ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

カテゴリ:本( 650 )

『ムッシュ・カステラの恋』(映画)

ムッシュ・カステラの恋(1999年・仏)
監督:アニエス・ジャウィ
脚本:アニエス・ジャウィ、ジャン=ピエール・バクリ
出演:アンヌ・アルヴァロ、ジャン=ピエール・バクリ、ブリジット・カティヨン、アラン・シャバ、アニエス・ジャウィ、ジェラール・ランヴァン、クリスティアーヌ・ミレ

笑いあり涙ありだが
一方であれこれ放り込みすぎ


b0189364_16391560.jpg 内容はほとんど憶えていなかったが、前に見たときは大変気に入っていたようで、過去に★★★★を付けていた(竹林軒『2004年の5本:リスト』参照)。そんなに気に入った映画ならば……ということで(内容は憶えていなかったわけだが)今回もう一度見ることにした。
 芸術などにまったく造詣のない現実主義の会社社長、カステラ氏が、自身の英語家庭教師になった女性をたまたま舞台で目にして(彼女は売れない舞台女優だった)突然恋してしまう。その舞台女優クララの周辺は芸術家ばかりが集まるコミュニティで、いきなりカステラ氏、慣れていない別世界の環境に放り込まれることになるというのがメインになるストーリー。
 サブプロットがいろいろ織り交ぜられていて、カステラ氏の運転手や護衛、それからよく行くバーのバイト女性の恋模様まで絡んでくる。監督は、バーのバイト女性も演じているアニエス・ジャウィという人。しかもカステラ氏を演じたジャン=ピエール・バクリも製作に一枚噛んでいて、同時に共同脚本にも名を連ねている。舞台女優を演じたアンヌ・アルヴァロという人もフランスでは有名な舞台女優らしい。この映画の関係者たち自身が多才な人たちばかりで、映画に登場する芸術家たちの集まりは彼ら(つまり自分たち)がモデルかとも感じる。
 全編軽いタッチで、笑いやもの悲しさもある、いわゆるペーソス・タッチの作品であるが、少々こんがらがったような印象が最後まで残ったのは、サブプロットが多すぎることが原因ではないかと思うが、それでも最後はうまくまとめられていて、試聴後感は良い。だが前回見たときほどの感動はないなーと思う。良い映画ではあると思うが、前に見たときにどこにそんなに感心したのかも思い出せない。
2000年セザール賞作品賞、脚本賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『アメリ(映画)』
竹林軒出張所『仕立て屋の恋とフェリックスとローラ(映画)』
竹林軒出張所『髪結いの亭主(映画)』
竹林軒出張所『親密すぎるうちあけ話(映画)』

by chikurinken | 2018-11-14 07:38 |

『ひとりじゃなかよ』(本)

ひとりじゃなかよ
西本喜美子著
飛鳥新社

88歳の自撮り写真はユニークだった

b0189364_17500019.jpg 著者は、熊本在住の現在88歳の女性。一般的には「おばあちゃん」と呼ぶのがふさわしい人である。この人、72歳から写真を始め、息子が主宰する写真教室に通うようになる(そのため息子のことを「先生」と呼んでいるらしい)。カメラ術が上達するにつれて、デジカメで撮った写真をコンピュータで処理したりすることを憶え、それからというもの、なかなかユーモラスな写真を撮るようになった。その後、個展を開き自身の(ユーモア溢れる)作品を発表したことから話題になり、マスコミでも紹介されるようになった。そしてその結果、ついに写真集まで発売されることになる。それがこの本である。
 本書で紹介される写真は、多くが自然を撮影したもので、それぞれの写真に著者自作の詩が添えられている。タイトルもその詩の中から取られたものである。自然の写真は美しくいものが多いが、やはり一番魅力的な写真は、終わりの方に少し掲載されている「セルフポートレート」である。自身が安来節の格好をしたり車にひかれる図だったり、あるいはゴミ袋に入れられて捨てられた図だったり(すべて自分で演出)、どれもなかなかユニークである。愉快な悪ノリばあちゃんという印象である(息子には叱られたらしい)。
 自然の写真と詩については割合ありきたりという印象だが、この悪ノリのセルフポートレートと散文(わずかしかないが)が面白い。むしろこちらの方をメインに持ってきてほしかったところである。特に不満はないが、本としては、そういう点で少々中途半端だという印象が残った。
★★★

