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竹林軒出張所

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カテゴリ:ドラマ( 256 )

『のんのんばあとオレ』(1)、(2)(ドラマ)

のんのんばあとオレ (1)、(2)(1991年・NHK)
原作:水木しげる
脚本:高橋正圀
演出:兼歳正英
出演:佐藤広純、山田昌、岸部一徳、もたいまさこ、笹野高史、浜村純

水木サンの原体験
ドラマとしてはちょっと物足りない


b0189364_19204898.jpg この作品がNHKで放送されたこと自体は覚えているが、そもそも放送当時見ていなかったため、これが「ドラマ愛の詩」というシリーズで、月曜日から金曜日まで連続で放送されていたというのはまったく知らなかった。ちなみに30分枠で、原作は水木しげるのエッセイである。
 今回DVDを借りて見たんだが、ドラマとしては少々物足りないという印象で、5本分収録されていたにもかかわらず2本で飽きてしまった。ただ見ているうちに原作の方を読んでみたいもんだと考えていたのも事実で、要するに原作には興味が湧くが、このドラマについてはもう一つということなのである。原作は散文のようだが、いずれ読んでみるつもりではいる。
 ストーリーは、水木しげるの幼少時の話であり、(水木が少年時に多大な影響を受けたらしい)「のんのんばあ」という老女と茂少年(水木の分身)との交流が描かれる。水木しげるのいわば原体験が描かれるため、妖怪も随所に出てきて、いかにも水木作品という雰囲気を漂わせる。なお、登場するさまざまな妖怪はアニメで表現される。
 素材は興味深いんだが、やはりドラマに華がないと感じてしまう。それに演出がありきたりであるため、あまり見続けようというモチベーションが沸かない。テンポもあまり良くない。おそらくこのシリーズ自体に(「少年ドラマシリーズ」みたいな)子ども向け番組の要素があったようで、それが大きいのかと思う。そういうことがわかっていたらまたそういう目で見たんだろうが、少なくともこのドラマからは水木作品のダイナミズムみたいなものは感じられなかった。
第7回文化庁芸術作品賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『ほんまにオレはアホやろか(本)』
竹林軒出張所『ねぼけ人生(本)』
竹林軒出張所『鬼太郎が見た玉砕(ドラマ)』
竹林軒出張所『水木しげるの遠野物語(本)』
竹林軒出張所『水木しげるの泉鏡花伝(本)』

by chikurinken | 2019-08-05 07:20 | ドラマ

『まんが道』(3)〜(15)(ドラマ)

まんが道 (3)〜(15)(1986年・NHK)
原作:藤子不二雄
脚本:大久保昌一良
演出:安江進、森平人
出演:竹本孝之、長江健次、冨士眞奈美、天地総子、磯崎洋介、蟹江敬三、小倉一郎、木原光知子、イッセー尾形、久米明、玉川良一、中村明美、犬塚弘、桜井センリ、江守徹、ケーシー高峰、渡辺寛二

