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竹林軒出張所

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カテゴリ:映画( 601 )

『チャタレイ夫人の恋人』(映画)

チャタレイ夫人の恋人(1982年・英仏)
監督:ジュスト・ジャカン
原作:D・H・ロレンス
脚本:クリストファー・ウィッキング、ジュスト・ジャカン、マルク・ベーム
出演:シルヴィア・クリステル、シェーン・ブライアント、ニコラス・クレイ、ベッシー・ラヴ

妖艶、シルヴィア・クリステル

b0189364_17094585.jpg ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』は、これまでたびたび映画化されているが、これは僕の知る限り2回目の映画化作品である。主演が『エマニエル夫人』で一世を風靡した妖艶なシルヴィア・クリステルであり、原作が猥褻で物議を醸した『チャタレイ夫人の恋人』であることを考えると、どういうコンセプトの映画か容易に想像が付く。そしてその予想の通りの映画で、ソフトコア・ポルノと言って良い作品である。もちろん、日活ロマンポルノみたいに意味のない性交シーンはなく、原作に沿った作りになっているのは大変好感が持てるが、ラブシーンが中心みたいな印象はどうしても受ける(ただし数はそんなに多くない)。
 80年代の一般映画として考えると、原作同様「大胆な性描写」と言って良いんじゃないかという表現である。しかもこれがなかなか美しく撮影されていて、シルヴィア・クリステルの美しさと相まって非常に魅力的な映像である。ただし残念なのが、きわめて不自然なぼかしが随所に入っていたことで、この野暮なぼかしのせいで余計いやらしさを感じる。僕が見たのはBS(シネフィルWOWWOW)で放送されたものだが、今の時代にぼかしを入れるか!と突っ込みたくなるくらいあちこちに出てきてかなり見苦しい。ただし、DVDについては『ヘア解禁版』なんてのもある(これも少し恥ずかしいタイトルだが)。
 この『チャタレイ』は全体で100分程度であり、当然のことながら、ストーリーもかなり端折られている。何より本来あるべき結末が出る前に唐突に終わってしまうので、かなり物足りない印象が残る。もちろんこの映画のような展開にしてしまうと、どういうオチにするのか難しいところではある。やはり、前にも書いたように、クリフォード・チャタレイ氏にもう少し悪い人間になってもらわないことには収まりが悪い。夫が善人だと、単なる裏切り不倫話になってしまう。そうすると、主人公のコニーがただの愚かな女になってしまい、逆に憐れさが残ってしまう。それもまたありだが、そうするとテーマが大きく変わってきて、もはや別の話になってしまうような気がする。2015年のドラマ版『チャタレイ夫人の恋人』はまさにそれで、あんな作品なら作らない方が良いくらいである。
 僕自身は、『チャタレイ』をこれまでドラマ版もあわせて4本見てきたわけだが、一番デキが良かったと思えるのは『レディ・チャタレー』、その次が1993年ドラマ版というところではないかと思う。ただし映像だけを取ってみれば、このシルヴィア・クリステル版もなかなか捨てがたいと言える。でもさすがに『チャタレイ』はもう結構。一応今回で見納めである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『レディ・チャタレー(映画)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年ドラマ版)(ドラマ)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(2015年ドラマ版)(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-07-08 07:09 | 映画

『小間使の日記(ルノワール版)』(映画)

小間使の日記(1946年・米)
監督:ジャン・ルノワール
原作:オクターヴ・ミルボー
脚本:バージェス・メレディス
出演:ポーレット・ゴダード、バージェス・メレディス、ハード・ハットフィールド、ジュディス・アンダーソン、フランシス・レデラー、レジナルド・オーウェン

