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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『不登校の17歳。』(本)

不登校の17歳。出席日数ギリギリ日記
青木光恵著
メディアファクトリー

『中学なんていらない』高校篇

b0189364_20043102.jpg 『中学なんていらない』の続編で、高校篇。
 進学した公立高校は、思っていた以上にひどく、むすめの「ちゅんこ」も学校から次第に足が遠のく。親である著者は、すわまた不登校かと怯えるが、娘はしっかり成長したのか、適当に休みを取りながら、しかもバイトもしながら、無事に卒業。大学に進学するというはこびになった。メデタシメデタシという結末。
 今回は不登校云々というよりも(多少不登校気味ではあるが)、教育ローンとか奨学金とか、進学に当たっての金銭面の話が多かった。そのためもあって、情報としての目新しさはほとんどない。不登校の体験談を期待して読むと、落胆すること請け合いである。
 なおこちらも、前作と同様情報量が少なく、30分程度で読み終わることができる。
★★★

参考:
竹林軒出張所『中学なんていらない(本)』
竹林軒出張所『学校に行かなくなった日(本)』
竹林軒出張所『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(本)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『学校って何だろう(本)』
竹林軒出張所『子どもの夜ふかし 脳への脅威(本)』

# by chikurinken | 2019-08-21 07:04 |

『中学なんていらない』(本)

中学なんていらない 不登校の娘が高校に合格するまで
青木光恵著
メディアファクトリー

中学校に対する怨嗟のマンガ

b0189364_19474779.jpg タイトル通りのエッセイ・マンガ。
 娘が中学で理不尽ないじめに遭い、学校に行けなくなった。だが学校側はそれにしっかり対応するどころか、非常に投げやりで、登校していないため内申点はすべて1だ、したがって高校進学はままならない、などと言って脅すのである。ところが実際は、学習塾の協力もあったが、無事に志望校に合格することができる。あの中学の対応は一体何だったんだということになって、それがこのマンガに結実したというわけ。とにかく中学に対する憤りというか怨嗟の声が随所に噴出しているのである。著者の主張はよくわかるし、とにかくひどい中学校であることは十分伝わってくる。
 当事者である娘「ちゅんこ」は、こういうひどい状況に陥って非常に気の毒であったが、高校入学という形できっちり立ち直ることができたようで結果オーライではあった。しかし1人の若者に対してここまで苦痛を味あわせたわけだから、親の立場からすると、この中学およびその関係者は断じて許しがたいところで、何らかの形で落とし前を付けたいところだろう。本来だったら関係者の実名(またはそれに近い名前)を出すなどしたいところかも知れないが、さすがにそこまではしておらず、本書ではすべて匿名になっている。ま、そうやって報復したところで結局は自己嫌悪に陥るのが関の山だろうから、こうやってマンガの形で普遍的な装いで発表して鬱憤を晴らすという方法が一番良かったのだろう。
 娘が不登校になってしまい、親がうろたえる様子が克明に描かれ、読んでいて感じるところもあるが、情報量は全体的に少なめである。そのため30分程度で読み終わることができる。
 読み終わった後でいろいろ考えると、やはりこのマンガの一番のテーマは、中学校に対する怨みの表出ということになるのかなと思う。てことは、このマンガを通じてグチを聞かされた、みたいなものなのだろうか、本当のところは。
★★★

参考:
竹林軒出張所『不登校の17歳。(本)』
竹林軒出張所『学校に行かなくなった日(本)』
竹林軒出張所『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(本)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『学校って何だろう(本)』
竹林軒出張所『子どもの夜ふかし 脳への脅威(本)』

# by chikurinken | 2019-08-20 06:47 |

『「自己肯定感」育成入門』(本)

子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す!
「自己肯定感」育成入門

平岩国泰著
夜間飛行

コーチングのためのコーチング素材

b0189364_19061247.jpg アフタースクールの活動に長く携わっている著者が、著者の考える理想的な子育ての方法について紹介する本。
 最近特に自己肯定感のない子ども達が増えていることを実感している著者は、子育ての第一の眼目は自己肯定感を付けさせることで、子育ての目標は子どもを自立させることであると言う。そのために子どものやることにあれこれ介入しすぎることなく、一歩引いた場所から支援するだけに止めるようにすべきという意見である。至極正論である。
 周りを見ると、親が子どもの生活に介入しすぎている事例が非常に多く、それがトラブルの原因になっていることもある。こういうのは第三者として見ていると「お節介が過ぎる」と感じるものだが、当事者には気付きにくいものである。したがってこういう本で、指摘してもらい自分の態度を改めるというのも、親子関係を改善する上で非常に良いと思う。親の大事な役割は「家庭内に子どもにとっての安全基地を作ってやること」という主張は、「ひきこもり研究の権威」、斉藤環の主張とも共通する。
 この本で対象になっているのは、概ね小学生の子どもを持つ親であり、そのため今の僕にはあまり参考にならないが、それでもこういうことに気付いていれば親子関係ももうちょっと良くなっていたんではないかと感じることが多い。特に前半部分は「子どもを他人と比べるのではなく〈ちょっと前の子ども〉と比べよう」とか「〈親は親、子どもは子ども〉という感覚を持つことが大切」とか、あるいは「〈短所〉は克服させようとしない」とか、子どもと接する上で(また大人でも他人と接する上で)大変参考になるメッセージがある。
 こういう感覚が共通意識として日本で定着してくれば、ひきこもり事例も減っていき、幸福感を持つ人々が増えていくんではないかと感じる。なにしろ画一的な発想で子ども達を追い込む人々が、親を含め、多すぎるのが現代ニッポン。みんなもっと余裕を持ったらどうだと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉(本)』
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉(本)』
竹林軒出張所『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(本)』

