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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドキュメンタリー( 514 )

『プーチンが恐れた男』(ドキュメンタリー)

プーチンが恐れた男(2015年・スイスp.s. 72 productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

本当にプーチンが恐れる存在になるか

b0189364_19235559.jpg 日本語タイトルは「プーチンが恐れた男」というタイトルになっているが、別にプーチンが恐れたわけではない。現に原題は「Citizen Khodorkovsky(市民ホドルコフスキー)」である。ホドルコフスキーとは、このドキュメンタリーの主人公。ソ連が崩壊してロシア経済が乱れていた頃、ロシアの資源である石油に目をつけ大儲けした男である。青年実業家として有名になったが、脱税などの罪によりプーチン政権に告発、逮捕され、10年もの間、シベリアの刑務所に収監されていた。脱税については、本当にやったかどうかわからないが、彼の存在がプーチンの気に障ったのは確かだろう。プーチンのお気に入りだったらどんな悪辣なことをやっても逮捕されないのが今のロシアという国である。
 収監された後いつ娑婆に戻れるかは不確実だったが、ソチ五輪による恩赦が出て、数年前に解放された。そのままドイツ経由でスイスに逃れ、現在はスイスで生活している。いずれはプーチンに復讐を遂げようと考えているかどうかはわからないが、政治に対する野心はあるようなないような。比較的民主的な指向を持っている人のようなのでこの人が大統領になればプーチンよりはるかにマシなようには見えるが、政敵になるとプーチンに消されかねない。ロシアの政治は恐ろしい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『プーチンの道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-02-11 07:23 | ドキュメンタリー

『時間が止まった私』(ドキュメンタリー)

時間が止まった私 えん罪が奪った7352日(2017年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

冤罪による犠牲の実際

b0189364_17272614.jpg 1995年、大阪の住宅街で火災が起こり、出火元の家で逃げ遅れた女児が死んだ。その後警察の捜査で、母親が保険金目当てで娘を殺したとされ、その母親は無期懲役で収監される。だが事件発生から20年後この母親の冤罪が判明し、釈放されることになる。しかしその20年は、彼女にとって30〜40歳台の貴重な時間であり、なおかつ息子とも離れ離れ、父母とも精神的に離れてしまう(収監中、父が再三彼女に罪を認めろと迫ったためである)。誤認逮捕が奪った時間は、一人の人生にとって決して軽くないのであった。
 このドキュメンタリーでは、誤認逮捕され人生を奪われたこの青木惠子さんの解放(出所)後の混迷の人生を追う。家族と引き離されて収監されることが人の人生にどれほどの影響を及ぼすか、あらためて知らしめられる。また警察、検察が展開した杜撰な捜査にも憤りを覚える。(本当の犯人が誰であるかに関係なく)誰かが犯人として収監されたらそれで良いという彼らの姿勢が見えるようである。実際、世間には冤罪がごまんとあると聞くし、そういう意味ではこのケースは無罪判決が出たため、まだましだったとも言える。日本国には、憲法云々より司法改革の方がまず第一に必要ではないかと思えるが如何であろうか。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『検事のふろしき(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『私は屈しない 特捜検察と戦った女性官僚と家族の465日(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-02-10 07:27 | ドキュメンタリー

『デナリ大滑降 究極の山岳スキー』(ドキュメンタリー)

