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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 234 )

『俺たちの旅 二十年目の選択』(ドラマ)

俺たちの旅 二十年目の選択(1995年・ユニオン映画)
脚本:鎌田敏夫
演出:齋藤光正
出演:中村雅俊、金沢碧、秋野太作、田中健、上村香子、岡田奈々、森川章玄、石井苗子、神田うの、左時枝、平泉成

元祖・同窓会ドラマ

b0189364_16202884.jpg 1975年代に日本テレビで放送された群像ドラマ、『俺たちの旅』は当時の若者たちの間で絶大な支持を得た。カースケ(中村雅俊)、オメダ(田中健)、グズ六(秋野太作)という3人の若者が同じアパートで同居し、あれやこれやの青春を繰り広げるというドラマで、僕自身は正直言ってそんなに面白いとは思わなかったが、成績優秀の同級生、ヤマナミ君が「『俺たちの旅』おもしろい!」と訴えていたのが印象に残っている。
 こういった人気を集めた群像ドラマであれば、当然「その後の姿」というのもドラマとして格好の素材になるわけで、そういう類の続編は他のドラマでもたびたび作られている。で、今回、最初の『俺たちの旅』放映から20年後に作られた『二十年目の選択』というタイトルの続々編(10年後バージョンもある)が放送されたんで、それを見たわけである。
 中身は、カースケ、オメダ、グズ六が40台になっており、それぞれエラくなっているという話で、それでもそれぞれ少しずつ問題を抱えていて、人生に迷うというような風にストーリーは展開していく。ただし基本は、以前の登場人物が集まって過去を懐かしむというのが話の芯の部分になる「同窓会ドラマ」である。したがってオリジナルの『俺たちの旅』にかなりの思い入れがない限り、大して面白くはない。ストーリーもバカバカしくて惹かれる部分はあまりない。随時、70年代のフォーク音楽が流れるのもいかにも「同窓会ドラマ」という感じがして片腹痛い。
 脚本は鎌田敏夫で、これはオリジナル版と共通である(『俺たちの旅』が鎌田敏夫作だということはまったく知らなかった)。鎌田敏夫は『男女七人夏物語』みたいな同様の群像ドラマも書いていて、しかもあのドラマでも、こういった類の同窓会ドラマが作られたように記憶しているが、そうすると鎌田敏夫は群像同窓会ドラマの巨匠なのか。しかもどの作品も、浅くて面白味がないという点も共通している(あくまで個人の感想です)。それでも当時、世間ではこういったドラマが人気を集めていたわけで、(僕から見ても)ブラウン管を濁す程度の役割は十分果たしていた。ということで、僕がことさらいろいろ言う必要もないんだろう。ただこのドラマについては、取って付けたようなシーンが多い上、セリフに面白味がないとか、気恥ずかしいセリフが多かったりとか、そういうことは見ていて感じたんで、それについてはここで書いておこうかなと思った次第である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『舞踏会の手帖(映画)』
竹林軒出張所『わたしのペレストロイカ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-11-24 07:20 | ドラマ

『君は海を見たか』(1)〜(11)(ドラマ)

君は海を見たか (1)〜(11)(1982年・フジテレビ)
脚本:倉本聰
演出:杉田成道、山田良明
音楽:朝川朋之
出演:萩原健一、高橋恵子、伊藤蘭、田中邦衛、柴俊夫、六浦誠、小林薫、梅宮辰夫、下條正巳、平泉征、高岡健二

難病患者を家族に持つ人間の心理描写が見事

b0189364_18434264.jpg 若くして妻を亡くした仕事人間のサラリーマン(萩原健一)が主人公。現在小学生の子ども(六浦誠)がおり、家では妹(伊藤蘭)が母代わりで子どもの面倒を見ている。そういう状況で、子どもが病気で入院することになった。その後、子どもがウィルムス腫瘍という難病であることが判明。当初は、それでも仕事優先で邁進していたが、やがてそれが原因(上司の親心である)で大きな進行中のプロジェクトの担当から外される。はじめは子どもとの接し方が分からないなど(長いことまともに相手していなかったため)いろいろと壁に突き当たるが、徐々に子どもと接する時間が長くなり、心も通い合うようになる。余生3カ月と診断されているため、子どもの残りの人生を充実させようと奮闘するようになるというようなストーリー展開になる。ごく大雑把に言うとそういう内容だが、他にも主人公の再婚がここに絡む他、子どもを失うという事実を前にして狼狽する親の心情がうまく描かれていて、しかも子どもの教育の問題にも踏み込んでいる。そのため、中身はかなり充実している。
b0189364_18445923.jpg 実はこのドラマ、この10年以上前に日本テレビでも製作されているらしく、しかもその後映画化までされたため、この作品で3回目のドラマ化ということになる。言ってみればリメイクだが、『北の国から』でヒットを飛ばした半年後に、同じフジテレビの『金曜劇場』の枠で放送された作品であるため、かなり力が入っている。シナリオの完成度も高く、ドラマとしては割合ありきたりな「不治の病」テーマでありながら、悲劇にとどまらない奥深さが全編漂っている。さまざまな問いかけもあり、それは『北の国から』と共通するテーマであったりもするんだが、非常に意欲的という印象である。
 キャストは、『前略おふくろ様』の萩原健一と梅宮辰夫に『北の国から』の田中邦衛など。萩原健一は『前略おふくろ様』と違って落ち着いた演技で迫真である。梅宮辰夫の課長も異色の役(部下が休み返上で仕事に駆けずり回っているにもかかわらず、休日はきちんと取るような非会社人間)どころを淡々と演じていて好感が持てる。他にも、ゲスト的に小林薫、戸川純、水沢アキ、長谷川初範、大友柳太朗、ガッツ石松、芹明香らが単発で出てくるなど、キャストは結構豪華である。『中学生日記』で風間先生を演っていた湯浅実が医師として登場するのも新鮮である。
b0189364_18440142.jpg ドラマの中で使われている谷川俊太郎の詩『生きる』も大変効果的で良い。またテーマ曲のショパンのワルツ第10番(遺作)もうまい使われ方で感心する(朝川朋之の編曲も非常に良い)。同じ倉本聰作品の『風のガーデン』でもショパン(夜想曲第20番(遺作))をアレンジしたものが使われていたが、あれよりも数段上品で良い。全体に渡って(特に後半)隙のない佳作で、黄金時代の倉本聰+フジテレビの勢いを感じさせるドラマであった。今見てもあまり古さを感じさせないという点も、完成度の高さを反映しているのではないかと思う。もっとも病院で医師がタバコを吸ったりするのは時代だなーと思う。当時、このドラマが終わった後、同じ枠で放送されたドラマが山田太一の『早春スケッチブック』(これも死がテーマ)であったというのもすごい。金曜劇場、今考えると非常に豪華であった。
★★★★

追記:
 舞台美術家の妹尾河童が「アートディレクター」として名を連ねていて、どういう風にこの番組に関わっていたのかは詳しく分からないが、途中一瞬出てきた子ども部屋(ヨットのキャビン風)の透視図が彼の作であることは見てとれた。この子ども部屋の内装ももしかしたら彼がやったのかも知れない。

参考:
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『あっこと僕らが生きた夏(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-11-23 07:42 | ドラマ

『ルーツ』(5)〜(6)(ドラマ)

ルーツ (5)〜(6)(1977年・米)
 第5話 自由への賭け
 第6話 新たなる天地を求めて
原作:アレックス・ヘイリー
脚本:アーネスト・キノイ、ジェームズ・リー
演出:マーヴィン・J・チョムスキー他
出演:レスリー・アガムス、チャック・コナーズ、ベン・ベリーン、リチャード・ラウンドトゥリー、オリビア・コール、ゲオルグ・スタンフォード・ブラウン、ブラッド・デイヴィス、ロイド・ブリッジス、バール・アイヴス


苦難の登場人物が現代に繋がる

b0189364_17093288.jpgネタバレ注意!

