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竹林軒出張所

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カテゴリ:映画( 611 )

『普通の人々』(映画)

普通の人々(1980年・米)
監督:ロバート・レッドフォード
原作:ジュディス・ゲスト
脚本:アルヴィン・サージェント
出演:ドナルド・サザーランド、メアリー・タイラー・ムーア、ティモシー・ハットン、ジャド・ハーシュ、エリザベス・マクガヴァン

重厚に作り込まれたハリウッド映画

b0189364_15204906.jpg ロバート・レッドフォードの初監督作品。初監督作品にもかかわらず、この映画でロバート・レッドフォードはアカデミー賞の監督賞まで受賞している。
 それまでのハリウッド映画とは基調が異なり、終始、家族の問題が描かれる。兄が事故で死んだために精神的に不安定になった弟、コンラッド(ティモシー・ハットン)と、彼を扱いかねる母親(メアリー・タイラー・ムーア)との葛藤、それでも何とか円満な家族を維持しようと奮闘する父親(ドナルド・サザーランド)の家族関係が、このドラマの柱の部分になる。一家は中流の上という、一般的には他人にうらやまれるような環境ではあるが、皆心の中に抱えるものがあり、そこに葛藤が生まれる。
 現在では、こういった家族の問題はあちこちで取り上げられていてそれほど珍しくもないが、1980年にハリウッド映画でこれを取り上げたことは驚嘆に値する。ハリウッド映画らしい大きな事件や事故もないが、それでも心に迫るものは大きい。行き場のない不安定さが見る側にも伝わってきて、コンラッドを担当する心理療法士が、唯一の救いという感じで登場する。そのため心理療法のシーンも多く、さながら心理療法の宣伝映画のようにも見える。しかしこの心理療法のシーンが大きな見所になっているのも事実。実に見応えがあった。
 公開当時から見たかった映画で、その期待に反することのない、重厚に作り込まれた作品である。季節の移ろいが反映された自然の描写も非常に美しく映像的にも良質である。キャストの演技はどれも超一流で、中でもティモシー・ハットンは出色(この出演作でアカデミー賞助演男優賞獲得)。一見の価値がある。
第53回アカデミー作品賞、監督賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』
竹林軒出張所『天国から来たチャンピオン(映画)』

by chikurinken | 2018-09-18 07:20 | 映画

『プレイス・イン・ザ・ハート』(映画)

プレイス・イン・ザ・ハート(1984年・米)
監督:ロバート・ベントン
脚本:ロバート・ベントン
撮影:ネストール・アルメンドロス
出演:サリー・フィールド、リンゼイ・クローズ、エド・ハリス、ダニー・グローヴァー、ジョン・マルコヴィッチ、エイミー・マディガン

苦境に立ち向かう南部の未亡人

b0189364_19132290.jpg 1930年代のテキサス州の小さな街が舞台。保守的な街で、黒人に対しては差別的な扱いをしている。主人公エドナは、あるとき突然未亡人になり、それまで金銭面はすべて夫任せだったことから、途端に生活に困窮する。襲いかかってくる困難に立ち向かうため、両足で踏ん張って必死で戦い抜いていく……、そういう女性の姿が描かれる映画である。
 ストーリーがしっかりしているため原作ものかと思っていたが、監督、ロバート・ベントンのオリジナル脚本である。ロバート・ベントンという人、あまり有名な監督ではないが、『クレイマー・クレイマー』の監督と脚本を担当した人であり、『俺たちに明日はない』の脚本を書いた人でもある。『クレイマー・クレイマー』が、日常的な話であるにもかかわらず、なかなか濃密なストーリーだったことを考えると、ベントンの力量も容易に推測できる。この映画でも本領が発揮されていて、脚本が非常に秀逸である。サブプロットとして周囲の不倫問題が絡んできたりするが、本筋とはあまり関係なく進んでいく。とは言え、当時の社会状況などを描くことに繋がっており、決して無駄というわけではない。当時の社会状況といえば、激烈な黒人差別、銃社会、それから竜巻被害などであるが、こういったものにより、アメリカ南部の過酷な生活がしっかりと描写されていて、このあたりもこの映画の魅力になっている。
 この映画の一番の魅力はキャラクターで、主演のサリー・フィールド、助演のダニー・グローヴァー、ジョン・マルコヴィッチが特に良い。子役の2人(ヤンクトン・ハットンとジェニー・ジェームズ)までも好演である。この辺も脚本の妙が大きいと思う。
 この映画、公開時に見ているが、サリー・フィールドが過酷な労働を辞さずに生き抜いていたというような印象しか残っていなかったが、しかしあらためて見ると見所の多い良い映画である。なんと言っても、ラストシーンが非常に印象的で、大きな余韻を残す。
第57回アカデミー賞脚本賞、主演女優賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『俺たちに明日はない(映画)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体(本)』
竹林軒出張所『戦いすんで日が暮れて(本)』