デナリ大滑降 究極の山岳スキー(2017年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

映像技術の進歩に驚嘆

b0189364_18335152.jpg タイトルになっている「デナリ」とは、かつてのマッキンリー。北米最高峰にして、かの植村直己が命を落とした山である。その植村直己の影響を受けて登山家になった佐々木大輔という人が、この山に登りそこから南西壁をスキーで下って降りてくるという冒険をした。その冒険の様子を記録したのがこのドキュメンタリー。
 元々は50分枠のNHKスペシャルで放送されたもの(NHKスペシャル『極北の冒険 デナリ大滑降』)だが、このBS1で放送されたものは2時間枠(正味100分)で放送された「完全版」である。完全版であるためか若干間延びした部分があるが、最後の大滑降のシーンは、映像史上に残るようなすばらしい映像である。佐々木自身の頭部に搭載したミニカメラ、スキー板に搭載したミニカメラ、それからドローンを使用したかどうだかわからないが空中からの映像、別の同行者によるハンディカメラの映像など、さまざまな映像を集約した大滑降映像の臨場感は、現場に同行しているかのような錯覚すら抱く。少し前の時代でも比較的大きめのカメラが必要だったわけで、こういった映像を撮るのはまず不可能だった。それを考えると、映像技術の進歩に驚く。
b0189364_18333651.jpg NHKも資金面などでこの冒険をサポートしているんだろうが(そうでなければ冒険者自身がこれだけ映像協力しないだろう)、少なくともこれだけの映像を撮ることができれば十分元が取れていると思う。ただこの冒険者が万一遭難した場合、責任問題などに発展するなどということはないんだろうか。考えようによっては、自社のソフトのために無茶な仕事をさせているという見方もできるわけだし、そういった馬鹿げた批判をする人間が多い昨今である。基本的には冒険者側から持ちかけたものだと思うし、冒険家というのはそういうものなので問題にすることはないんだろうが、そういうこともつらつら考えてしまった。とは言え、映像だけをとってもこれはもう貴重であり、まったく申し分ない作品である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ヒマラヤ8000m峰 全山登頂に挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドキュメンタリー3本』「エベレスト 〜世界最高峰を撮る〜」
竹林軒出張所『手足をなくしても 〜ある登山家の挑戦〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『外道クライマー(本)』

by chikurinken | 2018-02-09 07:31 | ドキュメンタリー

『仲代達矢 命と向き合う』(ドキュメンタリー)

仲代達矢 命と向き合う(2017年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

仲代達矢84歳、いまだ現役

b0189364_17181752.jpg 仲代達矢、84歳。新作映画の主演もやり、新作演劇でも主演を務めるなど、いまだ活動的と思っていたが、実は満身創痍であることがこのドキュメンタリーからわかる。
 無名塾による新作演劇『肝っ玉おっ母と子供たち』(ブレヒト原作)の上演準備で忙しい仲代に密着するというのがこのドキュメンタリーの中心になるんだが、舞台稽古中に酸素吸入するわ腰を痛めるわ足がつるわで、稽古段階から大変。仲代本人は今回が最後の主演と語っているが、それも合点が行く。映画はともかく舞台はこれ以上は無理だろうと感じる。
 この『肝っ玉おっ母』だが、仲代の妻の宮崎恭子が生前演出を手がけた作品で、今回も宮崎の演出を踏襲するらしい。宮崎を盟友と語る仲代らしい扱いである。このドキュメンタリーにも生前の宮崎と仲代の様子が出てくるが、そういう様子は確かに窺われる。
 また、この作品自体反戦的な要素があり、それは悲惨な戦争を経験した仲代達矢自身の思いに繋がる。そのあたりがこのドキュメンタリーの肝の部分である。仲代がこのドキュメンタリーの中で語る戦争体験も非常に凄惨で、彼が戦争に対してどういう思いを抱いているかよく伝わってくる。
 基本的に仲代達矢の魅力で成立しているドキュメンタリーだが、舞台の様子も披露されてなかなか興味深い内容に仕上がっていた。なんと言っても初演した能登演劇堂(仲代と宮崎が設計に関わっている)で、屋外から舞台に入ってくるという冒頭シーンには驚いた。この舞台は一度ちゃんとした形で見てみたいものだと感じたが、公演はすでに終了していたのだった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『役者なんかおやめなさい(本)』
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』
竹林軒出張所『切腹(映画)』
竹林軒出張所『肉弾(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『他人の顔(映画)』
竹林軒出張所『殺人狂時代(映画)』
竹林軒出張所『華麗なる一族(映画)』
竹林軒出張所『金環蝕(映画)』
竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『姿三四郎(映画)』
竹林軒出張所『二百三高地(映画)』
竹林軒出張所『上意討ち 拝領妻始末(映画)』

by chikurinken | 2018-02-08 07:17 | ドキュメンタリー

『イノさんのトランク』(ドキュメンタリー)

