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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドキュメンタリー( 589 )

『熱中コマ世界大戦』(ドキュメンタリー)

熱中コマ世界大戦(2015年・東海テレビ)
ナレーション:天野鎮雄

ますます「ロボコン」化してきた

b0189364_23084847.jpg 2012年に始まった「全日本製造業コマ大戦」は、この年第3回目を迎え、ついに世界大会まで始まった。その名も「世界コマ大戦」。アメリカ、韓国、タイ、インドネシア、ベトナム、ボリビアの6か国11チームが参加し、日本の地方予選を勝ち抜いたチームと共に覇を競うことになった。ただ、このあたりの流れもロボコン同様で、想定内ではある。
 今回のドキュメンタリーは、『熱中コマ大戦 全国町工場奮闘記』の続編という位置付けで、前回のドキュメンタリーに登場した参加者も登場。中でも一番面白かったのが、前回、反則すれすれの異色のコマを作った参加者「カジミツ」が、さらに異色の反則すれすれの電動コマで参戦してきたことである。このカジミツの奮闘ぶりはとても楽しめたが、しかしそれにしても電動はいかんのではないかと個人的には感じる。おそらくこの大会の後、ルールがまた変わってくるのではないかと思うが、電気を使うとなるといつまでも回転し続けることもありうるわけで、初期のコマの製造技術というコンセプトから外れる気がする。
 とは言え、こういったニッチな部分を突いてくるこのカジミツについては、大変興味深いところである。同時に前回の主人公である「シオン」も、苦戦はするが今回も登場。このドキュメンタリー、ますますロボコン風にはなってきたが、参加者の背景が興味深いために、番組に奥行きができている。そのあたりが一番の魅力と言える。今回はインドネシアの参加者「サントソテクニンド」の背景にも迫っていてこちらも見所であった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『熱中コマ大戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『藤井聡太 14才(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護士(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『裁判長のお弁当(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-03-18 07:08 | ドキュメンタリー

『熱中コマ大戦』(ドキュメンタリー)

熱中コマ大戦 〜全国町工場奮闘記〜
(2013年・東海テレビ)
ナレーション:天野鎮雄

オヤジのための「ロボコン」

b0189364_17230983.jpg 全国の製造業者が集まって企画したコマまわし大会、その名も「全日本製造業コマ大戦」と言うんだが、その東海地区予選を追うドキュメンタリー。製作は東海テレビ。
 似たような企画に「ロボットコンテスト」(通称「ロボコン」)がある。ロボコンは、高専や大学がもの作りのアイデアと技術力を競って、対戦形式で覇を競うというものであるが、この「コマ大戦」も同様のコンセプトで、参加者が町工場などの製造業者であるという点、手回しゴマで対戦するという点が特徴である。言わば、町工場バージョンのロボコンといったところである。
 ロボコンについては、その参加者たちのもの作りから本番の対戦まで追いかけるという番組をNHKが放送しているため、この『熱中コマ大戦』についても概ね似たような番組ではないかと、見る前から想像できる。実際その通りで、親会社の無理な要求や不況のために瀕死だったが何とか再生を果たした町工場が、コマ作りを通じて自らのもの作りの高い能力を発揮して存在価値を示すんだが、その過程を映像で追っていくわけである。
b0189364_17231333.jpg コマ大戦のルールは、直径2センチ以下、全長6センチ以内のケンカゴマを、直径25センチの擂り鉢状の土俵内で回し、長く土俵内に残った方が勝ちという実に単純なもの。一般的には、よく回り、しかも相手のコマに当たったときはこれを跳ね返すようなタイプのコマが作られ、その精度や強度を高めるという方向性でブラッシュアップされるわけだが、中には横向きになった状態で回りながら、とりあえず敵ゴマを弾き飛ばすことだけに専念するというような異色の悪役コマが出てきたりして、大戦を盛り上げる(ちなみにこのコマ、その後ルール改定の結果、禁止になった)。
 こういったユニークな参加者が登場した中部大会、そしてその後の全国大会の模様を追ったのがこの作品で、ロボコンでお馴染みの想定内の展開ではあったが、内容は結構面白く、見ていてつい夢中になってしまった。この番組を少しばかり侮り過ぎていたと感じる。やはり東海テレビが関わってくるとこのくらいの水準のものができるということなのか。コマ大戦参加者だけでなく、東海テレビのもの作りの力も思い知らされた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『熱中コマ世界大戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『藤井聡太 14才(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護士(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『裁判長のお弁当(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-03-16 07:22 | ドキュメンタリー