それでも「熱い青春が心地良い」

b0189364_19514863.jpg ドラマ版の『まんが道』第1話、第2話の続き。全15回がやっと終わった。今回、BSトウェルビというチャンネルで週に2話ずつ放送されたわけだが、途中放送されない週が多く、そのために終わるまで3カ月もかかった。前回も書いたが、元々の『銀河テレビ小説』枠では1日1話が月曜日から金曜日まで放送され、3週間ですべての回が終わっている。今回の放送では、間が3週間空いた回もあり、真面目に取り組んでいるのか疑問に感じる。通販番組ばっかりやっていないで、特にドラマは、しっかり枠を確保した上で放送したらどうだと言ってやりたくなる。なお、第15話の終了後に『まんが道 青春編』の第1話が放送され、これから同じ枠にこの『青春編』が放送されるが、次回はなんと1カ月後ということで、こうなると連続ドラマではなくほとんど単発ドラマである。この間、野球中継が放送されるようだ。どうしても野球中継をやりたいんだったら、野球のない時刻にドラマを放送したらどうだと思うが、しょせんは埋め草という発想なんだろう。
 それはともかく、ドラマ自体はなかなか面白く、主人公の満賀道雄(藤子不二雄Aがモデル:竹本孝之)と相棒の才野茂(藤子・F・不二雄がモデル:長江健次)が、高校卒業後、就職を経て、いよいよマンガ家になるべく上京するという運びになる。就職については、満賀道雄が地元の立山新聞に縁故入社で入り記者になるが、才野茂の方は肉体労働に馴染めずすぐに辞めてしまう。それでも二人ともマンガを描き続け、投稿したり、あるいはマンガ雑誌から注文を受けたりし、半年後(実際は2年後らしい)に上京を決意。東京では手塚治虫(江守徹)やトキワ荘にいた寺田ヒロオ(渡辺寛二)、マンガ雑誌の記者などに会い、いよいよマンガ家になるべく決意を固めるのである。
b0189364_19514451.jpg ストーリーは単純だが、しかし主人公の背景がしっかり描かれるため、重層的ではある。また当時のマンガ界の様子も丁寧に描かれ、このあたりが実話を基にした話の強みと言える。実際、トキワ荘グループが出てきた頃の日本のマンガ界は、言ってみれば黎明期であり、当時のことを記憶している人々も少なくなっている。割合最近のことであるにもかかわらず、状況が忘れ去られてしまうということは意外にあるもので、この日本マンガ黎明期についてもそれは当てはまる。ただ、当時のことを安孫子素雄が『まんが道』で描き残し、しかも他のマンガ家たちもマンガに残している他、関係者もそれに刺激を受けたせいか文章で残しているため、当時の様子はかなり詳しいところまで窺える。惜しむらくはトキワ荘自体が壊されたことである(当時存続運動もあった)が、最低限、人々の記憶、記録に止められれば良しとすべきなのかも知れない。そういった意味でこの『まんが道』は資料としても大変貴重である。ドラマ化したのも、映像として残すという意味で重要であり、実はこのドラマを見たトキワ荘の近所の方が、トキワ荘の跡地にモニュメントを作ったりするきっかけになったらしい。その後、この活動がトキワ荘復興プロジェクトに発展し、とうとう2020年に近所の公園(南長崎花咲公園)にトキワ荘が復元されることになったという。
 ドラマは、前にも書いたが「熱い青春が心地良い」作品で、何度見ても心が熱くなる。演出がやや単純なきらいはあるが良いドラマだと感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『まんが道 (1)、(2)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夢追い漫画家60年 (100年インタビュー)(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘青春日記―いつも隣に仲間がいた…(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の青春(映画)』
竹林軒出張所『まんが トキワ荘物語(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道(本)』

by chikurinken | 2019-08-04 06:50 | ドラマ

『男たちの旅路 第1部「猟銃」』(ドラマ)

男たちの旅路 第1部「第三話 猟銃」
(1976年・NHK)
脚本:山田太一
演出:中村克史
音楽:ミッキー吉野
出演:鶴田浩二、水谷豊、森田健作、桃井かおり、前田吟、五十嵐淳子、久我美子、石田信之、丹古母鬼馬二、頭師佳孝

現実主義か理想主義か、どっち?

