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竹林軒出張所

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2009年 10月 19日 ( 1 )

『僕は人生を巻き戻す』(本)

b0189364_18403175.jpg僕は人生を巻き戻す
テリー・マーフィー著
仁木めぐみ訳
文藝春秋

 母の死をきっかけに深刻な強迫性障害に苦しむことになったエド・ザインが、社会復帰を遂げるまでを描いた半生記。
 エドは、強迫性障害により、時間を巻き戻すための儀式を1日に何時間もやらなければ生きていけなくなる。あげくに地下室に引きこもり、ほとんど人と接触しない生活になる。そこに現れたのが敏腕精神科医のマイケル・ジュナイク。マイケルがエドを強迫性障害の地獄から引き出したその過程を描く迫真のドラマ……ということになれば安っぽいハリウッド映画みたいだが、これはノンフィクションである。ことはそう簡単に行かない。そのあたりの過程は複雑で、人間の精神の奥深さを実感してしまう。とはいうものの、わりにドラマチックな場面が多く、本当にそのまま映画にできるような面白さもある。善良なアメリカ人も多数出てきてエドを助けるんだが、これがフィクションだとヲイヲイと言いたくなるほどである。それくらいドラマとして良くできている。
 著者は、強迫性障害の子を持つTVプロデューサーで、その関係でマイケルやエドを知ったようだ。かれらの内面を描きながら、その劇的な推移を丹念に描き出している。先ほども言ったように多少ドラマチックに過ぎるような傾向があるが、そのためもあり楽しく読むことができる。
 「時間を巻き戻す」ための儀式で苦しんでいた著者が、社会生活できるようになって、停滞していた自分の「人生を巻き戻す」。このすべてを見事に表現しきったタイトルもすばらしい。読み終わってから、ああ良いタイトル……としみじみ感じた。翻訳文も読みやすい文章で、立て板に水のように読み進めることができる。

★★★☆
by chikurinken | 2009-10-19 18:44 |