『映像詩 フランスの田園』(ドキュメンタリー)

映像詩 フランスの田園
(2017年・仏Bienvenue! Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

単なる「映像詩」ではないドキュメンタリー
人の営みと自然環境の共存が可能かを問う


b0189364_17161020.jpg フランスのとある田園地域の風景を長期に渡って記録したドキュメンタリー。
 生産手段として田園を利用する人々とそこに住む動物たちとの関わりを中心に描く自然ドキュメンタリーで、邦題の『映像詩』というのはあまり適切ではない。人が使う農薬や毒物が昆虫や動物たちの生命、ひいてはそれを取り巻く環境全体を破壊していることを静かに告発する作品であり、環境に優しい農業を推奨するような雰囲気が全編に漂う。映像は非常に美しく、確かに「映像詩」的な要素はあるが、そういう映像的な側面を邦題で強調するのはどうよと思う。原題も「War and Peace in the Countryside」で、内容を反映するものになっているのに、毎度のことながら、翻訳レベルでどうしてこういった改変をやってしまうかなと感じる。
 それはともかく、内容は非常によくできていて、小動物や昆虫の生態をミクロ的に撮影している上、闖入者としての人の存在も彼らの視点から描かれていて大変興味深い。たとえ農地であっても、大地は生態系の一定のバランスで成立しているのだから、特定の昆虫を殺すためだけに化学物質をばらまくのは間違いであるということが控え目に訴えられる。b0189364_17161418.jpg実際のところ、特定の昆虫(害虫)を殺すために化学物質をばらまくと、他の昆虫(益虫)や動物(益鳥)もあわせて殺してしまうため、少しだけ長い目で見ると農地にとっても決してプラスではない。むしろ生態系のバランスを維持する方向で農業を行うべき……とするのがこの作品の主張である。本編では他にも有機農業や天敵昆虫を使った害虫駆除の実例も紹介されているため、製作者の主張もストレートに伝わってくる。
 実に静かな主張だが、美しい田園風景の映像の中で、環境破壊をせず自然環境に根ざした農業ができないものか(できるはずだ)というしっかりした主張が貫かれた作品で、大きな説得力を持つ秀作ドキュメンタリーである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ハチはなぜ大量死したのか(本)』
竹林軒出張所『土の文明史(本)』
竹林軒出張所『ミツバチの会議(本)』
竹林軒出張所『欲望の植物誌 人をあやつる4つの植物(本)』

by chikurinken | 2019-03-14 07:15 | ドキュメンタリー

『私は左手のピアニスト』(ドキュメンタリー)

