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竹林軒出張所

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カテゴリ:映画( 643 )

『聖☆おにいさん』(映画)

聖☆おにいさん(2018年・パンチとロン毛製作委員会)
製作総指揮:山田孝之
監督:福田雄一
原作:中村光
脚本:福田雄一
出演:松山ケンイチ、染谷将太、山野海、佐藤二朗

脱力系コントで終始

b0189364_18402683.jpg 中村光の同名タイトル・マンガの実写版映画。元々は動画配信サービス向けのドラマだったらしい。(おそらく)低予算だったためか、ほとんどがアパートの室内のシーンで、まったく金がかかっていないことが窺われる。そういう点を含め、映画というにはちょっとナニな作品である。ちなみにプロデューサーは俳優の山田孝之、監督は福田雄一である。
 実際、ドラマというよりコントみたいな作品で、先ほども書いたように舞台はアパートの一室、登場人物はキリストとブッダのほぼ2人。ほとんど会話で話が進む。ちなみにこの作品、キリストとブッダが休暇で天界から現世に降りてきて、日常生活を送るというストーリーで、泉昌之の「ウルトラマン」シリーズ(ウルトラマンが東京で若者風の日常生活を送るという作品で、恋人はウルトラよしこさん。竹林軒出張所『山中貞雄のこと……追記』を参照)みたいな意表を突く設定になっている。ただこういう作品は、言ってみれば、視聴者(読者)の持つイメージと作品で提示されるイメージのギャップを楽しむという、結局そこだけに落ち着くため、長いこと見せられるとそのうちに飽きてくる。この作品は短い10本のエピソードで構成されているが、途中から眠くて仕方がなくなった。結局のところ、脱力系コントで終始してしまっていた。しかもあまり笑えないと来ていたのだった。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『女子ーズ(映画)』
竹林軒出張所『アオイホノオ (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『アオイホノオ (7)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『かっこいいスキヤキ(本)』
竹林軒出張所『山中貞雄のこと……追記』

by chikurinken | 2019-03-26 07:40 | 映画

『刑事ジョン・ブック 目撃者』(映画)

刑事ジョン・ブック 目撃者(1985年・米)
監督:ピーター・ウィアー
原案:ウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレス、パメラ・ウォレス
脚本:ウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレス
撮影:ジョン・シール
音楽:モーリス・ジャール
出演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ダニー・グローヴァー、ジョセフ・ソマー、アレクサンダー・ゴドノフ、ジャン・ルーブス

非の打ち所のない作品

b0189364_19370115.jpg アメリカの東部に伝統的な自給自足の生活を送るアーミッシュという宗教集団がある。そのアーミッシュを(おそらく最初に)世界的に知らしめたのがこの映画。
 主人公は、タイトル通り刑事のジョン・ブック(ハリソン・フォード)で、縁あってアーミッシュの親子と知り合い、アーミッシュの中で生活することになるという展開になる。アーミッシュの自然に根ざした生活への讃歌であると同時に、全編を漂うスリルとサスペンス、恋愛、人と人との信頼など、さまざまな要素が盛り込まれて、しかもそれがすべて有機的に絡み合いながら一つのドラマを作り上げるという、きわめて完成度の高い傑作である。
 脚本が非常にすばらしく、あまりに良くできたストーリーなので当初は原作ものかと思っていたほどである。存在感のあるキャストは言うまでもなく、演出もすばらしい。牧歌的な映像がまた美しく、ミレーの名画を思わせるようなシーンが目白押しである。映像を盛り上げる音楽までよくできていて、まったく非の打ち所のない作品である。
 今回見たのは3回目だが、多くの印象的なシーンを憶えていて、「Honey, this is great ... coffee」とハリソン・フォードが語るシーンはもっとも好きな場面である。さすがに3回目だと途中で飽きるかなと思っていたが、結局最後まで集中して見てしまった。4回目も見ようと思えば見れるな……と思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『いまを生きる(映画)』
竹林軒出張所『ブレードランナー ファイナル・カット(映画)』
竹林軒出張所『カルト村で生まれました。(本)』

by chikurinken | 2019-03-08 07:36 | 映画

『バラバ』(映画)

バラバ(1962年・米)
監督:リチャード・フライシャー
原作:ペール・ラーゲルクヴィスト
脚本:クリストファー・フライ
出演:アンソニー・クイン、シルヴァーナ・マンガーノ、アーサー・ケネディ、ジャック・パランス、ヴィットリオ・ガスマン、アーネスト・ボーグナイン