 アレックス・ヘイリーの『ルーツ』をドラマ化したもので、77年に全米でテレビ放送され大ヒットした作品。
 第5回は、キジーの息子、ジョージ(通称チキン・ジョージ)が主人公である。闘鶏師として腕を上げたジョージは、やがてマチルダと結婚し、子どももできる。だがその後、ジョージの所有者である農園主(実の父の白人)と心情的に対立するようになる。そんな折、賭け闘鶏で大勝負に出たその農園主は、ジョージの奮闘も虚しく惨敗し、財産を失ってしまう。その抵当として、優れた闘鶏師であるジョージの所有権を譲ることになり、ジョージは数年間英国に渡ることになる。
 第5回の後半は、ジョージの息子トムの世代。14年後に米国に帰ったジョージは、妻と息子のもとを訪ねる。そして自分が自由な身になり奴隷身分から解放されたことを打ち明ける。ただしこの地(妻と息子が住んでいる州)の法律では、この州に6カ月以上とどまった自由黒人は自動的に奴隷になるという条項があり、やむなくジョージは、妻と子ども達を置いて他の州へ去る。その後、南北戦争が始まる。トムは差別主義の白人たちと対立していく。
 最終回は、その後のトムの一家の様子。南北戦争で南部が敗北し、黒人奴隷が解放されることになる。とは言え、白人同様の扱いになるわけではなく、身分が奴隷でなくても実質的には農奴的な生活を余儀なくされる。一方で、白人と対等な関係を主張するトムは、白人たちのリンチを受けることにもなる。そんな折、チキン・ジョージが戻ってきて、北部に農園を手に入れたから全員でそこに移ろうと申し出る。農奴を手放したくない白人たちとの戦いが始まる……。
b0189364_17094184.jpg ジョージはドラマの最後に、息子や孫たちを前にして語る。「我が家の最初の奴隷は、じいさんのクンタ・キンテだ。だが、じいさんは奴隷になる前は自由だった。遠いアフリカという国にいた。だが、太鼓を作るため木を探していて奴隷商人に捕まった。そしてアメリカのアナポリスに連れてこられた。クンタ・キンテは自分の生まれた国を決して忘れなかった。そして自分の国の言葉も。コーはハープで、カンビ・ボロンゴは川のこと。彼は自由になるために戦った。逃げられぬよう足を切られたあとでも。死ぬ前に、自由への夢を娘、キジーに託した。キジーはその夢を、次のジョージに託した。ジョージは、それを息子たちに。自由になる日まで。そしてついに自由になった。」
 そして最後の最後に来るシーンは、アレックス・ヘイリー自身が登場して語る後日談である。トムの娘は、新しい農園で成長し、やがて材木商を営む黒人と結婚。その2人の間にできた娘はヘイリーという名の教師と結婚。そしてその間に生まれたのが原作者のアレックス・ヘイリー。ジョージが子孫たちに語った先祖の歴史が、ヘイリーの世代(クンタ・キンテの7代後)まで語り継がれてきた……と語られる。
 第1回から第4回までと同様、全編非常に劇的で、見所も多い。ただし第6回は、少々演出を劇的にしすぎたせいで、やり過ぎ(演出過剰)の感が出てきた。視聴者を引き付けなければならないテレビドラマという観点から見れば仕方がないのかも知れないが、多少興が醒める。それでも、黒人の理不尽な被差別の有り様をまざまざと見せつけられ、差別というものがどういうものであるかが実感できるという点で、素晴らしいドラマであることには変わりない。最後にヘイリー自身が出てきて、このドラマの登場人物たちと自分との繋がりを語るという演出も大変よくできている。このドラマは、放送時、アメリカで(そして日本でも)非常に注目され高い視聴率を獲得したが、あの時代の人権意識の高さを物語るようなエピソードだと思う。今の時代みたいに人権意識が希薄になりつつある時代にこそこういったドラマが必要ではないかと思うが、今放送されたところであまり注目されないかも知れないとも感じる。
 毎回のようにゲストキャストが出ていたが(前回も書いたが、実は知らないゲストが多かった)、第6回は、カントリー歌手のバール・アイヴスがそれに当たるようだ。ただしバール・アイヴスも、O・J・シンプソンやスキャットマン・クローザース同様、当時すでに俳優活動をやっていたため、他のキャストから浮いているというようなことはまったくない。
プライムタイム・エミー賞作品賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ルーツ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『キング牧師とワシントン大行進(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『グローリー 明日への行進(映画)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン(本)』

by chikurinken | 2018-11-10 07:09 | ドラマ

『ルーツ』(1)〜(4)(ドラマ)

ルーツ (1)〜(4)(1977年・米)
 第1話 さらば母なる大地
 第2話 誇り高きマンディンカの戦士
 第3話 我が妻 我が娘
 第4話 愛する者たちの別離
原作:アレックス・ヘイリー
脚本:アーネスト・キノイ、ジェームズ・リー
演出:デヴィッド・グリーン
出演:レヴァー・バートン、ジョン・エイモス、タルマス・ラスラーラ、エドワード・アズナー、ルイス・ゴセット・Jr、ヴィック・モロー、ローン・グリーン、マッジ・シンクレア、ロバート・リード、レスリー・アガムズ、チャック・コナーズ、ベン・ベリーン、リチャード・ラウンドトゥリー

アメリカの黒人の血を辿る一大叙事詩

b0189364_18094550.jpgネタバレ注意!