参考:
竹林軒出張所『おむすびの祈り 「森のイスキア」こころの歳時記(本)』
竹林軒出張所『それ行け!! 珍バイク(本)』
竹林軒出張所『森の探偵(本)』

by chikurinken | 2018-11-08 07:49 |

『うつ病九段』(本)

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間
先崎学著
文藝春秋

「みんないい思いしやがって」が秀逸

b0189364_18242511.jpg 将棋棋士の先崎学九段がうつ病で1年近く休場していたという話はまったく知らなかった。先崎学といえば、あちこちで面白いエッセイを書いたりもしているし、いろいろな笑えるエピソードで知られる異色の棋士で、(僕にとっては)うつ病とはもっとも遠いところにいそうなイメージだったため、非常に意外に感じた。その先崎九段が、自身のリハビリも兼ねて、うつ病期の自身のどん底の精神状態や回復過程、周囲の人々の助力などについて書いたのがこの著書。
 うつ病期の様子が赤裸々に描かれているために、当事者から見たうつ病の状況がよくわかるのがこの本の最大の魅力だが、それ以外にも、他の棋士たち(サラリーマンであれば会社の同僚に相当するんだろうが)との関係性が大変気持ち良い。このあたりの素敵な関係性は著者の人望から来るものだろうとも思う。また、うつ病回復期に、記者から受けたひどい扱いにひどく落ち込み、ソファに当たり散らしてその後泣いたというくだりは、真に迫っている。帯に書かれている「ふざけんな、ふざけんな、みんないい思いしやがって」というセリフは実際に本書に出てくるが、うつ病回復期の状態をズバリと表現していてすばらしい。
 現在はほぼ回復しているようだが、その回復過程が棋力(将棋の能力)に反映しているというあたりもいかにも棋士だと思う。回復初期には、九手〜十三手詰めの詰め将棋がまったくできなくなった(うつ病期はそれに手をつけることすら不可能)というのも、将棋の部外者の目から見ると非常に新鮮である。しかしそれ以上に驚いたのは、病前であればこの100問の問題集を30分もかからずに全部解けたのにというフレーズで、やはり棋士の棋力は別次元だと思う。僕なんか今やっている五手詰めの詰め将棋に1問3日かけたりしているくらいなのに(それも問題だけどね)。
 文章は非常に素直なもので、他の先崎の著書と同様、大変読みやすい。ただし他のエッセイほどは文章が躍動しておらず、笑える要素は少ない。そもそもうつ病回復期に書いたものなんでこれは致し方ないところだが、とは言っても文章には破綻はないし、書籍としてもよくできていると思う。何より、内面から見たうつ病の症状、回復期の心の状態などは、なかなか他ではお目にかかれない症例集とも考えられ、本書の特異な部分であると言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山手線内回りのゲリラ(本)』
竹林軒出張所『棋士・先崎学の青春ギャンブル回想録(本)』
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』
竹林軒出張所『入院しちゃった うつウーマン(本)』
竹林軒出張所『脳が壊れた(本)』

by chikurinken | 2018-11-07 07:24 |

『お金さま、いらっしゃい!』(本)