イノさんのトランク 黒澤明と本多猪四郎 知られざる絆
(2012年・NHK)
NHK-BSプレミアム

本多猪四郎への挽歌

b0189364_18340192.jpg 『七人の侍』の監督、黒澤明と、『ゴジラ』の監督、本多猪四郎がきわめて仲が良かったということを紹介するドキュメンタリー。
 この2人、東宝の同期の助監督であり、助監督時代から親しく付き合っていた。ただその後、本多猪四郎が6年間従軍したため、黒澤の方が先に映画監督デビューを果たす。本多が戦後復員したときには、監督の口はもはやないということで退社も促されたらしいが、その後、運良く監督に昇格でき、しかも作品もヒットしたため、ドル箱監督になっていく。また東宝の新路線である特撮映画にも関わるようになるが、その後、定年で東宝を退社した。このように本多猪四郎については、どちらかというとサラリーマン監督のイメージがあるが、人間的には温厚で懐の深い人だったという。
 黒澤明との関わりは、従軍中に手紙をやりとりしたり(黒澤からは便せん23枚に渡る手紙が届いている)、若い頃お互いに励まし合ったりした間柄で、本多の妻である本多きみも、黒澤とは若い頃から同僚だったこともあり親しかった。このドキュメンタリーは、おそらく本多きみの著書である『ゴジラのトランク』が基になっていると考えられるが、早い話が黒澤明と本多猪四郎の友情物語である。
 映画ファンにとっては興味深い内容もあるかも知れないが、割合平凡な内容で、「だからどうした」という印象もなきにしもあらず。ただ黒澤晩年の映画に、本多猪四郎が助監督として付いていることがやけにあって「監督として名のある人がなぜ助監督?」と感じていただけにそのあたりのいきさつがわかったのは収穫と言えるか。要するに黒澤が、すでに引退していた懇意の本多に映画製作を手伝ってもらったというのが真相だということで、とは言え実際に、わがままな黒澤と周りのスタッフ、キャストとの間を積極的に取り持つなど大きな働きをしていたようだ。このドキュメンタリーは、本多猪四郎の仕事を再評価する挽歌と言えるかも知れない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ゴジラ(映画)』
竹林軒出張所『モスラ対ゴジラ(映画)』
竹林軒出張所『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(映画)』
竹林軒出張所『マタンゴ(映画)』
竹林軒出張所『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦 ! 南海の大怪獣(映画)』

by chikurinken | 2018-02-07 07:33 | ドキュメンタリー

『365日のシンプルライフ』(ドキュメンタリー)

365日のシンプルライフ(2013年・フィンランドUnikino)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ペトリの脱モノ日記

b0189364_20205940.jpg 周りにモノが多すぎる、それも不要なモノが、というのは現代人共通の感覚。捨てるに捨てられないものや、そもそも捨てる手続きが煩雑でなかなか簡単に捨てるわけにも行かない。少なくとも身の周りのモノのうち、半分以上は要らないんではないかとは思っているが、なかなか処分に踏み切れないでいる。
 そういう中で、同じように周りにモノがあふれて嫌気がさした、ペトリという名のフィンランド人(このドキュメンタリーの製作者)が面白い実験をした。自分の持ち物をすべてレンタル倉庫に預け、1年間に渡って1日に1品ずつ取り出し、何が本当に自分にとって必要か見極めるという実験である。
 1日目は本当に着るものすらなく、前を隠して素っ裸で(路上を通って)倉庫まで走っていくというところから始まる。途中ゴミ箱から拾った古新聞で前と後ろを隠すということはやった。1日目に獲得したモノはコートで、その日はこのコートにくるまって寝ることになった。
 その後、靴、シャツ、マットレスなどを手に入れる。当初は「モノが1つ増えるたびに生活レベルが上がる」と語っていたが、10日過ぎた頃からあまり倉庫に行かなくなる。その後は倉庫に行く頻度がめっきり少なくなり、何日かブランクが空いた後それまでの何日分かのモノをまとめて持ち出すような状態になる。結局必要なもの(カーテン、バッグ、自転車など)は100日ですべて揃うし、生活に潤いを与えるような贅沢品は200日ですべて揃うという結果になる。なかなか感心させられる「大いなる実験」であった。
 映像は、ペトリの自撮り映像が多く、祖母の入院や恋人との出会いと別れなど個人的な事情も描き出され、私小説的なプライベート映像になっている。テンポが良く、演出もうまいため、ドキュメンタリーというより映画に近い。ミニシアターで劇場公開されてもおかしくないくらいの秀作である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『パソコンを置いて森で暮らそう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『廃棄家電の悲しき行く末(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-01-23 07:19 | ドキュメンタリー

『反骨の外科医』(ドキュメンタリー)

反骨の外科医
(2016年・スウェーデンFasad Cine)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