 アレックス・ヘイリーの『ルーツ』をドラマ化したもので、77年に全米でテレビ放送され大ヒットした作品。当時日本でも放送され、話題になった。僕自身も当時テレビで見て、おおきな感銘を受けた。原作はヘイリー自身の先祖数代に渡る歴史を描いたもので、アフリカのガンビアで捉えられ奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられたクンタ・キンテからの苦難が描かれる。
 ガンビアのマンディンカ族の戦士の血を引く若者クンタ・キンテは、奴隷商人に捕まり奴隷船で米大陸に運ばれる。奴隷船の中では多くの奴隷たちが死んでいく(反乱で死んだ者もいる)。大陸に着くと、今度は奴隷として白人の農園主に売り飛ばされる。マンディンカ戦士としてのプライドを持ち続けるクンタは自由を求めて脱走を何度も試みるが、そのたびに捕まりひどい仕打ちを受ける。ここまでが第2話までで、主演は当時学生あがりだった新人俳優、レヴァー・バートンが務める。
 第3話はその9年後の話で、ここから主演はジョン・エイモスに変わる。成人後のクンタ・キンテ役である。主人公のクンタ・キンテは、再び脱走を試みるが捉えられ、罰として足先を切り落とされる。その後、別の農園主の元に売られて、そこで料理女のベルと知り合い、彼女と結婚し娘を授かる。そしてこの地で家族とともに生きることを決意するというのが第3話。
 第4話はさらに16年後。娘のキジーが話の中心になる。キジーはある問題から別の農園主に売られ、親子が引き離されることになる。その後、新しい農園主に手込めにされ男の子を産む。第4話の後半は、それからさらに18年後。息子ジョージが立派に成長し、闘鶏用の鳥番として主人の信頼を集めている。キジーの方は別の黒人男サムと良い仲になり結婚の約束もするが、結局彼の奴隷根性に愛想が尽きて結婚を解消する。キジーには父クンタ・キンテから引き継いだ自由な人間としてのプライドがあったのだった……というストーリー。
b0189364_18095214.jpg 1話あたり90分だが、1話と2話が奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられるまでのクンタ・キンテ、3話が奴隷として家族を持つクンタ・キンテ、第4話が娘のキジーという具合に、だんだんスパンが短くなる。この後の第5話と第6話で完結するわけだが、第5話がジョージの世代、第6話がその子どもの世代という具合に話が進んでいく。このドラマについて出演者やスタッフが一様に「saga(サーガ)」と呼んでいたが、まさしく奴隷としての生き方を強要された黒人の、その家系の百数十年を辿る叙事詩になっている。奴隷船での非人道的な扱いや農園での無常な売買などで虐げられる黒人たちの有り様がリアルに描かれて、見るのが辛くなるような厳しい映像が出てくる。これが当時の黒人たちの現実だったということが窺える(奴隷船の撮影ではエキストラの黒人が使われていたが、あまりに過酷で屈辱的だったためか80%のエキストラが翌日現れなかったらしい)。主人の機嫌を伺いながら生き、かと思うと突然気まぐれなひどい扱いを受けたりもする。しかも終始劣等な人間として扱われる。黒人側は(そして見る側も)終始、こういった理不尽な扱いに憤りながらも結局媚びながら生きるしかないということを思い知らされる。
 放送当時かなり話題になって実際にアメリカでの視聴率も高かったらしいので、当時の(白人を含めた)人々に与えたインパクトはかなりのものだったんではないかと思う。現在のように差別主義が跋扈する時代にこそ、こういう作品を大勢の人間が見た方が良いのではないかと感じる。
 なお、第1話、第2話あたりまでゲスト扱いでさまざまな有名俳優が出ているようだ(ほとんどの俳優については知らなかった)。僕がわかったのは、第1話のO・J・シンプソン(元フットボール選手)と第4話のスキャットマン・クローザース(ミュージシャン)くらいだったが、この2人、俳優の活動もやっていたため、アメリカ人にとってはあまり目新しさもなかったのかも知れない。O・J・シンプソンは、ドラマの中でも恐るべき俊足を見せていた。
プライムタイム・エミー賞作品賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ルーツ (5)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『キング牧師とワシントン大行進(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『グローリー 明日への行進(映画)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体(本)』

by chikurinken | 2018-11-09 07:09 | ドラマ

『テス(2008年ドラマ版)』(ドラマ)

テス(ドラマ版)(2008年・BBC)
原作:トーマス・ハーディ
脚本:デヴィッド・ニコルズ
演出:デヴィッド・ブレア
出演:ジェマ・アータートン、エディ・レッドメイン、ルース・ジョーンズ、ハンス・マシソン、ジョディ・ウィッテカー

何だか冴えない

b0189364_19150595.jpg トーマス・ハーディ原作の『テス』のドラマ・バージョン。製作はBBC他。
 『テス』は、1979年に作られたナスターシャ・キンスキー主演の映画版が有名で、僕もかつてこちらを見たが、内容はほとんど憶えていなかった。そのため今回のドラマも内容についてはかなり新鮮に感じた。ただしストーリーは不幸な女性の話であり、非常に通俗的で湿っぽい。原作が文楽だと言われても通るような話で、義太夫節が聞こえてきそうと言えば言い過ぎか。
 英国の下層階級に属している(実は上流階級という設定)テスの元に不幸が次から次へとやって来るが、一方で幸福な時期もそれなりにあり、それが余計不幸度を強調するという構成。元々『テス』が発表されたのが19世紀末の英国で、当時のヨーロッパ諸国で下層階級が結構辛い生活を強いられていたことを考えると、実際に起こりうるリアルな話で、ある意味リアリズムの作品とも考えられる。とは言え、少なくともドラマ版からはもう一つ迫ってくるものがない。
 主人公のテスを演じるのはジェマ・アータートンという人。この女優のことはまったく知らなかったが、率直に言って何だか冴えない。テスと言えばモテモテの登場人物である。b0189364_20140060.jpgこの女優、それなりに美形とも言えるが、引き付けられるような魅力はまったく感じない。冒頭の大勢の女性のダンスのシーンではどの女性が主人公なのかしばらく気付かなかったぐらいである。他のキャストも同様で、アレック(役の俳優)もエンジェル(役の俳優)ももう一つ冴えない。波瀾万丈のストーリーのドラマでそれなりに楽しめるのだが、あまり惹かれるところがなかったというのが正直なところである。最後の方は過剰なセンチメンタリズムに少々うんざりする。これが原作のせいなのか、ドラマのせいなのかはよくわからない。そういうわけで、ナスターシャ・キンスキーの映画バージョンももう一度見てみたいと思った(見るかどうかはわからないが)。
★★★

参考:
竹林軒出張所『レ・ミゼラブル (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『白鯨(ドラマ)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年)(ドラマ)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(2015年)(ドラマ)』
竹林軒出張所『クロムウェル 英国王への挑戦(映画)』
竹林軒出張所『ジョン・レノンの魂(ドラマ)』
竹林軒出張所『「英雄」〜ベートーベンの革命〜(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-10-23 07:13 | ドラマ

『炎立つ 総集編』(1)(ドラマ)

炎立つ 総集編 (1)(1993年・NHK)
原作:高橋克彦
脚本:中島丈博
演出:門脇正美、三井智一他
出演:渡辺謙、村上弘明、古手川祐子、村田雄浩、新沼謙治、佐藤慶、佐藤浩市、豊川悦司、里見浩太朗、財前直見、萩原流行、坂本冬美