お金さま、いらっしゃい!
高田かや著
文藝春秋

主婦雑誌に出てくるようなネタばかり

b0189364_17203329.jpg (著者のいわゆる)カルト村(おそらくヤマギシ会)で生まれ育った著者は、その組織内の高等部(高校みたいなもの)卒業を機に「村」(彼らは自身のコミューンをこう呼ぶ)を離れて、一般社会に出てきた。そこまでのいきさつは、前二作(『カルト村で生まれました。』『さよなら、カルト村』)で描かれていたが、その後の著者の生活について紹介したマンガがこの本。
 「村」では、基本的に金を使うことが禁止されており、そのために著者は「村」を出るまで金をほとんど使ったことがなかった。「村」を出てからは、バイトを始めて自分で稼ぐことを知り(〈「村」の労働と比べるとはるかに〉軽い労働で月に13万円ももらえたことが信じられなかったらしい)、その後もいろいろなものを自由に買えることに喜びを見出す。同時に金の使い方についていろいろと考えることもあり、蓄財や節約の方法も自分で見つけていく。そしてその過程やそういった方法などをマンガとしてまとめたのがこの本である。
 これまでの著者の本では、「村」での生活の様子や「村」の生活と外の生活とのギャップなどが一番面白かったわけだが、この本では前の二作と違って、そういうところにはあまり焦点が当たっていない。言ってみれば外の世界に出てからの生活をまとめた「娑婆」編であるため当然だが、そのために正直大して面白味がない。主婦向け雑誌に出てくるようなネタばかりで、あまり興味が湧かないし目新しさも感じない。そういう類の雑誌での連載が初出かと思ったくらいである。
 またマンガ自体についても、説明書きがきわめて多く、マンガであるのは確かだが、絵が挿絵のレベルにとどまっている。要するに説明過剰なんで、大変読みづらい。ただし作画自体はうまく、表現力はなかなかのものとは思う。しかし内容が内容だけに、先ほども言ったように、あまり感じるところがなかったのも事実である。せっかくの表現力が活かされていないのがはなはだ残念な部分である。
 やはりこういったエッセイ・マンガは(あるいはエッセイもそうだが)特異な体験や異次元の感性でもなければ、読んでいて惹かれるところは少ない。そういう意味では、このカルト(ヤマギシ)シリーズは本書で完結ということになるんじゃないかと思う。言い換えると、これまでの2冊ですでに一定の役割は果たしている!ということである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『カルト村で生まれました。(本)』
竹林軒出張所『さよなら、カルト村(本)』

by chikurinken | 2018-11-06 07:20 |

『コンビニオーナーになってはいけない』(本)