どれをとってもあまり感じることがない
ブニュエル版を見たいものだ


b0189364_18563723.jpg 『小間使の日記』と言えば、ルイス・ブニュエルの映画が有名だが、あのジャン・ルノワールがそれ以前に、同じ話を映画化していたのだった。寡聞にして知らなかったが、それもそのはず、公式記録によると日本未公開らしい。「日本未公開」と言っても実際にはDVDが国内で発売されているため、いくらでも見ることができる。
 特筆すべきはもう一つ、この映画がアメリカ製であるということである。原作はフランス文学で、監督もフランス人でありながら、全編セリフは英語である。しかも少し(当時の)ハリウッド映画風で、軽めである。
 主役のセレスチーヌは、『モダン・タイムス』の主演女優にしてチャップリンの3番目の(内縁の)妻、ポーレット・ゴダードが演じる。他の俳優についてはまったく知らない人間ばかり。演技はどの俳優もやや大ぶりで、あまりリアルな感じはない。演出も本来のストーリー自体の流れから少々はずれているんじゃないかというような印象を受けた。このあたりはルノワールの他の映画とも共通する印象である。そのためもあって、主人公、セレスチーヌの行動が何やら一貫していないような変な感じがした。素人考えではあるが、もう少し作りようがあるんじゃないかと考えてしまった。このあたりは原作に当たるか、他の映画に当たるかしないと確認できないんで、いずれはブニュエル版も見てみたいと思う。
 ストーリーは、反階級主義みたいな話だが、自由主義フランスで書かれた原作であることを考えると、それほど違和感はない。しかしそのためか問題性もあまり伝わってこない。階級制度の問題はやはりイギリスなんかの専売特許なんではないかとあらためて思う次第だ。
 いずれにしても、演出、キャスト、ストーリーと、どれをとってもあまり感じることのない、面白味のない作品であった。もちろんあくまで個人の感想ではある。
★★★

参考:
竹林軒出張所『大いなる幻影(映画)』
竹林軒出張所『ピクニック(映画)』
竹林軒出張所『ゲームの規則(映画)』

by chikurinken | 2018-07-07 07:56 | 映画

『蘇える金狼』(映画)

蘇える金狼(1979年・角川春樹事務所)
監督:村川透
原作:大藪春彦
脚本:永原秀一
出演:松田優作、風吹ジュン、佐藤慶、成田三樹夫、小池朝雄、草薙幸二郎、河合絃司、加藤大樹、岩城滉一、加藤健一、真行寺君枝、千葉真一

セックスとバイオレンスが売り

b0189364_20050719.jpgネタバレ注意!

 フィルム・ノワールとでも言うのか、犯罪映画である。主人公、朝倉(松田優作)は、普段はしがないサラリーマンだが、実は凶悪な犯罪者という設定。ボクシングではチャンピオンになれるという逸材(という設定)であるが、そちらの方にはまったく関心を示さない。そのボクシング・テクニックは、あくまで凶悪犯罪のためのものということらしい。
 この主人公、映画の冒頭で、いきなり警備員1人を射殺して1億円強奪事件を起こす。ところが奪った札の番号が当局に控えられていることが(あり得ないくらい)偶然わかり、奪った金を使えないということが判明する。そこで、これでヘロインを買って資金ロンダリングをやろうと試みる。そのために、ヤクザの事務所に殴り込んで、銃で武装したヤクザ者を全部仕留めて、ヘロインの取引を取り仕切っている市会議員の身元を突き止める(このあたりですでに無茶苦茶)。その後、その市会議員の自宅に潜入し、そこでヘロインの取引を強要する。このときも銃で武装した人間を大量に射殺する(あまりのご都合主義に呆れてしまう)。その後、この議員と、ヘロインの取引を謎の島で執り行うが、そこで待機していた、完全武装の市会議員の手先数人をこともなげに全員消し去る(こうやって簡単に全員消し去れるんなら、1億円強奪事件など起こさずに、最初からこの市会議員の家に押し入った方が良かったんじゃないのか)。こういった調子で話が進んでいく。この主人公の朝倉、後ろから銃を突きつけられても、あるいはマシンガンをぶっ放されても傷一つ負うことはない。どんな危険なシーンでも、主人公の都合の良いように話が流れ、結局、巨万の富と美形の女(風吹ジュン)を手に入れる。こんなにクールでニヒリスティックな男なのに、やっぱり金と女に落ち着くあたりが情けない。しかもその後、社長令嬢との婚約を目論むと来ている。志が低すぎりゃせんか。もしかして『BIG tomorrow』の読者か。
 ストーリーもバカバカしいし、展開も都合良すぎる。目標もレベルが低すぎて、面白味がない。無意味に殺人を犯す主人公にもまったく肩入れできないし、何なんだ、この映画は!と思い続けながら見ていた。主人公に共感できないんで、ハラハラの要素もない。結局はセックスとバイオレンスだけのバカっぽい映画に成り下がってしまっている。原作はどうなのかわからないが、この映画はまったくくだらない。せめて主人公に共感を感じられる程度には工夫してほしいものである。なお監督の村川透って人、『西部警察』の演出なんかをやっていた人らしい。確かに、なるほどね……というような演出が多かった(必然性のないカーチェイスとか……)。
★★

