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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 260 )

『早春スケッチブック』(5)〜(8)(ドラマ)

早春スケッチブック (5)〜(8)(1983年・フジテレビ)
脚本:山田太一
演出:富永卓二、河村雄太郎
出演:鶴見辰吾、岩下志麻、山崎努、河原崎長一郎、樋口可南子、二階堂千寿、荒井玉青

河原崎長一郎の演技にただただ関心

b0189364_19592833.jpg 最近、山田太一脚本のドラマがあちこちで再放送されていて、見るのが追いつかないくらいである。日本映画専門チャンネルで『真夜中の匂い』(これが楽しみ)、BS12では『早春スケッチブック』から『想い出づくり。』、NHKでも『男たちの旅路』が3本放送されるという具合。だが『想い出づくり。』や『男たちの旅路』は割合「ありきたり」な選択という感じもする。やはり日本映画専門チャンネルはこの分野では先行しており、面白いラインアップを提供してくれる。
 ところで、この『早春スケッチブック』では、重病になった元カメラマン(山崎努)が、「お前らは、骨の髄までありきたりだ」などと怒鳴り散らして、普通に生きる人たちに揺さぶりをかける。考えてみれば大きなお世話で非常に身勝手な言動だが、今まで自身の生活を振り返ることなく漫然と生きてきた人たちは、こういった刺激に過剰に反応してしまう。こうして善良で小市民的な生活を送っている人の家庭に波紋が起こるというわけだ。
 第5回から第8回では、このカメラマンが、主人公の家庭、望月家にまで入ってきて、(元恋人だった)妻(主人公にとっては母)と逢うことを求め(夫に対して「奥さんを貸してくれ」などと言う)、主人公の家庭の平穏な生活をかき乱す。
 このカメラマン、沢田(山崎努)、主人公の家族に対して不快な言動を繰り返すが、その一方で、実は割合良い人みたいな側面も見せ、そのために主人公の少年(鶴見辰吾)とその母、それから育ての父と妹も少しずつ気を許していくそぶりを見せる。かと思えば突然豹変して、相手の気持ちをえぐるような嫌な言葉を発してきたりもする。普通の人々は、こういった言葉を不快に感じつつも、どこかで揺さぶられてしまう。特に主人公の育ての父は、現状肯定型の小市民的な生活を送る人で、沢田と好対照をなす存在。もちろんそういった小市民的な生き方を否定することはまったくできないのであって、「ありきたり」であろうが、長い目で見ればそちらの方が良いかもしれないし、そもそもどちらが良いとかいう問題でもない。
 そういう小市民的な存在を巧みに表現しているのが河原崎長一郎である。この人、僕が子どもの頃からテレビでよく目にしていて、こういう小市民的な役が多かったという印象が僕の中にあるが、確認すると必ずしもそうではないようである。こういった小市民的な役は、山田太一のドラマ(『沿線地図』、『友だち』)ぐらいで、そうするとやはり、僕の中で山田ドラマの印象が非常に強かったということになるのだろうか。この河原崎長一郎、演技があまりにさりげなく影が薄いんでつい見過ごしがちだが、毎度毎度素晴らしい演技である。周辺の人間に対する気遣いや愛想笑いなど、市井の人物の表現がピカイチである。今回見ていて、すごい役者であることにあらためて気付き、ただただ感心した次第。なお、河原崎長一郎、妻役の岩下志麻と実はいとこ同士らしい(ウィキペディア情報)。
★★★★

追記:
 第8回の最後で、元カメラマン、沢田の身体に変調が起こるため、ここからいよいよ収束に向かうということになりそうだ。

参考:
竹林軒出張所『早春スケッチブック(1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春スケッチブック(9)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒『批評選集:ドラマ - 山田太一』
竹林軒出張所『時にはいっしょに(1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-06-21 06:58 | ドラマ

『早春スケッチブック』(1)〜(4)(ドラマ)

早春スケッチブック (1)〜(4)(1983年・フジテレビ)
脚本:山田太一
演出:富永卓二、河村雄太郎
出演:鶴見辰吾、岩下志麻、山崎努、河原崎長一郎、樋口可南子、二階堂千寿、荒井玉青

