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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 238 )

『ベトナムのひかり』(ドラマ)

ベトナムのひかり
〜ボクが無償医療を始めた理由〜
(2019年・NHK)
脚本:後藤法子
演出:本木一博
出演:濱田岳、国仲涼子、キムラ緑子、ビン・アン、レ・チ・ナ、チャン・ギィア、ヒュー・ヒエン、ホン・アン、本田博太郎、生瀬勝久

羽鳥やなくて服部やろ!

b0189364_18135315.jpg ベトナムで活動している眼科医、服部匡志をモデルにしたドラマ。
 眼科医、羽鳥志郎(濱田岳)は「神の手を持つ男」と呼ばれていたが、学界の席であるベトナム人医師に乞われて、3カ月間ベトナムに赴任し現地で治療に携わることになる。だがベトナムの現場で、医療を受けられない大勢の貧困者に出逢い、結局身銭を切って彼らに治療行為を行うようになった。それでも彼らを助けるには3カ月では足りないということになり、その後も何度も日本とベトナムの間を往復しながら、活動を続けていくようになるというストーリー。
 ドラマでは、妻(国仲涼子)との意見の相違やすれ違い、家庭を顧みず地域の活動に精を出していた父(生瀬勝久)の影響などが主要なテーマになっており、同時に現地の医師との確執、習慣の違いの戸惑いなども取り上げられる。この手のドラマとしては、割合平凡なモチーフだが、1本のドラマとして見ると、破綻もなくよくまとまっている。一部のエピソードが、使い古されたようなありきたりなものでややチープなのが気になるが、現行ドラマの中では水準が高い方と言える。途中、ベトナムの看護師から「ハットリセンセイ」と呼ばれ「ハットリやなく羽鳥や!」などという遊びのセリフがあって、笑わせてくれるのもポイントが高い。
b0189364_18135781.jpg モデルになった服部匡志という眼科医、僕はまったく知らなかったが、『情熱大陸』や『カンブリア宮殿』でも取り上げられているようで、結構有名な人らしい。こういう立派な活動をやっているのならばマスコミでもっと取り上げられてしかるべきだし、これによって協力者も増えるかも知れないとも思う。それを考えると、広報という点でもこのドラマが貢献することになるかも知れない。
 キャストでは濱田岳が好演で、情熱的で直情的な医師の役をうまく演じきっている。この人、どのドラマもまったく外れがなく、感心する。本田博太郎と生瀬勝久も良い味を出していた。珍バイクが映像で出てきたのもポイントが高い。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『反骨の外科医(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ディア・ドクター(映画)』
竹林軒出張所『それ行け!! 珍バイク(本)』
竹林軒出張所『ジェネラル・ルージュの凱旋(ドラマ)』
竹林軒出張所『ナイチンゲールの沈黙(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-02-09 07:13 | ドラマ

『みかづき』(1)〜(2)(ドラマ)

みかづき (1)〜(2)(2019年・NHK)
原作:森絵都
脚本:水橋文美江
演出:片岡敬司
出演:高橋一生、永作博美、風吹ジュン、黒川芽以、鎌田英怜奈、工藤阿須加、勝矢

『朝のドラマ』風の経営話

b0189364_18372132.jpg 森絵都原作の『みかづき』のドラマ化作品。昭和30年代に千葉で学習塾を始めた夫婦の物語である。第1回は、夫婦のなれそめと学習塾の開業、第2回は夫婦と家族の問題がテーマになっている。
 当初、登場人物にモデルがあるのかと思っていたが、どうやら原作者のオリジナルのようである(未確認)。学習塾経営や家族の話が中心で、この後どれぐらい波瀾万丈があるかはわからないが、基本的にはそれほど目新しい展開はない。学習塾経営の話と言えば、かつて『名古屋お金物語2』という作品がNHKで放送されたが(「回転塾」などという発送が斬新だった)、このドラマについてはあえて言うなら『NHK朝のドラマ』風のストーリーで、『名古屋お金物語』ほどの奇抜さはない。また演出もありきたりで、ところどころオーバーアクトが存在し、例によってかなり気になる。
 個人的な興味としては、共同経営(主人公の塾は途中から他の塾と共同経営になる)の過程に興味があるが(一般的に共同経営がうまく行くとは考えられないし)、そのあたりはドラマではまったく触れられていないので、経営話として見ても芯がない印象で、あまり面白味を感じない。現時点では経営がトントン拍子に進んでいることだし、経営話にするんならもう少し波乱がなければ……とも思う。そのため、すべてが絵空事のように感じられ、リアリティもあまり感じられない。昨今のドラマの水準から考えると標準的な作品だろうかと思う。こういったドラマは消耗品のような印象さえ受ける。芸術性を求める僕のような視聴者が楽しめるドラマはもう存在しないようで、それもないものねだりになったのかとも思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『塾講師にだまされるな!(本)』
竹林軒出張所『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-02-08 07:36 | ドラマ

