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竹林軒出張所

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『なぜ“原画”は海外へ』(ドキュメンタリー)

マンガ・アニメ文化の行方
なぜ“原画”は海外へ

(2025年・NHK)
NHK-BS

原画流出の危機感を煽りたてる番組
その根性がさもしい


『なぜ“原画”は海外へ』(ドキュメンタリー)_b0189364_08401833.jpg 手塚治虫の『鉄腕アトム』のマンガ原稿が、あるオークションで3500万円で落札されたという。この事例のように、現在、マンガやアニメの原画が海外のオークションで高値で取引されているらしい。要は、マンガやアニメの原画が、ヨーロッパ市場で美術作品と同様の扱いで取引されているということだ。実のところ原画は、これまで国内では扱いがひどく、多くが散逸したり安値で取引されたりしているという現状がある。一部の作家や、あるいは美術館(たとえば横手市増田まんが美術館など)などでは、こういう状況を危惧して原画を保管しているところもあるが、それでもマンガやアニメの原画ということになると量がきわめて多くなり、(特に個人レベルでは)保管するにも限界があるという状況になっている。
 このドキュメンタリーでは、こういった現状を嘆き、何とか国内で保管しないと海外に流出してしまって元も子もなくなるぞということをしきりに警告している。ただ実際には、すべての原画を保管するということは難しい話で、欲しい人がいるのであれば別にどこの国に行こうとそれはそれで良いんじゃないかと僕などは思う。過剰なナショナリズムは美術の発展にとってはむしろマイナスで、価値のわかる人のところに届けば良いのだ。よその国で高値で取引されているからといって、そのことを歎いても筋が違うんじゃないかと感じる。
『なぜ“原画”は海外へ』(ドキュメンタリー)_b0189364_08402283.jpg もちろん日本の出版社に原画を軽視する風潮があった(ある)ことは事実で、それはそれで大問題であるが、この番組のようにやたら流出の危機感を煽るのは論点がずれていると感じる。アニメのセル画などは国内でもすでに、ファンの元に広範に流出しているわけであり(セル画はかつてアニメ雑誌などで安く販売されていた)、むしろそうやって市場の裾野を広げる方が、長い目で見て良いのではないかという気がする。それが海外にまで広がるというんであれば、なお多くのファンの元に届くという見方もできる。それにセル画が高く売れれば、アニメーターの待遇改善に繋がる可能性も出てくる。当事者たちが有効活用すれば良いだけの話で、この番組のようにやたら流出の危機感を煽るのはいかがなものかと思う。「危ない」の連発がヒステリックな印象を与え、あまり感じの良いものではない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『海を渡った600体の神仏(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『にっぽん 微笑みの国の物語(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『眠れる名画を探せ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『盗まれたクメール石像(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“パンドラの箱”が開くとき(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アフガン秘宝の半世紀(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『手塚治虫 創作の秘密(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2025-12-04 07:39 | ドキュメンタリー
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