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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2018年 07月 12日 ( 1 )

『在宅死 死に際の医療』(ドキュメンタリー)

在宅死 “死に際の医療” 200日の記録
(2018年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

登場する患者に自らを重ね合わせる

b0189364_20472322.jpg 在宅死の現場に密着するドキュメンタリー。
 1記者が個人的に作ったかのような私的なドキュメンタリー風の作品で、NHKでは少し珍しいタイプの番組かも知れない。実際、映画監督の是枝裕和がかつて、個人的な観点のドキュメンタリーをNHKで放送しようとし、自分で入れたナレーションをそのまま使おうとしたが断られたという話もあり、時代も変わったんだろうが、NHK自体も変わったということなのか。
 さて内容であるが、埼玉県新座市の堀ノ内病院の活動の紹介が中心になる。この病院、「在宅医療チーム」なるものが存在し、地域の家庭を定期的に巡回するようなことを行っている。自宅に帰ることを望む末期患者たちに対応しようというのがこのチームの創設目的らしく、数人の医師と看護師が、末期が近いお年寄りのところを訪問するという活動を行っている。このドキュメンタリーの製作者は、この現場に密着して、スタッフの活動だけでなく、末期の患者とその家族の様子を映像に収めていく。
 映像には、実際に死んでいく人、死んだ直後の人、介護に追われる家族、そしてそれに関わる医療従事者などの様子が、第三者的に捉えられており、なかなかインパクトのある映像が続く。死を間近にしていた人(医師に軽口を叩いたりする)がやがて死を迎えるというような映像も出てきて、少しばかり衝撃的ではあるが、それが、きわめて身近できわめて自然なものとして描かれる(というよりごく自然に現れる)。死は忌避すべきものでもなく逆に崇高なものでもない。ごく自然の営みとして映し出される。
 元々、終末をどこで迎えるのが幸せなのかという問いがこのドキュメンタリーの出発点らしいが、病院死や在宅死の問題より、自然な死の有り様の方に注意が向く。登場する医師と看護師が、そういった自然な死を介助する役割を負っているように見えるのも非常に新鮮。これこそが終末期医療のあり方ではないかと感じる。こういう病院と医師が身近にあればと思わせるが、いずれは全国にも広がっていくような気もする。なんぜ、国が在宅介護を推し進めているんだから(おそらくは老人が増え、病院が対応できなくなってきたためだろう)。ただ、このドキュメンタリーに登場した2人の医師みたいな立派な医師がどこにでもいるかというとそうは行かないのではと思ってしまう。終末期に不快な医師に当たったりしたら目も当てられない、などということを、この番組に登場する患者を自分の身に置き換えて考えたりしたのだった。そういう点でも、このドキュメンタリーは、死について考えるきっかけを作る良い材料になっていると言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『病院で死ぬということ(映画)』
竹林軒出張所『家で死ぬということ(ドラマ)』
竹林軒出張所『大病人(映画)』
竹林軒出張所『島の命を見つめて 豊島の看護師・うたさん(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『大往生したけりゃ医療とかかわるな(本)』
竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-07-12 07:46 | ドキュメンタリー