『家康、江戸を建てる』(ドラマ)

家康、江戸を建てる 前編・後編(2018年・NHK)
原作:門井慶喜
脚本:八津弘幸
演出:西谷真一(前編)、一色隆司(後編)
出演:佐々木蔵之介、生瀬勝久、優香、千葉雄大、マギー、藤野涼子、松重豊(前編)、柄本佑、広瀬アリス、林遣都、伊原六花、高橋和也、吹越満、吉田鋼太郎(後編)、市村正親、高嶋政伸(前後編)

素材は面白いが内容は平凡

b0189364_17585799.jpg NHKが正月に放送した時代劇。徳川家康が江戸を建設するときのエピソードを2夜連続のドラマにしたもので、前編に「水を制す」、後編に「金貨の町」という副題がついている。
 前編は大久保忠行(佐々木蔵之介)による神田上水建設、後編は後藤庄三郎(柄本佑)による金座開設の話で、どちらもドラマでは家康(市村正親)が直々に彼らにミッションを申しつける。
 元々は門井慶喜という人の『家康、江戸を建てる』という小説が原作らしい。原作がどの程度活かされているかはわからないが、ドラマはきわめて凡庸で、しかも大ぶりでオーバーな演技が多く(特に前編)、見ていてあまり興味をかき立てられない。素材が興味深いので今回通して見てみたが、ドラマとしてはよくある奮闘成就パターンで、実にありふれた時代劇になってしまった。それに時代考証をちゃんとやっているのか疑問に感じるような箇所が非常に多かったのもマイナス点。ネタで魅せようとするこういうユニークな素材であれば時代考証が大切なのは言うまでもあるまい。せめてそういった周辺部をもう少し丁寧に処理した上で、ドラマ作りをしてほしかったところである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『実見 江戸の暮らし(本)』
竹林軒出張所『大江戸庶民いろいろ事情(本)』
竹林軒出張所『石川英輔の本、5冊』
竹林軒出張所『江戸古地図の旅(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-01-19 07:58 | ドラマ

『フルーツ宅配便』(1)(ドラマ)

ドラマ24 フルーツ宅配便 (1)(2019年・テレビ東京)
原作:鈴木良雄
脚本:根本ノンジ
演出:白石和彌
音楽:高田漣
出演:濱田岳、松尾スズキ、内山理名、荒川良々、前野朋哉、原扶貴子