大河ドラマは幕末と戦国だけじゃない

b0189364_16564222.jpg 平安時代末期に栄えた奥州藤原氏を扱った大河ドラマ。1993年に放送されたもので、大河ドラマとしては珍しく3部構成になっている。第一部「北の埋み火」が全12回で、藤原経清(渡辺謙)が主人公である。奥州に渡った経清が、安倍氏が支配する東北の金を狙う国司、藤原登任(名古屋章)の不正を目の当たりにして、この国司と対峙する安倍氏側に与するようになる。藤原登任は安倍氏の平定に失敗しやがて国司を解任されるが、その後奥州に入った源頼義、義家親子が安倍氏を平定しようとして、安倍氏との間で長い戦闘状態に入る。これが前九年の役である。これが第一部。
 第二部「冥き稲妻」は、安倍氏が滅んだ後、その安倍氏の領地を代わって支配した清原氏の話で、経清の子どもである藤原清衡(村上弘明)が台頭し、最終的に清原氏を滅ぼして支配権を手中に収めるまでの話で、要するに後三年の役がこれに当たる。
 第三部は、その80年後、繁栄する奥州藤原氏が、源頼朝の画策で滅ぼされる過程が描かれる。言ってみればこの『炎立つ』、奥州藤原史になっていて、3つの時代に区切ったためにダラダラと続かずに非常に引き締まった構成になっていた。特に第一部で描かれる藤原経清と安倍貞任(村田雄浩)の友情が非常に気持ち良く、最初に見たときから印象に残っていた。また、登場人物達のさまざまな複雑な思いが表現されているなど重厚な面も備えており、NHK大河ドラマの中ではもっともできの良い部類の作品であった。ただ第二部、第三部は、目新しい素材であったために新鮮だったが、第一部に比べて若干落ちるという印象を持っていた。今回も第三部は結局見ずじまいで終わった。
 で、そのあたりのいきさつがウィキペディアに載っていて、何でも原作が第一部までしかできておらず、第二部以降は脚本家が、原作ができあがる前にどんどん話を先に書いたらしいのである。そのために原作者と脚本家の間に一悶着あったという話も、脚本家によって『シナリオ無頼』という著作の中で披露されているらしい(この本読んだはずなんだが、このエピソードについてはまったく記憶になかった)。
 ドラマについては、渡辺謙と村田雄浩が非常に好演で、佐藤慶、佐藤浩市、豊川悦司も強烈な個性を演じていて水準が高い。また大道具が昨今の大河ドラマと違って、豪華でよくできているのも目に付いた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『火怨・北の英雄 アテルイ伝 (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『大河ドラマ 平清盛 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『シナリオ無頼(本)』

by chikurinken | 2018-10-22 07:56 | ドラマ

『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』

二人の世界(1)〜(26)(1970年・木下恵介プロ、松竹、TBS)
演出:木下恵介、川頭義郎、横堀幸司
脚本:山田太一
音楽:木下忠司
出演:竹脇無我、栗原小巻、あおい輝彦、山内明、文野朋子、東野孝彦、三島雅夫、小坂一也、水原英子、太宰久雄、武智豊子、矢島正明(語り)

人に歴史あり、店に歴史あり

b0189364_13495462.jpg 山田太一初期の傑作『二人の世界』を12年ぶりに見る。前にもレビューを書いており、しかも内容がよく書けているため今回は良いかと思っていたが、やはり印象が強く、何か書いておくべきと感じる。
 何よりも善意の人々が多く出てきて心地良い。最近『スカッとジャパン』に出てくるような危ない奴に出会うことが続いて、嫌な気持ちが続いていたんだが、このドラマを見て少し気持ちが和らいだ。それにこのドラマにもちょっと危ない奴が出てきて、主人公も同様に気分が落ち込んだりしているのが、また共感を呼ぶ。前にも言ったように、ナレーションがやたら多いとか、今の時代から見るとところどころ違和感があるが、しかし素晴らしいセリフも随所に散りばめられていて、山田太一の面目躍如と言える作品に仕上がっている。全編フィルム撮影されているため、70年のカラー作品でありながら、今でも残っていたというラッキーな作品でもある(この頃ビデオで撮影された作品は、多くが失われている)。かつて改革開放前の中国でも放送されたことがあるらしく、栗原小巻は中国でも人気があるとか(竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』を参照)。もちろんこのドラマの栗原小巻、それから竹脇無我は非常に魅力的である。
 少し前に放送された『3人家族』と同じようなスタッフ、キャストで、主人公の2人の役回りも同じなんで、最初は恋愛話かと思って見ていると、第6回で突如、恋愛話が終わってしまって、その後、一体どういう方向に進むのか気になって見続けるというドラマである。前も書いたが、子供の頃、親が一生懸命このドラマを見ていて、だが僕はこの時間帯(21時から放送だったと思うが)すでに寝る時間で、そのためにテーマ曲だけが耳に入っていた。あのあおい輝彦のテーマ曲がまたメロウで良いのである。そのときも子ども心に恋愛ドラマだと思っていたのだ。
 音楽と言えば、音楽監督は木下恵介の弟、木下忠司で、音楽もあまり目立たないが非常に良い仕事をしている。ところどころ水戸黄門風になるが、それは同じ作曲家だから仕方ない。
 登場人物で言えば、物わかりの良い麗子の父(山内明)とコックの沖田(三島雅夫)が、出てくるのが楽しみになるような存在で、非常に魅力的である。あおい輝彦は『3人家族』同様、好人物を演じているが、今回は『3人家族』よりやや引いた位置付けという感じである。
 また、冒頭のタイトルバックが非常に上品なのも良い。ジャン・コクトーのリトグラフが部分部分映されるだけの映像だが、落ち着きがあって、心が安まる。テーマ曲と合わせて、本編に対する期待感を膨らませるような役割も果たしている。
 今回、何本かずつ連続で見たために、途中、少し気が抜けたような気がした回もあったが、ストーリー上それなりにいろいろと困難が出てきて、いろいろな人々の善意で助けられるという展開は、適度な緊張感が続いて、連続ドラマとしてはこれ以上ないくらいよくできていると思える。気持ちが暗くなって人を信用できなくなったらもう一度見ようかと思えるような「素敵な」ドラマである。
 せっかくなので、すべての回のストーリーを簡単にまとめておこうと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』
竹林軒『遙かなり 木下恵介アワー』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』
竹林軒出張所『3人家族 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』

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主な登場人物
二郎(竹脇無我)
麗子(栗原小巻)
麗子の弟、恒雄(あおい輝彦)
麗子の父(山内明)
麗子の母(文野朋子)
レストランのコック、沖田(三島雅夫)
二郎の友人、関根(東野孝彦)

第1回から第6回は出会い・恋愛編。
第1回
 アルマンド・ロメオのコンサート会場。チケットを持っていないにもかかわらず一番高い料金を払うから中に入れてくれないかと支配人に無茶な申し出をするサラリーマンの二郎(竹脇無我)。ここで、同じような申し出をしに来た麗子(栗原小巻)と出会う。結局2人ともコンサートには入れなかったが、意気投合し、その夜、赤坂のあるレストランで一緒に食事をする。ここのコック(三島雅夫)とも親しくなる。2人は翌日も会う約束をする。

第2回
b0189364_13495968.jpg 翌日2人は昼食を共にする。その場で二郎は、麗子に特別なものを感じていることから真剣に付き合いたいと麗子に言い、麗子も賛同する。だが麗子には婚約者がいた。しかしその日のうちに、麗子はその婚約の解消を相手に伝える。麗子の弟(あおい輝彦)、父母(山内明、文野朋子)が心配して動揺する。

第3回
 数日後の土曜日の夜、2人は会って、遅くまでデートする。麗子の帰りが遅くなったため、父母が心配し麗子を責める。麗子は二郎のことを話し、知り合ったのは5日前だが「結婚しても良いと思っている」と語る。近いうちに父母に二郎を会わせることを誓う。ちなみに二郎は会社の寮で一人暮らし。同僚の関根(東野孝彦)に麗子のことを打ち明ける。翌日、父から二郎の職場に連絡が入り、次の日に麗子の家で面会することを約束する。
 その日のうちに麗子の弟の恒雄が会社まで出向き、姉と別れろと迫る。
(物わかりの良い父のセリフ「(娘のことが)長年一緒の家にいた仲だ。(帰宅が遅くなって)気になったって仕様がないだろ」が良い。『夏の一族』にも似たセリフがあった。)

