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竹林軒出張所

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2011年 12月 11日 ( 1 )

一切合財みな常吉 -- 鈴木常吉『ぜいご』

 朝目が覚めるときに、頭の中で音楽が鳴り続けるということがある。「ことがある」というより、ほぼ毎日だ。大体、朝何らかの音楽が頭の中で鳴っている。そんなときは朝一番にその曲を聴くようにする。
 今日なんか鈴木常吉の「煙草のめのめ」がかかっていた。「たばこのめのめこのよはけむり」と「いっさーいがっさーいみなけむり」が頭の中で延々と続く。

b0189364_845229.jpg煙草のめのめ
(アルバム『ぜいご』に収録)
歌:鈴木常吉
作詞:北原白秋
作曲:中山晋平

煙草のめのめ空まで煙せ
どうせこの世は癪のたね
煙よ煙よ ただ煙
一切合財 みな煙

煙草のめのめ照る日も曇れ
どうせ一度は涙雨
煙よ煙よ ただ煙
一切合財 みな煙

煙草のめのめ忘れて暮らせ
どうせ昔はかへりやせぬ
煙よ煙よ ただ煙
一切合財 みな煙

煙草のめのめあの世も煙れ
どうせ亡くなりや野の煙
煙よ煙よ ただ煙
一切合財 みな煙

 「煙草のめのめ」という歌は、中山晋平作曲、北原白秋作詞の古い唄で、元々は大正時代に芸術座が上演した『カルメン』の劇中歌だそうだ。
b0189364_8455735.jpg 一方、鈴木常吉という人は、最近ドラマ『深夜食堂』(竹林軒出張所:『深夜食堂(1)〜(4)(ドラマ)』参照)のテーマ曲で注目を集めている人。かつては上野茂都、桑畑繭太郎と「つれれこ社中」というバンド(?)を組んで活動しており、音作りが独特(三味線にアコーディオン、マンドリン、チューバなど)で面白い世界を展開していた。以前、「つれれこ社中」のデビューアルバム(『雲』)も買ったことがあるが、元々が上野茂都目当てであって、鈴木常吉が担当している歌(「肉屋」、「田家春望」、「トリちゃんの夢」など)は正直言って耳を塞ぎたくなる類のものだった。ちなみに「田家春望」は高適/司空曙の詩(井伏鱒二訳詩)に鈴木常吉が曲をつけたもの、「トリちゃんの夢」は石毛拓郎という詩人の詩に鈴木常吉が曲をつけたものである。「肉屋」は上野茂都作詞作曲だが、とにかく、鈴木常吉のがなり立てるような歌が耳障りな感じで不快だったため、上野茂都が歌っている部分以外はあまり聴いていなかった。漢詩や現代詩を使うなど意欲的なのは買うが、要は好みの問題である。
 「煙草のめのめ」や、『深夜食堂』のテーマ曲「思ひで」は、『ぜいご』という鈴木常吉のアルバムに収録されている曲だが、このアルバムの鈴木常吉には『雲』のような耳障りな感じはまったくない。どの曲も静かに静かに囁くように歌われる。バックはアコーディオン、ギター、クラリネット、チューバなどだが『雲』のような騒がしさがなく、心にしみいるような歌が多い。鈴木常吉の声にもよく合っていると思う。正直、どれも詞はよく理解できない。「思ひで」が一番わかりやすいかと思う。「アイオー夜曲」という歌は「歩いているのは岸恵子 黙ったままの佐田啓二」というような詞で、これはまあわかりやすい方だと思うが、結構奇想天外である。やはり魅力は音作りということに尽きる。まだ本格的に聴きこんでいるわけではないが、ちょっと気になるアルバムではある。

参考:
竹林軒『上野茂都という人』
『常と吉捕物帖』(鈴木常吉のホームページ)
YouTube『深夜食堂 鈴木常吉「思ひで」』
by chikurinken | 2011-12-11 08:49 | 音楽