# by chikurinken | 2019-08-19 07:05 |

『ひきこもり500人のドアを開けた!』(本)

ひきこもり500人のドアを開けた!
精神科医・水野昭夫の「往診家族療法」37年の記録

宮淑子著
角川マガジンズ

立派な取り組みだと思う……が……

b0189364_07024209.jpg ひきこもりの往診治療を行っている宮崎市在住の精神科医、水野昭夫の治療や人となりを紹介する本。
 著者は元新聞記者のフリーライターで、水野とも長きに渡って個人的に付き合いがある人。水野の手法は、ひきこもりを抱える家庭に赴き(つまり往診)、そこで当事者だけでなく家族関係についても診察し、その上で対策を考えるというものである。場合によっては宮崎にある自分の病院や施設に当事者を引き取るという方法も使用する。水野の基本的なスタンスは、ひきこもりの病理を当事者だけでなく家族が原因と考えるというもので、家族関係に焦点を当てる手法は斬新である。
 この水野医師、ひきこもりの人々を支援するための関連施設を宮崎に10以上持っていて、医者というより実業家という印象も受けるが、こういった施設を建てていく過程も本書で紹介されている。あくまで患者のためであり決して営利主義ではないことがこの本からは窺われるが、本当のところはわからない。
 患者の事例もいろいろと紹介されていて参考にはなるし、この水野医師のアプローチ自体、的を射ていると思うが、どこか引っかかるものがある。この本と作者自体についてもなんとなく引っかかるものがあるんだが、原因がよくわからない(タイトルが広告みたいで扇動的ということもある)。少なくとも両手を挙げて賛同するという感じではないのだ。原因はわからないが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉(本)』
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉(本)』
竹林軒出張所『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(本)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』

# by chikurinken | 2019-08-18 07:03 |

『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』(本)

ひきこもりはなぜ「治る」のか?
精神分析的アプローチ

斉藤環著
中央法規出版

これこそが〈理論編〉

b0189364_19405804.jpg 『「ひきこもり」救出マニュアル』の斎藤環の著書。タイトルは少々怪しげだが、内容は非常に充実している。これこそが「ひきこもり救出」の真の理論編である。
 元々は青少年健康センター主宰の理論講座「不登校・ひきこもり援助論」で行った6回の講座を基にしており、それを加筆修正したものがこの本だという。関係者向けに行われた講座であるためか、ひきこもり当事者の心情、なぜひきこもるのか、ひきこもり行為に対して周囲がどう対応すべきか、どうすれば社会復帰させることができるかなどが、理論面から述べられている。そのために、ひきこもりに陥る過程、ひきこもりを解消して社会に戻るまでの過程を俯瞰できるような印象があり、その道筋が見えてくる。言い換えるならば行程地図が与えられたかのような印象すら受ける。内容が正しいかどうかはにわかに判断できないが、しかし確実に一つの指針にはなると思う。こういう本が必要なのだ。
 前も書いたが、『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉』は、こういう俯瞰的な理論はまったくなく、Q&A形式であったこともあり、粗雑でまとまりがないという感じがした。そのため〈理論編〉というタイトルは(おそらくちくま文庫の関係者がつけたんだろうが)まったく内容にそぐわない。あの本はむしろ、「ひきこもりに直面した関係者が最初に読む本〈入門編〉」ぐらいのタイトルにすると最適である。Q&A形式であるために非常に読みやすく、同時にひきこもり問題のあれやこれやが「見える化」されるような側面がある。したがって入門編としては非常に良い。だが、全体像が見えにくいという難点があった。そのため、あの本の次に読む本として、この『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』は非常に良い資料になる。ひきこもり問題で悩んでいる人々には是非勧めたい(ちなみに僕自身はひきこもり当事者を抱えているわけではありません。最近そういう人々と関わることがたびたびあるため、この分野に興味を抱いたというのがいきさつです)。
 人が成長の過程で社会とどのように関わるか、そしてそれがひきこもりとどのように結びつくかの理論として、ラカン、コフート、クライン、ビオンといった人たちの理論が紹介されるが、個人的な感覚では「現象を自分なりの枠にはめ込んでそれを分類し名前をつけた」という程度のものにしか思えない。もちろん著者も、彼らの理論が絶対的に正しいと考えているわけではなく、一つのものさしとして利用したいということのようである、「あとがき」から判断すると。したがってこういった学者の理論が良いとか悪いとかはとりあえず置いといて、ひきこもりに陥る際の仕組みのようなものを認識する上での参考と考えれば良いのではないかと思う。いずれにしても、こういった理論的背景を紹介することで、当事者に社会性を復活させることこそがひきこもり治療の目標であることがわかる。それを実現するために家族や治療者は何をすべきか、どうすべきかについても、著者の経験に基づいてかなり詳細に書かれているため、ひきこもり対策の本としては非常に有用な優れた本と言える。後は、実際の経験談(成功ケース、失敗ケース)を集めた本を読めば、とりあえず(読者として)入門段階は卒業というぐらいの自負は持って良いんじゃないかと感じる。これから社会問題化するであろうひきこもり問題を考える上で重要なテキストになりそうである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉(本)』
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉(本)』
竹林軒出張所『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(本)』