b0189364_19392202.jpg 山田太一の代表作『男たちの旅路』の第3回目。
 柴田(森田健作)、杉本(水谷豊)、悦子(桃井かおり)は前回の意見の対立が基になってガードマンを辞めてしまう。ただ、柴田の母(久我美子)と吉岡(鶴田浩二)の間に以前恋愛関係があったことがわかり、それを口実のようにして3人は吉岡に近づく。そんな折に起こった連続猟銃発砲事件、それに続く猟銃強盗事件に彼ら4人が巻き込まれていく。ストーリーには取って付けたような部分もあるが、しかしここでも強烈な問いかけがある。
 猟銃強盗の犯人(石田信之)たちが、猟銃を発砲し、警備員室を襲う。その際、3人のガードマンとそこに居合わせた柴田、杉本、悦子、吉岡が人質に取られる。犯人の警備員に対する要求は、この建物に入っている宝石店の防犯設備を教えろということで、防犯装置が鳴らないまま宝石を奪うというハラである。教えてくれれば命まで奪う気はない、と言う。その際、ガードマンたちに対して「あんたらは仕事で警備してるだけなんだから命を張って我々に対抗する必要はない、我々に協力して防犯設備の位置を教えてくれさえすれば命を取るようなことはしない」と説得する。若いガードマンはそれに応じようとするが、吉岡が「そんなもんじゃない、高をくくるな」と反発する。つまり仕事について、しょせん金のためにやっている業務だと割り切るか、それとも職務を全力で遂行しようとするか、あなたはどっち派だという問いかけがあるわけだ。現実主義か理想主義かという問いが投げかけられるのである。これはなかなか答えが出せない難問であり、ここに登場する一部の若者は現実主義に傾くわけだが、吉岡は理想主義を貫くというように話が展開する。
 この回もサスペンスの要素が強く、まったく目が離せなくなる。しかも明確なテーマも提示され、同時にストーリー的な面白さ、キャラクターの面白さも群を抜いており、非常に質が高いドラマだと感じる。もちろん先ほども書いたように作り過ぎの感は否めない(と言うより、ちょっと度が過ぎていてリアリティを欠いているような気もする)。
 事件は一悶着あるが一応解決する。その後、杉本と悦子はガードマンに復帰し、柴田は転職する。第2部以降は、第1部の主役の1人であった森田健作は出演せず、主人公たちに絡む新しいガードマンとして柴俊夫が出演する。
第14回ギャラクシー賞選奨受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「非常階段」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「路面電車」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第3部「シルバー・シート」(ドラマ)』
竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-15 07:38 | ドラマ

『男たちの旅路 第1部「路面電車」』(ドラマ)

男たちの旅路 第1部「第二話 路面電車」
(1976年・NHK)
脚本:山田太一
演出:高野喜世志
音楽:ミッキー吉野
出演:鶴田浩二、水谷豊、森田健作、桃井かおり、前田吟、五十嵐淳子、結城美枝子、久我美子

テーマが強烈
あなたならどうすると訊かれているようだ


b0189364_16375781.jpg 山田太一の代表作『男たちの旅路』の第2回目。第1回目で自殺騒ぎを起こした悦子が、吉岡らが勤める警備会社にガードマンとして入社する。このように第一話からストーリーがそのまま進展し、柴田(森田健作)の背景や、吉岡(鶴田浩二)と柴田の母(久我美子)との関係などが少しずつ明らかになるが、同時にこの回では、前回と異なる新しい事件(警備しているスーパーの万引事件)があり、それに対して吉岡と若い社員、杉本(水谷豊)、柴田、悦子(桃井かおり)との意見の対立が起こるという具合に話が進む。
 悦子が万引常習犯の主婦(結城美枝子)を捕まえるが、彼女の話を聞いて同情し、意図的に逃がしてしまう。杉本、柴田もその話を聞いてこの主婦に同情的になるが、それに対し吉岡が憤り、警察に通報して逮捕させるのである。吉岡は、同情して自分たちは善行をやったと思っているかも知れないが、それは自ら判断を下さない態度に過ぎないというのだ。結局、犯罪者は誰かが捕まえなければならないのに、自分はその役割を放棄し、他人に委ねながら、その他人が冷酷になって捕まえたら、それに対して人情がないなどと非難する。だがそれは、結局のところ甘えであって逃げに過ぎないなどと言い、若い社員たちと対立するのである。この万引常習犯の主婦、どこか依存症風で、生活にも少々闇を抱えているような部分があって、かなり同情を誘うため、見ている側の多くはおそらく若い社員たちと同様、この犯人に感情移入してしまうが、吉岡の冷酷な判断によって冷や水を浴びせられてしまう。若い社員たちは吉岡に一様に反発して辞めてやると息巻くが、視聴者の側には大きな葛藤が残るという、大変よくできたストーリーである。どこかディスカッションのネタ映像風でもある。
 脚本の山田太一、この『男たちの旅路』について、「一つのワンテーマを作って、そのテーマにどういうふうに鶴田(浩二)さんは考えるか、若い人はどう考えるかっていうふうにして、ワンテーマずつ書いていこうと思った」と語っている(竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』参照)が、こういうアプローチがまさに明確に発揮されている作品で、テーマの深さに感心してしまった。また登場人物一人一人のセリフやキャラクター設定も相変わらず素晴らしく、ドラマとしての質が非常に高い。
 このドラマ、前に一度見ているはずだが、まったく憶えていなかった。『男たちの旅路』自体、この後第4部まであるんだが、第3部辺りからメインストリームが変な方向に行ってしまい(吉岡と悦子の恋愛関係)、それが強烈な(悪い)印象として残っているため、もう一度見たいと思っていなかったが、何度も見る価値はあると今回の再放送を見て思ったのだった。
第14回ギャラクシー賞選奨受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「非常階段」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「猟銃」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第3部「シルバー・シート」(ドラマ)』
竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-14 07:37 | ドラマ