参考:
竹林軒出張所『探偵物語(映画)』
竹林軒出張所『早春物語(映画)』

by chikurinken | 2018-07-05 07:04 | 映画

『探偵物語』(映画)

探偵物語(1983年・角川春樹事務所)
監督:根岸吉太郎
原作:赤川次郎
脚本:鎌田敏夫
出演:薬師丸ひろ子、松田優作、秋川リサ、岸田今日子、北詰友樹、坂上味和、財津一郎

ヒロコのプロモ
顎の線がスッキリしていて新鮮


b0189364_18214212.jpg 女子大生(薬師丸ひろ子)と彼女のボディガードをすることになった探偵(松田優作)のラブロマンス……なのかな。ともかくこの2人が、殺人事件に巻き込まれて、あれやこれやテキトーに話が進んでいくという映画。
 ストーリーがご都合主義的で、なおかつ登場するギミックもいい加減、デタラメであるため、まったくリアリティがなく、単なる作り話で終始している。そのために見るに堪えない安いストーリーの映画になってしまった。もう少しやりようがあったんじゃないかとも感じるが、そのあたりは何とも言えない。チープなラブロマンスになってしまったのは、シナリオが鎌田敏夫だからかとも思うが(ウィキペディアによると、鎌田敏夫は実際にはあまりこの作品のシナリオを書いていないらしい)、そもそも赤川次郎の原作に何を期待できるのかということだ。商業主義の申し子のような、赤川次郎の小説に深遠さを求めること自体無理があるってもんだ。
 キャストの薬師丸ひろ子、松田優作、岸田今日子あたりは割合存在感があって良かったが、それ以外の見所はほとんどない。それを考えると、やはり薬師丸の一種のプロモーション・ビデオということになり、角川映画であることを考えると、狙いもその辺にあったことが容易に想像がつく。2時間近くがんぱって見続けたが、いろいろな点で裏切られっぱなしで、時間の無駄だったと感じる。そもそも、70〜80年代の日本映画低迷期の作品であることを頭に入れておくべきだったと思う。しかも売ったもん勝ち商業主義の権化、角川映画であった。映画で描かれる当時の軽薄短小な世相も不快で、バブルな空気に踊らされている若者が画面にたくさん出て来て、気持ち悪いったらありゃしない。この時代のケーハク映画によく出てくる、あの「チークダンス」、何とかならんかと思う。
 薬師丸ひろ子は当時19歳で、この作品が主演映画第3作という。なかなか初々しくて魅力的だが、『跳んだカップル』のときみたいな、驚くような演技はない。ただし若々しく、顎の線もスッキリしていて、現在の彼女みたいに首の周りが窮屈な感じはなく、なかなか素敵。そういうことを考えると、やはり薬師丸ひろ子が女子大生に扮したらどうなるかという想定のプロモーション・ビデオだったんだなという結論に落ち着く(ちなみに当時薬師丸は玉川大学の学生)。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』
竹林軒出張所『香港明星迷(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春物語』(映画)』

by chikurinken | 2018-07-04 07:10 | 映画

『真珠の耳飾りの少女』(映画)

真珠の耳飾りの少女(2003年・英・ルクセンブルク)
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
脚本:オリヴィア・ヘトリード
撮影:エドゥアルド・セラ
美術:ベン・ヴァン・オズ
衣装デザイン:ディーン・ヴァン・ストラーレン
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ、エシー・デイヴィス

