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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドキュメンタリー( 614 )

『ぼけますから、よろしくお願いします。』(ドキュメンタリー)

ぼけますから、よろしくお願いします。
(2018年・ネツゲン他)
監督:信友直子
撮影:信友直子
出演:ドキュメンタリー(語り:信友直子)

ありのままの老老介護
前作に引き続き自分の身辺をさらけ出す


b0189364_20125593.jpg 『おっぱいと東京タワー』の信友直子が、自身の故郷の両親を撮影したドキュメンタリー。元々テレビで放送された2回のドキュメンタリー作品を1本にまとめたもので、その後劇場公開された。
 東京でドキュメンタリー番組のディレクターを勤めている信友直子だが、ハンディカメラが現場に持ち込まれるようになったこともあり、2000年頃から、呉の実家に帰省するたびにハンディカメラで両親を撮影するようになっていた。なお監督自身は独身で一人っ子である。帰省するたびに継続的に撮影していたようだが、忙しくて数年間帰省できないこともあり、しかも自分自身、入院していたこともあって、撮影については断続的だったようである。入院をきっかけに、監督自身は、会社を辞めてフリーの立場になったこともあって、帰省の頻度は増えている。母の異変に気付いたのはそんな折である。それまで社交的で非常に矍鑠としていたのだが、認知症の症状が出始めたのである。それが2014年。このとき母は87歳、父は95歳。
b0189364_20125110.jpg 母はアルツハイマーの薬を処方されて飲み始めるが、体調の不良を訴える日々が始まる(ケモブレインの疑いあり。竹林軒出張所『このクスリがボケを生む!(本)』を参照)。一方で父が家事の代役をやり始めるが、身体の衰えがだんだん進んでいるのがわかる。それでも、今まで一切家事をやってこなかった父が90台にして、生活を大きく転換させたのは監督にとっても意外だったようで、この作品の見所の一つになっている。公的な支援を受けながらも(これについては当初母が抵抗を見せる)、身体が弱った父が、認知症の進む母の世話をするという老老介護の実態が垣間見えてくる。もちろん、父はできる限り介護を続けるというし、その風景はどちらかというとごく日常的にも映り、悲観的な様子はあまり伝わってこないが、少なくとも将来が明るいという印象はまったくない。そしてこれは明日の我が身でもあると感じる。監督の信友氏だって一人暮らしであることを考えれば、老後はもっと悲惨な状況になる可能性もある。このように、見ている人々はこの映画を通じて、いろいろと自身の身に照らし合わせて考えることができる。
 この作品では、父母の若い頃の写真や映像の他、まだ元気だった時代(監督が入院していた頃)の映像もふんだんに出てくるため、老いについて実感を伴って感じることができる。父、母が割合楽観的な人のようで、それほどの悲壮感はないんだが、それでも(自分自身のことを考えると)辛さが溢れてくる。僕自身は、あんまり長生きしたくないもんだと感じたのだった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『おっぱいと東京タワー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『徘徊 ママリン87歳の夏(映画)』
竹林軒出張所『毎日がアルツハイマー(映画)』
竹林軒出張所『いま助けてほしい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『老人漂流社会(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『このクスリがボケを生む!(本)』

by chikurinken | 2019-08-31 07:12 | ドキュメンタリー

『おっぱいと東京タワー』(ドキュメンタリー)

