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竹林軒出張所

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2018年 05月 05日 ( 1 )

『阿修羅のごとく』(1)〜(3)(ドラマ)

阿修羅のごとく (1)〜(3)(1979年・NHK)
演出:和田勉、高橋康夫
脚本:向田邦子
出演:八千草薫、いしだあゆみ、加藤治子、風吹ジュン、緒形拳、佐分利信、大路三千緒、菅原謙次、宇崎竜童、三條美紀

向田邦子の出世作
特異な世界を持つドラマ


b0189364_17075206.jpg 1979年にNHK『土曜ドラマ』の「向田邦子シリーズ」として放送されたドラマ。当時からかなり話題になっており、言ってみれば向田邦子の名前が世に出た作品ではないかと思う。
 初回放送時僕は見ていないが、当時からかなり話題になっていたことは記憶にあり、特にテーマ音楽が特異で(ドラマを見ていないにもかかわらず)メロディが永らく記憶に残っていた。トルコの陸軍行進曲の「ジェッディン・デデン」という曲なんだが、よくこの曲を選んだなというようなかなり毛色の変わった曲である。タイトルの「阿修羅のごとく」とこの曲でこのドラマの成功は約束されたようなもので、この2つがドラマの性格、雰囲気を特徴付けている。ちなみにこの曲、『トルコの軍楽』というCDで聞くことができる。
 ストーリーは、ホームドラマの延長で、さして大きな事件は起きない。ただ、当時の一般的なホームドラマのように毒にも薬にもならないような軽ーい話ではなく、人の中の闇が明らかにされるようなちょっと毒を含んだような話(ということは毒にはなっているわけだ)で、あまり愉快になるような話ではない。主人公は4人姉妹で、彼女らの70歳の父親に不倫相手がいたということが発覚することから話が始まる。一方でそれぞれの4人姉妹も恋愛問題を抱えており、そのうち3人の恋愛は不倫と関係していて、四者四様の不倫問題があぶり出されていくというストーリー。
 このドラマ、20年ほど前に一度見ているが、ストーリーはほとんど忘れていたのだった。とは言え、身辺描写みたいなものが主で、ドラマチックな展開が少ないことを考えると、それも十分納得がいく。今回もいずれ近いうちにストーリーは忘れるかも知れないが、印象的なシーンやセリフがあるため、そういうものは頭に残るんではないかと思う。そういう意味では、このドラマ、ストーリーを超えた(つまりストーリーだけに留まらない)ドラマということで、やはりテレビドラマとしてはかなり特異な存在である。それは間違いない。
b0189364_17084715.jpg キャストは、今考えると超豪華で、しかも芸達者な役者ばかりである。中でも(当時まだ俳優というよりミュージシャンだった)宇崎竜童が好演で、ベテラン俳優を相手に丁々発止の見事な演技を展開している。セリフについては、(男には気が付かない)女性的視点が際立ったようなものが多く、男の目からは(少なくとも僕の目からは)なかなかセリフの魅力に気が付かない。セリフでストーリーを前にどんどん動かしていくというより、世間話みたいなセリフが非常に多く、セリフの面白さがわからなければ退屈するかも知れない。そういう点でも女性的な感じがする。家事や食事のシーンが多いのも向田作品に特有で、そういうことを考え合わせると、女性受けが良いドラマではないかと思う。前見たときは、あまり良さがわからなかったし、今もどの程度、このドラマの女性的感性の魅力に気付いているか(我ながら)疑問である。いずれにしても、向田邦子自体、ドラマ史の中ではかなり特異な存在であることは間違いあるまい。
★★★☆

追記:
 この時代のドラマの特徴だが、例によってドラマ内で何度も鳴る(当時の)電話の音がけたたましい。だが、電話の呼び出し音が「ジェッディン・デデン」の最初の音と同じ音程で、もしかしてそういう発想でこの曲を選んだのかと勘ぐってしまった。なお電話は、このドラマではかなり重要なモチーフになっている。

参考:
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(映画)』
竹林軒出張所『胡桃の部屋 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『あ・うん (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『思い出トランプ(ドラマ)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の名前 向田邦子漫画館(本)』

by chikurinken | 2018-05-05 07:07 | ドラマ