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竹林軒出張所

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2017年 10月 27日 ( 1 )

『のぼせもんやけん』、『のぼせもんやけん2』(本)

のぼせもんやけん 昭和30年代横浜 セールスマン時代のこと。
のぼせもんやけん2 植木等の付き人時代のこと。
小松政夫著
竹書房

植木等、やっぱりいい人過ぎ

b0189364_19130680.jpg コメディアン、小松政夫の自伝的青春記。
 『のぼせもんやけん』は高卒後上京してから自動車のセールスマンをしていた頃までの話。続編の『のぼせもんやけん2』では植木等の付き人になってからデビューするまでを描いている。小松政夫著の小説という体になっているが、小松政夫が語った内容を清水東というゴーストライターが書いたものらしい(『のぼせもんやけん2』のあとがきに書いてある)。とは言え、内容は充実していて、非常に面白い。それに恐ろしく読みやすい。
 さまざまなバイトを転々とした後、横浜トヨペットでセールスマンとしてスカウトされ、トップ・セールスマンになるあたりが『のぼせもんやけん』の内容だが、ストーリーは一種のサクセスストーリーになっていて、エンタテイメントとしても楽しめる。なんといっても著者を取り巻く周りの人々が魅力的で、主人公(つまり著者)に対して思いやりに溢れた行動をしてくれる。それにきわめてユニーク。著者は「ブル部長」や「アリクイ係長」などのニックネームで通しているが、実在の人物らしい。ただし著者によると、脚色も入っているらしい(これもあとがきに書いてある)。小説という体だからそれはそれでかまわない。
b0189364_19131109.jpg 『のぼせもんやけん2』では、植木等のボーヤ(バンドマンの付き人)になって目にする芸能界の姿が描かれる。特に師匠である植木等、クレージーキャッツの面々との付き合いが中心になるが、彼らも、トヨペットの人々と同様、非常に人情家である。植木等に至っては、当時、超売れっ子であったにもかかわらず、ボーヤである著者にまで気を配る思いやりの人という描かれ方で、どんだけいい人なんだと思う。芸能人として独り立ちする算段まで、知らない間に全部やってくれていたらしいんだ、これが。
 思うに、著者自身が、いろいろな部分に目を配ることのできる心優しい人間であったために、周りの人々にも愛されたんではないかと推察する。つまり周囲が著者自身の姿を反映しているというわけである。
 なお、この本で描かれている数々のエピソードは、若干形が変わったものもあるが、ドラマ『植木等とのぼせもん』でも数多く採用されている。ただし、ドラマの性格上、適当に味付けを変えたりしているし、時間の制約もあるため、薄味になっていたり、元々の味が失われているものもある。あのドラマも面白く心温まるエピソードに溢れていたが、こちらの原作の方がお奨めである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『植木等とのぼせもん (1)〜(7)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-10-27 07:12 |