フェルメールの詩的要素が再現された
スナップショットのような映画


b0189364_22152672.jpg フェルメールの肖像画『真珠の耳飾りの少女』がどういういきさつで描かれたかという、それだけのストーリーの映画。今回久々に見た。二度目である。
 原作は短編か中編の小説ではないかと思う。ストーリーについてはドラマチックな要素はあまりなく、フェルメール家の騒動や、そこに女中として仕える主人公のグリートが受けるセクハラやパワハラがドラマの盛り上がりの部分で、ほとんどは写実的な表現に終始する。ただし写実的であっても表現方法によっては詩が生まれる(竹林軒出張所『お葬式(映画)』を参照)。この映画は、まさに全編を通じて詩であり、フェルメールの絵画のような静けさをたたえた映像が随所に登場する。また有名絵画に似せたような映像も随時登場し、ちょっとしたパロディなのかも知れないが、こういった映像にも美しさが漂う。17世紀オランダの風俗も見事に再現されており、まさにフェルメールの世界に飛び込んだようなそういう映画である。
 このように僕は撮影、美術、衣装デザインを特に高く買っているが、ただいわゆる「美術」にあまり興味がない人にとって、この映画が面白いのかどうかは少々疑問ではある。とは言え、映像の美しさは、「美術」的な要素を超えて存在するのは事実であるため、そちらが堪能できれば十分楽しめるのではないかと思う。
 これまで美術関係の映画は数々見てきたが、この作品は最高レベルの1本と言える。同じように映像面で感心した美術映画といえば、印象派の絵画を再現したかのような『田舎の日曜日』があるが、この作品などはモネとルノワールを足して二で割ったような画家が主人公だったため、印象派的な絵作りにしたことは、この『真珠の耳飾りの少女』と同様、きわめて筋が通っていると言える。この映画のスタッフも、あるいはあの映画から感化を受けて同じようなアプローチを目指したのかも知れない。
2003年LA批評家協会賞撮影賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ロスト・イン・トランスレーション(映画)』
竹林軒出張所『ブーリン家の姉妹(映画)』
竹林軒出張所『フェルメール盗難事件(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『レンブラント 描かれた人生(映画)』
竹林軒出張所『レンブラントの夜警(映画)』

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 以下、以前のブログで紹介した『真珠の耳飾りの少女』のレビュー記事。やはり同じようなことを書いている。

(2006年3月27日の記事より)
真珠の耳飾りの少女(2003年・英ルクセンブルグ)
監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ
撮影:エドゥアルド・セラ
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ、エシー・デイヴィス

 オランダの画家、ヤン・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」を題材にしたトレイシー・シュヴァリエの原作の映画化。だが、原作ものを単に映像化したというレベルではなく、作り手がフェルメールの絵画に直に接近しているのがよくわかる。
 この映画の一番の魅力はやはり映像である。フェルメールの世界を映像でことごとく再現しており、フェルメール好きの人ならばあちこちでニンマリしてしまうだろう。構図やインテリアだけでなく(これだけでもなかなかなんだが)、光の具合も再現されている。特に驚くのは、フェルメールの絵のタッチ(マチエールというのかな)まで似ているということ。どうやって再現しているのかわからないが、輪郭を少しぼかして若干ハレーションを起こさせるような撮り方をしているが、これがフェルメールのタッチによく似ている。全編でこういう効果を出しているわけではなく、フェルメールの絵に似た構図の箇所でのみやっているので意図的なものだと思うが、正直これはすごい! 掃除のシーンでさえも、フェルメール絵画の再現になっている。また、バルビゾン派のフェルメール風とか、横長の印象派(浮世絵)構図のフェルメール風というようなものも出てきて、なかなか面白い。
 もちろん映像だけでなく、ドラマとしても人間の機微が描かれていて、スリリングな展開もあり、まったく最後まで飽きることがない。でもやっぱり、西洋美術好きにはたまらん映画だろうなと思う。
 余談だが、この映画に登場するフェルメールの奥方が、同じオランダのヤン・ファン・エイクの絵(「アルノルフィニ夫妻の肖像」)に出てくる人物によく似ており、こういうのも意図的だったんだろうかと気になった。
★★★★

by chikurinken | 2018-06-08 07:15 | 映画

『ポセイドン・アドベンチャー』(映画)

ポセイドン・アドベンチャー(1972年・米)
監督:ロナルド・ニーム
原作:ポール・ギャリコ
脚本:スターリング・シリファント、ウェンデル・メイズ
撮影:ハロルド・E・スタイン
特撮:L・B・アボット
出演:ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレー

パニック映画の元祖
二番煎じがたくさん出たが
これを超えたものはない


b0189364_22063353.jpg 70年代にパニック映画がやたら流行ったが、その元祖とも言えるのがこの映画。豪華客船が津波に遭って転覆し、沈没する船の中に閉じ込められた乗客たちが何とか脱出しようとするというストーリー。
 僕自身は、子どもの頃映画館で予告編を見たのが最初で、特に転覆したときの船内の映像がものすごく、大変衝撃を受けた。その後、『月曜ロードショー』でノーカット版が放送されたときに見て、今回はそれ以来、つまり45年ぶりということになる。月日の流れは速いもんだ。
 この映画、基本的には脱出過程が目玉ではあるが、人間同士のぶつかり合いや希望、絶望などもうまく描かれているため、非常に見応えがある。最後まで目が離せなくなる類の映画である。なんと言ってもセットが非常によくできていて、あらゆるシーンがものすごいリアリティで迫ってくる。「作り物」という感じが一切ない。
 ジーン・ハックマンが、いかにもアメリカンな一癖ある牧師を演じていて、これが強烈。敵対する元刑事のアーネスト・ボーグナインとのぶつかり合いも素晴らしく、一番の見所である。あまり有名な俳優は出ていないが、どのキャストもよくはまっていて好演である。
 この映画、2006年にリメイクされたが(『ポセイドン』)、こちらは第27回ゴールデンラズベリー賞の最低リメイク賞にノミネートされている。どうしてこんなよくできた映画をわざわざリメイクしようとしたかわからないが、そういうリメイクの話は日本でもまあ良くある話である(竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』を参照)。ただアメリカには「最低リメイク賞」などといった遊び心に溢れた賞があり、そういう点がいかにもアメリカで、なかなか奮っていると思う。日本の映画界もその精神をまねて、つまらないリメイクはやらないようにしてほしいものである。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『俺たちに明日はない(映画)』
竹林軒出張所『リメイクもういらん党宣言』

by chikurinken | 2018-06-06 07:06 | 映画

『泥棒成金』(映画)

泥棒成金(1955年・米)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:デヴィッド・ダッジ
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
出演:ケーリー・グラント、グレース・ケリー、シャルル・ヴァネル、ブリジット・オーベール、ジェシー・ロイス・ランディス

楽しく時を過ごせる映画

b0189364_18380087.jpg ヒッチコック作品。以前見たことがあると思っていたが、結局、見たことがあるのかないのかよくわからなかった。『おしゃれ泥棒』や『シャレード』なんかとストーリーが重なっていて、よく憶えていないのだ。今回見た分についても、なんだかすぐに忘れそうな気がする。
 ハリウッド映画らしくハラハラドキドキの展開で、内容もしゃれていて面白いが、字幕のせいか一部内容についていけなかったため、最後は結構モヤモヤして終わってしまった。引退したかつての大泥棒(ケーリー・グラント)が、新たな泥棒事件の嫌疑をかけられ、それを晴らすためにあれやこれややっていくというストーリー。その過程で出会う美女がグレース・ケリーで、いかにもハリウッド映画な展開……と言えば言い過ぎか。
 とは言え、やはり随所にキラリと光るヒッチコック演出が散りばめられていて、非常に感心することしきり。そもそも冒頭部分からして奮っている。タイトルバックに出てくる旅行代理店のショット、ウィンドウ内にあるフランス旅行の宣伝文句のアップ(「France」と出てくる)、そこから急にフランスの保養地に一挙に飛んで、次に(その保養地の)ホテルでの泥棒のシーンと短いショットで繋がっていく。しかも泥棒のシーンには屋根を歩く黒猫が象徴的に使われていたりしておしゃれである(ちなみに主人公の元大泥棒は「猫」と呼ばれていた)。また、あちこちに出てくるユーモアもヒッチコックらしい。ただストーリーが少々できすぎで、途中から概ね筋書きも見えてくるし、そういう点がちょっとマイナス。
 ケーリー・グラントもグレース・ケリーもヒッチコック映画では常連(それぞれ4本、3本に出演)で、まったく違和感なく、ヒッチコックの世界を形作っている。美しい男女が出て活躍するというのもハリウッド映画の常道で、この映画もご多分に漏れない。やはりこの映画、あまりいろいろ考えたくないときなんかに見るのが適している。楽しく時を過ごしたいような場合に最適な娯楽作品と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『巨匠たちの肖像 ヒッチコック(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『レベッカ(映画)』
竹林軒出張所『サイコ(映画)』
竹林軒出張所『知りすぎていた男(映画)』
竹林軒出張所『マーニー(映画)』
竹林軒出張所『ロープ(映画)』
竹林軒出張所『めまい(映画)』
竹林軒出張所『シャレード(映画)』

by chikurinken | 2018-06-04 07:37 | 映画

『ジュリアス・シーザー』(映画)