# by chikurinken | 2019-08-17 07:40 |

『「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉』(本)

「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉
斉藤環著
ちくま文庫

「ひきこもり救出マニュアル」という
看板に偽りなし


b0189364_17234506.jpg 『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉』の続編……というより元々は一冊だったため、正確には後半と言った方が良いかも知れない。前回のレビューでは多少の物足りなさを訴えたわけだが、こちらの方は非常に充実している。こちらもQ&A形式ではあるが、内容がかなり具体的で、こういう場合にはこう対処すべきということがかなり具体的に示されている。ひきこもり当事者の家庭内暴力や破壊行為などに対しても、具体的な対策を示しているため、実際にひきこもり当事者を周囲に持つ人々にとっては福音書になるんではないかと思う。またこうした対策が、一貫性のある理論に基づいていることが読んでいてよくわかるため、内容の信頼性が高いと感じる。しかも生活保護や公的支援などについても非常に具体的に紹介されている。まさに入門書でありひきこもり救出マニュアルである。
 ここに書かれていることは非常に参考になるのは確かだが、実際にひきこもり問題に対処することは相当な難しさがあるとも感じる。ひきこもりというと精神論や親原因論など、非常に安直な結論をまことしやかに言う「赤の他人」がたくさんいるが、そういう程度のものではないということも納得できる。関係者は覚悟を持って対峙しなければならないということがわかる。しかもこれが今後の日本に重くのしかかる問題であることも注意しておかなければならない。社会構造自体を、こういう人々をあまり出さない社会へと抜本的に変えていかなければならないのではないかと思うが、この国の保守性、社会的利己主義はいつまでも直る兆候が見られない。そもそも先ほど言ったような「赤の他人」が社会的利己主義を体現しているような存在であるわけだ。
 また、これは〈理論編〉とも共通するんだが、編集が少々杜撰である。こちらは言及ページは合っていたが、一部重複箇所があるなど(222ページに5行分、前のページと重複が見られる)、市販の書籍ではあり得ないレベルのエラーがある。また分冊にしてしまったことも(それから〈理論編〉〈実践編〉というタイトルにしてしまったことも)致命的なエラーに近いと思う。この本に限っては(多少分厚くなっても)分冊にしない方が良い。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉(本)』
竹林軒出張所『ひきこもりはなぜ「治る」のか?(本)』
竹林軒出張所『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(本)』
竹林軒出張所『「自己肯定感」育成入門(本)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『学校って何だろう(本)』
竹林軒出張所『子どもの夜ふかし 脳への脅威(本)』
竹林軒出張所『こんばんは(映画)』

# by chikurinken | 2019-08-16 07:23 |

『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉』(本)

「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉
斉藤環著
ちくま文庫

著者の主張は納得できるが
理論面がかなり薄いため
わかったようなわからないような印象が残る


b0189364_20051622.jpg 日本のひきこもり研究の権威、斉藤環が書いた実践的な引きこもり対策の本。と思ったが、全体的に何となくモヤモヤする。
 全編、Q&A形式で、ひきこもり関連の質問に答えていくという方法論であるが、医師との対処法などかなり実践的な内容で、もう少し「ひきこもり」という現象を俯瞰した解説が欲しかったと感じる。元々、この『「ひきこもり」救出マニュアル』は、一冊の本であったが、それが文庫化されるに当たって〈理論編〉と〈実践編〉の2分冊になった。そして今回読んだのが〈理論編〉だったため、そういう点で物足りなさが残ったのかも知れない。〈理論〉的なものは少ないという印象で、むしろ〈実践〉の方が多い気もする。
 具体的には、ひきこもりは放っておいてもほとんどのケースで治ることはない、ひきこもり当事者自身も葛藤しているため「働け」だの「外に出ろ」などという言葉は厳禁である、親と当事者の繋がりを健全な状態に改善すべき、治療は親だけでも良いから受ける、治療機関は(費用をはじめとする諸条件を鑑みると)精神科の病院が一番良い、当事者に対して一緒に治療を受けないかという誘いかけを常に行う、本人が一緒に出るようになったら第三者を介在させるようにする、というようなことが書かれている。外界との繋がりを少しずつ増やすというのがひきこもり脱出の方策のようである。ただしひきこもりには精神病のケースも混ざっているため、その辺は特に注意が必要であるということも書かれている。
 僕がもっとも驚いたのはひきこもり人口が120万人にも上るという記述で、今の世の中ではひきこもりは決してレアケースではないということがわかる。いずれかなり大きな社会問題になるのは目に見えているので、各機関が、早急に対策に取り組まなければならないと感じる。
 なお、文庫版特有のことだろうと思うが、本書の他の項に言及している箇所で、参照ページ数がことごとく2ページずれている。大変拙いミスである。ただし、今回読んだのは第一刷であったため、もしかしたらその後修正されているかも知れない(その後新刊を買ったが修正されていなかった)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉(本)』
竹林軒出張所『ひきこもりはなぜ「治る」のか?(本)』
竹林軒出張所『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する(本)』
竹林軒出張所『「自己肯定感」育成入門(本)』
竹林軒出張所『高校中退(本)』
竹林軒出張所『学校って何だろう(本)』
竹林軒出張所『子どもの夜ふかし 脳への脅威(本)』
竹林軒出張所『こんばんは(映画)』