異色の設定が現実を映し込む

b0189364_19142226.jpg 2019年の最初の『ドラマ24』枠は、鈴木良雄の同名マンガのドラマ化作品。原作マンガの『フルーツ宅配便』は、「フルーツ宅配便」という名前のデリヘル業者での人間模様を描く作品で、現代の世相や貧困を赤裸々に描いているリアリズム・マンガである。
 主人公の咲田真一(濱田岳)が、ひょんな巡り合わせで、デリヘル店「フルーツ宅配便」に就職する。この店、デリヘル嬢に果物の源氏名をつけており、ホテルなどにそのデリヘル嬢を「宅配」するということで「フルーツ宅配便」を名乗っている。このあたりですでになかなか工夫が見られる(原作に由来するものだが)。そこに集まるワケありのデリヘル嬢が毎回主人公になって話が展開していくという作品である。
 今回このドラマを見てから原作マンガの第1巻と第2巻も読んでみたが、どのエピソードも非常によくできていて、しかも現代社会の貧困や庶民の苦しみが描かれている。作画も丁寧で、全編に余韻が漂う快作である。デリヘル嬢がどれもそこそこ不細工なのもリアルである。
b0189364_19144034.jpg このドラマについては、その原作の味が活かされていながら、特にこの第1回はさらに一味加えられていて、原作を上回る仕上がりになった。テレビ東京の深夜ドラマ枠は、『アオイホノオ』『俺のダンディズム』など、結構な意欲作が多く、毎回期待を持たされる(裏切られることも多い)が、この作品もその期待に違わぬドラマになりそうである。第1回のゲスト・キャスト、内山理名も好演で、僕など、最後までこれが内山理名だと気付かなかった。非常に不幸な話だが、ドラマ版ではわずかな救いがあった。もちろん決して不幸な人たちが幸せになるというような単純な話ではなく、その辺がこの原作、そして(おそらく)ドラマの魅力でもある。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『貧乏まんが(本)』
竹林軒出張所『アオイホノオ (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『俺のダンディズム (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』
竹林軒出張所『終電バイバイ(2)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『最貧困女子(本)』

by chikurinken | 2019-01-18 07:14 | ドラマ

『俺たちの旅 二十年目の選択』(ドラマ)

俺たちの旅 二十年目の選択(1995年・ユニオン映画)
脚本:鎌田敏夫
演出:齋藤光正
出演:中村雅俊、金沢碧、秋野太作、田中健、上村香子、岡田奈々、森川章玄、石井苗子、神田うの、左時枝、平泉成

元祖・同窓会ドラマ

b0189364_16202884.jpg 1975年代に日本テレビで放送された群像ドラマ、『俺たちの旅』は当時の若者たちの間で絶大な支持を得た。カースケ(中村雅俊)、オメダ(田中健)、グズ六(秋野太作)という3人の若者が同じアパートで同居し、あれやこれやの青春を繰り広げるというドラマで、僕自身は正直言ってそんなに面白いとは思わなかったが、成績優秀の同級生、ヤマナミ君が「『俺たちの旅』おもしろい!」と訴えていたのが印象に残っている。
 こういった人気を集めた群像ドラマであれば、当然「その後の姿」というのもドラマとして格好の素材になるわけで、そういう類の続編は他のドラマでもたびたび作られている。で、今回、最初の『俺たちの旅』放映から20年後に作られた『二十年目の選択』というタイトルの続々編(10年後バージョンもある)が放送されたんで、それを見たわけである。
 中身は、カースケ、オメダ、グズ六が40台になっており、それぞれエラくなっているという話で、それでもそれぞれ少しずつ問題を抱えていて人生に迷うというような風にストーリーは展開していく。ただし基本は、以前の登場人物が集まって過去を懐かしむというのが話の芯の部分になる「同窓会ドラマ」である。したがってオリジナルの『俺たちの旅』にかなりの思い入れがない限り、大して面白くはない。ストーリーもバカバカしくて惹かれる部分はあまりない。随時70年代のフォーク音楽が流れるのもいかにも「同窓会ドラマ」という感じがして片腹痛い。
 脚本は鎌田敏夫で、これはオリジナル版と共通である(『俺たちの旅』が鎌田敏夫作だということはまったく知らなかった)。鎌田敏夫は『男女七人夏物語』みたいな同様の群像ドラマも書いていて、しかもあのドラマでもこういった類の同窓会ドラマが作られたように記憶しているが、そうすると鎌田敏夫は群像同窓会ドラマの巨匠なのか。しかもどの作品も、浅くて面白味がないという点も共通している(あくまで個人の感想です)。それでも当時世間ではこういったドラマが人気を集めていたわけで、(僕から見ても)ブラウン管を濁す程度の役割は十分果たしていた。ということであれば僕がことさらいろいろ言う必要もないんだろう。ただこのドラマについては、取って付けたようなシーンが多い上、セリフに面白味がないとか気恥ずかしいセリフが多かったりとか、そういうことは見ていて感じたんで、それについてはここで書いておこうかなと思った次第である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『舞踏会の手帖(映画)』
竹林軒出張所『わたしのペレストロイカ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-11-24 07:20 | ドラマ