by chikurinken | 2018-09-17 07:13 | 映画

『戦場にかける橋』(映画)

戦場にかける橋(1957年・米)
監督:デヴィッド・リーン
原作:ピエール・ブール
脚本:カール・フォアマン、マイケル・ウィルソン
出演:アレック・ギネス、ウィリアム・ホールデン、早川雪洲、ジャック・ホーキンス、ジェフリー・ホーン、ジェームズ・ドナルド、アンドレ・モレル

作りすぎがとても気になる

b0189364_20154386.jpg 太平洋戦争期、大日本帝国陸軍が運営する捕虜収容所の話。ビルマとタイを結ぶ泰緬鉄道建設の必要性に迫られた日本軍は、捕虜を使ってクウェー川(映画では「クワイ河」)に橋を架けることを計画する。このあたりまでは実話である。
 そのクワイ河に架ける橋を巡る捕虜側・収容側の人間模様、生きる意欲とそれを打ち砕く戦争の悲劇が描かれる。戦争のためにさまざまな矛盾が引きおこされていく過程が一番の見所で目玉だろうが、話ができすぎで、作りすぎのイメージが強い。ストーリーについては思わず「ないない」とツッコミを入れそうになった。当然このあたりはフィクションである。
 英国軍の将校(アレック・ギネス)が国際法を盾に日本軍の将校(早川雪洲)と対立し、意地の張り合いをするあたりが前半の大きな見所ではあるが、このあたりも演劇的で「ないよねー」と言いたくなる。あちこちに(面白いが)リアリティを欠いた場面が多く、もちろんこの頃のハリウッド映画にはつきものなんだが、それがためにせっかくの大作が台無しになるというような印象を受けるのは僕だけか。もちろん、あまりにリアリティを云々し過ぎると興が醒めるというのは良くあることで、この映画なども壮大な作り話として見れば十分楽しめるわけだ。それでもやはり気にかかるものは気にかかるのだ。それに間抜けな日本軍・優れた連合軍という構図も「コンバット」的なご都合主義に見えていただけない。シニカルで面白いストーリーの映画だとは思うが、個人的には、手放しで称賛するというレベルではない。
第30回アカデミー賞作品賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『クワイ河に虹をかけた男(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『第十七捕虜収容所(映画)』
竹林軒出張所『マダムと泥棒(映画)』
竹林軒出張所『ナバロンの要塞(映画)』
竹林軒出張所『史上最大の作戦(映画)』

by chikurinken | 2018-09-16 07:15 | 映画

『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』(映画)

ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(1942年・米)
監督:マイケル・カーティス
脚本:ロバート・バックナー、エドモンド・ジョセフ
音楽:ジョージ・M・コーハン、ハインツ・ロームヘルド
出演:ジェームズ・キャグニー、ウォルター・ヒューストン、ジョーン・レスリー、ローズマリー・デキャンプ、ジーン・キャグニー