見始めると目が離せなくなる

b0189364_10151946.jpg 今回、14年ぶりにこのドラマを見た。あれからもう14年も経っているのかと思う。さらに言えばこのドラマが作られたのが1983年で、ドラマが作られてから36年経っている。主人公の少年が1983年の共通一次試験を受けるという設定になっているが、僕もあの年に共通一次を受けている。83年の試験は1月15日に実施されたが、なんと成人の日とかち合っていたため、試験場に向かうバスから成人式の晴れ着を着た女性がたくさん目に付いた。当時20歳だった二浪の友人も、こういった人々を目にして、俺は一体何をしているのかと考えたなどと漏らしていた。
 この共通一次試験を目前にしているのが主人公の高三の少年、望月和彦(鶴見辰吾)だが、父(河原崎長一郎)と母(岩下志麻)が再婚同士で、共に連れ子(母に自分、父に妹)がいたという設定である。ただ結婚してからすでに10年経っているため、普通の家族との違いを感じることはほとんどない。そのため普通に高校生活を送り受験勉強に励んでいたのであるが、ある日突然、新村明美(樋口可南子)という美女が目の前に現れて、バイトしない?などと言ってかなり強引に少年を、実の父(山崎努)の元に引っぱっていくというふうにストーリーが展開する。大学入試直前にあれやこれやが起こるというのも、『沿線地図』や『岸辺のアルバム』を彷彿させる。
 この実の父、沢田竜彦というんだが、目を病んだことがきっかけで写真家を引退し古い洋館に引きこもっているという状態で、社会との唯一の接点になっているのが明美であるという設定である。和彦も最初は抵抗を覚えていたが、その後何度か沢田の元に足を運ぶようになり、沢田の影響を受けるようになる。実の父、沢田が「ありきたりな人生」を否定的に捉えるような発言をし、それをきっかけに自分の生き方についても考えるようになって、あげくに、今の父についても物足りなさを感じるというふうに話が進行していく。これが第4回までの流れである。ちなみに実の父に影響を受けてしまった和彦は、共通一次試験をすっぽかしてしまう。沢田から起こった影響が望月の家に波風を立てていくというふうにこれから進む。
 ドラマは、最初からグイグイ視聴者を引っぱるような展開で、特に樋口可南子が登場するあたりからは先が見えないサスペンスが始まり、目が離せなくなる。脚本家の豪腕にうなってしまう。また樋口可南子と岩下志麻が非常に美しいのもこのドラマの大きな魅力である。山崎努の演技も大きな見所で、涙と一緒に洟を垂らすなどなかなか見ることができない怪演である(『北の国から』で地井武男が同じような演技をしたことがあったが)。第4回の段階では、沢田の病気がまだ見えていない状況である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『早春スケッチブック(5)〜(8)(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春スケッチブック(9)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒『批評選集:ドラマ - 山田太一』
竹林軒出張所『時にはいっしょに(1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-06-20 07:06 | ドラマ

『浮浪雲』(1)、(2)(ドラマ)

浮浪雲 (1)、(2)(1978年・テレビ朝日、石原プロ)
原作:ジョージ秋山
脚本:倉本聰
演出:近藤久也
出演:渡哲也、桃井かおり、伊藤洋一、岡田可愛、笠智衆、谷啓、柴俊夫、犬塚弘、三浦洋一、山崎努

