謎の国宝 七支刀
空白の古代を科学する
(1981年・NHK)
NHK-総合 NHK特集
適当なことばかり言う研究者たちに呆れる
奈良県の石上神宮に七支刀と呼ばれる6又の剣があり、国宝にも指定されている。
この鉄剣、4世紀頃に百済から倭国に送られたとされているが、詳細はわかっていない。そこで1980年に、光学機器を使用した科学的調査が行われることになり、そのときに古代史学者などが集まっていろいろと検討するという会合が開かれたんだが、その過程をまとめたドキュメンタリーがこれである。同時に、七支刀を刀匠(月山貞一)が再現して製作するという試みも行われており、こちらもあわせて紹介される。
この調査では、七支刀が高純度の鉄で作られており、金の象眼で文字が刻まれていることがわかるが、さらに金象嵌の文字部分の解読まで試みられている。実際は学者たちが思いつきのようなことを互いに言い合いながら、適当なところに収束していくという感じで、場当たり的な感じは否めない。しかも消えている文字まで推測して、それがさも事実であるかのように特定しているのは、学術研究としていかがなものかと思う。実際のところ、古代史学界は概ねそういうもので、それが窺われるのが、ある意味このドキュメンタリーのめっけものではある。彼らがここで行っている解釈はかなり適当という印象で、これを真実として受け止めることはまったくできず、一定の留保が必要である。

現在しきりに放送されているNHKの古代史・考古学ドキュメンタリーでは、この種の決めつけばかりで、あたかもすべてが解読されたかのように断定しているものが多く(登場する学者は「〜と考ることもできる」などと、やや遠慮がちで遠回しな表現を使用しているが、その次の映像では「これで〜が証明された」みたいな結論に至ってしまう)、見ていて片腹痛いんだが、このNHK特集については、学者たちの解釈について断定することなく、一定の留保を行っており、そのあたりは評価できる部分である(当たり前のことではあるが)。
早い話が、この手の学者の勝手な決めつけを番組の核にしてしまうと、結局信憑性を損なうことになるんで、科学調査で判明したことのみを報告するのが正しいアプローチになるわけ。そういうわけで、この番組のかなりの部分を占める解釈の部分は実につまらないと感じられた。唯一面白みを感じられたのは七支刀の再現の部分で、刀鍛冶がこれを作るのは並大抵なことではないということがわかる。百済から送られたという七支刀には、それほどの価値(稀少さ)が伴っているということが実感として伝わり、こちらの方にドキュメンタリーとしての価値があったと言える。
★★★参考:
竹林軒出張所『失われた九州王朝(本)』竹林軒出張所『日本列島の大王たち(本)』