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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2015年 03月 16日 ( 1 )

『“空中農園”が人類を救う!?』(ドキュメンタリー)

“空中農園”が人類を救う!?(2014年・仏Docside Production)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

「空中農園」の理想を語るのは結構だが
説得力に欠ける


b0189364_8202490.jpg 今後(人口増加によって)食料需要の増加が見込まれる現代において、その生産のために「空中農園」を作って対応するというのはどうだと提案するドキュメンタリー。
 「空中農園」とは、高層ビルのような建物の各階で野菜を栽培しようという案で、土を使わず水耕栽培で野菜を育てようというもの。同時に、この「農園」はコンピュータによって高度に管理化されており、LED照明を使って光を照射し作物を育てるらしい。そのため、一般的な畑より病害虫が少なく、より有機に近い作物ができるし、しかも広い土地も不要というメリットがある。また、都市で生産できるため、輸送にかかる費用、エネルギーを節約できるというのも大きなメリットである。科学者たちや一部の資本家は、いずれこれを実現しビジネスとして成立させたい考えのようだが、目下のところは、採算面で商業ベースに載せることが難しいという話である、このドキュメンタリーによると。
 ビルの屋上に土を乗せて野菜を栽培したり小さな森を作ったりという話は実際よく聞くし、空間利用の方法として良いと思うが、この「空中農園」は、言ってみれば野菜の工場ということで、取り立ててどうと言うことはない。土地が著しく狭く農地が確保できないという地域ならいざ知らず、ほとんどの状況では、このドキュメンタリーで訴えているようなメリットはあまりないんじゃないかという気がする。何より、商業ベース云々というよりも、野菜の生産に大量のエネルギーを投下しなければならないわけで、言ってみれば化石燃料を食料に変換しているようなものである。まったく持続可能ではない農業に将来性はないんじゃないのと思う。
 また、あらゆる野菜がこの水耕栽培で生産できるかというとそうでもなさそうで、紹介されていた実際の映像を見る限り、生産されているのはほとんどがトマトだった。トマトを主食にするわけにも行かないだろうし、基本的に穀物を生産できなければ「増加する食料需要に対応するための農業」という観点では大した意味がないような気もするが、そういうことには番組内では一切触れずで、そのためにあまり説得力がないドキュメンタリーになってしまった。良い面ばかりを強調して悪い面に触れないのは、お粗末なドキュメンタリーと言わざるを得ないのではないだろうか。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ランドラッシュ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100マイルチャレンジ 地元の食材で暮らす(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』
by chikurinken | 2015-03-16 08:21 | ドキュメンタリー