奥さん、もうマンガやがな、マンガ

b0189364_19581383.jpg 1970年代に発表されたジョージ秋山原作のマンガ『浮浪雲』は、当時世間でかなり話題になり、それに触発されドラマ化されたのがこの作品である。このあたりのいきさつについては僕自身も記憶しているが、当時僕の家ではテレビ朝日系のチャンネルが映らなかったし、原作も読んだことがなかったため、このドラマについてもまったく興味を覚えなかった。今だってそれほど興味があるわけではないが、脚本が倉本聰だと知って、ちょっと見ておくかという気になったというその程度の話である。脚本担当は倉本聰だが、データを参照すると金子成人も書いているようで、金子成人の回は特に見なくても良いと考えている。
 さてこのドラマであるが、普段から昼行灯みたいな遊び人の浮浪雲(渡哲也)が実は相当な剣術使いであるというような、面白いが割合よくある設定である。また、いかにもマンガ的なストーリーで、幕末期を舞台にした時代劇でありながら、ギターが出てきたり、国語辞典が出てきたり、あるいはピンクレディーの歌や「勝ってくるぞと勇ましく」が出てきたりして何でもありである。「勝ってくるぞと勇ましく」については、「江戸時代なのに「勝ってくるぞと勇ましく」歌ってやがる」みたいなツッコミのセリフが出てきて、概ねコントみたいなドラマとも言える。冒頭に「このドラマはフィクションであり、時代考証その他かなり大巾にでたらめです。」などと出て開き直っており、そのあたりも「コントだと思って見ろ」というメッセージなんだと思う。当時この手のコント風のドラマは割合流行っていたが(TBSの水曜ドラマなど)、あれをテレビ朝日でもやってみましたという番組だったんではないかと感じる。
 第1回目は沖田総司(三浦洋一)までゲスト的に出てきたりするが、取り立ててどうこう言うようなドラマでもないという印象である。そのせいか第1回目の視聴率が12%だったものが第2回目で8%に落ちている。言ってみれば初回を見た3人に1人が失望したという結果である。僕も倉本作品でなければ2回目以降は見ないと思う。
 なお第2回目のゲストは坂本龍馬(山崎努)で、龍馬にサインをもらうとかのエピソードも少々こざかしさを感じさせる。
★★☆

追記:子役がかぶっているヅラまで、コントみたいないい加減な代物で、見ていてすごく気になる。

参考:
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-05-30 06:57 | ドラマ

『君は海を見たか (70年版)』(6)〜(8)(ドラマ)

君は海を見たか (6)〜(8)
(1970年・大映テレビ室、日本テレビ)
脚本:倉本聰
演出:井上芳夫
出演:平幹二朗、山本善朗、姿美千子、野際陽子、本郷功次郎、寺田農、小栗一也、井川比佐志

『君は海を見たか』のオリジナル版

b0189364_20133605.jpg 以前紹介したドラマ、『君は海を見たか』のオリジナル版。前にも書いたが、『君は海を見たか』は都合3回作られており、最初に発表されたのが本作、続いて翌年に映画化され、さらにその11年後にフジテレビ版が製作された。最初の70年版と映画版は製作会社が同じで(大映)、しかも監督、子役が共通ということであることから、映画版はテレビ版のスピンオフであることが容易に想像される。ただ今回70年版を見た印象から言うと、82年版と70年版はシナリオ自体がかなり共通しており、放映時間を考えると70年版と82年版の方が、70年版と映画版より近いのではないかと思われる。実は今回も第1回から見ようとしていたのだが、内容、セリフが前に見た82年版とかなり共通していたために、途中で飽きてしまった。それで第6回から後を見てみたというわけである。
 キャストは当然、両者で大幅に異なっているのだが、どの俳優もうまい役者ばかりであるため、違和感はまったくない。僕はといえば、頭の中で82年版のキャストと随時置き換えながら見ていた。82年版で比較的重要な役割を演じていた下條正巳と平泉征が、70年版ではチョイ役で、1回限りの出演になっている。また寺田農はどちらの版でも中心的な役割を演じていた。
 先ほども言ったように、若干の違いはあるが、セリフを含めシナリオがかなり共通しており、しかもどちらもよくできているため、どちらかを見ていればもう一方を見る必要はあまりないかも知れない。ただ82年版で手が加えられた箇所は、倉本聰が10年を経た上で追加したいと考えたであろう箇所であるため、両方見る機会があるんだったら82年版の方をお奨めする。82年版はキャスティングも非常に良かったし、主役のショーケンも非常に力が入っていた。子役も魅力的だったし、何より完成度が非常に高かった。一方、この70年版には、第5回に読売ジャイアンツの長嶋茂雄、王貞治、高橋一三がゲスト出演する(単にボールにサインするだけだが)上、後楽園球場での野球の映像も少し入る。それにいろいろと当時の風俗(流行歌〈由紀さおりの「手紙」やシューベルツの「風」などがバックで流れていた〉やモノなど)が出て懐かしいんで、そういうのを期待する向きには70年版も良いかも知れない。ただどちらも現時点ではDVD化されていないため、実際のところ簡単には見ることができないというのが実情である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『君は海を見たか (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『わが青春のとき (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『わが青春のとき (2)〜(8)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-05-28 07:13 | ドラマ

