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竹林軒出張所

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2019年 07月 07日 ( 1 )

『山之口貘詩集』(本)

山之口貘詩集
山之口貘著、高良勉編
岩波文庫

あの岩波文庫に山之口貘の詩集が

b0189364_20105094.jpg 岩波文庫からも山之口貘の詩集が出ていることを知って、思わず買ってしまった。
 収録されている詩は全部で152篇で、処女作『思辨の苑』から52篇、『定本 山之口貘詩集』から12篇、『鮪に鰯』から82篇、『新編 山之口貘全集』から6篇という構成である。詩自体はズラズラッという感じで並べられており、並び順に何かの意味があるのかどうかはわからない。
 どの詩も散文みたいで、その辺が山之口貘の特徴と言える。特に『思辨の苑』は、ホームレスのような生活をしていた時代のことが題材になっており「生活の柄」や「ものもらいの話」などもここに含まれているわけで、この作家にきわめて特徴的なテーマの詩が集められている。『思辨の苑』は1938年に出版されたもので、その2年後に『思辨の苑』を補足した『山之口貘詩集』が出版されている。したがって『思辨の苑』には、時期的に若い頃の諸作品が収録されていて、その多くの詩では貧乏の他、恋愛・結婚などがテーマになっている。
 一方『鮪に鰯』は、山之口の死の翌年に発表されたもので、これは家庭人となってからの山之口貘の姿が見える。同時に戦争時代の暗い世相を反映したものも多い。「頭をかかえる宇宙人」や「たぬき」、「告別式」、「深夜」、「鮪に鰯」はすべてここに含まれる。どれもほのかなユーモアが漂う作品で、山之口貘の完成形と言える。高田渡がメロディを付けて歌っていたものも多くはここから取られている(そもそもこの『鮪に鰯』は詩の絶対数が多い)。
 僕は高田渡の歌で山之口貘を知った口だが、しかし今読んでみると、メロディはない方が良いと思うものも多い。高田渡の歌は、やはり高田渡の解釈が入っているわけで、そのあたりに僕の受け取り方との間に若干のずれが当然あり、それが違和感として僕の中に残るのである。とは言うものの、高田渡の歌を聞かなければ山之口貘を知ることもなかっただろうし、それに高田渡の歌にも味わいがあり、山之口貘の独特のユーモアを活かしきっているという側面もある。そういう点を考えると、高田渡が山之口貘への入口になったというのもきわめて自然と言うことができる。
 いずれにしても、(ある種)権威の象徴みたいな岩波文庫で山之口貘のオリジナルの詩に接することができるというのも、感慨深いものがある。最後の解説は高良勉という人が書いているが、こちらはもう一つという印象である。ただ、非常に興味を惹かれる山之口貘の生涯については一通り触れられているため、最低限の仕事はできているとは思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山之口貘の詩、そしてとぼけた味わいの曲』
竹林軒出張所『高田渡と父・豊の「生活の柄」(本)』
竹林軒出張所『詩のこころを読む(本)』

 以下、以前のブログで紹介した『山之口貘詩文集』の評の再録。

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(2006年8月13日の記事より)
b0189364_18253814.jpg山之口貘詩文集
山之口獏著
講談社文芸文庫

 詩人、山之口貘の詩(+散文)集。
 古典の類だから、今さらあれこれ言う必要はないだろうが、山之口泉氏(貘氏の長女)によると、これまで山之口貘の詩集が入手困難だったらしく、そういう意味では非常に意義のある本である。山之口貘の詩は、40年の生涯で197篇(少な!)だそうで、本書には、そのうち約80篇が収録されている。
 山之口貘という詩人については、私は高田渡の歌で知ったわけだが、それにしてもインパクトのある詩である。それでいて、上品なおかしみが漂っている。
 高田渡も歌っている詩「生活の柄」も本書に収録されていたが、詩で読んでみるとかなりイメージが違っていた。この曲に限っては、高田渡の歌はあまりよくなかったかなと思った(他は良いものが多いと思う)。
★★★★

by chikurinken | 2019-07-07 07:10 |