コンビニオーナーになってはいけない
便利さの裏側に隠された不都合な真実

コンビニ加盟店ユニオン、北健一著
旬報社

コンビニは極力利用しません
利用したくありません


b0189364_17355468.jpg コンビニエンス・ストア、特にセブンイレブンのオーナーが、コンビニ・フランチャイズ企業からひどい仕打ちを受けていることを訴える本。
 コンビニは、多くの場合、オーナーが資本金や土地を用意し、フランチャイズ企業と契約して、商品を用意してもらい、それを売り、利益をオーナーと企業とで折半するというのが全般的な仕組みである。だが実際は、企業だけが丸儲けするシステムで、オーナーは低賃金長時間労働を強いられる。最初に結んだ契約でがんじがらめに縛られ、フランチャイズ企業の理不尽な要求にも従わなければならない。中には身体を壊すオーナーもおり(オーナーの死亡率がきわめて高いことが本書のデータで示されている)、本書の「奴隷契約である」という主張も十分頷ける。
 中でもひどいのが、廃棄食品(廃棄する食品の数)のノルマが企業から決められる(その上増やせと要求される)ということ。しかもその廃棄食品、実質的にはオーナーが費用を負担し、その費用をフランチャイズ企業に支払わなければならないことになっていて、きわめて理不尽なシステムができあがっている。つまりかなりの金額をフランチャイズ企業に自動的に吸い上げられることを強要するシステムになっているわけ。
 一方でコンビニ・オーナーがバイト職員に理不尽な要求をするケースもブラック・バイトの例として非常に有名という事実もあるわけで、これは言ってみれば、フランチャイズ企業→オーナー→バイト職員という、抑圧の負の連鎖の結果ということもできる。こういったフランチャイズ企業はどこも概ね似たような労働者収奪システムができあがっているそうで、一番良いのはこういう悪徳業者と関わらないことだ。そういうことを今回この本を読んで納得したのだった。
 本書は、いろいろと被害に遭ったコンビニ・オーナーたちが作ったユニオンが出した本で、主張は十分頷けるんだが、本書について言えば、大変読みづらい。文章も、これで校正したのかというような雑な文章が多く、構成もはなはだ雑である。さまざまなデータが示されてはいるが、データも解説も複雑でわかりにくいため、あまりプラスの効果は出ていない。そのために結局自己満足で終始してしまっており、もう少し見せる工夫が必要ではないかと思う。ユニオンが作ったパンフレットをそのまま本にしたようなレベルの書籍で、ユニオンが出したパンフレットであればそれでも良いのだろうが、ノンフィクション・ライターが関わっている(らしい)のにこのレベルでは少々情けない。
 各章の最後にマンガが載っていて、これがわかりやすくて良いマンガではあるんだが、その章に書かれていることそのままをマンガにしているため、単なる内容の繰り返しになっていて、存在意義がわからなくなっている。いっそのこと予告編みたいにして前にまとめて置いておくとかの方がまだ良かったのではないかと思う。こうしたツッコミどころも多く、とにかく作りが雑という印象ばかりが目に付いたのだった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ねてもさめてもとくし丸(本)』
竹林軒出張所『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。(本)』
竹林軒出張所『ロスジェネ社員のいじめられ日記(本)』
竹林軒出張所『低価格時代の深層(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-11-05 07:35 |

『自民党で選挙と議員をやりました』(本)

自民党で選挙と議員をやりました
山内和彦著
角川SSC新書

『選挙』に対するもう一つの視点

b0189364_17443409.jpg ドキュメンタリー映画『選挙』に登場していた山内和彦が、あのときの選挙を振り返り、同時に川崎市議会の様子をレポートする本。内容は、あの映画を山内氏の目線で見るという類のもので、ドキュメンタリーで描かれた部分と重複する部分が多い。もちろん映画とは視点が違うため、映画と別の角度から見られるという利点があり、そのあたりが本書の面白い部分である。
 また、選挙で実際にかかった費用、その内訳、選挙スタッフや事務所の詳細などについても紹介されるため、自民党選挙の実態がかなり見えてくる。結局のところ僕の見方は、自民党というものはやはり経験の蓄積を持つ「選挙互助会」だ、というところに落ち着く。このように本書はあの映画を補う役割を果たしているため、両者で大きな相乗効果を上げている。
 その他にも市議会の様子や活動、それからベルリン映画祭での上映の様子(ここが一番面白かった)や想田監督との関係なども紹介され、内容は非常に多岐に渡る。語り口も優しく読みやすいためにすぐに読み終えることができる。特にあの映画を見た人には、一読の価値があると言える。もちろん、見ていない人にも!
★★★☆

追記:
 本当のところ、この山内氏の経歴が興味深いんでそのあたりも紹介して欲しかったところである。ちなみに映画では「東大卒」という肩書きが紹介されていたが(これについても本書で触れている)、東大に入る前に気象大学校と信州大学を中途退学しており、東大の卒業時は31歳だったというかなりユニークな経歴である。その後も切手・コイン商という趣味の延長みたいな仕事をやっていた(いる)らしい。むしろこういうところを有権者にアピールしていった方が親しみが持たれて選挙には良かったんじゃないかと思うが、そのあたりについては、自民党には自民党の思惑があったようだ。良くも悪くも自民党選挙には建前重視の日本型縦社会が反映されている。

参考:
竹林軒出張所『選挙(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『選挙2(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-11-04 07:44 |

『OLはえらい』(本)