『父の詫び状』(ドラマ)

父の詫び状(1986年・NHK)
原作:向田邦子
脚本:ジェームス三木
演出:深町幸男
出演:杉浦直樹、吉村実子、長谷川真弓、大塚ちか子、沢村貞子、井川比佐志、市川染五郎、殿山泰司、桜井センリ、岸本加世子(語り)

まさにエッセイ・ドラマ

b0189364_17455196.jpg 1981年にNHKテレビで放送された『あ・うん』と同じようなスタッフ、キャストで作られたドラマ。原作はやはり向田邦子のエッセイ集、『父の詫び状』である。あのエッセイ集では、作者自身が育った家庭のこと、特に父と母のことについて多くページが割かれていたが、そのあたりのエピソードを集めて、主人公(立場は向田邦子)から見た昭和初期の家族の有り様を再現し、ドラマ化したものがこのドラマである。
 このドラマに出てくる父(杉浦直樹)は、明治男にありがちな暴君で、子ども達に対してしきりに小言を言うし、妻(つまり主人公の母:吉村実子)に対して暴力を奮ったりもする。今風に言えば一種のDVであるが、妻も子ども達もそれが当然のこととして受け入れている。もっとも父の方も、こういった行動を家族の虐待のために行っているわけではなく、家庭内で自分をコントロールできない、またはコントロールしないせいでこうなってしまうのであって、悪意はないのである。昭和時代はまだこういった父親像は普通にあったのだ。そういう環境で育ったために子ども達の心がねじくれたということもそれほどあったわけではなく、当時の常識がそうだったということなのである。ただ今見ると、ちょっと許せないタイプの父親ではある。
 この父親、実は、子どもの頃から結構苦労を重ねてきており、現在は保険会社の支店長にまでなった人である。ところが、その保険会社の社長に対して平身低頭になっていたときに娘である主人公がそれを目撃して、父が外の世界ではそれなりに苦労している、単なる暴君ではなかったということを知った……そういうエピソードが、『父の詫び状』に収録されている「父の詫び状」というタイトルのエッセイで書かれているんだが、そのエピソードを柱にして再構築したのがこのドラマである。シナリオは向田邦子ではなくジェームス三木で(ドラマ製作時、向田邦子はすでに死去していた)あるが、いろいろなエピソードをうまく繋げており、ストーリーにはまったく違和感がない。本当に『あ・うん』を思わせるようなシナリオで、向田邦子が書いていてもこういう作品になるんではないかというような見事な構成力である。語りも岸本加世子である上、テーマ音楽にまでアルビノーニのアダージョが使われている。キャストもかなり『あ・うん』と共通する。ただし、これも他の向田作品と共通するんだが、面白味を感じるようなドラマチックな素材もあまりないのである。まさしくエッセイみたいなストーリーで、おそらく今の時代だと放送されることはないだろうというような素材である。脚本家が芸術家として正当に評価されていた時代で、しかもドラマの可能性がどんどん広がっていた時代だからこそ作られた作品と言えるかも知れない。最後にあ・うんの狛犬まで出てきたのは、向田邦子に対するオマージュなのか知らないが、なかなか奮っている。
第24回プラハ国際テレビ祭プラハ金賞
第13回放送文化基金賞本賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『父の詫び状(本)』
竹林軒出張所『あ・うん (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『続あ・うん (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(ドラマ)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく パートⅡ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-05-26 07:45 | ドラマ

『わが青春のとき』(2)〜(8)(ドラマ)

わが青春のとき (2)〜(8)(1970年・国際放映、日本テレビ)
原作:A・J・クローニン
脚本:倉本聰
演出:高橋繁男、今井雄五郎
音楽:宇野誠一郎
出演:石坂浩二、樫山文枝、塚本信夫、小栗一也、笠智衆、岩本多代、大滝秀治、左時枝、下元勉