『男たちの旅路 第1部「非常階段」』(ドラマ)

男たちの旅路 第1部「第一話 非常階段」
(1976年・NHK)
脚本:山田太一
演出:中村克史
音楽:ミッキー吉野
出演:鶴田浩二、水谷豊、森田健作、桃井かおり、前田吟、五十嵐淳子

日本のテレビドラマの画期になった作品

b0189364_20185666.jpg 山田太一の代表作『男たちの旅路』の第1回。
 ある警備会社を舞台にした話。主人公は、この会社の中途入社新入社員、杉本(水谷豊)と柴田(森田健作)である。その彼らの前に現れたのが、その警備会社の司令補、吉岡晋太郎(鶴田浩二)。この吉岡だが、新入社員6人を相手にいきなり立ち回りを演じてケガをさせたり(結果的にそのうちの3人は入社を辞退)、若い奴が嫌いだと語ったり、若者たちにとってはなかなか面倒な存在である。特に杉本は、楽をしながら人生を軽く流していくというようなタイプで、仕事にも真面目に取り組もうとしない。そのため吉岡ともことごとくぶつかる。
 こういう3人が、飛び降り自殺が多発するあるビルの警備を担当することになって、これ以上自殺者が出ないよう監視するという仕事に就く。そこに現れたのが飛び降り自殺を試みようとする悦子(桃井かおり)で、この悦子と3人の警備員の間でいろいろともめ事が起こるのである。そして、この一連の事件を通じて吉岡の生き様が明らかになっていくというふうに話が進む。
 この吉岡だが、実は特攻隊の生き残りで、無益に死ぬ同僚をたくさん見てきたという設定(実際の鶴田浩二の人生の投影でもある)であるため、生死について深く考えず真剣に生きるということをしない若い世代に強い嫌悪感を持っている。それが「若い奴が嫌いだ」という発言に繋がるわけだが、結果的にこのドラマ(つまり『男たちの旅路』第1部第一話)では「真剣に生きる」ということを考えさせる内容になる。
b0189364_20190369.jpg 脚本家のインタビューによると、この『男たちの旅路』は、各回テーマを設定してそれについて登場人物たちが考えるというドラマにしているらしいが、このこと自体テレビドラマとしてはかなり斬新で、それがために山田太一にとっても日本のテレビドラマにとっても画期と言える作品になった。また脚本家の名前が冠に付いたのもこのドラマが日本初である(竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』参照)。
 そういう強いテーマ性に加えて、捕り物めいたシーンが長く続きスリルとサスペンスの要素もあるため、テーマ性が強烈であるにもかかわらず、見ていてまったく飽きることがない。しかも、吉岡司令補だけでなく、水谷豊演じる杉本のキャラクターもいかにも当世の若者風で、はじけていて印象的である。このように、キャラクターがしっかり描き分けられてそれぞれが魅力的であるのも、山田ドラマの特徴である。このシリーズ、この後、登場人物を変えながら第4部(各3話)まで続く。すべてDVD化されていることからわかるように、当時の評価・人気ぶりも窺われる。実際今見ても大きなインパクトが残る佳作である。
第14回ギャラクシー賞選奨受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「路面電車」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「猟銃」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第3部「シルバー・シート」(ドラマ)』
竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-13 07:18 | ドラマ