ローマ帝国時代の歴史エンタテインメント

b0189364_19292912.jpg タイトルの「バラバ」というのは、イエスの処刑が決まる瞬間、イエスの代わりに罪を許されたという罪人、バラバを指す(新約聖書に出てくるエピソードである)。イエスが刑場に連れてこられたとき、総督のピラトがこのイエスと極悪人のバラバとどちらに恩赦を与えるべきかと民に問いかけたところ、多くの民衆は「バラバだ」と答えた、それでイエスが処刑されバラバは解放された……というのである。
 ペール・ラーゲルクヴィストというスウェーデン人のノーベル賞作家がそのバラバを主人公に据えて小説を書き(『バラバ』)、それを映画化したのがこの作品である。バラバを演じるのはアンソニー・クイン。
 映画については、バラバのエピソード以外まったく事前情報がない状態でこの映画を見たため、てっきり説教臭い宗教的な作品かと思っていたが、途中『ベン・ハー』『グラディエーター』を彷彿させるようなシーンもあって、一種の冒険エンタテインメントとして非常に優れた作品になっている。なんせバラバが剣闘士(グラディエーター)になるんだから。
 バラバについては、記述が聖書に載っているだけなのでその実像はわからないが、ここまで波瀾万丈の話に仕立て上げることができれば大したものである。時代背景はローマ帝国の時代で、ネロの時代のローマ大火まで出てくる。基本的には信仰について問いかけるようなテーマではあるが、全体を通じて、歴史エンタテインメントとして十分楽しめる作品になっている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ベン・ハー(映画)』
竹林軒出張所『グラディエーター(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『サテリコン(映画)』
竹林軒出張所『十戒(映画)』
竹林軒出張所『アレクサンドリア(映画)』

by chikurinken | 2019-03-06 07:39 | 映画

『映画 聲の形』(映画)

映画 聲の形(2016年・京都アニメーション)
監督:山田尚子
原作:大今良時
脚本:吉田玲子
声の出演:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章(アニメーション)

重いテーマと美しい映像

b0189364_17261691.jpg 障害者の差別、学校でのいじめ、生きづらさなどをテーマにしたアニメーション映画。
 小学生時代、聴覚障害の転校生、西宮硝子をいじめ、その後それが原因で逆にクラス全員のいじめに遭うようになった少年、石田将也の物語。この石田少年、小学校から続くいじめのため、高校生になっても周囲と溶け込めず孤立した生活を送っていたが、あるとき西宮に再会し、そこから少しずつ人生が変わっていくというようなストーリーである。
 学校での生きづらさや閉塞感、人間の成長などが描かれ、テーマが非常に意欲的である点に目を瞠る。登場人物がステレオタイプである点や一部行動がきわめて唐突である点が少々残念ではあるが、こういう重いテーマに積極的に取り組んでいるのは評価に値する。また、何より映像が非常に美しい。日本のアニメーションの水準の高さを見せつけられるようである。プロットもよくできていて、見ていて飽きさせないストーリー展開はなかなかのものである。
 この映画、興収が23億超えたらしく、かなりのヒットになった。こういった重いテーマでも、アニメーションであれば若い人々が見るということなのか、それとも若い層が(いじめという)テーマを身近なエピソードと捉えたのか、そのあたりはわからないが、それでも日本の興業の可能性を垣間見せられた気はする。個人的には『けいおん!』を彷彿させる、いかにもアニメ少女みたいなキャラクターがあまり好きではないが、こういう要素も実は集客の要因になっているという可能性はある。
日本映画批評家大賞アニメーション部門作品賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『名もなく貧しく美しく(映画)』
竹林軒出張所『典子は、今(映画)』
竹林軒出張所『この世界の片隅に(映画)』

by chikurinken | 2019-03-04 07:25 | 映画

『学校』(映画)

学校(1993年・松竹)
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:冨田勲
出演:西田敏行、竹下景子、裕木奈江、中江有里、萩原聖人、新屋英子、翁華栄、田中邦衛、神戸浩、渥美清