窮屈な世界にもがきながらも
自分を通していく姿が魅力的


b0189364_18494145.jpg 1970年に日本テレビで放送されたドラマで、原作はクローニンというスコットランドの作家の作品(『青春の生きかた』)。脚本は倉本聰。
 第1回目を見た段階で大学の医局の閉鎖性をテーマにしたドラマだと思っていたが、それは序盤で終わった。風土病である首木病の研究に没頭していた若い研究者(石坂浩二)は、それが原因で医局の教授と対立し大学をクビになるわけだが、その後は診療所を渡り歩きながらも、自分の研究に邁進する。同時に、研究のせいで診療所の仕事をクビになったり、好きな女性(樫山文枝)とも別れたりして(彼女を取るか研究を取るかみたいに二者択一を迫られたりする)、いろいろなものを失う。まさに青春、まさに若気の至りで、タイトルがそのテーマを物語っている。背景にあるのは医学界の閉鎖性であるが、「すべてを犠牲にしても自己実現に突き進む若者」という構図がテーマになっている。主人公には厳しい現実が次々に襲いかかってきて、ストーリーとしても意外性のある展開になる。よくできたストーリーだと思う。
 また映像がかなり大胆で、いろいろと実験的なショットが出てくる。フォーカスを近景、遠景で交互に変えていくというような映像は当時一般的だったのかあまり憶えていないが、今見ると斬新にも思える。イメージ映像も多彩で、撮影監督がかなりがんばっているという印象である。
 キャストは前にも書いたようにかなり地味で、顔は見たことがあるが名前を知らないというバイプレーヤー俳優が多く出演している。有名なのは主役の2人と、あとは笠智衆と左時枝ぐらいか。大滝秀治が1回だけゲスト的に出て来るが、この頃の大滝秀治はそれほど名前のある役者ではなかったはずで(彼の名前が売れるようになったのは『前略おふくろ様』以降だと思う)それを思うと地味度も一層増す。もっとも、どの役者も皆うまく、派手さがないとしてもまったくドラマの上では構わないわけだ。とは言うものの、主演の2人は直前の大河ドラマ『天と地と』で主人公とその相手役を演じていたらしく、キャスティングの話題性は当時それなりにあったのかも知れない。
b0189364_18494595.jpg どの登場人物も医学用語を駆使し、本物の医学関係者のように見えるのも、演出の妙なのではないかと思う。特に笠智衆は、主人公の恩師の研究者(少し現実離れした変わった研究者)を好演していて実にお見事。奥村チヨが好きなどという遊びの設定も面白い。奥村チヨをはじめとして、当時の流行歌があちこちで流れるのも懐かしさを感じさせる。
 時代のせいか、全体的に展開が遅めで、今の観点から見ると少々いらだたしい部分もあるが、後半は一気に話が流れていき、映像の斬新さもあって、なかなか見せるドラマになっている。若者が窮屈な世界の中でもがきながらも自分を通していく姿は魅力的に映る。題材も目新しいものだし、予想できないストーリー展開も素晴らしい。一見地味で、最初は見続けるのに少々骨が折れる気もするが、見始めたら止められなくなる。あまり有名な作品ではないが、相当な快作と言える。なお、後の倉本聰作品に見られるような「倉本色」はまったくない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『わが青春のとき (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (70年版) (6)〜(8)(ドラマ)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』

by chikurinken | 2019-05-04 07:49 | ドラマ

『まんが道』(1)、(2)(ドラマ)

まんが道 (1)、(2)(1986年・NHK)
原作:藤子不二雄
脚本:大久保昌一良
演出:安江進、森平人
出演:竹本孝之、長江健次、冨士眞奈美、天地総子、磯崎洋介、蟹江敬三、小倉一郎、木原光知子、イッセー尾形、久米明、玉川良一、会沢朋子

