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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2019年 01月 30日 ( 1 )

『衝撃の書が語る人類の未来』(ドキュメンタリー)

“衝撃の書”が語る人類の未来 〜サピエンス全史/ホモ・デウス
(2019年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

90分 de『サピエンス』と『デウス』
「衝撃の書」とはまた大層な……


b0189364_19104961.jpg ユヴァル・ノア・ハラリという歴史学者が書いた『サピエンス全史』という本がよく売れているらしい。かく言う僕もこの本を買ったのだが現在途中で止まっている。人類の歴史を新しい視点で捉え直すという書で、面白い視点の本ではある。元々イスラエルの大学で行った講義をまとめたものらしく、確かに講義録と考えると納得がいくような内容である。要するに、視点こそユニークではあるが、内容自体はさほど目新しさがないし、その目新しい視点もこれまでに方々で語られているようなものであって(たとえば「イネやムギが人を家畜化した」などの議論)、極論すれば「まとめサイト」みたいな本と言えるかも知れない。
 この著者がそれに続いて出した本が『ホモ・デウス』という著作で、こちらもよく売れているようだ。ハラリ氏、これで一財産築けたんじゃないかと思うが、内容は前著にも増してお粗末という印象である。読んでいないので正確なところはわからないが、このドキュメンタリー番組で『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』の内容をそれぞれ45分で紹介しているので、そこから判断した結果の見解である。
 この番組では、前半は池上彰がハラリにインタビューしてしきりに『サピエンス全史』を持ち上げるし、後半でもハラリのインタビューを中心に展開される。NHK-Eテレで『100分 de 名著』という人を喰ったような番組が放送されているが、構成などもあれによく似ていて、書の内容ともども安易さ全快である。ましかし、ありふれた本のダイジェスト番組ということであれば、読み通すという労力を使わずに概要がわかるわけで、これに越したことはない。今回のドキュメンタリーから判断すると、『サピエンス全史』はともかく、『ホモ・デウス』は取るに足りないゴミ本という印象が強い。要するに、AIと遺伝子操作により人間は神の領域に踏み込み(それが「ホモ・デウス」)、その神の技術を取り入れることができる一部の特権階級と、神の技術を持たない下層市民に別れて、新たな支配構造ができるというような話らしい。100年くらい前のSF小説レベルの想像力と言えば言いすぎかも知れないが、これまで方々で語られているような話であることには違いない。それに、AIや遺伝子操作が果たして神の領域なのだろうか。そういったレベルで、つまり前提条件からして、理解や認識が不足しているような印象もあり、そういうようなことを総合すると、日常の雑談程度の内容という印象すら受ける。分析が足りず単なる直感に終始しているようにも感じるが、似たような傾向は『サピエンス全史』にもあり、こういった本を「衝撃の書」などと言って持ち上げる、この類のドキュメンタリーにも違和感を感じるのである。一種の扇動、あるいは誇大広告と言っても言い過ぎではない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『欲望の植物誌 人をあやつる4つの植物(本)』
竹林軒出張所『AI vs. 教科書が読めない子どもたち(本)』
竹林軒出張所『遺伝子組み換え戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『欲望の資本主義2019(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-01-30 07:10 | ドキュメンタリー