『君は海を見たか』(1)〜(11)(ドラマ)

君は海を見たか (1)〜(11)(1982年・フジテレビ)
脚本:倉本聰
演出:杉田成道、山田良明
音楽:朝川朋之
出演:萩原健一、高橋恵子、伊藤蘭、田中邦衛、柴俊夫、六浦誠、小林薫、梅宮辰夫、下條正巳、平泉征、高岡健二

難病患者を家族に持つ人間の心理描写が見事

b0189364_18434264.jpg 若くして妻を亡くした仕事人間のサラリーマン(萩原健一)が主人公。現在小学生の子ども(六浦誠)がおり、家では妹(伊藤蘭)が母代わりで子どもの面倒を見ている。そういう状況で、子どもが病気で入院することになった。その後、子どもがウィルムス腫瘍という難病であることが判明。当初は、それでも仕事優先で邁進していたが、やがてそれが原因(上司の親心である)で進行中の大きなプロジェクトの担当から外される。はじめは子どもとの接し方が分からないなど(長いことまともに相手していなかったため)いろいろと壁に突き当たるが、徐々に子どもと接する時間が長くなり、心も通い合うようになる。余生3カ月と診断されているため、子どもの残りの人生を充実させようと奮闘するようになるというようなストーリー展開になる。ごく大雑把に言うとそういう内容だが、他にも主人公の再婚がここに絡む他、子どもを失うという事実を前にして狼狽する親の心情がうまく描かれていて、しかも子どもの教育の問題にも踏み込んでいる。そのため、中身はかなり充実している。
b0189364_18445923.jpg 実はこのドラマ、この10年以上前に日本テレビでも製作されているらしく、しかもその後映画化までされたため、この作品で3回目のドラマ化ということになる。言ってみればリメイクだが、『北の国から』でヒットを飛ばした半年後に、同じフジテレビの『金曜劇場』の枠で放送された作品であるため、かなり力が入っている。シナリオの完成度も高く、ドラマとしては割合ありきたりな「不治の病」テーマでありながら、悲劇にとどまらない奥深さが全編漂っている。さまざまな問いかけもあり、それは『北の国から』と共通するテーマであったりもするんだが、非常に意欲的という印象である。
 キャストは、『前略おふくろ様』の萩原健一と梅宮辰夫に『北の国から』の田中邦衛など。萩原健一は『前略おふくろ様』と違って落ち着いた演技で迫真である。梅宮辰夫の課長も異色の役(部下が休み返上で仕事に駆けずり回っているにもかかわらず、休日はきちんと取るような非会社人間)どころを淡々と演じていて好感が持てる。他にも、ゲスト的に小林薫、戸川純、水沢アキ、長谷川初範、大友柳太朗、ガッツ石松、芹明香らが単発で出てくるなど、キャストは結構豪華である。『中学生日記』で風間先生を演っていた湯浅実が医師として登場するのも新鮮である。
b0189364_18440142.jpg ドラマの中で使われている谷川俊太郎の詩『生きる』も大変効果的で良い。またテーマ曲のショパンのワルツ第10番もうまい使われ方で感心する(朝川朋之の編曲も非常に良い)。同じ倉本聰作品の『風のガーデン』でもショパン(夜想曲第20番)をアレンジしたものが使われていたが、あれよりも数段上品で良い。全体に渡って(特に後半)隙のない佳作で、黄金時代の倉本聰+フジテレビの勢いを感じさせるドラマであった。今見てもあまり古さを感じさせないという点も、完成度の高さを反映しているのではないかと思う。もっとも病院で医師がタバコを吸ったりするのは時代だなーと思う。当時、このドラマが終わった後、同じ枠で放送されたドラマが山田太一の『早春スケッチブック』(これも死がテーマ)であったというのもすごい。金曜劇場、今考えると非常に豪華であった。
★★★★

追記:
 舞台美術家の妹尾河童が「アートディレクター」として名を連ねていて、どういう風にこの番組に関わっていたのかは詳しく分からないが、途中一瞬出てきた子ども部屋(ヨットのキャビン風)の透視図が彼の作であることは見てとれた。この子ども部屋の内装ももしかしたら彼がやったのかも知れない。