安い映画だが存在意義は十分

b0189364_18133310.jpg 山田洋次が描いた夜間中学の実態。
 『こんばんは』の見城慶和先生が一部モデルになっているらしい。93年に公開されてヒットし、夜間中学の存在を世の中に知らしめた作品でもある。日本語の読み書きができないまま大人になった人々や、中学に通えなかった人々が、中学校(あるいは小学校)の学習課程を履修できるようにする機関、それが夜間中学である。現在その必要性が高まっていることもあり、文科省も各県に1校設けることを目標にしていると聞く。そういう動きを推進した映画として画期になった作品と言って良い。
 ただし映画の中身ということになると、最後まで通して見られる作品ではあるが、随所に安直さというか安っぽさを感じる。舞台は、卒業式を間近に控えた夜間中学の授業であり、それぞれの生徒(7人)のこれまでを振り返るという回想形式のドラマになっているんだが、この種の回想形式自体、ともすれば安っぽくなりがちである。スチール写真からして作り物風で安っぽさを感じるようなものだったため、見る前からある程度は想定できたが(だから今まで見なかったんだが)、そういう点で予想に違わない作品だった。それに案の定、話が過剰に理想化されているのも引っかかる部分で、フィクションだから仕方がないと言われると確かにそうだが、もう少し抑えの効いたストーリーにできなかったのかとも思う。
 とは言え、先ほども言ったように日本の教育において大きな画期になったのは間違いなく、おそらく山田洋次の意図もそのあたりにあったのではないかと思うんで、映画として安かろうが、存在意義は十分にあるとは思う。
第48回毎日映画コンクール日本映画優秀賞他
第17回日本アカデミー賞最優秀作品賞他受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『こんばんは(映画)』
竹林軒出張所『学ぶことの意味を探して(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『本当は学びたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『みんなの学校(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-02-13 07:13 | 映画

『日本フィルハーモニー物語』(映画)

日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章(1981年・エヌ・アール企画)
監督:神山征二郎
原作:今崎暁巳
脚本:神山征二郎、今崎暁巳
出演:風間杜夫、田中裕子、内藤武敏、浜田光夫、菅野忠彦、中野誠也、長塚京三、鈴木ヒロミツ、長谷直美、日色ともゑ、三谷昇、渡辺暁雄、小池朝雄、下元勉、ジェリー藤尾、殿山泰司、前田吟、佐藤オリエ、高橋克典、井川比佐志、志村喬

豪華なのは入れ物だけ

b0189364_14455108.jpg 1971年、日本フィルハーモニー交響楽団が、スポンサーのフジテレビと文化放送から支援打ち切りを通告され、それに対して楽団員が労働組合を結成して対抗する。これが世にいう「日フィル争議」で、その争議をモチーフにした映画がこの作品。原作は今崎暁巳という人のルポルタージュ『友よ! 未来をうたえ』という本である。
 監督は正攻法の地味な映画ばかり撮っている神山征二郎で、この映画も予想通り正攻法で地味なドラマ。当然、日フィル争議がストーリーの核になり、組合とスポンサーの東洋放送とのもめ事、さらには日本フィルが再建していく様子が描かれる。主人公は日本フィルのヴァイオリニスト樺沢昇(風間杜夫)で、恋人の茂木伸子(田中裕子)との恋愛がサブプロットになる。さらに同僚のチェリスト(内藤武敏)の死なども盛り込まれるが、正直ドラマ的な面白さはあまりなく、あってもありきたりなもので、2時間見続けるのがかなり苦痛な作品である。今回僕が見たのは、日本映画専門チャンネルの放送だったが、現時点でDVD化されておらず、テレビ放送もこれまで行われなかったらしい。僕も存在すら知らなかったし、そもそも日フィル争議についてもよく知らなかった。
 企業や自治体が金銭的に厳しくなると、まず最初に見直されるのが文化事業で、そのため今でも似たような問題はあちこちで起こっている。少し前にも、大阪の日本センチュリー交響楽団が補助金カットで揉めた(結局カットされた)し、文楽協会も補助金カットを示唆され問題になった。そのため、オーケストラだけに限っても映画やドキュメンタリーでよく取り上げられている。だから単に争議の現場だけを劇映画にしても面白味はなかなか生まれない。『オーケストラの少女』みたいに破天荒な映画にするか、さもなければ、人間の内面に迫るなどの要素がなければドラマとしては魅力に欠ける。この映画の最大の難点はそこで、どの登場人物もあまり人間としての存在感が見受けられず、単に行動の主体として登場するだけであるため、面白味がないのである。
b0189364_14455648.jpg 映画界でもかつて東宝争議などという似たような労働問題があり、監督の神山征二郎も多少の関わりを持っていたらしく、そういう点でこの日フィル争議に共鳴したんだろうが、思い入れだけでは面白い映画にならない。キャストは今見ると豪華(しかもほとんどはチョイ役)で、よくこれだけの俳優を集めたなと思うが、仏作って魂入れずみたいな内容の乏しい作品になってしまったのははなはだ残念。最後にコンサートのシーン(『新世界』が演奏される)があり、客が一様に感動するシーンで締めるというのも音楽映画らしいが、ありきたりと言えば実にありきたりである。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『オーケストラの少女(映画)』
竹林軒出張所『オーケストラ!(映画)』
竹林軒出張所『名門オーケストラを救え(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スラムのオーケストラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-02-12 07:45 | 映画