キャグニー - ギャング = タップ

b0189364_17292764.jpg ブロードウェイの父と呼ばれるジョージ・M・コーハンの生涯を扱ったミュージカル伝記映画。と言っても、ほとんどの日本人はコーハンなんて人は知らないだろう。僕も知らなかった。まったく知らない人、関心のない人の伝記ほどつまらないものはない。ということで、この映画も、ストーリー自体はなんということはない。ましてやこのコーハン、アメリカのナショナリズムを煽って成功したような人で、まったく感情移入できない。むしろ嫌悪感を感じるくらいである。
 この映画、以前、どこかの上映会でタイトルだけ目にしたことからタイトルが記憶に残っていたのと、ギャング映画で有名な主演のジェームズ・キャグニーがミュージカルをやるという点に関心があって、今回見たのだった。キャグニーがそもそも歌を歌ったりタップを踏んだりすることがまったく想像できなかったが、この映画を見る限り、見事なもんである。この映画の主役は、元々フレッド・アステアがやる予定だったということで、実際、アステアが演じると様になるようなタップのシーンが目白押しなんだが、キャグニーも素晴らしい仕事をしている。なんでも、キャグニー、若い頃ボードビリアンだったらしく、それでこういう芸当もこなせるということらしい。彼のタップは実に見事で、非常に感心する。アステアやジーン・ケリー・クラスと言っても良い。
 ただ、ストーリー自体は、本当にどうと言うこともなく、単なるサクセス・ストーリー。しかも全編実に単純な回想形式で話が進んでいく。それに、先ほども言ったように「アメリカ万歳」のナショナリズムには辟易する。なお、タイトルの「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」は、コーハンの最初のミュージカル作品のタイトルである。ちなみに「ヤンキー・ドゥードゥル」は「アルプス一万尺」のオリジナルの歌で、アメリカの独立戦争時から歌われている歌である。「まぬけなヤンキー」という意味だそうな。
1942年アカデミー主演男優賞他受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『コンチネンタル(映画)』
竹林軒出張所『雨に唄えば(映画)』

by chikurinken | 2018-09-15 07:29 | 映画

『海街diary』(映画)

海街diary(2015年・「海街diary」製作委員会)
監督:是枝裕和
原作:吉田秋生
脚本:是枝裕和
撮影:瀧本幹也
音楽:菅野よう子
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、前田旺志郎、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、大竹しのぶ

鎌倉の夏、日本の夏

b0189364_22552751.jpg 吉田秋生原作のマンガを映画化した作品。
 原作は、鎌倉の4姉妹のホームドラマ的な話で、ややとりとめのない感じでゆったりと進行していく(竹林軒出張所『海街diary 1 蝉時雨のやむ頃(本)』を参照)。
 映画化するに当たって、このオリジナルのストーリーをどのように2時間にまとめるかはかなり難しいところで、この原作自体、かなり映画になりにくい素材であると言える。いっそのこと、原作のキャラだけを使って新しい話にしてしまうという手もあるかも知れないが、この映画に限っては、そういう手段は使わず、かなり原作の味を活かしていると言える。ただ先ほども言ったように、原作自体とりとめがないので、下手をするとテーマが見えずにストーリーがダラダラと流れてしまう作品にもなりかねないが、ストーリーやキャラクターは原作を重視しながらも、2時間のドラマとして成立させているあたりはなかなか見事である。
 テーマは、4姉妹の家族的な繋がり、それから生や死を含む人間的な繋がりというあたりだと思うが、同時に鎌倉の四季、特に夏が非常に情緒的に描かれていて味わい深い。このあたりは、4姉妹が住む家が日本家屋風のやや古い家で、梅酒をつけたり、墓参りをしたり、あるいは浴衣を着て花火をやったりというような(やや古いスタイルで)年中行事を重視した生活を送っているせいもある。『歩いても 歩いても』『ゴーイング マイ ホーム』などの是枝作品にも、似たような日本的情緒(と言っても日本人にとっては割合普通の日常であるが)が表現されていたため、このあたりは是枝作品の特徴なのかも知れない。そういう点でも、オリジナルの『海街diary』は、是枝裕和によく合った素材だったのかも知れない。
 4姉妹の配役については、原作を読んだ読者からはいろいろと異論がありそうだが(これは原作ものには必ずついてまわる宿命である)、概ね原作に即したキャラクターになっていると思う。長女(綾瀬はるか)のイメージが若干原作と違うような気もするが、十分許容範囲内である。中でも四女のすずのイメージが広瀬すずにぴったりで、原作の再現という点でも、この映画のレベルは高い。
 また、映画の『細雪』を彷彿させるような、4姉妹が並んだショットもあり、『細雪』や『阿修羅のごとく』を意識している可能性が多分にあるとも感じた。難を言えば、4姉妹と両親、それから親族との家族関係が、(話がかなり進んでから)セリフで語られるだけであるため、わかりにくかった点があるが、こちらも許容範囲と言える。ちなみにこのあたりの関係性については、原作では最初の数ページ目で説明がある。
 とは言うものの、原作からエッセンスをうまい具合に抽出して映画化できているという評価には変わりない。原作マンガの世界観をこれだけしっかり映像化できていることについては、さすがの是枝!と拍手を送りたくなるところである。
第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『海街diary 1 蝉時雨のやむ頃(本)』
竹林軒出張所『歩いても 歩いても(映画)』
竹林軒出張所『ゴーイング マイ ホーム (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ゴーイング マイ ホーム (2)〜(10)(ドラマ)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-08-29 06:55 | 映画