参考:
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『あっこと僕らが生きた夏(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-11-23 07:42 | ドラマ

『ルーツ』(5)〜(6)(ドラマ)

ルーツ (5)〜(6)(1977年・米)
 第5話 自由への賭け
 第6話 新たなる天地を求めて
原作:アレックス・ヘイリー
脚本:アーネスト・キノイ、ジェームズ・リー
演出:マーヴィン・J・チョムスキー他
出演:レスリー・アガムス、チャック・コナーズ、ベン・ベリーン、リチャード・ラウンドトゥリー、オリビア・コール、ゲオルグ・スタンフォード・ブラウン、ブラッド・デイヴィス、ロイド・ブリッジス、バール・アイヴス


苦難の登場人物が現代に繋がる

b0189364_17093288.jpgネタバレ注意!

 アレックス・ヘイリーの『ルーツ』をドラマ化したもので、77年に全米でテレビ放送され大ヒットした作品。
 第5回は、キジーの息子、ジョージ(通称チキン・ジョージ)が主人公である。闘鶏師として腕を上げたジョージは、やがてマチルダと結婚し、子どももできる。だがその後、ジョージの所有者である農園主(実の父の白人)と心情的に対立するようになる。そんな折、賭け闘鶏で大勝負に出たその農園主は、ジョージの奮闘も虚しく惨敗し、財産を失ってしまう。その抵当として、優れた闘鶏師であるジョージの所有権を譲ることになり、ジョージは数年間英国に渡ることになる。
 第5回の後半は、ジョージの息子トムの世代。14年後に米国に帰ったジョージは、妻と息子のもとを訪ねる。そして自分が自由な身になり奴隷身分から解放されたことを打ち明ける。ただしこの地(妻と息子が住んでいる州)の法律では、この州に6カ月以上とどまった自由黒人は自動的に奴隷になるという条項があり、やむなくジョージは、妻と子ども達を置いて他の州へ去る。その後、南北戦争が始まる。トムは差別主義の白人たちと対立していく。
 最終回は、その後のトムの一家の様子。南北戦争で南部が敗北し、黒人奴隷が解放されることになる。とは言え、白人同様の扱いになるわけではなく、身分が奴隷でなくても実質的には農奴的な生活を余儀なくされる。一方で、白人と対等な関係を主張するトムは、白人たちのリンチを受けることにもなる。そんな折、チキン・ジョージが戻ってきて、北部に農園を手に入れたから全員でそこに移ろうと申し出る。農奴を手放したくない白人たちとの戦いが始まる……。
b0189364_17094184.jpg ジョージはドラマの最後に、息子や孫たちを前にして語る。「我が家の最初の奴隷は、じいさんのクンタ・キンテだ。だが、じいさんは奴隷になる前は自由だった。遠いアフリカという国にいた。だが、太鼓を作るため木を探していて奴隷商人に捕まった。そしてアメリカのアナポリスに連れてこられた。クンタ・キンテは自分の生まれた国を決して忘れなかった。そして自分の国の言葉も。コーはハープで、カンビ・ボロンゴは川のこと。彼は自由になるために戦った。逃げられぬよう足を切られたあとでも。死ぬ前に、自由への夢を娘、キジーに託した。キジーはその夢を、次のジョージに託した。ジョージは、それを息子たちに。自由になる日まで。そしてついに自由になった。」
 そして最後の最後に来るシーンは、アレックス・ヘイリー自身が登場して語る後日談である。トムの娘は、新しい農園で成長し、やがて材木商を営む黒人と結婚。その2人の間にできた娘はヘイリーという名の教師と結婚。そしてその間に生まれたのが原作者のアレックス・ヘイリー。ジョージが子孫たちに語った先祖の歴史が、ヘイリーの世代(クンタ・キンテの7代後)まで語り継がれてきた……と語られる。
 第1回から第4回までと同様、全編非常に劇的で、見所も多い。ただし第6回は、少々演出を劇的にしすぎたせいで、やり過ぎ(演出過剰)の感が出てきた。視聴者を引き付けなければならないテレビドラマという観点から見れば仕方がないのかも知れないが、多少興が醒める。それでも、黒人の理不尽な被差別の有り様をまざまざと見せつけられ、差別というものがどういうものであるかが実感できるという点で、素晴らしいドラマであることには変わりない。最後にヘイリー自身が出てきて、このドラマの登場人物たちと自分との繋がりを語るという演出も大変よくできている。このドラマは、放送時、アメリカで(そして日本でも)非常に注目され高い視聴率を獲得したが、あの時代の人権意識の高さを物語るようなエピソードだと思う。今の時代みたいに人権意識が希薄になりつつある時代にこそこういったドラマが必要ではないかと思うが、今放送されたところであまり注目されないかも知れないとも感じる。
 毎回のようにゲストキャストが出ていたが(前回も書いたが、実は知らないゲストが多かった)、第6回は、カントリー歌手のバール・アイヴスがそれに当たるようだ。ただしバール・アイヴスも、O・J・シンプソンやスキャットマン・クローザース同様、当時すでに俳優活動をやっていたため、他のキャストから浮いているというようなことはまったくない。
プライムタイム・エミー賞作品賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ルーツ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『キング牧師とワシントン大行進(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『グローリー 明日への行進(映画)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン(本)』