『ギルバート・グレイプ』(映画)

ギルバート・グレイプ(1993年・米)
監督:ラッセ・ハルストレム
原作:ピーター・ヘッジズ
脚本:ピーター・ヘッジズ
出演:ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス、メアリー・スティーンバージェン、ダーレン・ケイツ

等身大のアメリカと魅力的な登場人物

b0189364_18442291.jpg アメリカ、アイオワ州の田舎町で暮らすギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)の閉塞した生活と青春を描くドラマ。
 ギルバートには、夫を亡くしたストレスで超肥満体型になってろくろく動けなくなった母(ダーレン・ケイツ)、知的障害でやたら問題を起こす弟(レオナルド・ディカプリオ)がいて、他の姉妹2人と古い家に住んでいる。ギルバートは町の雑貨店で働いているが、これも近所に大型スーパーができたせいで、商売の見通しはかなり暗い。町自体も寂れており、全体をどんよりした閉塞感が漂っている。しかしギルバートは、弟思い、母思いの心優しい男なのである。
 これも『ラスト・ショー』と同じように、等身大のアメリカを描いていて、「ハリウッド映画」的ではない上質のドラマである。主人公が年上の女性(精神的に不安定)と不倫しているあたりもあの映画によく似た設定である。アメリカの生の姿が描かれていて新鮮である。ただし周りに起こる出来事が主人公にとって重すぎるので、感情移入して見ているとかなり辛く感じる。とは言え救いもあるんで、リアリズム映画のように辛さが後まで残るというようなことはない。
 監督は『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』のラッセ・ハルストレムで、ハリウッド進出第2作が本作である。演出は手堅く、どの俳優も好演。中でも知的障害のある弟を演じたディカプリオは特筆ものである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ラスト・ショー(映画)』
竹林軒出張所『フライド・グリーン・トマト(映画)』
竹林軒出張所『プレイス・イン・ザ・ハート(映画)』

by chikurinken | 2019-01-23 07:44 | 映画

『ラスト・ショー』(映画)

ラスト・ショー(1971年・米)
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
原作:ラリー・マクマートリー
脚本:ラリー・マクマートリー、ピーター・ボグダノヴィッチ
撮影:ロバート・サーティース
出演:ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード、ベン・ジョンソン、クロリス・リーチマン、サム・ボトムズ、エレン・バースティン、ランディ・クエイド、アイリーン・ブレナン

マクマートリーの「祭りの準備」

b0189364_20514796.jpg キネマ旬報ベスト・テン第1位の映画ということで、僕が20台の頃、心躍らせて名画座でこの映画を見たのだが、何だか後味が悪く、この映画のどこがそんなに良いのかと思った記憶がある。その後知ったことだが、当時のキネ旬の選考委員会でも若手の審査員はあまりこの映画を評価しておらず、年配の審査員が高い評価を入れているということだった。今回はすでに50台に到達した時点で見たわけだが、心に染みいる良い映画だと感じた。若い頃と印象が全然違うのに驚きである。青春時代を回想するノスタルジーのストーリーだからだろうが、それ以外にも映像がボグダノヴィッチ作品らしく安定した詩的なもので、エドワード・ホッパーの描く絵画を彷彿させる。ドンパチのハリウッド映画とは違ったアメリカのリアルな等身大の生活が描かれているのも良い。
 原作は、ラリー・マクマートリーというアメリカの作家による小説で、おそらく自伝的な作品ではないかと思われる。主人公の友達が軍に入り朝鮮戦争に行くなどというセリフがあることから、時代背景は1950年代だろう。舞台はテキサス州の田舎町で、町全体に閉塞感が覆っている。主人公も高校を卒業したが、何だか将来が見えてこないという状況である。その町での人々との出逢いや別れ、そして主人公の成長がこの話のテーマで、それがノスタルジックなモノクロ映像で描かれる。同じ監督の『ペーパー・ムーン』と非常に似た詩的な映像が心を打つ。こういったセンスの良い映画は最初の映像を見ただけで違いを感じることが多いが、この映画がまさにそうで、前に見たときはそれすら気付かなかったのだろうかと、我ながら少々情けなくさえ感じるのだ。
第44回アカデミー賞助演男優賞助演女優賞
1972年キネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・テン第1位受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ペーパー・ムーン(映画)』
竹林軒出張所『野のユリ(映画)』
竹林軒出張所『ギルバート・グレイプ(映画)』

by chikurinken | 2019-01-22 07:51 | 映画

『獣人』(映画)