ジュリアス・シーザー(1953年・米)
監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本:ジョセフ・L・マンキウィッツ
出演:ルイス・カルハーン、ジェームズ・メイソン、マーロン・ブランド、ジョン・ギールグッド、デボラ・カー、グリア・ガーソン

演劇的な、余りに演劇的な

b0189364_16453842.jpg シェークスピアの同名タイトルの戯曲を映画化したもの。監督は『イヴの総て』、『クレオパトラ』のマンキウィッツ。ブルータス(ブルトゥス)を演じるのが、『ロリータ』のジェームズ・メイソン、アントニー(アントニウス)は『ゴッドファーザー』、『革命児サパタ』のマーロン・ブランドが演じる。
 元々が舞台劇であるため、全体に芝居がかった演出である。ジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)の独裁政治を危惧した元老院議員たちが、シーザーの暗殺をもくろみ、やがて議場で決行する。この中にシーザーの腹心であるブルータスもいて、「ブルータス、お前もか」というシーザーの有名なセリフが発せられることになる。その後親シーザー派のアントニー、オクタヴィアヌスらと反シーザー派との間で決戦(フィリッピの戦い)が行われるという運びになる。通常の映画であれば、このフィリッピの戦いあたりが目玉になりそうだが、舞台劇の映画であるため、派手な戦闘シーンは、まったくないわけではないが、少ない。ほとんどは、大がかりで劇的なセリフですべてが表現される。
 そのため演劇の延長として見ればそれなりに楽しめるが、この手の映画の常で、通常の映画の概念からは少々外れている。ただセリフなどは、シェークスピア風でなかなか詩的である。シェークスピア劇を見た気分になる分には良い素材ではないかと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『クレオパトラ(映画)』
竹林軒出張所『スパルタカス(映画)』
竹林軒出張所『ハムレット(映画)』
竹林軒出張所『もうひとりのシェイクスピア(映画)』
竹林軒出張所『蜘蛛巣城(映画)』
竹林軒出張所『ロリータ(映画)』
竹林軒出張所『革命児サパタ(映画)』

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 以下、以前のブログで紹介したマンキウィッツ監督作品のレビュー記事。

(2005年10月31日の記事より)
イヴの総て(1950年・米)
監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
脚本:ジョセフ・L・マンキウィッツ
出演:ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、ゲイリー・メリル、マリリン・モンロー、ヒュー・マーロウ

b0189364_16454404.jpg 芸能(演劇)界のおどろおどろしい実態を描いたドラマ。
 去年か一昨年くらいに1回見ているようだが、見たこと自体をまったく憶えておらず(こういうのは初めてだ)、見ている途中でそのことに気がついた。なかなか良くできた映画だが、見終わった後は少し不快感が残る。題材が題材だけにしようがないが。
 有名な演劇の賞で女優賞を受賞したイヴ(アン・バクスター)の授賞シーンから始まる。アカデミー賞の授賞式でおなじみの、例のスピーチが始まる。「私を見出してくれた○○さん、すばらしい脚本を提供してくれた○○さん、陰で支えてくれた○○さん、感謝の言葉もありません」ってヤツ。実際に、アカデミー賞の授賞式を見ていたりすると、外部の人間から見ていてもかなり空々しく感じるものだが、この映画で描かれているのはこの言葉の裏の世界。空々しさもひとしおである。
 この映画は、アカデミー賞6部門受賞しているので、実際の授賞式でもこういったスピーチが行われたはずだが、どうだったのだろうか。今度調べてみよう。残念ながら主演女優賞と助演女優賞は獲得していない。アン・バクスターに賞を与えて、実際の授賞式でスピーチさせるという発想は審査員にはなかったようだ(なんでも、ベティ・デイヴィスとアン・バクスターのどっちを主演にするかでもめたためらしい。このあたりも映画のテーマと重なっておもしろい)。
 マリリン・モンローが端役で出ていて、なかなか存在感を示している。この映画を通じて「イヴ」になったというオチまで付いた。
★★★☆

by chikurinken | 2018-06-02 07:45 | 映画

『古都』(映画)