# by chikurinken | 2019-08-15 07:04 |

『同時代体験! アポロ月面着陸』(ドキュメンタリー)

同時代体験! アポロ月面着陸
(2019年・仏Grand Angle Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

アポロ月面着陸の回顧記録

b0189364_19521098.jpg 1969年のアポロ11号月面着陸の様子をまとめて再現したダイジェスト・ドキュメンタリー。
 このアポロ11号プロジェクトは、ケネディ宇宙センターからサターンV型ロケットを打ち上げ、燃料タンクを切り離しながら大気圏を出て、地球の軌道を周回してから月に向かうという行程で進められる。月への途上で、ロケットから司令船を取り外しこれを月着陸船とドッキングさせてから、ロケットを完全に切り離すという作業が行われる。その後、月の軌道に入ってから月着陸船を切り離し、月面着陸。月面でミッションを敢行したら月面を離陸し、月の軌道上にある司令船とドッキングして、司令船以外すべてそこで切り離してそのまま帰還。地球の軌道に入って大気圏に突入し、大西洋上に落下。無事任務を完了という過程を取った。
 月面に着陸した乗組員は、アームストロングとオルドリン、司令船で月の軌道を周回し待機していたのはコリンズである。当時世界中で放送された映像もあわせて紹介され、アポロ・フィーバーに沸く世界中の人々の様子も映し出される。当時の日本での様子の映像も出てきて、宇宙飛行士の格好をした四代目三遊亭金馬(だと思う)が銀座みたいな場所に現れるというような映像も出てきた。
 歴史的事件のまとめ映像として貴重ではあるが、ただ当時僕もこういったプロセスをテレビで見ていて、その後もたびたび目にしているため、あまり新鮮味はなかった。当時の子ども達にとってアポロは、マンガ雑誌にもよく取り上げられていたし、万博とかウルトラマンとかそういったものと同じレベルで割合身近なものだった。それに僕自身は若い頃、立花隆の『宇宙からの帰還』を読んで大変感銘を受けたクチで、アポロ計画の詳細や乗組員の感覚などにもこの本で触れているのである。そのため「今さら」という感じは若干ある。それでも、当時の映像を交えながら、非常に要領よくまとめられているし、リアルタイムで知らない若い人達が見れば、価値の高いドキュメンタリーになるんではないかと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえるアメリカ 3、4、5(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『昭和ちびっこ広告手帳(本)』

# by chikurinken | 2019-08-13 06:51 | ドキュメンタリー

『映像の世紀プレミアム 第13集』(ドキュメンタリー)

映像の世紀プレミアム 第13集 戦場の黙示録
(2019年・NHK)
NHK-BSプレミアム


現代の戦闘がテーマ

b0189364_18061371.jpg 『映像の世紀』の映像をテーマごとに再構成した『映像の世紀プレミアム』。前回日本の素材だったためこれで打ち止めかと思っていたが、第13集が出てきた。第13集では、現代の戦闘をピックアップしてそれをまとめるという趣向で、それぞれの戦闘に関する詳細な分析もあり、興味深い内容になっている。
 取り上げられる戦闘は、ダンケルクの戦い、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、ノルマンディー上陸作戦、朝鮮戦争である。どの戦闘も必然的な結果と捉えることなく、偶然や士気、慢心によって勝敗が決したという捉え方をしており、こういうアプローチは好感が持てる。ただ、多くは他のドキュメンタリー作品で紹介されている内容であり、分析自体はさして目新しさがあるわけではなかった。それでも実際の映像を交えた描写であるため、なかなかインパクトはある。
 ただミッドウェー海戦を決したのが、日本海軍のおごりだったとするのはちょっと極論過ぎるのではないかとも感じた(そういった要素も大きかったとは思うが)。またダンケルクの戦いについても、撤退する連合軍をドイツ軍が徹底的に叩かなかった理由がわかりにくかった。さらにノルマンディー上陸作戦でも、掘り下げが足りないと思われる箇所はあったが、そもそもこういったダイジェスト的なドキュメンタリーでそこまで要求することに無理があるのかも知れない。あくまでも、これを総論としての番組と捉えて、各論についてはそれぞれのドキュメンタリーを見ろという立場なんだろうとも思う。そもそもこの『映像の世紀プレミアム』のアプローチはそういうもののようである。この『映像の世紀プレミアム』シリーズ、『映像の世紀』のスピンオフ企画であり、つまらないものもこれまであったが、今回の作品についてはよくできていて、見所も多かったと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第1集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第2集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第4集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第7集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第8集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第12集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ダンケルク (2017年版)(映画)』
竹林軒出張所『ダス・ライヒ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『D-Day 壮絶なる戦い(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-08-12 07:05 | ドキュメンタリー