おっぱいと東京タワー 私の乳がん日記
(2009年・エフ・エフ)
フジテレビ ザ・ノンフィクション

ある女性ディレクターの映像日記

b0189364_18150769.jpg テレビ番組製作会社(エフ・エフ)に勤める信友直子というディレクターによるドキュメンタリー。撮影対象は自分自身で、そのためにタイトルに「日記」という言葉がついている(のだろう)。元々フジテレビの『ザ・ノンフィクション』枠で放送されたもので、好評だったことから、その後単発でも公開されることになった。
 仕事に没頭していたこともあり40台独身という身の上の信友氏。本人は自虐的に、自分のことを「負け犬」などと言っている。そんな折、43歳になったときに子宮筋腫が発覚し手術を受ける。しかもその翌年、インドで列車事故に遭い大腿骨骨折、さらにその翌年、乳がんが見つかるという3年連続の厄続きで、なぜ自分だけがこんな目に……と自問しながらも、そのガン闘病を自撮りしてドキュメンタリーにしたのがこの作品。自らをさらけ出して1本のドキュメンタリーを作るという作家の鑑のような人である。その後、このドキュメンタリーにも登場する母が、認知症と診断され、その様子を撮影したドキュメンタリー(『ぼけますから、よろしくお願いします。』)も作り、これが話題になったのが数年前。現在、非常に注目されているドキュメンタリー作家である。
 乳がん自体は、転移もしておらずしかもその後消失するため、近藤誠のいわゆる「がんもどき」ではないかと思うが、それでも信友氏は、放射線治療、抗ガン剤治療、外科手術のフルセットを受け、髪は抜け落ち、乳房も縮小する。乳房がなくなることについては最後の最後まで抵抗を見せるが、結局手術を受けることを決心。結果的には切除部がそれほど大きくなかったため、「胸が陥没」みたいなことはなく、一安心したようである。その後、抗ガン剤の副作用に苦しみながらも社会復帰し、仕事にも戻ることができた。ただ、3年連続の不幸を作品として昇華したわけだから、今から考えると御の字とも言える。「人間万事塞翁が馬」ってことである。
 作品自体は、編集がうまいせいかテンポが非常に良いため、見ていて飽きることもなく、そういう点でもよくできたドキュメンタリーと言える。何よりも自分自身を曝け出すというそのプロ根性が立派である。拍手パチパチである。
NYフェスティバル銀賞、ギャラクシー賞奨励賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ぼけますから、よろしくお願いします。(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『これでもがん治療を続けますか(本)』
竹林軒出張所『がん放置療法のすすめ(本)』
竹林軒出張所『エンディングノート(映画)』

by chikurinken | 2019-08-30 07:14 | ドキュメンタリー

『同時代体験! アポロ月面着陸』(ドキュメンタリー)

同時代体験! アポロ月面着陸
(2019年・仏Grand Angle Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

アポロ月面着陸の回顧記録

b0189364_19521098.jpg 1969年のアポロ11号月面着陸の様子をまとめて再現したダイジェスト・ドキュメンタリー。
 このアポロ11号プロジェクトは、ケネディ宇宙センターからサターンV型ロケットを打ち上げ、燃料タンクを切り離しながら大気圏を出て、地球の軌道を周回してから月に向かうという行程で進められる。月への途上で、ロケットから司令船を取り外しこれを月着陸船とドッキングさせてから、ロケットを完全に切り離すという作業が行われる。その後、月の軌道に入ってから月着陸船を切り離し、月面着陸。月面でミッションを敢行したら月面を離陸し、月の軌道上にある司令船とドッキングして、司令船以外すべてそこで切り離してそのまま帰還。地球の軌道に入って大気圏に突入し、大西洋上に落下。無事任務を完了という過程を取った。
 月面に着陸した乗組員は、アームストロングとオルドリン、司令船で月の軌道を周回し待機していたのはコリンズである。当時世界中で放送された映像もあわせて紹介され、アポロ・フィーバーに沸く世界中の人々の様子も映し出される。当時の日本での様子の映像も出てきて、宇宙飛行士の格好をした四代目三遊亭金馬(だと思う)が銀座みたいな場所に現れるというような映像も出てきた。
 歴史的事件のまとめ映像として貴重ではあるが、ただ当時僕もこういったプロセスをテレビで見ていて、その後もたびたび目にしているため、あまり新鮮味はなかった。当時の子ども達にとってアポロは、マンガ雑誌にもよく取り上げられていたし、万博とかウルトラマンとかそういったものと同じレベルで割合身近なものだった。それに僕自身は若い頃、立花隆の『宇宙からの帰還』を読んで大変感銘を受けたクチで、アポロ計画の詳細や乗組員の感覚などにもこの本で触れているのである。そのため「今さら」という感じは若干ある。それでも、当時の映像を交えながら、非常に要領よくまとめられているし、リアルタイムで知らない若い人達が見れば、価値の高いドキュメンタリーになるんではないかと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえるアメリカ 3、4、5(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『昭和ちびっこ広告手帳(本)』

by chikurinken | 2019-08-13 06:51 | ドキュメンタリー

『映像の世紀プレミアム 第13集』(ドキュメンタリー)

