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竹林軒出張所

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2019年 07月 13日 ( 1 )

『男たちの旅路 第1部「非常階段」』(ドラマ)

男たちの旅路 第1部「第一話 非常階段」
(1976年・NHK)
脚本:山田太一
演出:中村克史
音楽:ミッキー吉野
出演:鶴田浩二、水谷豊、森田健作、桃井かおり、前田吟、五十嵐淳子

日本のテレビドラマの画期になった作品

b0189364_20185666.jpg 山田太一の代表作『男たちの旅路』の第1回。
 ある警備会社を舞台にした話。主人公は、この会社の中途入社新入社員、杉本(水谷豊)と柴田(森田健作)である。その彼らの前に現れたのが、その警備会社の司令補、吉岡晋太郎(鶴田浩二)。この吉岡だが、新入社員6人を相手にいきなり立ち回りを演じてケガをさせたり(結果的にそのうちの3人は入社を辞退)、若い奴が嫌いだと語ったり、若者たちにとってはなかなか面倒な存在である。特に杉本は、楽をしながら人生を軽く流していくというようなタイプで、仕事にも真面目に取り組もうとしない。そのため吉岡ともことごとくぶつかる。
 こういう3人が、飛び降り自殺が多発するあるビルの警備を担当することになって、これ以上自殺者が出ないよう監視するという仕事に就く。そこに現れたのが飛び降り自殺を試みようとする悦子(桃井かおり)で、この悦子と3人の警備員の間でいろいろともめ事が起こるのである。そして、この一連の事件を通じて吉岡の生き様が明らかになっていくというふうに話が進む。
 この吉岡だが、実は特攻隊の生き残りで、無益に死ぬ同僚をたくさん見てきたという設定(実際の鶴田浩二の人生の投影でもある)であるため、生死について深く考えず真剣に生きるということをしない若い世代に強い嫌悪感を持っている。それが「若い奴が嫌いだ」という発言に繋がるわけだが、結果的にこのドラマ(つまり『男たちの旅路』第1部第一話)では「真剣に生きる」ということを考えさせる内容になる。
b0189364_20190369.jpg 脚本家のインタビューによると、この『男たちの旅路』は、各回テーマを設定してそれについて登場人物たちが考えるというドラマにしているらしいが、このこと自体テレビドラマとしてはかなり斬新で、それがために山田太一にとっても日本のテレビドラマにとっても画期と言える作品になった。また脚本家の名前が冠に付いたのもこのドラマが日本初である(竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』参照)。
 そういう強いテーマ性に加えて、捕り物めいたシーンが長く続きスリルとサスペンスの要素もあるため、テーマ性が強烈であるにもかかわらず、見ていてまったく飽きることがない。しかも、吉岡司令補だけでなく、水谷豊演じる杉本のキャラクターもいかにも当世の若者風で、はじけていて印象的である。このように、キャラクターがしっかり描き分けられてそれぞれが魅力的であるのも、山田ドラマの特徴である。このシリーズ、この後、登場人物を変えながら第4部(各3話)まで続く。すべてDVD化されていることからわかるように、当時の評価・人気ぶりも窺われる。実際今見ても大きなインパクトが残る佳作である。
第14回ギャラクシー賞選奨受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「路面電車」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「猟銃」(ドラマ)』
竹林軒出張所『男たちの旅路 第3部「シルバー・シート」(ドラマ)』
竹林軒『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-07-13 07:18 | ドラマ