『早春スケッチブック』(9)〜(12)(ドラマ)

早春スケッチブック (9)〜(12)(1983年・フジテレビ)
脚本:山田太一
演出:富永卓二、河村雄太郎
出演:鶴見辰吾、岩下志麻、山崎努、河原崎長一郎、樋口可南子、二階堂千寿、荒井玉青

そして大団円で終息に向かう

b0189364_19273015.jpg 望月家に騒動をもたらしている元カメラマン、沢田(山崎努)の病状が悪化していく。望月家の人々と沢田の恋人(樋口可南子)は、それに同情を示して沢田の元を訪れるが、さらには望月家の子ども達にしきりに絡んでいた不良少女(荒井玉青)までが毎日沢田の家を訪問するようになる。沢田は、当初見せていた攻撃的な側面を見せなくなり、何だかしおらしくなって、ちょっとばかり拍子抜けである。そしてやがて収束に向かっていくという展開になる。例によって最後は大団円で終息するという結果になる。
 沢田が死の恐怖で弱みを見せるあたりはなかなか良い描写だが、最後に物わかりが良くなってしまうのは少々腑に落ちない。とは言うものの、破綻はなく整合性はとれている。
 このドラマはなにしろ、それぞれの登場人物が非常にリアルで、性格もしっかり描きわけされていて、実在の人物のような存在感がある。こういったあたりが、このドラマの特質である。他人(血縁関係のあるものもあるが)同士が、お互いの生活に介入し合い、そこに人のぶつかり合いが生じてドラマが生まれる。この当時のドラマ、特に山田太一作品にはそういうものが多いが、それがごく自然に展開するため、違和感を感じることがない。このあたりが山田ドラマの大きな魅力であり、すごさなんだろうなと、このドラマを見ながらあらためて考えた。ただやはり最終回の展開は、どうにもいただけない感じがして、最後までモヤモヤが残った。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『早春スケッチブック(1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春スケッチブック(5)〜(8)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒『批評選集:ドラマ - 山田太一』
竹林軒出張所『時にはいっしょに(1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-06-22 07:27 | ドラマ

『早春スケッチブック』(5)〜(8)(ドラマ)

早春スケッチブック (5)〜(8)(1983年・フジテレビ)
脚本:山田太一
演出:富永卓二、河村雄太郎
出演:鶴見辰吾、岩下志麻、山崎努、河原崎長一郎、樋口可南子、二階堂千寿、荒井玉青