OLはえらい
益田ミリ著
いそっぷ社

絵は拙いが味はある

b0189364_16143080.jpg 『すーちゃん』の益田ミリのマンガ・デビュー作。自身のOL時代の話を中心にOLの日常生活(多くは会社での日常)を綴ったマンガである。
 本書刊行のいきさつについては、『ふつうな私のゆるゆる作家生活』にも書かれていたが、いそっぷ社の担当者から突然4コマ・マンガ描きませんかと持ちかけられたことがきっかけだそうだ。しかもこの著者、それまでマンガを描いたことがなかったらしく、それを考えるとよくこんな仕事受けたなと思う。担当者についても、よくこんな仕事持ちかけたなと思う。だがこの担当者の見立てが正しかったことは、その後の『すーちゃん』シリーズを見てみればわかる。いそっぷ社のこの担当の先見性を称えたいところである。
 さてこのマンガ、デビュー作だけあって、絵は非常に拙い、というかむしろヘタである。1980年代以降ヘタウマが許容されるようになったからこそ、こういう拙いマンガも受け入れられるんであろうが、ヘタ度はかなりのものと言って良い。もっともそれでも結構味があるし、登場人物のキャラがたっているため、かなり読める。また(立場的に社内で虐げられることの多い)女性社員の視線から見た同僚男性社員たちの姿はなかなか辛辣で、とは言え単なる中傷ではなく、第三者的に見ても問題のある人たちだとは感じる。こういった鈍感男性が、立場的に弱い人々に対しどのように対峙しているかが描き出されていて、またそれに対応しなければならない女性社員たちの心情と苦労も描き出されていて、そのあたりが本書の大きな魅力になっている。
 主人公はロバの姿をしているロバ山ロバ子(他の登場人物はすべて人間の姿)。『ふつうな私のゆるゆる作家生活』では、編集者が犬の姿だったが、どちらも特に違和感はない。なんせ絵自体、子どもの描くような絵だから、登場人物がどんな姿だろうがおそらく驚くことはない。一応4コマ・マンガになっているが、4コマでオチがあるわけではなく、そのままダラダラと話が続くような形式で、その辺は『すーちゃん』に近い。また全ページに渡って彩色されているが、よく見ると少々雑である。もっともそういったものすべてがこの作品の「味」になっているわけで、そのあたりは決して侮ることはできない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ふつうな私のゆるゆる作家生活(本)』
竹林軒出張所『すーちゃん(本)』
竹林軒出張所『結婚しなくていいですか。(本)』
竹林軒出張所『どうしても嫌いな人(本)』
竹林軒出張所『すーちゃんの恋(本)』
竹林軒出張所『オレの宇宙はまだまだ遠い(本)』
竹林軒出張所『地を這う魚 ひでおの青春日記(本)』

by chikurinken | 2018-10-21 07:14 |

『オトーさんという男』(本)

オトーさんという男
益田ミリ著
光文社

益田ミリの父親の紹介

b0189364_16145890.jpg 『小説宝石』に連載された同名タイトルのエッセイをまとめたもの。娘の目から見た著者自身の父親像を描いたマンガとエッセイで、著者は『すーちゃん』の益田ミリ。
 わがままかつ気分屋で我が道を行き、しかも家族に対しては同調圧力を押し付ける父親の姿を描く。いかにも「B型」的な人物で、僕自身はこういう人はそんなに嫌いではないが、肉親にいたら少し迷惑しそうな感じもする。著者自身も「こーゆー人が恋人だったら絶対にイヤです」と書いている。
 本自体はつまらなくはないが、あまり目を引くような箇所もなかった。要は、益田ミリの(愛すべき)お父さんの紹介で終始する。娘を持つ父親が読んだらまた別の感慨があるのかも知れない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『すーちゃん(本)』
竹林軒出張所『ふつうな私のゆるゆる作家生活(本)』

by chikurinken | 2018-10-20 07:14 |

『ふつうな私のゆるゆる作家生活』(本)