第4回
 翌日、二郎が、麗子の家にあいさつにやってくる。良い雰囲気である。

第5回
b0189364_14011098.jpg 第4回の続き。麗子の家。良い雰囲気だったが二郎が(出会って6日であるにもかかわらず)結婚したいと切り出したために急に空気が冷え込む。父母は早すぎると言うのである。麗子と二郎を責める。返事は今すぐできない、あらためて返事すると言われ、二郎は暗い顔で家を後にする。その後、父母は麗子を「世間知らず」と責めるが、麗子も父母に「気持ちは変わらない」と訴える。
 二郎の帰り道、弟の恒雄が後をつけてきて話があると切り出す。二人でとあるバーに入る。恒雄は別れろと迫るが、二郎は真剣だと訴える。恒雄はその後、酔っ払ってベロベロになり、二郎に介抱されてしまう。
 二郎の田舎の家族も、二郎の兄は、何だか癪だ(弟が東京でいい目を見ていることに少しひがみがある)が、父母は賛成という風景。
 ところが、その後いきなり結婚披露宴のシーンに移る。「細かないきさつはもう十分だろう。結局二人は思い通りにしたのである。三ヶ月経った、晴れた冬の日曜日であった。」というナレーションが入る。そして無事に披露宴が終わる。
(当初、恋愛にまつわるあれこれが最後まで続く恋愛ドラマだとばかり思っていたのだが、このナレーションでそうでないことが明らかになる。)

第6回
 二郎と麗子、新婚旅行から帰る。喧嘩したようで、雰囲気が悪い。だがさすが新婚、その日のうちに仲直りする。

第7回から第16回までは新婚・転職編であり、次の開業編への導入。
第7回
 新婚生活は、麗子にとっては、夜遅い夫を待つというもので、砂を噛むような味気ない面もあった。一方二郎は、関根と共に、新しい合成樹脂プラントの輸出権を得るという非常に大きな仕事に関わることになる。非常に忙しくなるが、その中でも時間を割いて、平日の夜、2人で外食することになる。店は、初めてのデートのときに行ったあの赤坂のレストラン。ここであのコック、沖田にあいさつし、結婚したことを知らせる。沖田に大歓迎され、ボトルワインまでおごってもらう。(このコックが、見ていて楽しくなるようなキャラクターで、登場するのが楽しみになる。)
最後のナレーション「甘い、思い出しても懐かしい一夜であった。しかしその一夜は、そのときの二人には思いもよらぬほどの深い意味を潜めていたのであった。」

第8回
 新婚生活。麗子は幸福を感じている。かつての麗子のフィアンセが訪れたり、二郎の友人の関根が飲みに来たりする。一方二郎は、手がけていた仕事が結局他の会社に渡り駄目になってしまったのだった。
最後のナレーション「その仕事の失敗は、二郎たちのミスではなかった。重役たちの決定の甘さに原因があった。しかし原因とかかわりなく、それが二人を思いがけない運命に導いていくのである。」

第9回
 二郎と関根が、重役の代わりに仕事の失敗の責任を負わされ、花形の営業部から総務部へ異動させられることが決まる。関根は、嫌気がさして会社を辞め、作曲家になるべく、修行することにする。一方二郎は、関根みたいな夢もない上、嫌なことがあったからといって辞めてしまうのは本意ではないということで、異動を受け入れることにする。二郎は麗子に異動になったことを告げる。二郎は、異動になった後、仕事に張り合いを感じることができず、砂を噛むような毎日を送る。辛い思いを共有したいと思う麗子だが、二郎は弱みを見せたくない。二人の気持ちがすれ違う。
最後のナレーション「しかし二人は、離れて立ったままであった。会社での辛い思いを二人で抱き合って慰め合うのではあまりに屈辱的ではないか、という思いが二郎を麗子に近づけなかった。」

第10回
 総務の仕事は単純作業。麗子は、二郎の左遷について母に言えない。二郎は家では明るく振る舞う。「なぜ辛さを見せないのか」と思う麗子。
 夜、近所にできたというスナック(軽食やアルコールを出す喫茶店)に二人で出かける。スナックは若い夫婦が二人でやっていた。良い感じの店だと二人で話し合う。
最後のナレーション「何気ない土曜日の夜のひとときであった。しかし、そこで見た若夫婦の働く姿が思いがけなく強い印象を残した。時が経って、その印象が一つの力となるのである。」

第11回
 家で少し言い合いをする二郎と麗子。
 二郎「慰めてもらってニヤニヤ会社に行かれるかい」、麗子「本当に今の仕事が不満なら他にどういう生き方でもできる」、二郎「甘っちょろいこと言わないでくれよ。辞めりゃ簡単さ。不満なら辞める、また辞める、だけどどこの会社に行ったってそう変わりゃしないんだ。だから我慢してるんじゃないか、生活ってのはそういうもんだ」、二郎「僕だっていろいろ考えてるんだ。青臭いこと言わないでくれよ」。
 翌日、麗子は一人で近所の例のスナックに行って少々和む。夜、二人で浅草で外食して仲直り。二郎の大学の入学式の後、父と飲んだという店(この店の話は山田太一のエッセイに出てくる。脚本家自身の経験が反映している)。二郎「夕べ言ったことを何遍も考えた。辞めないでいる理由もない。もう少し自分の世界を広く考えたい」などと言い、転職について考えると言う。麗子も賛同する。

第12回
b0189364_13500285.jpg 結局、二郎は会社を辞めることに決める。麗子は父にそのいきさつを説明する。辞めたら生活が厳しくなるかも知れないため、自分も仕事をしたいので仕事を紹介してくれないかと依頼する。
 二郎、友人の関根にも決心を告げる。関根は、商売を始めたらどうだなどと軽口を叩く。二郎、その言葉が少し引っかかって、商売について考えるようになる。麗子はこの話を聞いて、小さい店を持って二人で働けたら素敵だなどと言う。
 翌日、二郎は屋台でラーメンを食べ、屋台の店主(加藤嘉)の話を聞く。この店主も元勤め人で脱サラして屋台を始めたという。店主「脱サラしたときの自由だという気持ちが忘れられない」。脱サラして商売を始めることにリアリティが出てくる。二郎「一発ドカンと何かやりたくなったな」。このとき商売を始めることをはっきり決意する。翌日、麗子にそのことを伝える。開業資金について具体的に考えるようになる。二郎「親父に相談しようと思う」。麗子「時間かけて少しでも良いお店にしましょう」。
最後のナレーション「威勢の良い決心の仕方ではなかったが、二人の前にまったく見当の付かない新しい世界が開け始めていた。期待と不安とが二人の間を流れた。静かな朝であった。」

第13回
 二郎、実家に帰り、会社を辞めてスナックを開店したいということ、金を貸してほしいということを伝える。兄、一郎はいきり立って金はないと言い、父も何も言わない。だが翌日帰郷する段になって、父が定期貯金が近いうちに満期を迎えるのでその200万円を貸すと言う。ただし一郎の手前があるため利子を取ると言う。兄は帰り際に二郎を呼び、50万円無利子で貸すという。(兄貴、頑固だが良いところがある。)
最後のナレーション「250万の借金と自己資金50万、あわせて300万円の目安は付いたが、それだけでスナック開店は無理であった。しかし、漠然とした転職という希望から、もう一歩具体的な領域に足を踏み入れたのである。そのことが、二人を明るくさせていた。」