私は左手のピアニスト
〜希望の響き 世界初のコンクール〜

(2019年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

変わったコンクールだが
「コンクールもの」としては平凡


b0189364_15083112.jpg 昨年、大阪の箕面で「左手のピアノ国際コンクール」という左手ピアノの曲に限定した世界初のコンクールが開催された。そのコンクールに密着するドキュメンタリー。
 コンクールはプロフェッショナル部門とアマチュア部門の2つに分かれており、番組は、それぞれに参加する何人かの参加者を追うというよくあるパターンで展開する。多くの参加者は右手に何らかの問題を抱えている人たちで、脳卒中や難病のために右手がうまく動かなくなった人(特にアマチュア部門の参加者に多い)の他、元々プロの(あるいはプロを目指している)ピアニストが、局所性ジストニアという症状(演奏家によく見られる病気で、演奏中に自由に指が動かなくなる症例らしい)のために右手が思うように動かなくなった人などが参加した。前者については一般人よりハンデを負っている人が多いため、演奏が拙くても非常に感動的なんだが、この番組のメインはプロフェッショナル部門である。彼らは確かに演奏家を目指しているにもかかわらず右手が以前のように動かなくなっているため、それはそれで大変なんだろうが、多くのプロ(または予備軍)の人たちは日常生活には支障がないようだし、見ていてあまり感じるところはない。したがって人のバックグラウンドとして考える場合、他の「コンクールもの」と比べて特段違いがあるわけではなく、それほど面白味は感じなかった。ただ左手ピアノのための曲が結構あるというのが意外で(ブラームスやラヴェルの作品もある)味のある作品が多いことを今回初めて知ったという、その程度である。
 僕個人としてはコンクールものはもう良いかなと思っていたが、今回は障害を抱えた人がそれを克服するためにがんばる姿が出てくるかもと思って見たのだった。結局のところ、当初の僕の予想とは番組のコンセプトが若干違っていて、少々ガッカリしたというのが率直な感想である。番組に出てきた人たちにはそれぞれ自分の夢に向かってがんばって欲しいと思うが、日常生活に問題がない人であれば、別の道がいくらでも開けるというものである。夢破れた多くの人はそうやっていろいろな道を模索して、それがかえって良い結果になったりするものである。僕はむしろ(この番組の主役ではない)アマチュア部門に出てきた半身不随の人たちなどに思い入れを感じたのだった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ショパン・時の旅人たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カリスマ指揮者への道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ストラディバリウスをこの手に!(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのショパンコンクール(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『私の脳を治せますか?(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-03-12 07:08 | ドキュメンタリー

『マイケル・ジャクソン 最期の24時間』(ドキュメンタリー)

マイケル・ジャクソン 最期の24時間
(2018年・英Entertain Me Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

マイケルの闇は深かった

b0189364_17381916.jpg キング・オブ・ポップと言われ一世を風靡したマイケル・ジャクソン。僕は完全に同時代だが、当時ポップスはほとんど聴いていなかったため、彼についてはほとんど何も知らない。ただ、やたら整形手術を繰り返したとか、児童に性的虐待をしたとか、奇妙な印象の方が強く、音楽性云々よりスキャンダルの対象としての知識しかない。実はマイケル自体が、そういった(根も葉もない)スキャンダルにひどく心を痛め、その心労のせいで不眠になり、そのために睡眠薬などの薬物に過度に依存することになった。2009年に死んだときも、久々のツアー中で少しでも眠りたいために主治医に過剰な睡眠薬の投与を求め、そのせいで死んだという。この事実をさまざまな人々の証言を交えて紹介していくのがこのドキュメンタリー。
 内容は非常にわかりやすく、マイケル・ジャクソンに対する偏見も一掃してしまうような作品である。整形手術を繰り返したことも元々は顔面と頭に大やけどを負ったことがきっかけになったことや、幼少時に虐待を受けていてその影響を一生抱えていたことなどが紹介される。また、持ち前の完璧主義のために活動に対して過剰に神経質になっていたこと、そのことがマイケルを精神的に追いつめていたこと、金目当ての悪い取り巻きにたかられていたことなども紹介され、弱さを抱える人間としてのマイケル・ジャクソン像が明らかにされる。そういう点では非常に興味深い。ただし僕自身がマイケル・ジャクソンについてあまり知らず、音楽的な方面での関心がないため、そのあたりで響くものがなかった。当時マイケルのポップ界に対する影響は相当なものだったのは明らかだし、彼の音楽について理解がある人であれば、僕よりもっと得るものがあるかも知れない。一般にポップスのドキュメンタリーとなると、やはりそういうことになってしまうのかとも思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『永遠のABBA アグネッタの告白(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『キャロル・キングのすべて(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-03-10 17:38 | ドキュメンタリー

『ヒグマを叱る男』(ドキュメンタリー)