映像の世紀プレミアム 第13集 戦場の黙示録
(2019年・NHK)
NHK-BSプレミアム


現代の戦闘がテーマ

b0189364_18061371.jpg 『映像の世紀』の映像をテーマごとに再構成した『映像の世紀プレミアム』。前回日本の素材だったためこれで打ち止めかと思っていたが、第13集が出てきた。第13集では、現代の戦闘をピックアップしてそれをまとめるという趣向で、それぞれの戦闘に関する詳細な分析もあり、興味深い内容になっている。
 取り上げられる戦闘は、ダンケルクの戦い、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、ノルマンディー上陸作戦、朝鮮戦争である。どの戦闘も必然的な結果と捉えることなく、偶然や士気、慢心によって勝敗が決したという捉え方をしており、こういうアプローチは好感が持てる。ただ、多くは他のドキュメンタリー作品で紹介されている内容であり、分析自体はさして目新しさがあるわけではなかった。それでも実際の映像を交えた描写であるため、なかなかインパクトはある。
 ただミッドウェー海戦を決したのが、日本海軍のおごりだったとするのはちょっと極論過ぎるのではないかとも感じた(そういった要素も大きかったとは思うが)。またダンケルクの戦いについても、撤退する連合軍をドイツ軍が徹底的に叩かなかった理由がわかりにくかった。さらにノルマンディー上陸作戦でも、掘り下げが足りないと思われる箇所はあったが、そもそもこういったダイジェスト的なドキュメンタリーでそこまで要求することに無理があるのかも知れない。あくまでも、これを総論としての番組と捉えて、各論についてはそれぞれのドキュメンタリーを見ろという立場なんだろうとも思う。そもそもこの『映像の世紀プレミアム』のアプローチはそういうもののようである。この『映像の世紀プレミアム』シリーズ、『映像の世紀』のスピンオフ企画であり、つまらないものもこれまであったが、今回の作品についてはよくできていて、見所も多かったと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第1集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第2集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第4集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第7集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第8集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第12集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ダンケルク (2017年版)(映画)』
竹林軒出張所『ダス・ライヒ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『D-Day 壮絶なる戦い(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-08-12 07:05 | ドキュメンタリー

『大海原のゴールドラッシュ』(ドキュメンタリー)

大海原のゴールドラッシュ
(2019年・仏Via Decouvertes Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

莫大な埋蔵金は海底にあった

b0189364_20213959.jpg 世界中の海洋に大量の難破船が沈んでおり、中には非常に貴重な金銀財宝を積んだものもある。たとえば、近世にアメリカ大陸から金や銀を奪い取り本国に持ち帰ろうとして沈没したスペイン船(キューバの近海に大量に沈んでいるらしい)や、大量の陶磁器を積んで中国からヨーロッパに向かっていた商船などがある。こういった難破船を探索し宝を回収しようというベンチャー企業もあるらしく、中にはスペイン船から大量の金塊、銀塊、貨幣を回収することに成功したものもある。もっともこのケースについては、米国で所有権を争う裁判を(ベンチャー企業側が)起こし、結果的にすべてがスペインの所有になるということで決着したため、大変な労力をかけた割に実入りはなかった。
 要するにこういった難破船が誰に帰属するか、誰に所有権があるかは大きな問題で、このような海底資源を管理する国連のユネスコによれば、すべては世界中の人びとの共有財産であるため、引き上げられたものはしかるべき美術館などが管理すべきで、利益を追求するためにむやみに海底探査をするのは、資源を破壊することにつながるということらしい。
 しかし実質的には、国や行政がこういった資源探査に資金を注ぎ込む(実際かなり金がかかるらしい)などということは現実的ではなく、ベンチャーのように資源探査を行うことはできないのである。したがって、互いに自分の主張ばかりを貫くのではなく、両者で協力するというのが現実的な線ではないかというのが、このドキュメンタリーの結論である。至極ごもっともな話でまったく異論はないが、金持ちが財力を使って資源をかき集めるような状況は最低限禁止しなければならないと思う。もっとも僕自身は、こういうことが世界中の海洋で進行しているという事実についてはまったく知らなかったため、大変参考になったのだった。
★★★☆

