ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

2009年 06月 08日 ( 2 )

読後感

 『喋々喃々』についていろいろ書いたが、何度も言うけど決して批判ではない。
 そもそも恋愛小説自体がああいうものなのではないかと思いはじめている。つまりご都合主義的な部分が入るのは致し方ないのではということ。
 この本を読み終わってから半日ほど経つが、なかなか読後感が良い。栞という主人公に愛着が湧いている。懐かしさも少しある。ということで、あれはあれで立派なのだと思うことにした。読後感よければすべてよしだ。
 ちょっと前に読んだ『昭和史 1926-1945』の場合は、取り返しのつかないことになったという絶望感みたいなものが次の日も続いた。この本は、太平洋戦争に突入し敗戦に至るまでの話だが、実際に立ち会った同時代の人も同じような感情を抱いたのではないかと思う。僕がこの本を読んだ時点では過去の話なので、まあどうってことはないのだが、それだけの感情を呼び覚ますというのもなかなか大した本である。
 古いイタリア映画の『自転車泥棒』を初めて見たとき、その後しばらくの間「自転車どうしよう」とふと考えてしまうことがあって、あらためてすごい映画だなと関心したものである。後に何らかの情動を残す作品は、ジャンルを問わずすばらしい。第一級である。小説を読んだり映画を見たりするのは、こういうものを求めているからかも知れない。ま、あまり小説は読まないけどさ。
by chikurinken | 2009-06-08 17:49 |

『喋々喃々』(本)

b0189364_1152431.jpg喋々喃々
小川糸著
ポプラ社

 恋愛小説です。
 主人公は栞(しおり)という30前後(だと思う、要確認)の女性で、しかも相当な美人のようです。小さな中古着物屋さんを経営しています。その店にたまたまやって来た木ノ下春一郎という既婚の男と恋仲になって、楽しくやって、別れを決意するという話。メインのストーリーはこれだけですが、これが383ページに渡って展開されます。
 とにかく、ストーリーとあまり関係ない場面で、どこそこの店でどういう料理が出ておいしかったとか、どういう料理を作ったとか、あるいはどこに行ったとか、どんな服が素敵だとか、そういった、雑誌「Hanako」に出てくるような情報が、頻繁に出てくるわけです。しかも微に入り細をうがち紹介される。まさに「紹介」です。そういえば主人公の妹は「花子」という名前です。巻末を見ると、「asta*」という雑誌の連載小説だったということで、はあなるほどねという感じはあります。
 相手の男も、優しくて気が利いて、なんだかとても魅力的なんだそうですが、性格がよく伝わってこず、作り物みたいです。こんな人間いるんかいなと思ってしまうほどです。主人公の方も、優しくて美しくておだやかで有能で、着物の着こなしがうまくてと、これまた言うことなし。いや、いいんですけどね。でも、著者にも愛読者にも「本当にこういう小説で満足なのですか」と問いたい気がします。
 最初に恋心を相手に明かす場面や、最初に2人で泊まる場面、別れの場面は、情景が細かく描かれていて、なかなかスリリングなのですが、その他は、日記みたいにだらだらと展開されます。ブログみたいです。端的に言って、これはフィクションの日記だと思います。
 全体に、若い女性が理想とするものを盛り込みましたという感じがひしひしと伝わってきます。ハーレクインかコバルトかっちゅう感じですかね。
 小説については好みの問題が大きいので、あまり批判しようとは思いません。で、今まで書いてきたことも決して批判や悪口ではないつもりなのですが、ただ「みなさん、本当にこういうので良いのですか」という気分は今でも続いています。
★★★

参考:
竹林軒出張所『食堂かたつむり(映画)』

by chikurinken | 2009-06-08 11:54 |