ヒグマを叱る男(2018年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

自然とは何か……について考える

b0189364_20392432.jpg 以前、『ワイルドジャパン 魔法にかけられた島々』というドキュメンタリーで、知床の漁師のそばにヒグマが近寄っていた映像が出て驚いたことがあるが、おそらくあの映像に登場していた人々が、このドキュメンタリーの主役なんではないかと思う。
 世界遺産に認定されている知床半島のルシャという海辺の地域は、漁民が漁の拠点として使用しており、漁民用の番屋が置かれている。そこは沖に出て定置網で鮭を獲る漁民の基地として機能しており、漁民はその番屋で飯を食い酒を飲み風呂にも入る。むろん鮭を陸揚げする場所で、漁民の仕事場でもある。ここまでは通常の漁場とあまり変わらないが、ただ一つ違うのは、ここではヒグマが近所を日常的にうろついているということである。あるいは水揚げの後に残された鮭が目的であったりするわけだが、基本的に漁師の側も、ヒグマについてはよほど近づかない限り放任している。必要以上に近づいた場合は「コラッ」などと言って威嚇し追っ払う。ヒグマの方も威嚇されたらその場を立ち去る。この漁場のリーダーが大瀬初三郎という人で、この威嚇行為、元々はこの人がやり始めたらしい。
 最初に大瀬氏がこの漁場に入ったのは60年前だったらしいが、そのときはヒグマが近づいたときはハンターが射殺していたという。ただ、放っておいてもヒグマが人に即危害を加えるわけではないことが徐々にわかってきたため、それ以降は漁師の側も彼らを放置し、近づきすぎた場合に限って威嚇するという風に態度をあらためてきた。ヒグマの方も、幼少時からこの習慣に馴染んだ新世代ヒグマが登場するに至り、怒られたら自然とその場を立ち去るようになってきたという。現在、この周辺に数十頭のヒグマが集まってくるが、漁師と棲み分けし共存しているというのが現状である。
 一方で、世界遺産を認定するユネスコからは、漁のためにこの周辺に作られた人工物(橋など)を撤去するように求められている。自然遺産を極力自然の形に戻せということらしいが、大瀬氏の言い分は、現在のような形で人とヒグマが共存していること自体が自然の形であり、人の営みも自然の一部であると感じているため、現状をよく知りもしないこういった第三者の圧力に対しては、大瀬氏も大いに抵抗を感じている。ただ同時に、漁師の側も徐々に高齢化しており、大瀬氏のいわゆるこの「自然」の状態も少しずつ変わっていく可能性がある。こういったあれこれの知床事情を紹介しているのがこのドキュメンタリーである。当初はあまり期待しないで見ていたが、実際には見所が多く、いろいろと考えさせられる作品だった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ワイルドジャパン(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-02-20 07:39 | ドキュメンタリー

『「津軽」 太宰治と故郷』(ドキュメンタリー)

「津軽」生誕100年 太宰治と故郷
(2009年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集

『津軽』を題材にした紀行ドキュメンタリー

b0189364_18152323.jpg 太宰治に関するドキュメンタリー。
 太宰は、太平洋戦争中の1944年、1カ月近く、故郷の津軽に戻り、実家に戻ったり旧知の人々に会ったりしている。作家としての名声が高まってきた時期で、彼にとっては帰郷することに人生の一区切りみたいな意味あいがあったのだろうか。もちろん、迷惑をかけ続けた実家の兄に対するあいさつを兼ねていたことは想像に難くない。その帰郷のいきさつを綴った自伝的小説が『津軽』で、このドキュメンタリーでは、その『津軽』を題材に、そこに至るまでの太宰の生涯をあわせて辿っていく。
b0189364_18151909.jpg 太宰の足跡を辿るナビゲーターは村田雄浩で、村田は、この番組の最初の放送時に、『津軽』を題材にした演劇(青森で上演されたもの)に太宰治役で参加しており、この番組に参加したのもその縁である。ナレーションの方は久米明が担当し、例によって大変味があるナレーションなんだが、斜陽館(太宰の生家)を擬人的に演じる(「私は斜陽館!」みたいなナレーション)という立場で太宰について語るのが少々珍妙である。NHKは時折こういう稚拙な演出をするが、毎度のことながら、普通に客観的な立場のナレーションではダメなのかと疑問に感じてしまう。
 番組自体は紀行ドキュメンタリーであり、太宰治や津軽に関心がない向きにはあまり面白くないかもしれないが、僕自身はこのドキュメンタリーを通じて『津軽』に大いに関心を持った。いずれ読んでみようと思っているが、読むに当たって、今回映像で目にしたような情景が目に浮かべばそれはそれで大いに助かるわけである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『富嶽百景・走れメロス 他八篇(本)』
竹林軒出張所『お伽草紙・新釈諸国噺(本)』
竹林軒出張所『青空文庫の「ヴィヨンの妻」を読む』
竹林軒出張所『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ(映画)』

by chikurinken | 2019-02-19 06:16 | ドキュメンタリー

『中国の小学校で今何が?』(ドキュメンタリー)