熱い青春が心地良い

b0189364_16554675.jpg安孫子素雄(藤子不二雄A)が、マンガ家になるまでの青春記を描いたのが『まんが道』という作品で、元々はマンガ作品である(『まんが道』の最初はマンガ作品ではなくエッセイ風だったと記憶している)。青春記、しかもその後大成功した人の青春記であることもあり、かなり人気が高いマンガであったため、1986年にドラマ化され、NHKの『銀河テレビ小説』枠で放送された。
 このドラマ、過去数回見ているにもかかわらず、もう一回見たいもんであることよと思っていたんだが、あいにくレンタルしているところがなく、結局そのまま……という状態だった。そんな折、このたびBSトゥエルビとかいう何だか存在意義すらよくわからない放送局(テレビショッピングと韓国ドラマばかりやっているような局だ)で再放送されることになった。今回はそれを見ることができたというわけ。なおこのBSトゥエルビ、最近、これまでの活動を反省したのか知らないが、『早春スケッチブック』や『傷だらけの天使』まで放送することにしているらしい。
 ドラマ版の『まんが道』であるが、『銀河テレビ小説』枠ということで、朝のテレビ小説枠と同様、演出が明朗単純で、誰が見ても楽しめるようなタイプのややオーバーアクトな作品である。僕はこういう演出はまったく好きではないが、しかしストーリー自体が結構しっかりできていて、86年の初回放送時に見たときも内容に随分感心したという記憶がある。また、マンガ家になるという夢を追う主人公の二人の情熱が熱くて、いかにも青春記という感じの一途さが心地良く、見ていてものすごく気持ちが良い。それに今見るとキャストが超豪華で、20分の連続ドラマとは思えないほどである。久米明や玉川良一などの渋い役者に加えて、天地総子、木原光知子、イッセー尾形あたりもかなり異色の配役である。しかもこの1年後に作られた続編(『青春編』)では、森高千里、鈴木保奈美、水前寺清子まで登場すると来ている。
 『まんが道』は、先ほども述べたように安孫子素雄の自伝的作品で、この作品では安孫子素雄が「満賀道雄」(竹本孝之)、相棒の藤本弘が「才野茂」(長江健次)という名前で描かれている。キャラクターは、原作では満賀道雄がメガネでチビの少年、才野茂がのっぽの少年として描かれているが、このドラマではキャラクターが入れ替わっている。つまり長江健次が演じる才野茂の方が、メガネの少年なんである。これまで何度もこのドラマを見ていた(しかも原作も読んでいた)にもかかわらず、このことに今までまったく気付かなかった。今まで何を見ていたのかと突っ込まれてもしようがない。
 現時点では第1回と第2回が放送されたところだが、この後、東京に出ていって手塚治虫(江守徹)に会い、マンガ家としての人生が開けていくというふうに話が進んでいく。先ほども言ったように、ストーリー以外にキャスティングも非常に面白くて見所が多いドラマだが、何と言っても夢を追う主人公2人の熱さが最大の見所である。次の回も早く見たいところだが、なんと次の放送は2週間だか3週間後だそうな。初回放送時は全15話が3週間で完結したんだがね。つまらん番組ばっかりやってないで、こういう作品をちゃんとした形式で放送してほしいもんだ(初回放送時と同じように1日20分を3週間で放送するというのが理想である)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『まんが道 (3)〜(15)(ドラマ)』
竹林軒出張所『トキワ荘青春日記―いつも隣に仲間がいた…(本)』
竹林軒出張所『夢追い漫画家60年 (100年インタビュー)(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の青春(映画)』
竹林軒出張所『まんが トキワ荘物語(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道(本)』
竹林軒出張所『烏城物語(本)』

by chikurinken | 2019-05-02 07:55 | ドラマ

『フルーツ宅配便』(2)〜(12)(ドラマ)

ドラマ24 フルーツ宅配便 (2)〜(12)(2019年・テレビ東京)
原作:鈴木良雄
脚本:根本ノンジ
演出:白石和彌、沖田修一、是安祐
音楽:高田漣
出演:濱田岳、仲里依紗、松尾スズキ、荒川良々、前野朋哉、原扶貴子、田中哲司、徳永えり、山下リオ、北原里英、成海璃子、山口美也子、筧美和子