獣人(1938年・仏)
監督:ジャン・ルノワール
原作:エミール・ゾラ
脚本:ジャン・ルノワール
撮影:クロード・ルノワール、クルト・クーラン
出演:ジャン・ギャバン、シモーヌ・シモン、フェルナン・ルドー、ジュリアン・カレット、ブランシェット・ブリュノワ

いかにも自然主義という
破滅型のストーリー


b0189364_16525363.jpg エミール・ゾラの自然主義文学『獣人』の映画化作品。『獣人』は、全20巻で構成されるルーゴン・マッカール叢書の1本で、ルーゴン・マッカール叢書というのはルーゴン家とマッカール家の人々の生き様を描いたシリーズである。シリーズのある作品の登場人物が他の作品の主人公になって続いていくという展開になるのがこの叢書で、この『獣人』の主人公、ジャック・ランティエは、『居酒屋』の主人公、ジェルヴェーズ・マッカールの息子であり、『ジェルミナル』の主人公、エチエンヌ・ランチエとは兄弟である。
 主人公のジャック・ランティエ(ジャン・ギャバン)は、遺伝的な発作のために殺人衝動に駆られるという人格で、それは大酒飲みの遺伝子が彼の血を毒に変えたのだと本人は考えている。現在鉄道の運転士をしていて仕事も普通にこなしているが、そのランティエがとある殺人事件と関わり合い、それをきっかけに駅長(フェルナン・ルドー)の若い妻(シモーヌ・シモン)と関係を持つようになるという風に話が進む。主要な登場人物が最初と最後で劇的に変貌しているのが印象的で、やはり自然主義……という破滅型のストーリーである。
 劇的なストーリーだが自然に話が進むため違和感はない。途中からややこしい恋愛のモチーフが出てきて『テレーズ・ラカン』みたいになってくる。演出は正攻法で破綻はないが、やたら列車や鉄道のシーンが出てきて、もちろん主人公の職場が鉄道会社なんである程度はわかるが、それでも少し度が過ぎているような印象がある。あるいはジャン・ルノワールの好みなのかも知れないと思うが、鉄道ファンが見たら喜ぶんじゃないかと思うようなシーンが非常に多かった。むしろそちらの方の印象が強い。なお、監督のルノワールだが、他のゾラ作品、『ナナ』(映画タイトル『女優ナナ』)も監督しており、それが出世作になったらしい(『女優ナナ』のDVDは出ているようだ)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『居酒屋(映画)』
竹林軒出張所『ジェルミナル(映画)』
竹林軒出張所『嘆きのテレーズ(映画)』
竹林軒出張所『大いなる幻影(映画)』
竹林軒出張所『ピクニック(映画)』
竹林軒出張所『ゲームの規則(映画)』
竹林軒出張所『小間使の日記(映画)』

by chikurinken | 2019-01-21 07:53 | 映画

『乱れ雲』(映画)

乱れ雲(1967年・東宝)
監督:成瀬巳喜男
脚本:山田信夫
音楽:武満徹
出演:加山雄三、司葉子、草笛光子、森光子、浜美枝、加東大介、藤木悠

ベタベタなメロドラマ

b0189364_21040028.jpg 美しい男女が繰り広げるベタベタなメロドラマ。
 交通事故で人を死なせてしまったある男(加山雄三)が、その未亡人(司葉子)と恋愛関係に陥るというストーリー。事故と元夫の影が二人の間につきまとう、という展開になる。
 ストーリーはそれなりで脚本も平凡。演出もきわめて正攻法で、取り立ててどうと言うこともない。司葉子は非常に美しいが、僕にとっての見所はそれだけ。十和田湖畔の風景をはじめとして、映像もそれなりに美しかったが、加山雄三の演技は例によってベタだし、他の俳優もきわめて映画的で平凡な演技に終始していて、あまり面白味は感じなかった。そのため1時間50分が非常に長く感じた。ただそれなりにうまくまとまってはいるので、こういうコテコテのラブストーリーを見たい人にとっては理想的な映画かも知れない。ただ森光子と加東大介の関係は普通のメロドラマとは少し異質で、いかにも成瀬映画らしいと言える。
★★★

参考:
竹林軒出張所『秋日和(映画)』
竹林軒出張所『紀ノ川(映画)』
竹林軒出張所『流れる(映画)』
竹林軒出張所『浮雲(映画)』
竹林軒出張所『稲妻(映画)』
竹林軒出張所『乱れる(映画)』
竹林軒出張所『放浪記(映画)』
竹林軒出張所『女が階段を上る時(映画)』
竹林軒出張所『山の音(映画)』

by chikurinken | 2019-01-06 07:03 | 映画