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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2019年 01月 08日 ( 1 )

『アメリカ“刑務所産業”』(ドキュメンタリー)

アメリカ“刑務所産業”
(2018年・Submarine Amsterdam & CNN Films/The Why Foundation他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
シリーズ WhySlavery? 〜世界の"奴隷労働"〜

「刑務所産業」は現代の奴隷制度の温床である

b0189364_17380237.jpg (僕は知らなかったがアカデミー賞監督賞を受賞したこともある)著名なテレビ・ディレクター、ロジャー・ロス・ウィリアムズが製作した、現代アメリカ刑務所事情のドキュメンタリー。刑務所に取り込まれて搾り取られる「犯罪者」(ある意味、被害者)の立場から刑務所産業を見るという、ユニークな面白い視点が持ち味である。
 アメリカの一部(多くの?)の町では、飲酒運転などの微罪(中には職質で不審だからという理由で捕まった者もあるらしい)で黒人が逮捕され、その後長期に渡って収監されるという。釈放された後も毎月相応な金額(保護観察費、約90ドル/月)を保護監察官に払うことが求められ、それが支払えないと再び長期に渡って収監される。通常出所した後はなかなか職が得られなくなるため、結果的にこの金額を支払えず保護観察違反となって再び収監されることになる。つまりいったん収監されてしまうと、刑務所から離れられない構造になっているという。しかも黒人が主にその標的にされている。実際、ウィリアムズの親しい友人も収監され、その後刑務所内で自殺したのである。それがこのドキュメンタリーを撮るきっかけだったらしく、ウィリアムズ自身も若い頃故郷を出てニューヨークに行かなければ同じような人生を送っていただろうと語る。
 そしてこのような問題の背景にこそ、多額の税金で運営されている刑務所の実態があるというのがこのドキュメンタリーの主張である。刑務所の周辺には、刑務所の事業に群がる「刑務所産業」と呼ぶべき産業がある。つまり刑務所の事業で大いに潤っている人々がいて、その構造を維持するために次々と刑務所に寄せ集められるのが(主に)黒人の「犯罪者」であり、その中には、先ほども言ったように本来収監されるべきでない「犯罪者」も多数存在する。そしてその「犯罪者」の方も、刑務所内で超低賃金で労働させられているという実態もある。このような仕組みにより、刑務所産業は、二重三重の構造で受刑者、市民から収奪する構造になっているというのである。まさに現代の奴隷制度と言うべき状態であり、アメリカの刑務所がどのような存在になっているのか啓蒙しようというのがこの作品の主旨である。
 一般市民に悪さをする極悪人を一般社会から隔離するのが刑務所で、治安の悪いアメリカでは刑務所の事業に金がかかるのも仕方がない程度の考え方しか僕は持っていなかったが、実態は必ずしもそうでない、実は黒人は相変わらず収奪される対象なのだということが分かる。非常に真摯な主張が静かな口調で語られる、きわめて斬新な視点のドキュメンタリーであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『T(ERROR) FBIおとり捜査の現実(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『北朝鮮 外貨獲得部隊(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『メイド地獄(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2019-01-08 07:37 | ドキュメンタリー