追記:
 ユネスコの主張は、探索せずに現状を維持すべきとするものだが、その一方で、現状のまま放っておいたらいずれ跡形もなく朽ちてしまうという意見もある(実際朽ちたものもあるらしい)。またトロール漁船が海底をさらうために沈没船を破壊してしまう事例もあるという。こういったさまざまな主張を聞くと、この問題が意外に相当な難しさを孕んでいるということがよくわかる。

参考:
竹林軒出張所『ジパングの海 深海に眠る巨大資源(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アフリカ争奪戦 富を操る多国籍企業(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『血塗られた携帯電話(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-27 07:21 | ドキュメンタリー

『偽りの後見人』(ドキュメンタリー)

偽りの後見人
(2018年・加No Equal Entertainment)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

こいつぁ事件だぜっ

b0189364_20111804.jpg アメリカのネバダ州で後見人制度を悪用した詐欺犯罪が横行している現状をレポートするドキュメンタリー。
 あるお年寄りが(ケガの治療などのために)とある病院にかかったことがきっかけで、その人が自身の力で自立して生活できないということにされてしまい、その後、後見人と称する人間が現れて、すぐに家から退去して施設に入るよう強制される。このあたり、その本人自体何が進行しているか把握できずに戸惑うことが多いが、とにかく問答無用ですぐに家を出るように迫られ、状況によっては暴力を奮われるケースもあるというのである。そしてその後、精神科施設に強制入院させられて、挙げ句に薬漬けにされるというのだ。その一方でこの「後見人」は、そのお年寄りの財産をすべて押収するという具合に話が進んでいく。場合によっては、病院の帰り道に突然拉致され施設に連れて行かれたというケースもあり、どこからどう見ても犯罪以外の何ものでもない。
 問題はここからで、これについて親族が訴えを起こしても、家庭裁判所が却下してしまうという事例が頻繁に起こったのである。つまり結果として、この行為が正当であったというお墨付きが与えられることになったのである。要するに、病院関係者、後見人、裁判官、その他諸々の人間がグルになって、お年寄りの財産を狙っているという状況がそこにあったのだった。
 実際、これに関連した犯罪行為で、100人以上の被害者が出ているにもかかわらず、司法当局が動かなかったため、問題がかなり大きくなった。マスコミがこの問題を報道するようになり、ようやく検察が動き出して、一部の「後見人」が逮捕されることになったというのが、このドキュメンタリー製作時点の状況である。
 こういう話を聞くと、文明国だと思えないような状況がアメリカの国内に存在していると感じる。時代が100年遡っているかのような無法状態であって、まったく驚きを禁じ得ない。最近特にであるが、アメリカがとんでもない方向に進んでいると感じさせられてしまう。日本も一緒になってこういう方向に進まないことを願いたいものである(もう進んでいるか……)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『OK牧場の決斗(映画)』

by chikurinken | 2019-07-26 07:11 | ドキュメンタリー

『愛を科学する』(ドキュメンタリー)

愛を科学する(2018年・独a&o buero)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

愛の科学・入門編

b0189364_19545408.jpg 人が愛情を感じているときに脳内でどうなっているか、身体にどういう変化が起こっているか、幼少時に愛情を受けないとどうなるかなどについて雑多に紹介するドキュメンタリー。
 結論を言ってしまえば、愛情を感じるとき、脳内でオキシトシンというホルモンが分泌されており、これがさらに愛情を深める役割を果たす、というようなこと。互いに不信感を持っている夫婦でもオキシトシンを吸引することで態度が変わるというような実験も紹介されている。
 また幼少時に母猿から引き離され愛情を受けなかった猿の実験映像も出てくる。この猿が周囲に適用できないまま成長して早死にしたなどという解説が入り、幼少時に愛情を受けないとこうなるという状況が紹介されるわけが、猿とは言え見ていて痛ましくなる。こんな実験をやっても良いものか疑問に感じる。
 体臭も愛情に大きな役割を果たすという指摘はやや目新しさがあったが、総じて近年よく報告されているような事情で、目新しさには欠ける。もちろんこういった話についてあまり聞いたことがないという人であれば、入門編として一定の役割を果たすかも知れない。それでもエピソードの見せ方が雑然としていてしまりがないという印象は残る。まあ、それなりのドキュメンタリーということか。
★★★