ふつうな私のゆるゆる作家生活
益田ミリ著
文藝春秋

あまりにタイトル通りの内容

b0189364_18465716.jpg 『すーちゃん』の益田ミリが、自らの身辺を描いたエッセイ・マンガ。
 タイトルが内容をよく反映しており、まさにゆるゆるな生活。また「ふつうな私」という表現も、学校時代目立たない生徒で、短大を卒業してOLをやっていた頃もあまり目立たない存在だったという著者の履歴をうまく表している。あまり良いとは言えないタイトルではあるが、内容はしっかりと反映している。
 登場する「私」はこのようにごく「ふつう」の感じではあるが、若い頃から公募で入賞したりすることはたびたびあったようで、やはり光るものを持っていたようである。彼女の日常は、編集者と会ったり、ネタ探しのために変わったイベントに出かけたり(しかも直前まで行くのが嫌だったりする)という、そういう日々である。編集者の中には常識外れな人もいて嫌な思いをすることもあるが、逆に意気投合するような人もいる。感受性が強いこの「私」にとっては「ゆるゆる」でありながら波風が起こる毎日のようである。この作者の感受性は、どこか非常に女性的な印象を受けるが、そこがこの人の著書を魅力的にしている要因なんだろうなとあらためて感じたのであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『OLはえらい(本)』
竹林軒出張所『すーちゃん(本)』
竹林軒出張所『結婚しなくていいですか。(本)』
竹林軒出張所『どうしても嫌いな人(本)』
竹林軒出張所『すーちゃんの恋(本)』
竹林軒出張所『オレの宇宙はまだまだ遠い(本)』

by chikurinken | 2018-10-19 07:46 |

『オレの宇宙はまだまだ遠い』(本)

オレの宇宙はまだまだ遠い
益田ミリ著
幻冬舎

裏側から見た『すーちゃんの恋』

b0189364_17583281.jpg 『すーちゃん』シリーズ第5弾はまだ出ていないと前回書いた(竹林軒出張所『すーちゃんの恋(本)』参照)が、実はこの本、『すーちゃんの恋』の続き……とは言えないが、スピンオフの話である。したがって『すーちゃんの恋』の後に続けて読むと楽しめる。第5弾ではないにしても、第4.5弾ぐらいの位置付けになるのではないかと思う。
 どういうことかというと、『すーちゃんの恋』に出てきてすーちゃんが恋をする相手、地味な土田さんが主人公で、土田目線で話が展開する。その中ですーちゃんとの出会いも出てくるため、裏側から見た『すーちゃんの恋』というような立ち位置である。この土田という人も、すーちゃん同様、周りの人々に優しく、自己犠牲を厭わないようなタイプの、「ロハス的」とでも言えそうな(そんな言葉はないが)好人物である。毎日を一生懸命過ごしながらも、こんな自分で良いのかというような哲学的自問を繰り返すのは、すーちゃん同様。がんばれ若者!などと励ましたくなる素朴な存在である。
 また、すーちゃんがいなくなった後のカフェの変容にもついても利用者の目線(土田の視点)で触れられていて、少しホッとする。他にもあちこちに工夫があって、著者の益田ミリも本人役(?)として話の中に現れるという趣向もなかなか面白いと思う(少しやり過ぎな感じはあるが)。さらには、主人公が書店員であるために、話の中でいろいろな本が紹介されていくんだが、これも楽しい工夫である(巻末にそれぞれの本の一覧まである)。
 本書の最後に付いている番外編は、『すーちゃんの恋』にあった番外編と同様のシチュエーションを土田の立場から描いていて、これもあの本と比較するとなかなか楽しい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『すーちゃん(本)』
竹林軒出張所『結婚しなくていいですか。(本)』
竹林軒出張所『どうしても嫌いな人(本)』
竹林軒出張所『すーちゃんの恋(本)』
竹林軒出張所『ふつうな私のゆるゆる作家生活(本)』

by chikurinken | 2018-10-18 07:58 |