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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2019年 07月 17日 ( 1 )

攻める『バリバラ』! 「教えて★マーシー先生」って……

 かねてから噂には聞いていたが、『障害者情報バラエティ バリバラ』という番組(NHK Eテレ)がすごい。
b0189364_20301708.jpg 今まではなかなか触手が動かなかったが、今回、「元タレント」の田代まさしが、自身の覚醒剤依存症について語るという激烈な企画が2回に渡って放送されると聞き、しかもタイトルが「教えて★マーシー先生」という人を喰ったようなタイトルなんでにわかに興味が湧いて、2回とも見てみた。
 僕は以前から田代まさしというタレントのセンスの良さを高く買っていたが、2001年以降、覚せい剤取締法違反で3回逮捕され(盗撮や人身事故などでも書類送検されていたらしい)芸能界との縁が切れた。最初の逮捕、それから2回目の逮捕後は、他の芸能人からの支援もあり芸能界に復帰したが、さすがに3回目となると手を伸ばす人もいなくなるのか、現在は基本的に芸能活動をしておらず、なんとダルクの職員として健全な生活を送っているという。ちなみにダルク(DARC)というのは、依存症経験者のための施設で、再び依存薬物に手を染めないでいられるよう支援するという活動を行っている。断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)みたいな存在である。
 この「教えて★マーシー先生」の回では、この田代まさしが登場し、覚醒剤に依存していた時代、刑務所生活、マスコミのバッシングが薬物逮捕者を追い込んでいる状況などについて語る。番組の大部分は経験者、田代まさしによる話であり、そのためにどれも大変な説得力があるが、同時に依存を断つことが非常に難しいことも示される。これはアルコール依存について吾妻ひでおが著書で語っていたこととも共通するが、いったん依存してしまうとこの依存状態を完全に断つことはできなくなるため、1日1日、依存薬物を使わない生活を積み重ねる、そのために危険な場所に近づかないようにするというような態度で対処するしかないらしい。
 また(「覚醒剤やめますか、人間やめますか」などのコピーに代表される)覚醒剤使用に対する過剰なネガティブ・キャンペーンが、薬物依存者の社会復帰を困難にしているという話は非常に興味深かった。芸能人が覚醒剤使用で逮捕されたりすると、マスコミが大挙して家まで押し寄せ、意志の弱い極悪人であるかのごとくあげつらう。しかも家族や友人までが(まったく関係のない他人から)責任を追求されるなどということが行われる。ついこの間も似たようなことが起こっている。だが、あのように極悪人に仕立て上げたところで、薬物犯罪自体は誰かに迷惑をかける類の犯罪ではないし、しかも家族や友人には基本的にはまったく関係ないのである。結局、いったんこういうケースが取り上げられると、家族ともどもそれまでの生活が破綻させられるだけで、本来であれば周囲が彼らの社会復帰を助けるべきなのに、それを困難にするだけだという話はきわめて印象的であった。
 これは精神科医の松本俊彦という人が番組内で語っていたのだが、世間で喧伝されている離脱症状(幻覚が見えたり粗暴になったりなど)は、比較的少数派で、多くはあのような離脱症状はないという。田代まさしの場合も、離脱するとただやたら眠くなっていたと語っていた。したがって覚醒剤依存患者が、離脱状態のために治安を乱す存在みたいに扱うのも正しくなく、いたずらに偏見を助長することにつながるらしい。目からウロコである。
 このように話の密度が非常に濃かった上、田代まさしのギャグが随所で炸裂して、非常に充実した1時間(30分×2)であった。田代まさしのギャグについては、冒頭に司会者から「ろれつが回っていないし手が震えたりしてるけどまたクスリ使ってんじゃないですか」などというものすごいツッコミがあって、それに対して「薬やってないからろれつが回らないし手が震えんだよ。薬やってたら止まるから」などと自虐ネタで返す当たり、なかなかのもので、今も田代節健在を印象付けるやりとりであった。
b0189364_20302352.jpg ちなみにこの『バリバラ』という番組であるが、「バリバラ」というのはバリアフリー・バラエティの略語だそうな。調べてみたところ、これまで放送された回では、障害者の芸人が自身の障害を笑いのネタにして披露するとか、統合失調症の人が自身の幻覚について語るとか、いわゆる「放送コード」を凌駕しているような「攻めた」番組作りをしているようだ。今回の「マーシー先生」の回でも、依存や犯罪、刑務所生活をごく日常的なノリで語っていて、腰が引けたような放送ばかりの昨今、なかなかすごいもんだと感じさせる。田代まさしが語っていた、刑務所内での薬物犯罪逮捕者の心理(逮捕されたときは「もう二度と手を出しません」と宣言していたにもかかわらず、刑務所内ではいつも「クスリやりてぇ」と感じていたというもの)も、普通では絶対に(建前主義の)テレビでは披露されないエピソードである。
 昨今のテレビ番組は、本当になんでもかんでも事なかれ主義で、建前ばかり、しかも内容も乏しいというものがやたら多いが、せめてこの番組ぐらい本音で語ろうとしても良いんじゃないかと思う。テレビ番組と製作者がお利口さんになってしまい、その割には作られたものは白痴的でどうしようもないんだが、つまらないものを作るんだったら、せめて常識(と思われているもの)を破る方向で進んでほしいと思う。もっともヘイト行為や差別、あるいは無理解を助長する方向で常識を突き破っている放送もあるようで、悩ましいところではある(テレビ製作者は本当に白痴化しているのではないかと考えさせられる事例である)。

参考:
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』
竹林軒出張所『実録! あるこーる白書(本)』
竹林軒出張所『逃亡日記(本)』
竹林軒出張所『私、パチンコ中毒から復帰しました(本)』
竹林軒出張所『性犯罪をやめたい(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『脱ネット・スマホ中毒(本)』
竹林軒出張所『ポテチを異常に食べる人たち(本)』

by chikurinken | 2019-07-17 07:06 | 放送