河原崎長一郎の演技にただただ関心

b0189364_19592833.jpg 最近、山田太一脚本のドラマがあちこちで再放送されていて、見るのが追いつかないくらいである。日本映画専門チャンネルで『真夜中の匂い』(これが楽しみ)、BS12では『早春スケッチブック』から『想い出づくり。』、NHKでも『男たちの旅路』が3本放送されるという具合。だが『想い出づくり。』や『男たちの旅路』は割合「ありきたり」な選択という感じもする。やはり日本映画専門チャンネルはこの分野では先行しており、面白いラインアップを提供してくれる。
 ところで、この『早春スケッチブック』では、重病になった元カメラマン(山崎努)が、「お前らは、骨の髄までありきたりだ」などと怒鳴り散らして、普通に生きる人たちに揺さぶりをかける。考えてみれば大きなお世話で非常に身勝手な言動だが、今まで自身の生活を振り返ることなく漫然と生きてきた人たちは、こういった刺激に過剰に反応してしまう。こうして善良で小市民的な生活を送っている人の家庭に波紋が起こるというわけだ。
 第5回から第8回では、このカメラマンが、主人公の家庭、望月家にまで入ってきて、(元恋人だった)妻(主人公にとっては母)と逢うことを求め(夫に対して「奥さんを貸してくれ」などと言う)、主人公の家庭の平穏な生活をかき乱す。
 このカメラマン、沢田(山崎努)、主人公の家族に対して不快な言動を繰り返すが、その一方で、実は割合良い人みたいな側面も見せ、そのために主人公の少年(鶴見辰吾)とその母、それから育ての父と妹も少しずつ気を許していくそぶりを見せる。かと思えば突然豹変して、相手の気持ちをえぐるような嫌な言葉を発してきたりもする。普通の人々は、こういった言葉を不快に感じつつも、どこかで揺さぶられてしまう。特に主人公の育ての父は、現状肯定型の小市民的な生活を送る人で、沢田と好対照をなす存在。もちろんそういった小市民的な生き方を否定することはまったくできないのであって、「ありきたり」であろうが、長い目で見ればそちらの方が良いかもしれないし、そもそもどちらが良いとかいう問題でもない。
 そういう小市民的な存在を巧みに表現しているのが河原崎長一郎である。この人、僕が子どもの頃からテレビでよく目にしていて、こういう小市民的な役が多かったという印象が僕の中にあるが、確認すると必ずしもそうではないようである。こういった小市民的な役は、山田太一のドラマ(『沿線地図』、『友だち』)ぐらいで、そうするとやはり、僕の中で山田ドラマの印象が非常に強かったということになるのだろうか。この河原崎長一郎、演技があまりにさりげなく影が薄いんでつい見過ごしがちだが、毎度毎度素晴らしい演技である。周辺の人間に対する気遣いや愛想笑いなど、市井の人物の表現がピカイチである。今回見ていて、すごい役者であることにあらためて気付き、ただただ感心した次第。なお、河原崎長一郎、妻役の岩下志麻と実はいとこ同士らしい(ウィキペディア情報)。
★★★★

追記:
 第8回の最後で、元カメラマン、沢田の身体に変調が起こるため、ここからいよいよ収束に向かうということになりそうだ。

参考:
竹林軒出張所『早春スケッチブック(1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春スケッチブック(9)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒『批評選集:ドラマ - 山田太一』
竹林軒出張所『時にはいっしょに(1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-06-21 06:58 | ドラマ

『早春スケッチブック』(1)〜(4)(ドラマ)

早春スケッチブック (1)〜(4)(1983年・フジテレビ)
脚本:山田太一
演出:富永卓二、河村雄太郎
出演:鶴見辰吾、岩下志麻、山崎努、河原崎長一郎、樋口可南子、二階堂千寿、荒井玉青