第14回
 工作機械の会社(社長はタコ社長、太宰久雄)で勤めを始めた麗子。二郎は、退社後、スナックの実務について教える学校に1カ月間通うことにする。
 二郎、会社を辞めて新しい商売を始めるということを、麗子の父母に直接会って話す。具体的なプランが決まったら教えてくれと話す父。プランが良ければ金を出すとまで言う。(物わかりの良い父である。)
最後のナレーション「二郎は、麗子の両親の目に自分がどのように映ったかがわかるような気がした。不確かな夢を追う男。しかし絶対に成功してみせる、見ていて欲しいと二郎は思った。」

第15回
 友人の関根が自宅にやってくる。習ったばかりの料理で関根を接待する二郎。関根はその後、金を無心するつもりでここに来たと言う。音楽の師匠がアメリカに行ってしまい生計を立てていた仕事ができなくなったというのだ。二郎は侠気を出して5万円貸してしまう。後でその金額のことで二郎と麗子は喧嘩する。
 翌日も喧嘩の状態が続くが、夜、二郎は上機嫌で帰ってくる。来月会社を辞めてしまい、来月から1月間、他のスナックに見習いに行くことにしたと言う。自然に仲直りしてしまう二人。失恋して遊びに来ていた恒雄は、一人取り残された形になる。
最後のナレーション「二人の世界が大きく変わろうとしているところだった。取り残されて恒雄は孤独の中にいた。」

第16回
 二郎、ついに会社に辞表を出す。退職の日、二人だけでささやかに自宅でパーティ。
(恒雄の恋愛のエピソードが並行して進んでいるが、これについては省略)
最後のナレーション「新しい世界へ踏み出す二人にしては呑気すぎる夜であったが、ともあれこれが、二郎のサラリーマン生活、最後の夜であった。」

第17回から第26回までが開業・奮闘編。
第17回
 二郎、スナックの見習い勤めを始める。麗子、好奇心から見に行く。二郎、カウンターに入って、それらしく立ち振る舞っている。ホットケーキまで作って麗子に出す。二郎はそれなりに自信をつけている。
 二郎、物件探しを始める。

第18回
b0189364_14011366.jpg 二郎が目星をつけた物件を、麗子、麗子の父母が、二郎と一緒に見に来る。
 この物件に一端は決めるが、その後、父が、自分も100万円出資するから、やはり高くてももっと良い物件を探してみないかと言う。「君たちが新しいことを始めるのを見ていると、自分も肩入れしたくなる。だから無利子、無期限で100万円貸す。君たちの夢にかけたい、仲間に入れてもらいたい」と言ってくれる。(良い義父である)
 あらためて店探しを始める二人。そんな折、恒雄が新しい物件を探してくる。現在スナックで、店主がスナックを辞めるから貸しに出すという。そのために居抜きで借りられる。条件は良く予算的にも何とかなる。結局ここに決めるが、前オーナーがスナックを辞めるということが気にかかって、近所のおばさんに話を聞く。何でもこれまでこの物件を借りてきた人々の夫の方が次々に不幸に見舞われてきたという不気味な事実が判明。今のオーナーも夫が入院して仕事ができなくなったという。家族会議の結果、しかるべき神事を行うなどして、この物件を借りようということになる。
最後のナレーション「こうして店が決まった。若い二人には似合わなかったが、占い師の言うとおりにした。女の怨みを鎮めるという神社の神主を招いたのである。これから店を直し、開店の支度である。いよいよ二人の新しい人生であった。」

第19回
 店の改装、開店準備が進み、いよいよ翌々日開店という運びになる。二郎の兄が、開店祝いで上京する。良い店だと祝ってくれる。
 翌日、関根がやって来て、借金を返す。仕事が順調に進み出したことも報告。夜、新しい店に関係者を呼んで、開店パーティを開く。
 いよいよ開店の日を迎える。朝早く目を覚ましてしまう二郎。いろいろと考えてしまう。
最後のナレーション「結局7時半には店へ来ていた。あと3時間半で開店である。二人は黙りがちに、しかしクルクルと働きながら、新しい世界の出発の時を待った。」

第20回
 開店初日風景。最初の客は変な若者で、コーヒーを頼むが結局何も飲まずに出ていく。客は昼頃から大勢訪れ、昼食時が終わるとめっきり客足が減る。客の流れが初めてわかる。恒雄が連れてきた学生たち、家族連れなど、いろいろな客がやってくる。夜は夜で、一人で入ってくる客が多く静かになる。最後の客は、読書している、感じの良い客(小野寺昭)である。こうして初日の営業が終わった。
最後のナレーション「開店の日の売上は、20,530円。予想以上の成績である。このまま順調にいけば、借金もそれほどかからずに返せるかに見えた。明るい夜であった。胸の膨らむ1日であった。」

第21回
 翌日の昼間、麗子の父が店にやって来る。麗子は、テレビかステレオを入れるという話になっているという話を父にする。父は、テレビを入れないという選択肢もある。客がテレビを入れてくれと言っても、すべての客に対応することはない。客本位になるのも良いが店がお客さんを選ぶことも必要じゃないか。自分の店はこう行きたいという個性みたいなものが欲しいじゃないかと言う。(良いセリフである。)
 夜、近所の若者たちがやって来て大きな声でギャンブルの薄っぺらい会話をしている。うるさいため、昨日の読書の客も早々に帰ってしまう。しかもこの若者たち、支払をツケで頼むと言う。二郎は受け入れようとするが、麗子が切れてしまい、うちは掛け売りはお断りしていますと言って追い返してしまう。
 麗子「店の方で客を選ぶ権利がある、あんな人にニコニコするのはいやだ、店の方針をはっきり決めて、格みたいなものを作った方が良い」と二郎に言う。そんなことじゃやっていけないと二郎。麗子「近所を見てみたところ、あまり良いものを食べる場所がない。良いものを出すなど、思い切って店の特色を出してみたらどうだろう」と言う。二郎は、「甘いことを言う」と言って怒る。どうしてそんなことが我々にできるのか、そんなことを考えるのは5、6年早いと言うのだ。
 その後、開店してから1カ月経った。なんと10軒と離れていない近所にスナックができることがわかる。テーブルが5、6個あり、しかも大きなクーラーを入れ、ジュークボックスも置くという。
 新しい店の存在が気になる二郎、あのレストランのコック、沖田に、新しい料理について相談してみることにする。店の特色を出すという麗子の提案について、考えてみようというのである。
最後のナレーション「なぜか、赤坂のレストランで「料理だけが生きがいだ」と言ったあのコックの姿が突然蘇って、二郎を呼ぶのであった。あの屈託のない楽しげな姿。」

第22回
b0189364_856623.jpg 二郎、赤坂のレストランを訪れて、コックの沖田と話をする。何かこれはという一品を出したいからアイデアがあったら教えてもらえないかと言う。沖田は快諾する。
 二日後、沖田が店を訊ねてくる。しかも近所の店のリサーチ済みで、二郎と麗子はいたく感心する。
 翌日の夜、店の営業中、近くに新しくできるスナック「うぐいす」の若い店主、本木(小坂一也)とその父親(内田朝雄)がやって来てあいさつする。父親の方はドスが利いた感じ。「うぐいす」の方は、開店に備えて、店先で大々的に宣伝活動。サービス券を配付したりする。
 その後、再び沖田が、食材を持って開店前にやって来る。美味しいカレーを伝授すると言う。いろいろと考えたがスナックに適した一品というとやはりカレーかということになったと言う。
最後のナレーション「沖田は楽しげに新しいメニューの準備を始めたのであった。」