古都(1980年・ホリプロ映画)
監督:市川崑
原作:川端康成
脚本:日高真也、市川崑
撮影:長谷川清
出演:山口百恵、實川延若、岸恵子、三浦友和、北詰友樹、沖雅也、石田信之、泉じゅん

ジャパネスクが空回り

b0189364_18420528.jpg 川端康成の小説『古都』の3度目の映画化作品。主演は山口百恵であるが、監督が市川崑であることだし、単なるアイドル映画ではあるまいと思って見たんだが、実際のところは、山口百恵以外あまり見るところはなかった。てことは、やっぱり単なるアイドル映画だったのか。
 京都が舞台で、多分にジャパネスクを前面に押し出した映画ではあるが、そういう点で感じるところはあまりない。そのあたりは3年後に同じ市川崑が撮った『細雪』と大違い。確かに味のある映像もあるんだが、なんだか少々空回りしているようなところがある。それに主人公の京言葉が変で、気持ち悪い。舞妓さんじゃないんだから「どす」の投げ売りはやめていただきたい。あるいは原作のセリフ回しかも知れないが、外部から見た(誤った)京都のイメージを体現したようで、ものすごく違和感がある。
 ストーリーについても、川端はこの小説で一体何が言いたかったのかと思うようなもので、あまり面白味がない。幼い頃捨てられた主人公が、商家でお嬢様として育てられ、そのまま(捨てられずに育てられた)双子の妹の方が苦労して貧しい生活を送っていたという、逆説的な設定がもしかしたら面白い部分なのかも知れないが、この映画からは面白味を感じないのだな、これが。
 映画については、原作にあるのか知らんが、双子の姉妹の間に同性愛的な表現があったりして、目を留めるような箇所もある。ただしこの双子は山口百恵の二役であるため、同性愛というよりナルシシズムということになるのか。なんだか摩訶不思議な感じがする。
 キャストについては、父母役の實川延若と岸恵子がなかなか好演。山口百恵も例によって存在感がある。本来の相手役であると思われる三浦友和は、これもなんだかはっきりしない、印象の薄い役。登場人物の整理が付いていないような印象さえ受けた。キャストで目を引いたのはロマンポルノで売れていた泉じゅんで、主人公の友人役で出ていた。こういう一般映画で見るのは初めてだったので少し驚きである。と思っていたんだが、調べてみると実は『それから』や『そろばんずく』にも出ていたので、きっと目にしていたはずなのである。まったく記憶が飛んでいた。なお、この泉じゅん、この映画の後、にっかつロマンポルノの『百恵の唇 愛獣』という映画に出ている。当時のにっかつ映画、「百恵」とか「聖子」とかタイトルによく使われていたが、しかし友人役として出てた泉じゅん、山口百恵に対して申し訳ないという感覚はなかったのだろうか。
★★★

参考:
竹林軒出張所『春琴抄(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『炎上(映画)』
竹林軒出張所『破戒(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
竹林軒出張所『おとうと(映画)』
竹林軒出張所『太平洋ひとりぼっち(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『野火(映画)』
竹林軒出張所『プーサン(映画)』
竹林軒出張所『幸福(映画)』

by chikurinken | 2018-05-31 07:41 | 映画

『フランケンシュタイン対地底怪獣』(映画)

フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年・東宝)
監督:本多猪四郎
脚本:馬淵薫
音楽:伊福部昭
ストーリー:ジェリー・ソウル
特技監督:円谷英二
出演:ニック・アダムス、高島忠夫、水野久美、ピーター・マン、土屋嘉男