世相を見事に映し出したドラマ
それでいてエンタテイメントとして成立している


b0189364_15151869.jpg 鈴木良雄の同名マンガのドラマ化作品。原作マンガの『フルーツ宅配便』は、「フルーツ宅配便」という名前のデリヘル業者での人間模様を描く作品で、現代の世相や貧困を赤裸々に描いているリアリズム・マンガである。
 主人公の咲田真一(濱田岳)が、ひょんな巡り合わせで、デリヘル店「フルーツ宅配便」の見習い店長になる。そこに集まるワケありのデリヘル嬢が中心になって話が展開していくという作品である。原作に基づく話が中心で、そこに、全体を貫くドラマなりのストーリーが絡んでいく。原作で描かれる女性の貧困の話がかなり辛いもので、そのままドラマにしてしまうと現実世界の厳しさが前面に出てきて救いがなくなる。そのためもあって、笑いやとぼけた要素も交えて、エンタテイメント的な要素も存分に入れられている。ドラマとしては、非常に良い配慮だと思う。
 ドラマでは(原作でもそうだが)毎回1人のデリヘル嬢が主人公になって、その女性の背景が描き出される(ほとんどは金やダメ男に苦しんでいる話)。タイトルもその主人公の源氏名(果物の名前)になる。「ドラゴンフルーツ」(ドラゴンフルーツという源氏名の女性は、伝説のデリヘル嬢であるが今は掃除婦をやっているばあさんという設定)は原作ではものすごいインパクトがあったが、ドラマではなんと山口美也子が演じていて、「山口美也子が婆さん役か……」と思うと、なかなか複雑な心境になった。b0189364_15152311.jpgキャストで言えば、第2回では成海璃子がモモ役でデリヘル嬢を演じていて、少々場違いな印象を受けたが、存在だけでインパクトがあった。なおこの回は、元木大介が本人役で出ていたが、意図がわからない。どうして元木だったのか、せっかく出すんならもう少し大物でないとつまらないだろうと思うが(それなりに面白さはあったが)。
 ドラマではともすると、人身売買とか覚醒剤とか暴力とか、ダークな世界が出てくるので、必ずしも楽しい気分になるようなドラマではない。EGO-WRAPPIN’のオープニングテーマ曲(「裸足の果実」)がこういったダークな雰囲気を定義しているようにも思え、なかなか良い選曲だと思わせる。エンディング曲は逆に少々明るい音楽で、ドラマで少し沈んだ気持ちが和らげられ救いがもたらされる。高田漣の選曲らしいが、非常にお見事である。
 原作の味を活かしながらも、連続ドラマとして成立するような改変を施しているなど、全体的にはよく練られた脚本と言える。ただし最後の方で、風俗嬢が売り飛ばされ一生監禁されるという「売春島」などというネタが出てきたりして、見ていてアホらしくなってくる。もう少し何とかならなかったものかと思う。原作がリアリズムの作品で、それが根底にあるんだからファンタジーを盛り込んじゃいけません。濱田岳と仲里依紗の魅力で何とか成立していたのが救い。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『フルーツ宅配便 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『貧乏まんが(本)』
竹林軒出張所『最貧困女子(本)』
竹林軒出張所『アオイホノオ (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『俺のダンディズム (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『終電バイバイ(2)〜(4)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-04-09 07:18 | ドラマ

『二つの祖国 後編』(ドラマ)

二つの祖国 後編(2019年・テレビ東京)
原作:山崎豊子
脚本:長谷川康夫
演出:タカハタ秀太
出演:小栗旬、多部未華子、仲里依紗、高良健吾、ムロツヨシ、池田エライザ、橋本マナミ、田中哲司、リリー・フランキー、中村雅俊、ビートたけし、笑福亭鶴瓶、織田信成