見始めると目が離せなくなる

b0189364_10151946.jpg 今回、14年ぶりにこのドラマを見た。あれからもう14年も経っているのかと思う。さらに言えばこのドラマが作られたのが1983年で、ドラマが作られてから36年経っている。主人公の少年が1983年の共通一次試験を受けるという設定になっているが、僕もあの年に共通一次を受けている。83年の試験は1月15日に実施されたが、なんと成人の日とかち合っていたため、試験場に向かうバスから成人式の晴れ着を着た女性がたくさん目に付いた。当時20歳だった二浪の友人も、こういった人々を目にして、俺は一体何をしているのかと考えたなどと漏らしていた。
 この共通一次試験を目前にしているのが主人公の高三の少年、望月和彦(鶴見辰吾)だが、父(河原崎長一郎)と母(岩下志麻)が再婚同士で、共に連れ子(母に自分、父に妹)がいたという設定である。ただ結婚してからすでに10年経っているため、普通の家族との違いを感じることはほとんどない。そのため普通に高校生活を送り受験勉強に励んでいたのであるが、ある日突然、新村明美(樋口可南子)という美女が目の前に現れて、バイトしない?などと言ってかなり強引に少年を、実の父(山崎努)の元に引っぱっていくというふうにストーリーが展開する。大学入試直前にあれやこれやが起こるというのも、『沿線地図』や『岸辺のアルバム』を彷彿させる。
 この実の父、沢田竜彦というんだが、目を病んだことがきっかけで写真家を引退し古い洋館に引きこもっているという状態で、社会との唯一の接点になっているのが明美であるという設定である。和彦も最初は抵抗を覚えていたが、その後何度か沢田の元に足を運ぶようになり、沢田の影響を受けるようになる。実の父、沢田が「ありきたりな人生」を否定的に捉えるような発言をし、それをきっかけに自分の生き方についても考えるようになって、あげくに、今の父についても物足りなさを感じるというふうに話が進行していく。これが第4回までの流れである。ちなみに実の父に影響を受けてしまった和彦は、共通一次試験をすっぽかしてしまう。沢田から起こった影響が望月の家に波風を立てていくというふうにこれから進む。
 ドラマは、最初からグイグイ視聴者を引っぱるような展開で、特に樋口可南子が登場するあたりからは先が見えないサスペンスが始まり、目が離せなくなる。脚本家の豪腕にうなってしまう。また樋口可南子と岩下志麻が非常に美しいのもこのドラマの大きな魅力である。山崎努の演技も大きな見所で、涙と一緒に洟を垂らすなどなかなか見ることができない怪演である(『北の国から』で地井武男が同じような演技をしたことがあったが)。第4回の段階では、沢田の病気がまだ見えていない状況である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『早春スケッチブック(5)〜(8)(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春スケッチブック(9)〜(12)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒『批評選集:ドラマ - 山田太一』
竹林軒出張所『時にはいっしょに(1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-06-20 07:06 | ドラマ

『浮浪雲』(1)、(2)(ドラマ)

浮浪雲 (1)、(2)(1978年・テレビ朝日、石原プロ)
原作:ジョージ秋山
脚本:倉本聰
演出:近藤久也
出演:渡哲也、桃井かおり、伊藤洋一、岡田可愛、笠智衆、谷啓、柴俊夫、犬塚弘、三浦洋一、山崎努

奥さん、もうマンガやがな、マンガ

b0189364_19581383.jpg 1970年代に発表されたジョージ秋山原作のマンガ『浮浪雲』は、当時世間でかなり話題になり、それに触発されドラマ化されたのがこの作品である。このあたりのいきさつについては僕自身も記憶しているが、当時僕の家ではテレビ朝日系のチャンネルが映らなかったし、原作も読んだことがなかったため、このドラマについてもまったく興味を覚えなかった。今だってそれほど興味があるわけではないが、脚本が倉本聰だと知って、ちょっと見ておくかという気になったというその程度の話である。脚本担当は倉本聰だが、データを参照すると金子成人も書いているようで、金子成人の回は特に見なくても良いと考えている。
 さてこのドラマであるが、普段から昼行灯みたいな遊び人の浮浪雲(渡哲也)が実は相当な剣術使いであるというような、面白いが割合よくある設定である。また、いかにもマンガ的なストーリーで、幕末期を舞台にした時代劇でありながら、ギターが出てきたり、国語辞典が出てきたり、あるいはピンクレディーの歌や「勝ってくるぞと勇ましく」が出てきたりして何でもありである。「勝ってくるぞと勇ましく」については、「江戸時代なのに「勝ってくるぞと勇ましく」歌ってやがる」みたいなツッコミのセリフが出てきて、概ねコントみたいなドラマとも言える。冒頭に「このドラマはフィクションであり、時代考証その他かなり大巾にでたらめです。」などと出て開き直っており、そのあたりも「コントだと思って見ろ」というメッセージなんだと思う。当時この手のコント風のドラマは割合流行っていたが(TBSの水曜ドラマなど)、あれをテレビ朝日でもやってみましたという番組だったんではないかと感じる。
 第1回目は沖田総司(三浦洋一)までゲスト的に出てきたりするが、取り立ててどうこう言うようなドラマでもないという印象である。そのせいか第1回目の視聴率が12%だったものが第2回目で8%に落ちている。言ってみれば初回を見た3人に1人が失望したという結果である。僕も倉本作品でなければ2回目以降は見ないと思う。
 なお第2回目のゲストは坂本龍馬(山崎努)で、龍馬にサインをもらうとかのエピソードも少々こざかしさを感じさせる。
★★★