by chikurinken | 2018-11-10 07:09 | ドラマ

『ルーツ』(1)〜(4)(ドラマ)

ルーツ (1)〜(4)(1977年・米)
 第1話 さらば母なる大地
 第2話 誇り高きマンディンカの戦士
 第3話 我が妻 我が娘
 第4話 愛する者たちの別離
原作:アレックス・ヘイリー
脚本:アーネスト・キノイ、ジェームズ・リー
演出:デヴィッド・グリーン
出演:レヴァー・バートン、ジョン・エイモス、タルマス・ラスラーラ、エドワード・アズナー、ルイス・ゴセット・Jr、ヴィック・モロー、ローン・グリーン、マッジ・シンクレア、ロバート・リード、レスリー・アガムズ、チャック・コナーズ、ベン・ベリーン、リチャード・ラウンドトゥリー

アメリカの黒人の血を辿る一大叙事詩

b0189364_18094550.jpgネタバレ注意!

 アレックス・ヘイリーの『ルーツ』をドラマ化したもので、77年に全米でテレビ放送され大ヒットした作品。当時日本でも放送され、話題になった。僕自身も当時テレビで見て、おおきな感銘を受けた。原作はヘイリー自身の先祖数代に渡る歴史を描いたもので、アフリカのガンビアで捉えられ奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられたクンタ・キンテからの苦難が描かれる。
 ガンビアのマンディンカ族の戦士の血を引く若者クンタ・キンテは、奴隷商人に捕まり奴隷船で米大陸に運ばれる。奴隷船の中では多くの奴隷たちが死んでいく(反乱で死んだ者もいる)。大陸に着くと、今度は奴隷として白人の農園主に売り飛ばされる。マンディンカ戦士としてのプライドを持ち続けるクンタは自由を求めて脱走を何度も試みるが、そのたびに捕まりひどい仕打ちを受ける。ここまでが第2話までで、主演は当時学生あがりだった新人俳優、レヴァー・バートンが務める。
 第3話はその9年後の話で、ここから主演はジョン・エイモスに変わる。成人後のクンタ・キンテ役である。主人公のクンタ・キンテは、再び脱走を試みるが捉えられ、罰として足先を切り落とされる。その後、別の農園主の元に売られて、そこで料理女のベルと知り合い、彼女と結婚し娘を授かる。そしてこの地で家族とともに生きることを決意するというのが第3話。
 第4話はさらに16年後。娘のキジーが話の中心になる。キジーはある問題から別の農園主に売られ、親子が引き離されることになる。その後、新しい農園主に手込めにされ男の子を産む。第4話の後半は、それからさらに18年後。息子ジョージが立派に成長し、闘鶏用の鳥番として主人の信頼を集めている。キジーの方は別の黒人男サムと良い仲になり結婚の約束もするが、結局彼の奴隷根性に愛想が尽きて結婚を解消する。キジーには父クンタ・キンテから引き継いだ自由な人間としてのプライドがあったのだった……というストーリー。
b0189364_18095214.jpg 1話あたり90分だが、1話と2話が奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられるまでのクンタ・キンテ、3話が奴隷として家族を持つクンタ・キンテ、第4話が娘のキジーという具合に、だんだんスパンが短くなる。この後の第5話と第6話で完結するわけだが、第5話がジョージの世代、第6話がその子どもの世代という具合に話が進んでいく。このドラマについて出演者やスタッフが一様に「saga(サーガ)」と呼んでいたが、まさしく奴隷としての生き方を強要された黒人の、その家系の百数十年を辿る叙事詩になっている。奴隷船での非人道的な扱いや農園での無常な売買などで虐げられる黒人たちの有り様がリアルに描かれて、見るのが辛くなるような厳しい映像が出てくる。これが当時の黒人たちの現実だったということが窺える(奴隷船の撮影ではエキストラの黒人が使われていたが、あまりに過酷で屈辱的だったためか80%のエキストラが翌日現れなかったらしい)。主人の機嫌を伺いながら生き、かと思うと突然気まぐれなひどい扱いを受けたりもする。しかも終始劣等な人間として扱われる。黒人側は(そして見る側も)終始、こういった理不尽な扱いに憤りながらも結局媚びながら生きるしかないということを思い知らされる。