中国の小学校で今何が?(2018年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

急激な改革におののく

b0189364_18515686.jpg 中国の最新教育事情。
 中国は、改革開放以降、大学進学者が増えていったため、受験競争が激烈化し、そのためにどの学校も点数至上主義の「応試教育」を推進することになった。同時に「一人っ子政策」のために親から過剰に甘やかされる子ども達(「小皇帝」と呼ばれる)が増えたことと相まって、子ども達、そして彼らに対する教育の将来を危ぶむ声が増えている。学校でのいじめ、家庭内暴力の増加なども、教育の見直しを促すきっかけになっているらしい。
 このような状況に対応するため、全国的に新しいタイプの学校が増えつつある。この種類の学校は「応試教育」に偏らないカリキュラムを採用しており、中には1日中『論語』などの古典を読ませて暗誦させるという古典至上主義の学校もある(ラテン語まで履修科目に入っていて驚く)。このタイプの学校は富裕層向けであるが、一部の地域では一般の小学校でも改革が進んでおり、読書をやたらに推進するなどという新しいタイプの教育を展開している。ただし教師の方は、「応試教育」を勝ち抜いてきたエリート教師ばかりであり、こういった新しいタイプの教育になかなか馴染めず苦労しているという面もあるようだ。
 このドキュメンタリーで紹介されるのは中国の事情ではあるが、日本でも似たような教育の問題があることは周知の事実。それに伴い、似たような教育制度批判がこれまで長年に渡って展開されており、政府による教育改革も常に行われてきている(その多くは無意味だが)。だからこうやったよそ様の教育事情をあげつらうようなドキュメンタリーはどうかとも思うが、だがしかし彼らが日本と違うのは、改革が急激でかなり極端な形に突っ走る傾向があるという点で、そのあたりは注目に値する。
 日本では、国民が保守的で変化を嫌うせいか改革はほとんど進まず、改革したとしても結局形だけで終わってしまい、それに対して誰も責任を負わないということがきわめて多い。中国や韓国の事情を聞くと、かなり急激にどんどん改革が進むんで、僕など見ていて本当にやっちゃって大丈夫かと思うことも多い。この番組で紹介されている中国の教育改革もかなりの問題を生み出すことは見ていて明らかで(先ほどの古典至上主義教育の学校では文字の読み書きが普通にできない子ども達まで出ているらしい)、今後も相当数の被害者を生み出すと思われる。こういう過程を経た上でおそらく全体として良い塩梅の制度に落ち着くんだろうが、犠牲を伴う大きな変化を経て理想に至るという形態も、一定の合理性はある。その点、問題をいつまでも先送りにして解決できない日本に比べると(特に問題が大きいときなどは)、こういった大胆なアプローチは大きな長所になる。日本と同じような問題を抱えながら、異なるプロセスで解決に至ろうとするという大陸的な大胆さは、日本でもある程度は取り入れる必要があるんじゃないかと思うがいかがだろうか。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『中国 教育熱のゆくえ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『中国人の本音(本)』
竹林軒出張所『中国人一億人電脳調査(本)』
竹林軒出張所『テレビに映る中国の97%は嘘である(本)』
竹林軒出張所『塾講師にだまされるな!(本)』

by chikurinken | 2019-02-18 07:55 | ドキュメンタリー

『高所恐怖症を克服せよ』(ドキュメンタリー)

高所恐怖症を克服せよ
(2015年・英Maverick Television)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