エチオピアの地域医療に医療の本質を見た

b0189364_20213953.jpg スウェーデン人の医師、エリクセンは、スウェーデンの官僚的な医療に不満を持ち、エチオピアに赴任して、地域医療に携わっている。
 患者は入れ替わり立ち替わりやって来て、中には身体が異常に腫れたりなどの珍しい症例を持つ人たちもいて、それを次々に捌きながら同僚の医師や看護師に割り当てて指示を出していく。外科手術もどしどし行っているが、何しろ先進国のように物品が揃っていないため、ありあわせの道具、たとえば自転車のスポークや電動ドライバーなどを駆使して代用している。エリクセン医師は、エチオピア出身の看護師の妻と一緒に病院を切り盛りしており、非常に充実した日々を送っている。これこそが医療の原点だというわけである。
 彼によるとスウェーデンの病院では、書類書きなどの雑務ばかりで、医療行為にはろくろく携われず、医師たちもみんなうんざりしている。まるで官僚の仕事だと言う。その点、物資は乏しくとも、医療に携わっているという充実感を伴うエチオピアが肌に合っているということなのだろう。何より、身体が治った元患者がやって来て感謝してくれることが一番の喜びだそうだ。
 そんな彼も、やがて派遣任期の10年が終わり、スウェーデンに帰国することになる。スウェーデンの医療界に復帰することには嫌気がさし、結局医療現場から身を引くことになった。こうして先進国の官僚主義によって、僻地で必要とされる医師が一人、姿を消すことになったのだった。地域医療や医療のあり方についていろいろ考えさせられるドキュメンタリーである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『島の命を見つめて 豊島の看護師・うたさん(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ディア・ドクター(映画)』

by chikurinken | 2018-01-22 07:20 | ドキュメンタリー

『映像の世紀プレミアム 第7集』(ドキュメンタリー)

映像の世紀プレミアム 第7集 極限への挑戦者たち(2017年・NHK)
NHK-BS1 NHK-BSプレミアム

やっと新しい素材が出てきた

b0189364_09095827.jpg 『映像の世紀』スピンオフの第7弾。この第7集では、冒険家や革新者たちを取り上げ、その時代背景もあわせて紹介する。登場するのはマロリー(エベレスト初登頂を目指した冒険家)、ピカール(深海探査)、オーエンス(ベルリン・オリンピックの黒人ランナー)、円谷幸吉(東京オリンピックのマラソン選手で銅メダリスト)と君原健二(メキシコ・オリンピックの銀メダリスト)、ユーリ・ガガーリンとアームストロング(米ソの宇宙飛行士)など。
 今回の放送は、今までのシリーズで放送されなかった映像が多かったこともあり、十分楽しめた。目玉は宇宙開発競争の映像だと思うが、かなり充実しており、見所は多かったと思う。ただ、オーエンス、円谷、君原らのスポーツ選手については、第4集で取り上げるべき素材のような気もするが……。これだけ、細かい部分をピックアップするのなら、いっそのことオリンピックはオリンピックで、サッカーはサッカーでというふうに切り取るべきではないかとも感じる。まあ雑多であっても珍しい映像であれば歓迎するところではある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第1集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第2集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第4集(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-01-21 09:10 | ドキュメンタリー

『カラーでよみがえるアメリカ 3、4、5』(ドキュメンタリー)

カラーでよみがえるアメリカ 1940年代1950年代1960年代
(2017年・米SNI / SI Networks / Arrow International Media)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

「カラー化」がやっぱり目玉!

