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竹林軒出張所

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2019年 07月 01日 ( 1 )

『連合赤軍 終わりなき旅』(ドキュメンタリー)

連合赤軍 終わりなき旅(2019年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集

当事者の口から事件が語られることの意義

b0189364_17392708.jpg 世間を(同時に当時小学生だった僕も)震撼させたあさま山荘事件から47年も経つと聞くと、いろいろな感慨が湧く。
 あさま山荘事件というのは、新左翼の学生が、あさま山荘というロッジに人質を取って立てこもり機動隊と戦った事件で、学生の方も銃を持っていたことから、銃撃戦が展開され、結局機動隊に2人、民間人に1人の犠牲者が出ることになった。籠城は数日間続き、いくつかの放送局がそれをライブ中継していたため、僕などは、学校から飛んで帰ってテレビで行方を見守ったのだった。結局、犯人たちは全員逮捕されたが、犯人の逮捕後、あさま山荘に至る前に彼らの同志が12人リンチで殺されていることが、犯人たちの証言から判明するのである。
 この殺人に関わったのが、あさま山荘事件の犯人を含む、連合赤軍のメンバーであった。連合赤軍というのは共産主義者同盟赤軍派と日本共産党革命左派神奈川県委員会が連合したグループである。ここに至るまで幹部たちが次々に逮捕され、当時、残ったメンバーが日本で共産主義革命を実現するために集結していたという状況であった。彼らは山の中に小屋を作りそこで共同生活を送りながら革命のための訓練を行っていたのだが、世間から隔絶された状況であったためかどうかわからないが、「総括」という名目で内部に敵を作り出し処刑するという方向に突っ走っていったのだった。しかしこのような「革命」が成功するはずもなく、やがて警察に踏み込まれ、多くはその過程で逮捕される。それをかいくぐって逃げた5人が武器を持ってあさま山荘に立てこもったことから、あさま山荘事件が起こるのである。
 このドキュメンタリーは、このあさま山荘事件と、それに先立つ連合赤軍事件を追い、それに関わった人々に直接取材して、あの事件を明らかにしようという試みであり(まさに「総括」)、そのために、刑期を終えた関係者も実名、顔出しで登場する。取材は7年間に及んでいるらしく、かなりの力作であると言える。
 普通の学生だった彼らがなぜあのような限界状況に陥ったのか、なぜリンチ殺人が行われたのかが、彼らの口から語られ、そしてその後の彼らの人生もあわせて紹介される。中には兄の殺人に加担した加藤倫教氏、同志をアイスピックで殺し同時に婚約者を目の前で殺された植垣康博氏などもいて、彼らが背負ってきたものの大きさが語られる。彼らの話を聞いていると、オウム事件同様、社会の混迷と歪みが若者の上に影を落とした事件と言えるのではないかと感じる。僕個人としても、人間の集団が限界状況で暴走するということを最初に認識させられたケースであり、人間集団の恐ろしさを思い知らされた事件である。
 社会的にもこの事件の影響は大きく、それ以降急速に新左翼運動が収束、低迷し始め、僕らの世代にも新左翼運動に対するアレルギーが強く残された。そのため僕自身は、大学に入った後、新左翼運動に関わることはなかった(当時もまだ学内で中核派が活動していた)が、危ない集団(その当時も依然として内ゲバをやっていた。革マルの幹部を襲撃したとかいう記事が、中核派の機関誌『前進』に載っていた)に近づかないで済んだのは、ひとえにあの事件のおかげであると思っている。新左翼に対するアレルギーというのは、僕の中では相当大きかったのだ。個人的にもあの事件を、暴走する人間集団という見地から「総括」すべきだと思っていたため、かつてこのドキュメンタリーと同じ主旨の本を読んだこともある。
 一方でこのドキュメンタリーは、当事者の口からあの事件が語られるという特異性があり、それが大きな魅力になっている。そのため第三者の視点からもあの事件を「総括」できるような優れた構成になっていて、大変質の高い、しかも真摯に作られたドキュメンタリーに仕上がっている。大いに評価したい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年(本)』

by chikurinken | 2019-07-01 07:39 | ドキュメンタリー