『あん』(映画)

あん(2015年・映画「あん」製作委員会)
監督:河瀬直美
原作:ドリアン助川
脚本:河瀬直美
出演:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、浅田美代子

問題意識は盛り込まれているが
かなり地味な映画だ


b0189364_14532028.jpg 主人公は、小さなどら焼きの店を営んでいる中年男(永瀬正敏)。この店主が出したバイト募集の張り紙に応じてやってきたのは、なんと70台の老婆(樹木希林)だった、というところから話が始まる。当初は断っていた主人だったが、この老婆が美味しいあんこを作れることから採用になり、店も繁盛してくる。ところがこの老婆、実はつらい過去を抱えていた……というようなストーリー。
 なおこの店の主人もつらい過去を抱えており、しかも店の常連の女子中学生も家でいろいろとあって、要するにいろいろ抱えた人たちが集まって、いろいろなことを織りなすという映画である。少しだけ意外性はあったが、それでもあまり逸脱することもなく、割合想定内で話は進んでいく。演出も正攻法で、面白味はあるが地味なドラマである。
 原作は、ミュージシャンのドリアン助川。ドリアン助川、最近あまり見ないが、こういう小説を書いたりしていたのかなどと思った。キャスティングとしては、樹木希林と浅田美代子が揃って出ていたのが『寺内貫太郎一家』を思い出させるが、両者が一緒に登場して絡むようなシーンはこの映画では一切なかった。
 ストーリー自体は『のんちゃんのり弁』風で(ちょっと違うかも知れない)、そこに人間の生きづらさのテイストを付け加えたという感じの映画と言ってよいか。いずれにしてもかなり地味で、ややありがちな展開の作品ではある。
第60回バリャドリード国際映画祭最優秀監督賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『のんちゃんのり弁(映画)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-08-27 07:53 | 映画

『美女と液体人間』(映画)

美女と液体人間(1958年・東宝)
監督:本多猪四郎
特技監督:円谷英二
原作:海上日出男
脚本:木村武
出演:佐原健二、白川由美、平田昭彦、土屋嘉男、千田是也、田島義文、夏木陽介、佐藤允、小沢栄太郎

それなりにまとまってはいるが
面白味は感じない


b0189364_18221042.jpg 東宝特撮の常連が名を連ねた、東宝SF特撮映画。主演の佐原健二、白川由美、平田昭彦は、前年の『地球防衛軍』に続いての登場。監督、特技監督は言うまでもなく本多猪四郎と円谷英二である。
 ストーリーは、核実験で放射能を浴びたマグロ漁船、第二龍神丸の乗員が、強い放射線の影響で液体人間になってしまい、その後東京に舞い戻ってきて、(主として悪い)人間を襲うというもの。「第二龍神丸」は当然、第五福竜丸を意識した設定だろう。ストーリー自体に大きな破綻はないが、今の時代、大の大人が見ても、あまり面白味は感じない。ただ、おどろおどろしさは全編漂い、不気味と言えば不気味であるため、子ども時代に見ていたらまた違った感想が湧いていたかも知れない。『吸血鬼ゴケミドロ』なんかも同じようなテイストの話だが、僕自身中学生時代にあれを見て、非常に恐怖を感じた記憶がある。
 演出についても、他の本多猪四郎映画と異なり、あまり破綻はなくしっかりまとまっているという印象である。ただ先ほども言ったように、決して面白いとは感じなかったのだった(かなり退屈していた)。
 主演の白川由美は、二谷英明の妻にして二谷友里恵の母であるあの「白川由美」で、僕自身は若い頃の映像は見たことがなかったため、結構新鮮であった。タイトルについている「美女」という呼び名にも決して違うことのない端正な美しさで、この映画の見所の1つになっている。
★★★