b0189364_10045466.jpg 『カラーでよみがえるアメリカ』シリーズの1940年代、1950年代、1960年代。
 構成や演出方法は、当然ながら1920年代、1930年代と同じ。したがってどのような出来事が取り上げられるかというのが争点になる。
 1940年代は、4選したルーズベルト大統領の政策と第二次大戦が柱になる。日系米人の隔離強制移住というアメリカ史の恥部も紹介される。お馴染みの真珠湾攻撃の映像もカラー化されているが、映像自体はあまり目新しい映像ではない。何より一番感じたのは、アメリカ人の海外情勢に対する無関心さと無知さで、戦前の日本国内の状態とは大分違うという印象を受ける。基本的にアメリカ人は、他人のことなどどうでも良く自分たちのことだけ考える人々なのかと感じてしまう。それを思うと昨今の「アメリカ・ファースト」というスローガンもまったく目新しいことではないことがわかる。
 1950年代は、ベビーブームに続き、家電や自動車、住宅が普及するという成長の時代になる。一方で赤狩り、核の恐怖による不安の時代が始まる。また不人気のトルーマン大統領が、人気者のマッカーサー元帥を解任するなどの話題が取り上げられる(マッカーサーは「中国に原爆を落とせ」などと言っていたので解任は当然だと思われるが)。またエルヴィス・プレスリーが登場したのも50年代。南部での黒人差別の実態も広く報道され、全国的に知られるようになってくる。
b0189364_10045837.jpg 次の1960年代は、若き大統領ケネディの登場と暗殺、キューバ危機、公民権運動、アポロ計画、ベトナム戦争、反戦運動が中心になる。公民権運動では、フリーダム・ライダーズの運動、ワシントン大行進などが紹介されるが、多くの映像はこれまで見たことがあるもので、カラー化されたとは言え、目新しさはない。結局のところ、この番組の目玉は「カラー化」であったということを思い知らされる。したがってカラー映像を楽しめばそれで良いんだろうが、それ以上のものを期待してしまうところが畜生の浅ましさ。いずれにしろ、映像的にはそれなりに楽しめたドキュメンタリー・シリーズであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえるアメリカ 1、2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第5集〜第8集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第9集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(1)〜(4)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(5)〜(7)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『キング牧師とワシントン大行進(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体(本)』

by chikurinken | 2018-01-20 10:05 | ドキュメンタリー

『カラーでよみがえるアメリカ 1、2』(ドキュメンタリー)

カラーでよみがえるアメリカ 1920年代1930年代
(2017年・米SNI / SI Networks / Arrow International Media)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

現代アメリカ史のカラー映像

b0189364_20042059.jpg 『カラーでよみがえる第一次世界大戦』『ヒトラー 権力掌握への道』『カラーでよみがえる東京』と同じような企画で、要するに過去のモノクロ映像をカラー化して、現代的なリアリティを持たせようという試みである。今回カラー化されたのは、20世紀のアメリカ合衆国の映像。20世紀はアメリカの世紀であり、しかもアメリカの場合、かなり初期からモノクロ映像が大量に残されていることを考えると、登場するべくして登場した企画と言って良かろう。
 豊富な映像が残っているせいか、1920年代から60年代まで、10年単位で5回シリーズに分けられている。さすが大国アメリカ。1970年代以降はカラー映像が日常的に現れてきたため、60年代までで区切るというのは良い選択かも知れない。
 さて1920年代は、自動車が普及して、摩天楼も並び立ち、アメリカが好景気に沸いた時代。ところが1929年10月にウォール街で株式が大暴落して、そのバブルが一挙に崩壊するという過程を辿る。この間の様子を、カラー化したモノクロ映像で再現する。画像は非常に美しく、禁酒法の時代やバブルの時代がリアルに浮かび上がってくる。b0189364_20042479.jpg1930年代は、恐慌時の映像からルーズベルトのニューディール政策へと流れる。またオーソン・ウェルズの『宇宙戦争』(ラジオ・ドラマであまりにリアルな演出をしたため、多くのリスナーが本物だと信じて、全米に大混乱が起こった事件)や『オズの魔法使い』の製作現場など、文化的な部分の映像も紹介されている。ひときわ印象的だったのが、30年代に米中部で発生したダストボール(巨大な砂埃の塊)の映像で、これはカラー化することで大いに迫力を増した好例である。
 映像を見ているだけでも面白いが、ただしモノクロ映像としてよく目にしたような映像も結構あり、「カラー」という以外の新鮮さはあまりない。しかも(一定のテーマ性はあるにはあるが)基本的に時系列で並べていくだけのアプローチであり、編集もきわめてオーソドックスであるため、NHKがかつて製作した『映像の世紀』シリーズのような面白味は感じなかった。見せ方にもう一工夫が欲しかったところである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえるアメリカ 3、4、5(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる第一次世界大戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヒトラー 権力掌握への道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでみる太平洋戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーで見る 独裁者スターリン(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『よみがえる“ワルシャワ蜂起”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『色づくQ』
竹林軒出張所『地獄門 デジタル・リマスター版(映画)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第1集〜第4集(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-01-19 07:24 | ドキュメンタリー