子供だましにもなりゃしない

b0189364_22434470.jpg 「フランケンシュタイン対地底怪獣」というタイトルからもかなり怪しげであるが、内容も怪しげ……というかかなりいい加減な代物である。作りが雑で、ストーリーも行き当たりばったり。小学生が書いたストーリーか?と思わせるようなひどいシナリオである。
 ナチスが極秘に開発していた人造人間が戦時中日本の研究者に引き継がれたことから、日本の国内にその細胞が存在しており、その細胞がちょうど広島の原爆投下により大量の放射線を浴びたというのがストーリーの背景になる。この細胞が戦後、何らかの過程を経て(放射線の影響か知らないが)見るからに普通の浮浪少年になり(この間15年)、その後なぜか(不審者だからか)拘留され、数カ月だか数年だかわからないが(徐々に)巨大化して体長20メートルになってしまう。ご都合主義も甚だしいプロットである。この間、このフランケンシュタインと比較的良好な関係を築くのが放射線障害の女性研究者(水野久美)で、このあたりは『キングコング』のモチーフになる。一方で、この女性研究者の同僚の米人研究者(ニック・アダムス)が当たり前のように彼女と濃厚に接するのが、見ていて非常に居心地が悪い。アパートに呼んで接待したりして,さながら愛人であるかのようなベタベタした付き合い方だが、映画における両者の関係はあくまで同僚であり、最後までお互いに敬語で話し続ける。おそろしくアンバランスな関係が展開される。また、主人公(?)のフランケンシュタイン少年(姿形はどう見ても普通の人間)に対して、当たり前のように危険だから殺せだの、研究のために細胞だけは残してほしいだのきわめて差別的な扱いが、21世紀の今となっては相当な違和感を覚える。ともかくあちこちで演出に破綻があり、見ていると痛ましい感じさえしてくる。
 そこになぜか唐突に地底怪獣が現れ、最後はこの巨大化したフランケンシュタイン少年と対決するというわけのわからない展開になるが、この地底怪獣の部分は本当に必要なのか、フランケンシュタインだけに絞って話を展開させた方がまだマシだったんじゃないのかと感じることしきり。どうしてこういうストーリーにしたのかがさっぱりわからない。つまり発想が幼児的でご都合主義的なのである。子ども向けだからこんなもんで良いだろうと思ったのかも知れないが、子どもでも納得しないんじゃないかと思う。もっともAmazonのレビューを見ると、子ども時代にこの映画を見たという人々が高い評価をしていたんで、子供だましにはなったのかも知れぬ。
 子供だましといえば、特撮シーンもいかにも作り物的で、全然迫力を感じない。地底怪獣(バラゴン)の着ぐるみも非常にチャチ。怪獣が唐突に口から光線を吐いたりするのは子ども受けしそうなギミックだが、この怪獣、宇宙怪獣ってんならいざしらず、恐竜の生き残りという設定なのにおかしいだろと思うのは僕が汚れた大人だからか。しかも、光線を浴びせられたものは、周囲のものについては爆発したり炎上したりするのに、フランケンシュタインに浴びせられた場合は何事もなかったようにスルーされる。あちこち矛盾だらけである。フランケンシュタインの容貌もそれほど異様ではなく、似たような顔の日本人が普通に存在するというようなものである(せめて『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』のサンダやガイラぐらいになっていればまだ良かった)。そのため地底怪獣との格闘シーンも、いかにも「人間 vs 着ぐるみ」みたいに映ってしまう。いくら周りのセットを1/20サイズにしても(実際のところ何分の一かはわからないが)やはりミニチュアにしか見えない。
 キャストは割合豪華で、中村伸郎、志村喬、藤田進などがチョイ役で出たりする。黒澤映画を彷彿とさせるような(無駄な)俳優の使い方だが、黒澤の盟友、本多猪四郎が監督だからか。その割に主役を張っている方の俳優がちょっと冴えないのも、また実にバランスが悪い。
 僕が今回この映画を見たのは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』との繋がりによる。前にも書いたが、あの映画で、当然のように「フランケンシュタイン研究者」が登場したりして、どうにも前提になっている環境が存在しているように感じたため、その前に作られたフランケンシュタイン映画である本作を見てみたというわけだ。確かにこの映画の後であれば、「フランケンシュタイン研究者」がいてもそれほど違和感はないなと思う。とは言っても、だから何だという感触もある。この映画はあまりにもどうでも良い作品になっていて、個人的には消えてもらってもかまわない類の代物である。HDリマスターしたなどという話を聞くと、本当にそんな必要があったのか疑問に感じる。ともかく見終わるのが非常に苦痛な映画だった(なんでもこの映画「日米合作」ということである。とんだ日米合作だ)。


参考:
竹林軒出張所『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(映画)』
竹林軒出張所『イノさんのトランク(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『マタンゴ(映画)』
竹林軒出張所『音で怪獣を描いた男 ゴジラVS伊福部昭(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-05-29 07:43 | 映画