球界の野良犬
愛甲猛著
宝島社
愛甲猛の半生記、そして反省記
元プロ野球選手、愛甲猛の半生記。ある意味、反省記でもある。
愛甲猛と言えば、投手として甲子園に出場、優勝し、その後ロッテオリオンズ(後に千葉ロッテマリーンズ)、中日ドラゴンズと渡り歩いた野球選手だが、実際のところ、僕には甲子園のイメージしかない。投手としてプロに入りその後打者に転向したという話をこの本で読んで、ああそうだっけと思った程度で、著者には悪いがあまり印象はなかった。ただ、彼が所属していた横浜高校が夏の大会で優勝したシーンは割に鮮明に憶えている。
あの頃の甲子園と言えば、眉毛のない奴がいたりして(もちろん描いているが)あまり良い印象はなかったが、著者の愛甲も、そういった人間だったんだそうだ。家庭環境が少し複雑だったせいかわからないが、タバコやシンナーもやっていたし、暴走族にも出入りしていたらしい。それでも野球には熱心に打ち込んでいたということで、そのおかげか、地区大会を勝ち抜き、甲子園出場を果たす。そして、先ほど言ったように、甲子園でも優勝を遂げて、その名前は全国にとどろくことになった。
やがてプロ入りし、投手としては行き詰まるが、チームメイトの落合博満との出会いで打者として開眼し、以後打者としてかなりの成績を残していく。中日への移籍、代打への転向などを経て、やがて引退に至るが、その間も筋肉増強剤に手を出したりしたため、結果的にそれが身体をむしばみ、引退の引き金になった。そういう半生が率直に、(おそらく)愛甲氏自らの筆で語られていく。
彼の経歴が野球選手として普通なのか特殊なのかはよくわからないが、普通の生活をしている人間から見ると異色であることは確かである。一歩間違えるとやくざな道に入ってしまいそうな、かなりきわどいところを歩いてきたようにも見える。実際、彼の高校時代の友人は覚醒剤に手を染めて転落死したりしている。いずれにしても著者の経歴自体がかなり面白いんで、それなりに読む価値はある。プロ野球界の裏事情みたいなものも垣間見えてくるし。少なくとも落合博満がすごくいい人だというのはわかった。
いったんは野球界から離れてサラリーマンになった著者だが、やはり野球から離れることはできないと自覚したということで、今また野球に関わる生活をしているらしい。がんばって後進を育ててくれ。
ちなみに本書には
文庫版
もある。それにしてもすごい表紙だな。
★★★