第23回
 沖田がカレーを実際に作ってみると、非常に旨く、二郎は感心しきりである。麗子は「今日仕込んだカレーを売るのが嫌になった」とまで言う。また沖田はハンバーガー弁当のアイデアも用意し、そのレシピも授けてくれる。沖田は、こうして頼られるのが嬉しいと語る。(沖田の善意が気持ち良い。)
ナレーション「その日の6時に新しいスナックは開店した。流行歌を流し店のしつらえも俗悪で、住宅の多いこのあたりには似合わない気がしたが、客の入りは良かった。主人の客あしらいも慣れていて、競馬であろうと、野球、麻雀、競輪から女の話までやすやすと相手になる男であった。同じやり方で競っても二郎に勝ち目はなかった。自分は自分のやり方でやり通すしかない。とにかく明日からだ。ハンバーガー弁当とカレーライスで勝負するのだ。」
 二郎と麗子、宣伝ビラを配ったりポスターを出したり広報活動をする。
 当日、開店前に「うぐいす」の親子がカレーを食べさせてくれと言ってやって来て試食していく。昼時はいつものように満員だがカレーの評価はわからず。ハンバーガー弁当も7個売れただけで、少々ガッカリ。昼が過ぎるといつものように暇になる。ところが午後になって、ハンバーガー弁当を20個買いたいという、近所の会社勤めの女性が来る。昼買って食べたら美味しかったために社長が社員におやつとして出すと言い出したらしい。最初の反響。
 翌日、沖田に報告しに行く。謝礼を渡そうとすると拒まれる。「あんたがたに喜んでもらえて、この10年の間で一番楽しい思いをした。これからも肩入れさせて欲しい」と言う。
最後のナレーション「ところがその翌日、商売敵の新しいスナックは、10円安いカレーライスとカツサンド弁当を売り始めたのであった。」

第24回
 「うぐいす」の方は、マスターが客あしらいがうまく、しかもテレビを入れているため、若者のたまり場みたいになっている。二郎と麗子は、それに少し危機感を持っている。テレビを入れた方が良いんじゃないかと思う。開店前に沖田がやって来て相談に乗る。
「問題はあなたがたがそういう店にしたいかということだ。店の方針というものが大事であって、客に合わせていたら切りがない、こっちで客を選ぶ気でなくちゃ」と言う。「店が人生の舞台なんだから客の顔色でどうにでもなるようにしてはいけない。旨い料理で評判を取っていくつもりだったんだからそれで辛抱していかなくちゃ。無理して客に合わせたんじゃ店を開いた甲斐がない。」
 さらに沖田、3人であちらの店に行ってみてカレーを食べてみようと提案する。結局3人で食べに行く。味は到底問題にならないことがわかる。沖田は後に「しかし不味かったねぇ」と言って大笑いする。「あんなものは競争にも何にもなりはしない。10円安くたって、そんなの問題じゃない。相手が繁盛してもそんなものは一時だ。味一本」。
 その夜「うぐいす」の本木が、酔っ払ってやって来る。ビールを頼むが、昼間のことに文句を言い、突然二郎を殴りつける。捨て台詞を吐いて出ていく。
 翌日開店前に、本木親子がやって来て謝りに来る。体面上謝ってはいるが、愚痴や脅迫めいたことまで口上していく。その日の午後、いつもなら客足の少ない時間帯に学生が20人ばかりやって来てカレーを食べた。昨日の騒動のときに店にいた客が、昨日の騒動を「カレーの味に嫉妬した同業者が嫌がらせに来た」という評判にして友人を連れてきたのである。
 昼時の込み方が日増しに激しくなってきた。美味しいという評判が広がっているのがわかった。その後、とある新聞に店のカレーの記事が載る。

第25回
 店は順調。
 麗子が妊娠したことがわかる。思わず「困ったなぁ」と口走る二郎。これが原因で夫婦喧嘩になる。

第26回
 麗子、つわりで店に立てないことが多くなる。恒雄が手伝ったりアルバイトのウェートレスを雇ったりする。人を使うことを考えなければならなくなる。
 二郎と麗子、沖田を中華料理店に誘い、お礼をする。その場で沖田が、別の有名レストランから引き抜きの話があると言う。だが今さらレストランを移るより、むしろレストランを辞めて、二郎と麗子の店を手伝いたいと言う。あの店を手伝うことは、張り合いもあるしやりがいもある。今金銭面では不自由はないため、月給5万円でしばらく雇ってもらえないかと言う。「若い人が一生懸命働いてだんだん大きくなる、そういうのを手伝ってみたい」と言う。二郎、「願ってもないこと。あまり良い話なんで信じられない」と言って歓迎する。
 二郎の実家の兄、父母が上京し、店を見に来る。その後、麗子の実家で麗子の両親を交えて、二郎と歓談。(大団円1。)
 店では突然の貸し切りが入り、沖田が助っ人でやってきて腕を奮う。(大団円2。)
最後のナレーション「確かに何もかもがこれからなのである。何一つ終わったものはなく、二人の世界は明日に向かって開けていた。子供が生まれる。他人と一緒の仕事が始まる。レストランに変えていく計画がある。こうした物語の終わりこそ二人にふさわしいと私たちは思った。」
 今までのいろいろなシーンが回想風に流れ、テーマ曲が流れる。(良いエンディングである。)

by chikurinken | 2018-10-01 07:48 | ドラマ

『続あ・うん』(1)〜(5)(ドラマ)

続あ・うん (1)〜(5)(1981年・NHK)
演出:深町幸男、加藤郁雄
脚本:向田邦子
出演:フランキー堺、杉浦直樹、吉村実子、岸本加世子、岸田今日子、池波志乃、永島敏行、秋野暢子、殿山泰司

秀逸なキャラクターが魅力

b0189364_18214671.jpg 1980年にNHKで放送された『あ・うん』が好評だったせいか、翌年に続編が作られた。『あ・うん』と同様、昭和初期(昭和十年代)のとある家族の肖像が娘の視点で描かれる。続編も前作と同様、娘役の岸本加世子の味のあるナレーションで話が進行していくが、父の友人が母に恋している設定なわけで、娘に語らせるには内容が生々しい。
 基本的な家族構成、周辺の人々との関係は前作とほぼ同様だが、山師の祖父(志村喬)がすでに死んでいる点が異なる。代わりにその腹違いの弟(笠智衆)という立場の老人が登場して、いろいろと事件を巻き起こす。
 続編で中心となる事件は、父(フランキー堺)と友人(杉浦直樹)の喧嘩別れや、前作同様、娘(岸本加世子)の恋(相手はロシアの演劇に凝っている大学生)などだが、基本的には淡々と話が進んでいくホームドラマである。前にも書いたが(竹林軒出張所『父の詫び状(本)』を参照)、このドラマに出てくる登場人物、作者の実際の家族をよく投影しているように思える。そのためもあってか、登場人物の言動には非常にリアリティがある(ただし行動については、リアリティがあるとはあまり言えなさそうである)。何よりこのドラマ、キャラクターがどれも秀逸で、ドラマの大きな魅力になっている。中でも少々怪しげな人物、たとえば「金歯」や「イタチ」などが味わい深い。あちこちにくすぐり笑いの要素が散りばめられていることもあり、本作は前作より楽しんで見ることができたような気がする。なお、最終回には志村喬がゲスト出演する。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『あ・うん (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『父の詫び状(本)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(ドラマ)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく パートⅡ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』
竹林軒出張所『胡桃の部屋 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『思い出トランプ(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の名前 向田邦子漫画館(本)』

by chikurinken | 2018-09-13 07:20 | ドラマ

『続・夢千代日記』(1)〜(5)(ドラマ)