『パンダコパンダ』(映画)

パンダコパンダ(1972年・東京ムービー)
監督:高畑勲
原案:宮崎駿
脚本:宮崎駿
美術監督:福田尚郎
撮影監督:清水達正
声の出演:杉山佳寿子、熊倉一雄、太田淑子、山田康雄

今となっては結構見所が多い

b0189364_10250021.jpg 1972年の日中国交正常化の影響で、2頭のパンダ(カンカンとランラン)が上野動物園に贈られたことから、世の中は一躍パンダ・ブームになる。そのパンダブームにあやかって作られたと思われるアニメ映画である。
 監督が高畑勲、原案と脚本が宮崎駿という今をときめくビッグネームが関わった作品ということで、一部で注目を集めている作品でもある。ストーリーは、主人公の一人暮らしの少女、ミミ子の元に、ある日突然パンダの親子がやってきて、ミミ子の父親代わり、息子代わりとしてミミ子の家に住みつくという話(かなり強引な設定)。なお、このパンダの親子、ミミ子と普通に日本語で会話ができる。ただしこのパンダ親子、動物園から抜け出してきたということで、それがその後の騒動につながる。おとぎ話みたいな話でストーリー自体はどうということはない。
 絵の方はござっぱりと描かれている。キャラクターデザインは、前に見たときは気が付かなかったが、72年に放送されていた『ど根性ガエル』にそっくりである。後の高畑風あるいは宮崎風の味はない。72年当時、東京ムービーで『ど根性ガエル』が製作されていたため、それと関係があるんだろうが、詳細についてはわからない。しかも最後の方に出てくる人混みの中に、『ど根性ガエル』のキャラクターであるひろしと京子ちゃんまで出てくる。実は他にもオバケのQ太郎や『ルパン三世』のルパンと次元大介も出てきていて(当時『新オバケのQ太郎』と『ルパン三世』も東京ムービーが製作していた)こちらはすぐにわかったが、ひろしと京子ちゃんは、キャラクターがあまりに似ているんでなかなか見分けられなかった(何度も見直して気が付いたのである)。
 それからパンダとミミ子との関わり方が『となりのトトロ』にそっくりなのも見所の一つである。設定自体も『トトロ』によく似ており、『トトロ』の原形と考えても差し支えなかろう。逆にいえば『トトロ』は『パンダコパンダ』の焼き直しということである。
 総じて子ども向けのたわいもないアニメだが、上記のように(高畑、宮崎が巨匠となった)今となっては結構見所があって面白い。当時は「東宝チャンピオンまつり」で上映されたそうで、併映は『ゴジラ電撃大作戦』と『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』だそうな(ウィキペディア情報)。僕はドンピシャの世代ではあるが、この3作品については当時の記憶はまったくない。前年の「東宝チャンピオンまつり」(『ゴジラ対ヘドラ』がメイン)は劇場に見に行ってるんだが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦 ! 南海の大怪獣(映画)』
竹林軒出張所『怪獣大戦争 キングギドラ対ゴジラ(映画)』
竹林軒出張所『母をたずねて三千里 完結版(ドラマ)』
竹林軒出張所『崖の上のポニョ(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『空飛ぶゆうれい船(映画)』
竹林軒出張所『夢と狂気の王国(映画)』
竹林軒出張所『吾輩はガイジンである。(本)』

# by chikurinken | 2019-08-10 10:26 | 映画

『夢と狂気の王国』(映画)

夢と狂気の王国(2013年・ドワンゴ)
監督:砂田麻美
脚本:砂田麻美
出演:宮崎駿、鈴木敏夫、西村義明、庵野秀明、高畑勲、宮崎吾朗(ドキュメンタリー)