参考:
竹林軒出張所『吸血鬼ゴケミドロ(映画)』
竹林軒出張所『マタンゴ(映画)』
竹林軒出張所『ゴジラ(映画)』
竹林軒出張所『モスラ対ゴジラ(映画)』
竹林軒出張所『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦 ! 南海の大怪獣(映画)』
竹林軒出張所『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(映画)』
竹林軒出張所『フランケンシュタイン対地底怪獣(映画)』
竹林軒出張所『イノさんのトランク(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-08-25 07:21 | 映画

『シェルブールの雨傘』(映画)

シェルブールの雨傘(1963年・仏)
監督:ジャック・ドゥミ
脚本:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーヴォ、マルク・ミシェル、エレン・ファルナー、アンヌ・ヴェルノン

人生ってそんなもんだ……

b0189364_20415888.jpg ジャック・ドゥミ、ミシェル・ルグラン・コンビのミュージカル映画。『天使の入江』『ロシュフォールの恋人たち』の間に作られたのがこの映画で、ドゥミとルグランの代表作である。
 この映画、ほとんどすべてのセリフが歌仕立てになっていて、ミュージカルというより、どちらかと言うとオペラに近い。最初はこういう形式に多少違和感を感じるが、見ているうちに慣れるし、慣れたらなんということはない。そういう意味でもオペラみたいな感じである。
 この映画、これまで見逃していた名画のうちの1本で、今回満を持してという感じで見た。期待がかなり高かっただけに少々拍子抜けの感じがなきにしもあらずだが、完成度の高い非常によくできた映画ではあると思う。少し変わったアングルから地面を撮影している冒頭の雨のシーンも味があり、ユニークさを感じる。
 ストーリー自体は、それほど大きな波乱が起こるわけでもなく、ごく日常的な風景が進行していく。男女の出会いや別れがモチーフの恋愛映画だが、恋愛云々というより市井の人々の人生模様みたいな要素が強いように思う。見終わって「人生ってそんなもんだ」などと思ってしまう。
 なお、登場人物が歌っている部分は、ことごとく歌手による吹き替えらしい。主演のカトリーヌ・ドヌーヴの歌はすべて、「ふたりの天使」でお馴染みのダニエル・リカーリが歌っている。メロウな主題曲が特に有名で、この曲だけが独立してあちこちで歌われている。ミシェル・ルグランの代表作である。
第17回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『天使の入江(映画)』
竹林軒出張所『ロシュフォールの恋人たち(映画)』
竹林軒出張所『ローラ(映画)』
竹林軒出張所『ロバと王女(映画)』
竹林軒出張所『ロワール渓谷の木靴職人(映画)』

by chikurinken | 2018-07-28 07:41 | 映画

『ニュールンベルグ裁判』(映画)

ニュールンベルグ裁判(1961年・米)
監督:スタンリー・クレイマー
原作:アビー・マン
脚本:アビー・マン
出演:スペンサー・トレイシー、バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、モンゴメリー・クリフト、マクシミリアン・シェル、マレーネ・ディートリッヒ、ジュディ・ガーランド