これで克服できたのか疑問

b0189364_16314543.jpg 高所恐怖症の人10人を集めて、高所恐怖症を克服させようとするドキュメンタリー。
 実際に行う治療法は何のことはなく、要は高いところに上がらせてそれで高所に慣れさせようというものである。だが、このドキュメンタリーによると、この方法は科学的に治療効果が証明されているらしいのである(ほんまかいなと思う)。
 で、実際にこの10人に対して3日間のトレーニングを課し、数メートルのはしご段から始めて、最後は90mの高さのタワー(しかも手すりのない場所)まで上がらせる。参加者の中には良い歳をしたおじさんもいて、しかもこの人、途中で怒り出したりするんだが、そんなにイヤならこんなトレーニングやめたら良いのにと思ったりする(高所恐怖症ぐらいであれば、日常生活でそれほど支障を来すこともあるまい)。
 最後にもう一度最初のはしご段に上らせて高所恐怖症が克服できたか試すかと思ったが、そういったシーンは結局なしで、この10人が高所恐怖症を克服できたかどうかはわからずじまいになってしまった。何ともお粗末。
 そもそも素材自体からして『探偵!ナイトスクープ』のデキの悪いネタ(「できない」ネタ)レベルであり、しかも内容もどうと言うことはなく、高い場所で怯えている人の反応を視聴者が楽しむという程度のものであって、考えようによっては悪趣味である。一部(どうしても足を踏み出せない仲間が励まして何とか前に進ませるというような)『ポセイドン・アドベンチャー』を彷彿させるようなシーンもあったが、大げさな行動の割には端で見ていてそれほど大層な場面でもないし(3階の高さの足場まではしご段を使って上がるというもの)、見ていて少しばかりバカバカしくなる。正直、ドキュメンタリーと言うのもはばかられるようなくだらない番組だと感じた。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『めまい(映画)』
竹林軒出張所『ポセイドン・アドベンチャー(映画)』
竹林軒出張所『「反復練習が上達を生む」の実証 - 「ひたすら一万回」』

by chikurinken | 2019-02-16 07:31 | ドキュメンタリー

『“死の壁”に挑む』(ドキュメンタリー)

“死の壁”に挑む
(2017年・英Screen Dog)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

“死の壁”には挑まない

b0189364_20015657.jpg イギリス人の冒険家が、「死の壁」の異名を取るアイガー北壁に挑むというドキュメンタリー……かと思ったら、悪天候で断念し、しようがないのでイタリア側のとある山に登ったというドキュメンタリー。この山も結構な断崖なので登頂は困難だったが、しかし「アイガー北壁」を謳ったドキュメンタリーなのに、全然違う山に登ってもね……ということで、正直わけのわからない作品になっていた(ただし原題は「STEVE BACKSHALL VS THE VERTICAL MILE」となっており「死の壁」はまったく謳っていない)。
 この山(名前は失念)へのアタックが厳しかったことは映像から推測できるし、珍しい映像のようではあるが(カメラの進歩を感じさせる映像)、登頂シーンは何だかダラダラ続くし、映像を通じて困難さがあまり伝わってこない。全体的に編集がうまくないという印象で、見所もあまりない。そのため、良い映像もあるにはあるが冒険ドキュメンタリーとしては質が低く、見ていて飽きてしまった(元々はシリーズものの1本のようである)。
 だがやはり一番問題なのは、先ほども書いたように『BS世界のドキュメンタリー』で放送されたこの日本版のタイトルであり、本当であれば「死の壁”は断念」となるべきで、そういう点でまさしく羊頭狗肉であった。宣伝文でも「アイガー北壁に挑む」ことを謳っていて、事情がまったくわかっていない人(おそらくこの作品を見ていない人)がこの番組の広報を担当していたんじゃないかとすら感じる。(タイトルを含み)実にお粗末な広報で、視聴者をなめているのではないかとも思える。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『ヒマラヤ8000m峰 全山登頂に挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『手足をなくしても(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『デナリ大滑降 究極の山岳スキー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドキュメンタリー3本』「エベレスト 世界最高峰を撮る」
竹林軒出張所『劔岳 点の記(映画)』

by chikurinken | 2019-02-15 07:01 | ドキュメンタリー