 放送当時かなり話題になって実際にアメリカでの視聴率も高かったらしいので、当時の(白人を含めた)人々に与えたインパクトはかなりのものだったんではないかと思う。現在のように差別主義が跋扈する時代にこそ、こういう作品を大勢の人間が見た方が良いのではないかと感じる。
 なお、第1話、第2話あたりまでゲスト扱いでさまざまな有名俳優が出ているようだ(ほとんどの俳優については知らなかった)。僕がわかったのは、第1話のO・J・シンプソン(元フットボール選手)と第4話のスキャットマン・クローザース(ミュージシャン)くらいだったが、この2人、俳優の活動もやっていたため、アメリカ人にとってはあまり目新しさもなかったのかも知れない。O・J・シンプソンは、ドラマの中でも恐るべき俊足を見せていた。
プライムタイム・エミー賞作品賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ルーツ (5)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『キング牧師とワシントン大行進(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『グローリー 明日への行進(映画)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体(本)』

by chikurinken | 2018-11-09 07:09 | ドラマ

『テス(2008年ドラマ版)』(ドラマ)

テス(ドラマ版)(2008年・BBC)
原作:トーマス・ハーディ
脚本:デヴィッド・ニコルズ
演出:デヴィッド・ブレア
出演:ジェマ・アータートン、エディ・レッドメイン、ルース・ジョーンズ、ハンス・マシソン、ジョディ・ウィッテカー

何だか冴えない

b0189364_19150595.jpg トーマス・ハーディ原作の『テス』のドラマ・バージョン。製作はBBC他。
 『テス』は、1979年に作られたナスターシャ・キンスキー主演の映画版が有名で、僕もかつてこちらを見たが、内容はほとんど憶えていなかった。そのため今回のドラマも内容についてはかなり新鮮に感じた。ただしストーリーは不幸な女性の話であり、非常に通俗的で湿っぽい。原作が文楽だと言われても通るような話で、義太夫節が聞こえてきそうと言えば言い過ぎか。
 英国の下層階級に属している(実は上流階級という設定)テスの元に不幸が次から次へとやって来るが、一方で幸福な時期もそれなりにあり、それが余計不幸度を強調するという構成。元々『テス』が発表されたのが19世紀末の英国で、当時のヨーロッパ諸国で下層階級が結構辛い生活を強いられていたことを考えると、実際に起こりうるリアルな話で、ある意味リアリズムの作品とも考えられる。とは言え、少なくともドラマ版からはもう一つ迫ってくるものがない。
 主人公のテスを演じるのはジェマ・アータートンという人。この女優のことはまったく知らなかったが、率直に言って何だか冴えない。テスと言えばモテモテの登場人物である。b0189364_20140060.jpgこの女優、それなりに美形とも言えるが、引き付けられるような魅力はまったく感じない。冒頭の大勢の女性のダンスのシーンではどの女性が主人公なのかしばらく気付かなかったぐらいである。他のキャストも同様で、アレック(役の俳優)もエンジェル(役の俳優)ももう一つ冴えない。波瀾万丈のストーリーのドラマでそれなりに楽しめるのだが、あまり惹かれるところがなかったというのが正直なところである。最後の方は過剰なセンチメンタリズムに少々うんざりする。これが原作のせいなのか、ドラマのせいなのかはよくわからない。そういうわけで、ナスターシャ・キンスキーの映画バージョンももう一度見てみたいと思った(見るかどうかはわからないが)。
★★★