歴史に名高いいわゆる「ニュルンベルク裁判」
ではない


b0189364_19162254.jpg 名画だということもあって以前この映画を一度見てはいるが、バート・ランカスターの落ち着いた演技以外あまり記憶に残っていない。てっきり1945年の(ナチス政権の幹部を裁いた)いわゆる「ニュルンベルク裁判」を扱っている映画だと思っていたが、映画の中の裁判の途中で1948年のベルリン封鎖が出てくるため、あの「ニュルンベルク裁判」ではないことに途中で気付いた。過去一度見ているので、もっと早く気付いてもおかしくないのだが、うかつにも気付かなかった。そもそも被告が、法律関係者(元法務大臣とか裁判官とか)のみであるため、あちらと異なるのは明らかななんだが、ボーッと見ていたためか以前は気付かないまま終わってしまったのだった(チコちゃんに「ボーっと見てんじゃねーよ!」と怒られそうだが)。そういうわけで、強いて言うなら「ニュルンベルク継続裁判」の1つがこの映画のオリジナルの舞台ということになる。ただし、実際のところ、この映画のストーリーはほぼフィクションのようである。その割には細かい部分が非常によく考え抜かれていてよくできており、その点は感心する。てっきり、これもドラマ版の『東京裁判』みたいに基になった話があるのかと思っていた。
 映画では、この裁判の首席判事としてアメリカから呼ばれてきた田舎判事(スペンサー・トレイシー)が、ニュルンベルグに入り、裁判に関わって、その後ニュルンベルグを去るまでが描かれる。セリフ中心でストーリーが進められるため、会話劇のような内容である。舞台はほとんど法廷である。法廷では緊迫感が漂うやりとりが行われ、そういう点でも実にアメリカ映画らしい法廷劇と言える。
 元々は90分のドラマだったらしいが、これを倍の3時間に延ばして映画にしたのが、この作品ということらしい。だがさすがに3時間は長く、途中かなり眠くなった。キャストは割合豪華で、モンゴメリー・クリフトやジュディ・ガーランドが、法廷に呼び出される証人役で登場する。2人とも風貌が、他の映画のイメージと大分違っていたため最後まで気が付かなかった。またマレーネ・ディートリッヒが軍人の妻として登場する。ディートリヒは、戦後すぐのドイツが舞台の『異国の出来事』でも、同じような存在感のある役回りを演じていて、それと重なるキャラクターである。途中、街の中から「リリー・マルレーン」が流れるシーンも多分にディートリヒを意識した演出なのかも知れない。
 この軍事裁判については、勝者による一方的な政治的裁判という見方が貫かれており、また独裁政権下で人はどう振る舞うべきかというような問いかけも終始行われるなど、問題意識が高い作品である。そのためにエンタテインメント的な要素がやや少ない。そのせいで映画の長さが余計堪えることになる。何度かに分けて見る方が良かったかも知れないなどと、見終わった今になって考えている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ドラマ 東京裁判 (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『招かれざる客(映画)』
竹林軒出張所『老人と海(映画)』
竹林軒出張所『山猫(映画)』
竹林軒出張所『間諜X27(映画)』

by chikurinken | 2018-07-26 07:15 | 映画

『OK牧場の決斗』(映画)

OK牧場の決斗(1957年・米)
監督:ジョン・スタージェス
原案:ジョージ・スカリン
脚本:レオン・ウーリス
出演:バート・ランカスター、カーク・ダグラス、ロンダ・フレミング、ジョー・ヴァン・フリート、ジョン・アイアランド

事実は映画よりも陳腐

b0189364_18523037.jpg 1881年にアリゾナ州トゥームストーンで起こった、O.K.コラルの銃撃戦を映画化した作品。原題は『Gunfight at the O.K. Corral』で、まさしく「O.K.コラルの銃撃戦」。ただし「コラル」などという言葉が日本人には分かりにくいということで、「OK牧場」という名前が使われたというのが真相のようである(ウィキペディア情報)。
 この銃撃戦自体は、それ以前(1946年)にジョン・フォードが『荒野の決闘』で扱っており、1964年の『シャイアン』にも一部取り上げられている。保安官のワイアット・アープとその兄弟、それからドク・ホリデイが、無法者のクラントン兄弟と銃撃戦を繰り広げるというのが大まかなストーリーで、基本的な扱われ方は同じである。細かい部分は、こちらの映画の方が実話に近いらしい(どうでも良いことだと思うが)。
 この映画では、アープ(バート・ランカスター)とホリデイ(カーク・ダグラス)の友情が話の中心になる。それぞれ恋人がいて、そのあたりの人間関係は『荒野の決闘』とよく似ている。当然、最後の銃撃戦がハイライトで、そこに至るまでの過程がストーリーとして描かれるわけだが、『荒野の決闘』ほどの魅力はこの映画には感じなかった。アクション西部劇の範疇を出ないというイメージで、エンタテイメントの映画と割り切って見るべき映画と言える。それなりに面白いが、あまり心に残るようなものはなかった。これも「有名な映画を見た」という事実がものを言う映画と言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『荒野の決闘(映画)』
竹林軒出張所『シャイアン(映画)』

by chikurinken | 2018-07-24 07:52 | 映画