『風立ちぬ』製作の舞台裏

b0189364_19592091.jpg 『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』の製作に追われるスタジオジブリに密着するドキュメンタリー。監督は『エンディングノート』の砂田麻美。
 『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』は、同じ日に公開すべく当時同時進行で製作されていたが、結局、高畑勲の仕事が例によって遅れたため、『風立ちぬ』の方が早く公開された。だが同時進行で仕事が進められていたのは事実で、このドキュメンタリーからもそれが窺われる。ただし、このドキュメンタリーでは、『かぐや姫』の方の製作現場はまったく出てこない。高畑勲も最後の最後まで出てこない。ほぼ宮崎駿に密着という形で話が進行し、遅れる『かぐや姫』にプロデューサーの鈴木敏夫と西村義明が振り回されるエピソードがそれに継ぐ。締切を守れない高畑勲については、宮崎駿をはじめとする他のメンバーたちは結構辛辣な言葉を発するが、それでも宮崎にとって高畑の存在は大きく、今の姿を形作る原動力になったというようなことがドキュメンタリーの中で語られたりする。高畑勲に対してはちょっとアンビバレントな感情を持っているようで、これは他のメンバーにも共通する感情のようである。
 『風立ちぬ』については、宮崎駿がすべてコンテを描いて、それを周りのスタッフがアニメーション化していくという流れで仕事が進んでいた。要するに宮崎駿がストーリーと構成のすべてを作り上げるということなんだが、他のスタッフと同時進行で仕事が進んでおり、つまりはどういうストーリー展開になるのかは(宮崎駿を含めて……らしいが)誰も知らないで仕事を進めているということなのだ。僕自身はこれを知って、宮崎駿作品のストーリーにまとまりがないのは、こういう行き当たりばったりの作り方をしているからかと納得したのだった。
 同じ頃のジブリを撮影した、似たようなテイストの宮崎駿のドキュメンタリーが過去にNHKでも放送されていたために、この作品についてはあまり新鮮さはなかったが、ま、しかし製作現場にかなり密着しているという点では大いに評価できる。宮崎のすぐ側に近づいていることが映像から窺われるため、途中で宮崎から「邪魔だ」などと怒られたりしないかと思ってヒヤヒヤしていた(怒られたのかも知れないが画面には出ていない)。一方で高畑勲については、話題としては出てくるが本人はまったく映像に登場せず(先ほども言ったように最後の最後にちょっとだけ出てくる)違和感を感じていたが、どうやら高畑勲に製作者側が怒られたからというのが真実のようである(ウィキペディア情報)。やはり怒らせたんだなと妙に納得した。それから宮崎駿が阿部晋三政権に相当な脅威を抱いているという点も新鮮だった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『エンディングノート(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (3)〜(7)(本)』
竹林軒出張所『パンダコパンダ(映画)』
竹林軒出張所『ゲド戦記(映画)』
竹林軒出張所『コクリコ坂から(映画)』

 以下、以前のブログで紹介した、ジブリ映画の評の再録。
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(2006年12月7日の記事より)
ハウルの動く城(2004年・スタジオジブリ)
監督:宮崎駿
原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
脚本:宮崎駿
音楽:久石譲
声の出演:倍賞千恵子、木村拓哉、美輪明宏、我修院達也、神木隆之介、加藤治子、原田大二郎

b0189364_19593018.jpg お馴染み、宮崎駿のアニメ。
 相変わらず、おもちゃ箱をひっくり返したようなごちゃごちゃさというか、猥雑さというか……まあ、よく作り込んではいる。ただ、これまでの作品と似通った部分が結構出てきて、『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』を彷彿とさせるようなシーンが多かった。また、ストーリーも少しパターン化していて、起承転結に忠実なのは変わっていない。途中、ハウルの正体(?)が明らかになるあたり、複雑でついて行けなくなった。『千と千尋の神隠し』でもそういう箇所があり、2回目に見たときに納得したが、あれと同じようなパターンか。やたら飛ぶシーンが多いのも宮崎アニメらしい。
 もう1つ、声優の起用に疑問を持った。『となりのトトロ』でもそうだったが、声の主の顔が浮かぶような起用はどうかと思う。倍賞千恵子の娘役はいかがなものだろうか。木村拓哉も声がくぐもっていて、声優としてはパッとしない。美輪明宏は、登場人物とイメージが少し重なっていたこともあり非常に良かった。『もののけ姫』以来の起用だが、前作でも存在感があり、その辺が評価されてのことか。
 トータルで見て、『千と千尋の神隠し』のレベルからは少し落ちるかなという感じ。楽しめるには楽しめるが。
 そうそう、相変わらず映像はキレイで素晴らしいの一言です。
★★★☆
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(2005年12月19日の記事より)
柳川堀割物語(1987年・二馬力)
監督:高畑勲
製作:宮崎駿
脚本:高畑勲
声の出演:加賀美幸子、国井雅比古

b0189364_19592679.jpg (福岡県の)柳川の水路が荒れ果て、コンクリートで覆うという話が出て、そうしたところ、ある役人(広松伝という人)が水路を清掃し始めることでやがて市民を巻き込み、荒れた水路が徐々に以前の姿を取り戻しつつある……という話を以前新聞で読んだ。
 このドキュメンタリー映画では、そのあたりも詳細に扱っている(事実はさきほどの話とは多少異なる)が、柳川の水路のさまざまな側面を多面的に扱っており、さながら柳川百科事典のような趣がある。全11章構成で、対象の掘り起こし方が、映画というより書籍に近い。特にDVD化されて、各章にランダムアクセスできるようになったため、マルチメディア百科としての価値がこれまで以上に高くなっている。
 冗長な章がある上、しかも内容が複雑すぎてついて行けない箇所もある。だが、柳川堀割の原理や歴史など、内容は多岐に渡る上、非常に濃密である。映像も美しい。
 『千と千尋の神隠し』の作者(宮崎駿)の頭の中には柳川の水路があったのではないか(ハクのことね)とふと思った。
★★★☆

# by chikurinken | 2019-08-09 06:59 | 映画

『湾生回家』(映画)

湾生回家(2015年・台湾)
監督:ホァン・ミンチェン
出演:湾生の人々(ドキュメンタリー)

