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竹林軒出張所

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2019年 07月 14日 ( 1 )

『男たちの旅路 第1部「路面電車」』(ドラマ)

男たちの旅路 第1部「第二話 路面電車」
(1976年・NHK)
脚本:山田太一
演出:高野喜世志
音楽:ミッキー吉野
出演:鶴田浩二、水谷豊、森田健作、桃井かおり、前田吟、五十嵐淳子、結城美枝子、久我美子

テーマが強烈
あなたならどうすると訊かれているようだ


b0189364_16375781.jpg 山田太一の代表作『男たちの旅路』の第2回目。第1回目で自殺騒ぎを起こした悦子が、吉岡らが勤める警備会社にガードマンとして入社する。このように第一話からストーリーがそのまま進展し、柴田(森田健作)の背景や、吉岡(鶴田浩二)と柴田の母(久我美子)との関係などが少しずつ明らかになるが、同時にこの回では、前回と異なる新しい事件(警備しているスーパーの万引事件)があり、それに対して吉岡と若い社員、杉本(水谷豊)、柴田、悦子(桃井かおり)との意見の対立が起こるという具合に話が進む。
 悦子が万引常習犯の主婦(結城美枝子)を捕まえるが、彼女の話を聞いて同情し、意図的に逃がしてしまう。杉本、柴田もその話を聞いてこの主婦に同情的になるが、それに対し吉岡が憤り、警察に通報して逮捕させるのである。吉岡は、同情して自分たちは善行をやったと思っているかも知れないが、それは自ら判断を下さない態度に過ぎないというのだ。結局、犯罪者は誰かが捕まえなければならないのに、自分はその役割を放棄し、他人に委ねながら、その他人が冷酷になって捕まえたら、それに対して人情がないなどと非難する。だがそれは、結局のところ甘えであって逃げに過ぎないなどと言い、若い社員たちと対立するのである。この万引常習犯の主婦、どこか依存症風で、生活にも少々闇を抱えているような部分があって、かなり同情を誘うため、見ている側の多くはおそらく若い社員たちと同様、この犯人に感情移入してしまうが、吉岡の冷酷な判断によって冷や水を浴びせられてしまう。若い社員たちは吉岡に一様に反発して辞めてやると息巻くが、視聴者の側には大きな葛藤が残るという、大変よくできたストーリーである。どこかディスカッションのネタ映像風でもある。
 脚本の山田太一、この『男たちの旅路』について、「一つのワンテーマを作って、そのテーマにどういうふうに鶴田(浩二)さんは考えるか、若い人はどう考えるかっていうふうにして、ワンテーマずつ書いていこうと思った」と語っている(竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』参照)が、こういうアプローチがまさに明確に発揮されている作品で、テーマの深さに感心してしまった。また登場人物一人一人のセリフやキャラクター設定も相変わらず素晴らしく、ドラマとしての質が非常に高い。
 このドラマ、前に一度見ているはずだが、まったく憶えていなかった。『男たちの旅路』自体、この後第4部まであるんだが、第3部辺りからメインストリームが変な方向に行ってしまい(吉岡と悦子の恋愛関係)、それが強烈な(悪い)印象として残っているため、もう一度見たいと思っていなかったが、何度も見る価値はあると今回の再放送を見て思ったのだった。
第14回ギャラクシー賞選奨受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「非常階段」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「猟銃」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第3部「シルバー・シート」(ドラマ)』
竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-14 07:37 | ドラマ