参考:
竹林軒出張所『レ・ミゼラブル (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『白鯨(ドラマ)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年)(ドラマ)』
竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(2015年)(ドラマ)』
竹林軒出張所『クロムウェル 英国王への挑戦(映画)』
竹林軒出張所『ジョン・レノンの魂(ドラマ)』
竹林軒出張所『「英雄」〜ベートーベンの革命〜(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-10-23 07:13 | ドラマ

『炎立つ 総集編』(1)(ドラマ)

炎立つ 総集編 (1)(1993年・NHK)
原作:高橋克彦
脚本:中島丈博
演出:門脇正美、三井智一他
出演:渡辺謙、村上弘明、古手川祐子、村田雄浩、新沼謙治、佐藤慶、佐藤浩市、豊川悦司、里見浩太朗、財前直見、萩原流行、坂本冬美

大河ドラマは幕末と戦国だけじゃない

b0189364_16564222.jpg 平安時代末期に栄えた奥州藤原氏を扱った大河ドラマ。1993年に放送されたもので、大河ドラマとしては珍しく3部構成になっている。第一部「北の埋み火」が全12回で、藤原経清(渡辺謙)が主人公である。奥州に渡った経清が、安倍氏が支配する東北の金を狙う国司、藤原登任(名古屋章)の不正を目の当たりにして、この国司と対峙する安倍氏側に与するようになる。藤原登任は安倍氏の平定に失敗しやがて国司を解任されるが、その後奥州に入った源頼義、義家親子が安倍氏を平定しようとして、安倍氏との間で長い戦闘状態に入る。これが前九年の役である。これが第一部。
 第二部「冥き稲妻」は、安倍氏が滅んだ後、その安倍氏の領地を代わって支配した清原氏の話で、経清の子どもである藤原清衡(村上弘明)が台頭し、最終的に清原氏を滅ぼして支配権を手中に収めるまでの話で、要するに後三年の役がこれに当たる。
 第三部は、その80年後、繁栄する奥州藤原氏が、源頼朝の画策で滅ぼされる過程が描かれる。言ってみればこの『炎立つ』、奥州藤原史になっていて、3つの時代に区切ったためにダラダラと続かずに非常に引き締まった構成になっていた。特に第一部で描かれる藤原経清と安倍貞任(村田雄浩)の友情が非常に気持ち良く、最初に見たときから印象に残っていた。また、登場人物達のさまざまな複雑な思いが表現されているなど重厚な面も備えており、NHK大河ドラマの中ではもっともできの良い部類の作品であった。ただ第二部、第三部は、目新しい素材であったために新鮮だったが、第一部に比べて若干落ちるという印象を持っていた。今回も第三部は結局見ずじまいで終わった。
 で、そのあたりのいきさつがウィキペディアに載っていて、何でも原作が第一部までしかできておらず、第二部以降は脚本家が、原作ができあがる前にどんどん話を先に書いたらしいのである。そのために原作者と脚本家の間に一悶着あったという話も、脚本家によって『シナリオ無頼』という著作の中で披露されているらしい(この本読んだはずなんだが、このエピソードについてはまったく記憶になかった)。
 ドラマについては、渡辺謙と村田雄浩が非常に好演で、佐藤慶、佐藤浩市、豊川悦司も強烈な個性を演じていて水準が高い。また大道具が昨今の大河ドラマと違って、豪華でよくできているのも目に付いた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『火怨・北の英雄 アテルイ伝 (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『大河ドラマ 平清盛 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『シナリオ無頼(本)』

by chikurinken | 2018-10-22 07:56 | ドラマ