参考:
竹林軒出張所『エロティシズム(本)』
竹林軒出張所『あなたの脳は男性?女性?(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-25 06:54 | ドキュメンタリー

『#フォロー・ミー インスタの偽り』(ドキュメンタリー)

#フォロー・ミー インスタの偽り
(2018年・蘭VPRO)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

インスタグラム、
それからフェイスブック自体にも信用がおけない


b0189364_20272637.jpg 世間ではインスタグラムなどというものが流行っているが、僕自身はまったく利用しないし、人のインスタグラムを見たことも(おそらく)ないので実態はよくわからない、本当のところ。ただ、フォロワーがたくさん集まったり「いいね」がたくさん入ったりすると、自尊心が満たされるだけでなく、スポンサーが付いたりなどという実質的な恩恵も生じるらしい。そういうわけで利用者はなんとかフォロワーや「いいね」を増やそうと努力するらしいが、よほど有名な人でなければそういうものが簡単に集まるわけがなく(そもそも最初から人の目に付かない)、利用者にとっては悩ましいところだそうである。まったく変なものが流行る時代になったものである(まあブログも似たようなもんだが)。
 しかし、需要があればそれを満たす産業が生まれるというのも現代社会の構図である。案の定、フォロワーや「いいね」を増やしてくれる業者というものが登場することになる。そういう実態を紹介するのがこのドキュメンタリーで、番組内でも、こういった業者に依頼しフォロワーを実際に増やしてみるという実験をやっていた。これによると、業者にもよるが、数千円から数万円程度で数千人から数万人程度のフォロワーが付いたアカウントを買うことができる。もちろんこれは、運営業者であるフェイスブックが禁止している行為で、そのために取り締まりも行われているようだが、業者の方もその抜け道を探り出すため、こういった行為がなくなることはないらしい。そもそもフェイスブックがそれほど真剣に取り締まり活動に取り組んでいないらしく、真面目に対策する気もないようである。
 インスタグラムに限らず、こういったSNS自体にまったく興味がないので、こういう内容のドキュメンタリーを見てもあまり感じるところはないが、要は利益の出るところには常に不正行為が存在するということなのかと思う。もっともそれ以前に、フェイスブックが信用できるのかというところも大きな問題である。それにツイッターをはじめとするSNSが我々の日常生活に本当に必要なのかという点についても再検討した方が良いんじゃないかと、門外漢の僕は感じるのである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『あなたは利用条件に“同意する”?(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“ネットいじめ”の脅威(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『データに溺れて…(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ソーシャルメディアの“掃除屋”たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ネットが革命を起こした(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ハリウッド発 #MeToo(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-24 07:27 | ドキュメンタリー

『ロデオ 民主主義国家の作り方』(ドキュメンタリー)

ロデオ 民主主義国家の作り方
(2018年・エストニア/フィンランドTraumfabrik / Kinocompany)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