続・夢千代日記 (1)〜(5)(1982年・NHK)
脚本:早坂暁
演出:深町幸男、渡辺紘史
音楽:武満徹
出演:吉永小百合、樹木希林、秋吉久美子、石坂浩二、いしだあゆみ、壇ふみ、緑魔子、長門勇、中条静夫、中村久美、あがた森魚、夏川静枝、加藤治子、菊地優子、松本ちえこ、岸部一徳

第1シリーズほどではにゃあでにゃあ

b0189364_16253221.jpg 『夢千代日記』発表の翌年に放送された続編。
 舞台設定は前シリーズを踏襲しており、そこにいろいろな闖入者が登場して、いろいろと事件を巻き起こすという「いかにも続編」という展開である。闖入者の多くは不幸な女たちで、いしだあゆみ、菊地優子、松本ちえこが彼らを演じる。不幸な女たちと言えば、他のレギュラー陣も不幸な女たちで、今回もその不幸に拍車がかかる。秋吉久美子の「金魚」は、育てている子どもをとられそうになるし、樹木希林の「菊奴」もどん底につき落とされる。ただしこの菊奴のキャラは、強烈で非常に面白く、ドラマ随一の特異な人物である。不幸な役回りにしなくても良かったんじゃないかという気もするが、不幸なりに強烈なキャラは維持している。
 石坂浩二扮する上村は、このシリーズでは夢千代が恋をする対象になるが、元々は闖入者の一人である女子中学生と関連した存在である。この上村、ストリップ小屋の背景を描くために鳥取からこの町に呼ばれてきた絵描きの役だが、偶然にも、問題のあった女子中学生の俊子(菊地優子)とこの町で出会うという、やや無理のある設定になっている。偶然の設定を使用するとその数に比例してドラマが浅くなるわけで、こういう偶然はいただけない。いしだあゆみも不幸な闖入者の役回りで、自らの不倫のために離婚に追い込まれるという中年女性の役どころで、この役柄、なんと同時期に作られた『駅 STATION』や『北の国から』と共通である(どれもいしだあゆみが演じている)。いしだあゆみの鉄板キャラだったのか?
b0189364_16354499.jpg 何だかあれこれがパターン化しているような印象で、そのためもあり、前作ほどのインパクトはなかった。この後『新・夢千代日記』と続いてこの『夢千代』シリーズは完結する。たしか第3シリーズもこれまで一度見ていると思うんだが、まったく記憶がない。もしかしたら見ていないのかも知れないが、第3シリーズは全10回と長いし、今回の第2シリーズがもう一つだったこともあり、あらためて見る気は、今のところあまり起こらない。
プラハ国際テレビ祭大賞受賞、第19回ギャクシー賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夢千代日記 (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『花へんろ 風の昭和日記 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『刑事(ドラマ)』
竹林軒出張所『修羅の旅して(ドラマ)』
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『映画女優(映画)』

by chikurinken | 2018-09-11 07:24 | ドラマ

『夢千代日記』(1)〜(5)(ドラマ)

夢千代日記 (1)〜(5)(1981年・NHK)
脚本:早坂暁
演出:深町幸男、松本美彦
音楽:武満徹
出演:吉永小百合、樹木希林、秋吉久美子、林隆三、楠トシエ、大信田礼子、緑魔子、長門勇、ケーシー高峰、岡田裕介、中条静夫、伊佐山ひろ子、中村久美、あがた森魚、夏川静枝、加藤治子

贅沢至極! 申し分ない!

b0189364_18464577.jpg 言わずと知れた早坂暁の代表作。1981年にNHKの『ドラマ人間模様』の枠で放送された。
 山陰地方(ドラマでは「裏日本」と呼ばれている)の湯里という小さな温泉町が舞台。その町で芸者の置屋を営む若い女将(兼芸者)が主人公の夢千代(吉永小百合)である。夢千代は、母が妊娠中に広島で被曝した、つまり胎内被爆者であり、そのために白血病の症状で苦しんでいる。その毎日の症状を主治医に報告するために日々の日記をつけていて、その日記の内容が、このドラマのナレーションとして使われるという、なかなか凝った設定になっている。タイトルもそれにちなんだものである。
 この夢千代の周囲で起こるあれこれの事件がモチーフとして現れ、同時に、白血病を始めとする、夢千代が抱えるいろいろな問題があぶり出されていくという縦糸と横糸の関係が実に見事で、脚本の見本みたいな素晴らしい作品に仕上がっている。夢千代によって語られる「(夢千代の)置屋が問題のある芸者ばかり抱えている」というのもなかなか可笑しいセリフである。(いわくのある登場人物が多いことに対する)作家の言い訳みたいにも聞こえる。
 キャストは非常に豪華で、だからといってビッグネームが揃っているというわけではないんだが、非常にうまい役者、変わったキャストが揃っている。吉永小百合は当時36歳で、非常に美しい。奇跡的と形容しても良いぐらいの美しさで、このドラマが吉永小百合の代表作であることはもう間違いない。b0189364_18464126.jpg長門勇や中条静夫、ケーシー高峰、林隆三など周囲を固めるキャストはきわめて個性的で、実在する人物であるかのようなリアルな存在を見事に演じている。樹木希林、伊佐山ひろ子、加藤治子らの力のある女優たちもいかんなく実力を発揮している。珍しいところでは、歌手のあがた森魚、楠トシエあたりで、2人ともドラマの中で歌唱がある。あがた森魚は「赤色エレジー」まで歌っており、第5話の「最后のダンス・ステップ」も良い味が出ていた(「最后のダンス・ステップ」は緑魔子と共演!)。夢千代の元恋人役の岡田裕介は、この後東映のプロデューサー業に転じ、映画版の『夢千代日記』では製作者として参加している。
 シナリオについては今さら言うまでもない。早坂暁の代表作であるのは間違いないが、しかしそれにしても、まったく飽きさせない舞台転換、セリフ回しなど、昨今のドラマとはまったく次元が異なるとすら思う。しかも武満徹が音楽を担当しているというのも贅沢至極である。当時の日本のドラマの最高水準とも言える作品ではないかと思う。
第14回テレビ大賞優秀番組賞、第8回放送文化基金賞奨励賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『花へんろ 風の昭和日記 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『冬の花火 わたしの太宰治 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『刑事(ドラマ)』
竹林軒出張所『修羅の旅して(ドラマ)』
竹林軒出張所『ダウンタウンヒーローズ(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『映画女優(映画)』

by chikurinken | 2018-08-23 07:45 | ドラマ