「時代錯誤」的なドラマになった

b0189364_17051925.jpg 山崎豊子原作の同名小説のドラマ化作品。「テレビ東京開局55周年特別企画」という副題が付いている。
 後編は、米軍の戦後処理、日本への進駐がストーリーの背景になる。主人公の賢治(小栗旬)は、なんと東京裁判にモニター(通訳を監視する役)として参加することになる。とにかく登場人物を歴史の最前線に持ってこようという原作者の意図が見え隠れして、作為性を感じてしまう。それはたとえば、同じく主役級の梛子(多部未華子)が(戦時中も米国に住んでいた日系米人でありながら)原爆投下の瞬間に立ち会い、被曝するというストーリーにも現れている。登場人物が歴史的な重大事件にそう都合良く関わるなんてことはいくらなんでも無理がある。歴史ドキュメンタリーじゃないんだから、そこまで歴史的事象の中に入っていかなくても良いだろうと思うが。
 しかしそのために東京裁判の模様まで描かれることになり、東京裁判のシーンが再現されることになった。で、大川周明(笑福亭鶴瓶)が東條英機(ビートたけし)の頭を張るシーンも再現されているが、残念ながら他のシーンとまったく脈絡がなく、結局「再現」で終始してしまっていた。大川周明は単に変なオッサンとして描かれており、東條英機もまったく東條らしさがない(東條ではなく、ヅラをかぶったたけしにしか見えない)。
 総じて、無理に登場人物を動かしている(これは原作の問題)、キャストに無理なセリフを言わせている、役者の演技も大ぶりでなっていない(特に多部未華子と仲里依紗。他のドラマでは割とうまいのに、このドラマではセリフ回しがまるで舞台劇のようでクサかった)など、いろいろアラが目立つドラマになってしまった。そのためドラマ作り自体が、全体的に「時代錯誤」であるような印象さえ受ける。テーマは伝わってくるが、こちらも何だか教条主義的で面白味がない。このドラマを5時間もかけて見るぐらいなら、同じ素材を扱ったドキュメンタリーを見た方が、はるかに有意義だったと思う。
 それからさらにもう一つ、ドラマの挿入音楽がことごとく60〜70年代のアメリカンポップスで、内容との脈絡がまったくなく、完全に浮いていたことも付け加えておきたい。音楽的な趣味の悪ささえ感じた。
★★★

参考:
竹林軒出張所『二つの祖国 前編(ドラマ)』
竹林軒出張所『ドラマ 東京裁判 (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『華麗なる一族(映画)』
竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』

by chikurinken | 2019-03-30 07:04 | ドラマ

『二つの祖国 前編』(ドラマ)

二つの祖国 前編(2019年・テレビ東京)
原作:山崎豊子
脚本:長谷川康夫
演出:タカハタ秀太
出演:小栗旬、多部未華子、仲里依紗、麻生祐未、松重豊、高良健吾、新田真剣佑、ムロツヨシ、池田エライザ、柄本佑、仲村トオル、泉谷しげる

後編の東京裁判が唯一の愉しみ

b0189364_18464357.jpg 山崎豊子原作の同名小説のドラマ化作品。「テレビ東京開局55周年特別企画」という副題が付いている。
 主人公は日系米人で、太平洋戦争時の米国内での日系人迫害から戦後処理に至るまで話が続く。前編は太平洋戦争末期までで、日系米人たちが自分のアイデンティティについて思い悩むというのが、この前編のテーマである。ブラジルの日系人社会で起こったような(竹林軒出張所『遠い祖国 前・後編(ドキュメンタリー)』を参照)、親日愛国主義者と親米日系人とのせめぎ合いもある。あわせて家族や夫婦の問題も扱われ、ストーリーは重層的である。
b0189364_18464914.jpg キャストも割合豪華で、原作も相当な力作と思わせるが、無理なストーリー展開が少々鼻につく。前線で敵味方に別れた主人公兄弟が出会ったりするという展開があるが、これは相当無理な設定であって、こういうのを目にすると途端に白けてしまう。こんなシーンは要らないというか、むしろない方が良いと思うがどうだろう。
 それにセリフがこなれていないせいか、多部未華子が非常に演じにくそうで、終始妙なアクセントでしゃべっている(あるいは演出のせいか)。他のキャストも今一つという印象が強い。見る前の期待が大きかったため、その辺が余計ガッカリではある。ただ後編では東京裁判のシーンが再現されるらしく、そのあたりが一番の楽しみになるのではと思う。東京裁判の席で、大川周明が東條英機の頭を張るシーンも再現されているらしい。
★★★

参考:
竹林軒出張所『二つの祖国 後編(ドラマ)』
竹林軒出張所『華麗なる一族(映画)』
竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
竹林軒出張所『遠い祖国 前・後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『総書記 遺された声(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-03-29 07:46 | ドラマ