湾生の台湾に対する思い入れがテーマ

b0189364_20231414.jpg 幼い頃、台湾の地で育った(現)日本人の人々の話である。
 台湾は、日清戦争の後、清国から大日本帝国に割譲され、それ以降日本の植民地となる。そのため、太平洋戦争終結までは日本の一部としてその版図に組み込まれていた。だが帝国日本の敗戦、崩壊とともに台湾は中華民国の施政下に入れられ、その後蒋介石の国民党が大陸を追われて台湾に逃れたため、台湾は中華民国国民党によって支配されることになる。
 この間に台湾で生活をしていた人々も当然社会の影響を受けざるを得ないわけで、戦前に台湾で生まれ(または移住し)台湾で幼少時代を過ごした本土の人々の多くは、日本の敗戦後、内地に戻ることになった。彼らにとって台湾は生まれ故郷であるため、今でも台湾に対して特別な思い入れがあるんだそうだ。ということで、このドキュメンタリーに登場する台湾生まれの日本人(湾生)たちはたびたび台湾の故郷を訪れ、旧交を温めたり懐かしい土地を訪れたりしている。こういった人々の活動に密着するドキュメンタリー映画である。
 元々台湾で作られた作品で、日本公開後、クチコミで評判が広がっていったという話を聞いて興味を持ち、今回この作品を見てみたんだが、正直言ってそれほどの感慨はなかった。湾生の人々が台湾に対して持つ思い入れの深さはわかるが、「故郷」という観点から見ればそれも当然であるように感じる。また、戦後台湾に残った当時の子どもと日本に引き揚げた親との親子関係なども描かれれ、この作品の見所の一つになっているが、僕個人はそれほど感じるところはなかったというのが正直な感想。真摯な映画で、もちろん悪くはないが、2時間近くの上映時間を長く感じたというのも事実である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『明治天皇〈三〉(本)』
竹林軒出張所『日中“密使外交”の全貌(ドキュメンタリー)』

# by chikurinken | 2019-08-08 07:22 | 映画

『旅するダンボール』(映画)

旅するダンボール(2018年・pictures dept.)
監督:岡島龍介
撮影:岡島龍介
編集:岡島龍介
ナレーション:マイケル・キダ(ドキュメンタリー)

主人公の人間的な魅力が一番の売り

b0189364_21230325.jpg 島津冬樹というダンボール・アーティストを主人公にしたドキュメンタリー。
 この人、ダンボール箱を使って財布やカード入れを作るという活動をしている。現在その活動が一部で評価されているらしく、新国立美術館で1個1万円で売られているらしい。あちこちでワークショップを開くなどという活動も行っている。
 このドキュメンタリーでは、こういった活動が紹介される他、島津が気に入っているダンボール(徳之島のじゃがいものもの)の製作者を訪ねるなどという旅にも密着する。だが言ってみれば、本当にこれだけのドキュメンタリーなんで、島津の人間的な魅力が、このドキュメンタリーの一番の売りということになるんだろう。僕は彼に特に関心を持たなかったし、彼の作品についてもそれほどの感慨は持たなかったため、このドキュメンタリーを存分に楽しむというところまでは行かなかった。
 なおこのドキュメンタリー、会話やインタビューなど中身のほとんどは日本語だが、なぜかナレーションだけが英語で、大変違和感がある。てっきりアメリカ製の作品なのかと思っていたが、製作者も日本人、製作会社も日本在のようである。最初から外に売り込むことを意識してつくったのかも知れないが、だがそれだったら売り込む段階でナレーションだけ入れ替えたら済むことである。日本向けの作品にナレーションを入れるってんだったら日本語で入れるのが筋で、そちらの方が利便性の点でもはるかに良いんじゃないかと思うが。もっともナレーションが日本語であったとしても、この作品に対する印象がまったく違うなどということはきっとないだろう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人(映画)』

# by chikurinken | 2019-08-07 07:22 | 映画

『のんのんばあとオレ』(1)、(2)(ドラマ)

のんのんばあとオレ (1)、(2)(1991年・NHK)
原作:水木しげる
脚本:高橋正圀
演出:兼歳正英
出演:佐藤広純、山田昌、岸部一徳、もたいまさこ、笹野高史、浜村純

水木サンの原体験
ドラマとしてはちょっと物足りない


b0189364_19204898.jpg この作品がNHKで放送されたこと自体は覚えているが、そもそも放送当時見ていなかったため、これが「ドラマ愛の詩」というシリーズで、月曜日から金曜日まで連続で放送されていたというのはまったく知らなかった。ちなみに30分枠で、原作は水木しげるのエッセイである。
 今回DVDを借りて見たんだが、ドラマとしては少々物足りないという印象で、5本分収録されていたにもかかわらず2本で飽きてしまった。ただ見ているうちに原作の方を読んでみたいもんだと考えていたのも事実で、要するに原作には興味が湧くが、このドラマについてはもう一つということなのである。原作は散文のようだが、いずれ読んでみるつもりではいる。
 ストーリーは、水木しげるの幼少時の話であり、(水木が少年時に多大な影響を受けたらしい)「のんのんばあ」という老女と茂少年(水木の分身)との交流が描かれる。水木しげるのいわば原体験が描かれるため、妖怪も随所に出てきて、いかにも水木作品という雰囲気を漂わせる。なお、登場するさまざまな妖怪はアニメで表現される。
 素材は興味深いんだが、やはりドラマに華がないと感じてしまう。それに演出がありきたりであるため、あまり見続けようというモチベーションが沸かない。テンポもあまり良くない。おそらくこのシリーズ自体に(「少年ドラマシリーズ」みたいな)子ども向け番組の要素があったようで、それが大きいのかと思う。そういうことがわかっていたらまたそういう目で見たんだろうが、少なくともこのドラマからは水木作品のダイナミズムみたいなものは感じられなかった。
第7回文化庁芸術作品賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『ほんまにオレはアホやろか(本)』
竹林軒出張所『ねぼけ人生(本)』
竹林軒出張所『鬼太郎が見た玉砕(ドラマ)』
竹林軒出張所『水木しげるの遠野物語(本)』
竹林軒出張所『水木しげるの泉鏡花伝(本)』

