで、第1章から第2章までに相当する。テレビで放送されたものより本書に収録されている内容の方が多いが、これは放送時にカットされた部分だと思う。放送されなかった(と思われる)内容は他にもあちこちにあって、そういう意味では、あの番組を見た人もこの本を読む価値はあるということだ。いずれにしても良くまとめられていて、インタビュー本としては上出来であると思う。ただし本自体については、字がかなり大きいため、内容は薄目という印象である(なんせ1時間半の放送を本にしたんだから)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー ロナルド・ドーア(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『夢追い漫画家60年 (100年インタビュー)(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
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by chikurinken | 2018-11-22 07:31 |

『英単語の語源図鑑』(本)

英単語の語源図鑑
清水建二著、すずきひろし著、本間昭文絵
かんき出版

語源から英単語を憶えようという本
絵が多いため記憶に残りやすい


b0189364_18055575.jpg 語源を利用して英単語を憶えようというアプローチの本で、入試参考書と考えた方が良いのかも知れない。
 『語源でふやそう英単語』『語源でわかった! 英単語記憶術』などの本と同じコンセプトだが、大きく違うのはイラストがふんだんに使われているという点である。したがってイメージが沸きやすい、つまり暗記しやすいということになる。イラストは丸に点々で顔みたいな単純なもので、面白味はあまりない。取り上げられている単語も少ないし、優しい単語だけでなくかなり難しい(英検一級レベルの)単語もそれなりに混ざっている。それを考えると大学受験のためにこの本に取り組んで全部憶えようとするのは無駄が多いような気もする。むしろ、大学受験とは関係なく英語の勉強をしたいという層が一番のターゲットになるのかも知れないが、そういう点で多少どっちつかずの中途半端さは残る。
 まあしかし、たとえ拙いにしてもイラストで印象付けようという試みはきわめて的を射ている。大量の単語をリストで並べられてもまず憶えることはできないだろうし。その上、索引も付いているなど、良い本を作ろうという工夫も見受けられる。そういう点で、語源学習入門としては格好の本になっているのではないかと思う。アマゾンのレビューによると(少なくとも第4刷までは)誤植が多いという話であったが、僕が買った第7刷では、誤植に気が付かなかったんで、随分改善されているのではないかと思う。そのあたりも出版に対する真摯さが窺われる。
 なお収録されている単語は約1000だが、そのうち3分の1は派生語として紹介されているだけなんで、実質的には5、600語というところかな。ただこういうコンセプトの本であればそれで十分なような気もする。語源辞典風の本が必要だというのであれば、『語源中心英単語辞典』みたいな本を常時手元に置いておくのも良いのではないかと思う(ただしこの本、必ずしも使いやすいわけではなく、調べたいが収録されていないという単語も目立つ。良い本だとは思うが)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『語源でふやそう英単語(本)』
竹林軒出張所『語源でわかった! 英単語記憶術(本)』
竹林軒出張所『英語の語源の話(本)』
竹林軒出張所『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史(本)』
竹林軒出張所『ひらがなでよめばわかる日本語のふしぎ』(本)
竹林軒出張所『日本人のための日本語文法入門(本)』

by chikurinken | 2018-11-21 07:05 |