素人が政治をゼロから作り直す……

b0189364_19471164.jpg もしあなたが一国の政治をいきなり任されたら……、しかも劇的に環境が変わりつつある国の政治を……というドキュメンタリー。
 バルト三国(エストニア、リトアニア、ラトビア)は、第二次大戦中にソビエト連邦に併合され、以後50年以上に渡りソ連の一部になるが、ソ連の民主化に伴い、1990年にいち早くソ連からの独立を果たす。このニュースは当時日本にも届いており、一般の日本人にとっては快哉事だったが、当事者側にとってはそれほど簡単ではなかった。言ってみれば、それまで他所に委ねていた行政機能を自分たちですべてやり直さなければならないわけで、人材も必要、技能も必要、予算も必要になる。
 エストニアでは、独立に当たって総選挙が行われ、マルト・ラールという32歳の若者の民主政党がいきなり第一党に選ばれて、自動的にこのマルトが首相に選ばれてしまう。政治の経験などまったくない彼らが、いきなり突きつけられる難題を解決しながら、内政、外交を担当しなければならなくなった。なにしろ、それまでソ連に物流、行政の多くを依存していたため、ソ連との関係を断った途端にいきなり物資がなくなり、予算もなくなる。新政府は、最初から大変なものを背負わされるハメになる。
 そうは言いながらも、素人政治ながらなんとかやっていたが、それでも資金がないのはいかんともしがたい。そんな折に行政府にソ連のルーブルが埋蔵金として残されていることがわかる。新政府は、これを秘密裏にドルに換金して流用するというアクロバットで、資金面の難局を乗り切ってしまうのだが、後にこれが発覚し、それが原因でマルトは首相の座から追われることになる。このあたりの政治の難局をロデオにたとえて、それを乗りこなすための奮闘が紹介されるのがこのドキュメンタリーである。
 このマルト・ラール、端から見ているとババを掴まされたようなものだが、素人が政治の舵取りを行うために奮闘する姿の描写はなかなか新鮮で、その辺りがこのドキュメンタリーの魅力である。ただし少々説明不足の印象があり、わかったようでわからないような箇所が多かったのも事実。外国からの支援はなかったのかとか、どの程度外国に頼ったのかとかは気になるところだったが、そのあたりはよくわからないままで終わってしまった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ソビエト連邦のコマーシャル王(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『こうしてソ連邦は崩壊した(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ベラルーシ自由劇場の闘い(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-23 06:46 | ドキュメンタリー

『性犯罪をやめたい』(ドキュメンタリー)

性犯罪をやめたい(2019年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集

性犯罪経験者の心理にまで踏み込む

b0189364_18144629.jpg 盗撮、のぞき、痴漢、強制的性交などの性犯罪は後を絶たないが、犯人の心理に踏み込んだルポは今まであまりなかった。彼らは何度も同様の犯行を繰り返して、何度も逮捕され収監されたりするわけで、ちょっとアルコール依存などの依存症との共通性も感じさせる。現にこういった人たちの多くは犯行をやめられないわけで、再犯を恐れて、自ら治療を受けるために精神科クリニックに通う人たちもいるほどである。
 横浜のある精神科クリニックでは、こういった人たちに向けて認知行動療法を実施しており、その様子に密着するのがこのドキュメンタリーである。見たところ、その様子はAA(アルコホーリクス・アノニマス)や断酒会を思わせるようなもので、要はなぜ自分が性犯罪に走るのかについて自ら気付くようにし、そうなってしまう条件から身を遠ざけるようにする、それができるようにするというのが目的である。そのために、自分がどういう状態のときに性犯罪を犯してしまったのか、何がきっかけになったのかなどについて自ら考察しそれを記録する。こうすることで、自分の行動を認知し、危険な条件や場所に近づかないようにするというわけである。
 このドキュメンタリーではさらに、このプログラムに参加している犯罪経験者たちに個別に具体的な話を聞いており、性犯罪に走る人々の心理がよくわかるようになっている。痴漢とのぞきではもちろん動機もきっかけも違うわけだが、どの人たちにとってもそれが(当人にとって)比較的安易な犯罪行動で、きっかけがあればそちらに簡単に流れていく、押しとどめることができないという点で共通している。一般的な感覚では痴漢や強制的性交が安易な行動だとは思えないが、彼らの過去の経験がそうさせたというわけだ。したがって、手近で安易な行動という点では、アルコール依存やギャンブル依存などとの共通性はある。そのため、依存症と同様、その行動を発動させるきっかけから遠ざからなければならないということになる。
 なお性犯罪経験者の多くは、ミニスカートなど女性の露出の多さがきっかけになると答えていた。世間では、どんな格好をしても自由だ、悪いのは犯罪者の方だという主張が多く、もちろんそれはその通りなのだが、現実に性犯罪のきっかけになっているということは認知しておいた方が良いと思う。露出の多い服が性犯罪を誘っているという側面があるのは間違いない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』
竹林軒出張所『実録! あるこーる白書(本)』
竹林軒出張所『私、パチンコ中毒から復帰しました(本)』
竹林軒出張所『「教えて★マーシー先生」って……』

by chikurinken | 2019-07-03 07:14 | ドキュメンタリー