# by chikurinken | 2019-08-05 07:20 | ドラマ

『まんが道』(3)〜(15)(ドラマ)

まんが道 (3)〜(15)(1986年・NHK)
原作:藤子不二雄
脚本:大久保昌一良
演出:安江進、森平人
出演:竹本孝之、長江健次、冨士眞奈美、天地総子、磯崎洋介、蟹江敬三、小倉一郎、木原光知子、イッセー尾形、久米明、玉川良一、中村明美、犬塚弘、桜井センリ、江守徹、ケーシー高峰、渡辺寛二

それでも「熱い青春が心地良い」

b0189364_19514863.jpg ドラマ版の『まんが道』第1話、第2話の続き。全15回がやっと終わった。今回、BSトウェルビというチャンネルで週に2話ずつ放送されたわけだが、途中放送されない週が多く、そのために終わるまで3カ月もかかった。前回も書いたが、元々の『銀河テレビ小説』枠では1日1話が月曜日から金曜日まで放送され、3週間ですべての回が終わっている。今回の放送では、間が3週間空いた回もあり、真面目に取り組んでいるのか疑問に感じる。通販番組ばっかりやっていないで、特にドラマは、しっかり枠を確保した上で放送したらどうだと言ってやりたくなる。なお、第15話の終了後に『まんが道 青春編』の第1話が放送され、これから同じ枠にこの『青春編』が放送されるが、次回はなんと1カ月後ということで、こうなると連続ドラマではなくほとんど単発ドラマである。この間、野球中継が放送されるようだ。どうしても野球中継をやりたいんだったら、野球のない時刻にドラマを放送したらどうだと思うが、しょせんは埋め草という発想なんだろう。
 それはともかく、ドラマ自体はなかなか面白く、主人公の満賀道雄(藤子不二雄Aがモデル:竹本孝之)と相棒の才野茂(藤子・F・不二雄がモデル:長江健次)が、高校卒業後、就職を経て、いよいよマンガ家になるべく上京するという運びになる。就職については、満賀道雄が地元の立山新聞に縁故入社で入り記者になるが、才野茂の方は肉体労働に馴染めずすぐに辞めてしまう。それでも二人ともマンガを描き続け、投稿したり、あるいはマンガ雑誌から注文を受けたりし、半年後(実際は2年後らしい)に上京を決意。東京では手塚治虫(江守徹)やトキワ荘にいた寺田ヒロオ(渡辺寛二)、マンガ雑誌の記者などに会い、いよいよマンガ家になるべく決意を固めるのである。
b0189364_19514451.jpg ストーリーは単純だが、しかし主人公の背景がしっかり描かれるため、重層的ではある。また当時のマンガ界の様子も丁寧に描かれ、このあたりが実話を基にした話の強みと言える。実際、トキワ荘グループが出てきた頃の日本のマンガ界は、言ってみれば黎明期であり、当時のことを記憶している人々も少なくなっている。割合最近のことであるにもかかわらず、状況が忘れ去られてしまうということは意外にあるもので、この日本マンガ黎明期についてもそれは当てはまる。ただ、当時のことを安孫子素雄が『まんが道』で描き残し、しかも他のマンガ家たちもマンガに残している他、関係者もそれに刺激を受けたせいか文章で残しているため、当時の様子はかなり詳しいところまで窺える。惜しむらくはトキワ荘自体が壊されたことである(当時存続運動もあった)が、最低限、人々の記憶、記録に止められれば良しとすべきなのかも知れない。そういった意味でこの『まんが道』は資料としても大変貴重である。ドラマ化したのも、映像として残すという意味で重要であり、実はこのドラマを見たトキワ荘の近所の方が、トキワ荘の跡地にモニュメントを作ったりするきっかけになったらしい。その後、この活動がトキワ荘復興プロジェクトに発展し、とうとう2020年に近所の公園(南長崎花咲公園)にトキワ荘が復元されることになったという。
 ドラマは、前にも書いたが「熱い青春が心地良い」作品で、何度見ても心が熱くなる。演出がやや単純なきらいはあるが良いドラマだと感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『まんが道 (1)、(2)(ドラマ)』
竹林軒出張所『夢追い漫画家60年 (100年インタビュー)(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘青春日記―いつも隣に仲間がいた…(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の青春(映画)』
竹林軒出張所『まんが トキワ荘物語(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道(本)』

# by chikurinken | 2019-08-04 06:50 | ドラマ