追記:子役がかぶっているヅラまで、コントみたいないい加減な代物で、見ていてすごく気になる。

参考:
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-05-30 06:57 | ドラマ

『君は海を見たか (70年版)』(6)〜(8)(ドラマ)

君は海を見たか (6)〜(8)
(1970年・大映テレビ室、日本テレビ)
脚本:倉本聰
演出:井上芳夫
出演:平幹二朗、山本善朗、姿美千子、野際陽子、本郷功次郎、寺田農、小栗一也、井川比佐志

『君は海を見たか』のオリジナル版

b0189364_20133605.jpg 以前紹介したドラマ、『君は海を見たか』のオリジナル版。前にも書いたが、『君は海を見たか』は都合3回作られており、最初に発表されたのが本作、続いて翌年に映画化され、さらにその11年後にフジテレビ版が製作された。最初の70年版と映画版は製作会社が同じで(大映)、しかも監督、子役が共通ということであることから、映画版はテレビ版のスピンオフであることが容易に想像される。ただ今回70年版を見た印象から言うと、82年版と70年版はシナリオ自体がかなり共通しており、放映時間を考えると70年版と82年版の方が、70年版と映画版より近いのではないかと思われる。実は今回も第1回から見ようとしていたのだが、内容、セリフが前に見た82年版とかなり共通していたために、途中で飽きてしまった。それで第6回から後を見てみたというわけである。
 キャストは当然、両者で大幅に異なっているのだが、どの俳優もうまい役者ばかりであるため、違和感はまったくない。僕はといえば、頭の中で82年版のキャストと随時置き換えながら見ていた。82年版で比較的重要な役割を演じていた下條正巳と平泉征が、70年版ではチョイ役で、1回限りの出演になっている。また寺田農はどちらの版でも中心的な役割を演じていた。
 先ほども言ったように、若干の違いはあるが、セリフを含めシナリオがかなり共通しており、しかもどちらもよくできているため、どちらかを見ていればもう一方を見る必要はあまりないかも知れない。ただ82年版で手が加えられた箇所は、倉本聰が10年を経た上で追加したいと考えたであろう箇所であるため、両方見る機会があるんだったら82年版の方をお奨めする。82年版はキャスティングも非常に良かったし、主役のショーケンも非常に力が入っていた。子役も魅力的だったし、何より完成度が非常に高かった。一方、この70年版には、第5回に読売ジャイアンツの長嶋茂雄、王貞治、高橋一三がゲスト出演する(単にボールにサインするだけだが)上、後楽園球場での野球の映像も少し入る。それにいろいろと当時の風俗(流行歌〈由紀さおりの「手紙」やシューベルツの「風」などがバックで流れていた〉やモノなど)が出て懐かしいんで、そういうのを期待する向きには70年版も良いかも知れない。ただどちらも現時点ではDVD化されていないため、実際のところ簡単には見ることができないというのが実情である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『君は海を見たか (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『わが青春のとき (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『わが青春のとき (2)〜(8)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-05-28 07:13 | ドラマ