ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『手塚治虫 創作の秘密』(ドキュメンタリー)

手塚治虫 創作の秘密
(1986年・NHK)
NHK-総合 NHK特集

一人の先駆者の姿をリアルに捉えた貴重な記録

『手塚治虫 創作の秘密』(ドキュメンタリー)_b0189364_13291459.jpg 手塚治虫存命中に作られた1986年のドキュメンタリー。彼の仕事ぶりに密着して、創作活動をどのように送っているかを紹介する作品。
 手塚治虫は、アシスタントなども当然抱えていたが、自分一人だけで仕事するためにマンションの1室を借りていた。そこは、自分以外には妻とマネージャーしか入れないようにしているという領域で、まさにマンガを描くためだけの作業部屋になっている。アシスタントなどが常駐するプロダクションは近くにあり、アシスタントが原稿を受け取りに来て指示を仰いだりもするが、すべてこの部屋の玄関先でことを済ませる。
 このドキュメンタリーでは、その聖域に定点カメラを持ち込み、手塚氏の執筆の様子を記録しようという試みが行われているわけで、人気マンガ家の日常がどういうものか目にすることができるようになっている。非常に貴重なドキュメントであるが、一方でよく手塚氏がこういう撮影を認めたものだと感じる。だがその大英断のせいで、手塚氏のハードな日常と仕事に対する情熱を伺うことができるわけで、当時のNHK特集の企画力、先進性にあらためて感心する。
『手塚治虫 創作の秘密』(ドキュメンタリー)_b0189364_13291089.jpg このドキュメンタリー、初放送時も見たが、そのときも非常に感心したもので、同時に手塚治虫がマンガを生み出すためにどれほど葛藤しているかという側面も見えて興味深かった。また忙しさがあまりに異常で(パリに向かう飛行機の中でマンガを描いたりする)、こんな生活をしていて大丈夫なのかと感じた記憶もある。案の定、この番組の3年後に死去するんだが、実質的には社会が、一人の作家を使い潰したようなものではないかとさえ感じる。これだけの圧力をかけ続けた出版者側にも(同時に読者の側にも)大きな責任の一端があると感じる。
 一方で、馬車馬のように働き続ける一人のマンガ家の姿には、高度成長期の猛烈サラリーマンを髣髴させるような面もあり、当時の大人にはこういう人が多かったのかも知れないとあらためて感じたりもする。ともかく、一人の先駆者の姿をリアルに捉えたという点で、この番組が大変貴重な記録になったのは間違いない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『手塚治虫クロニクル 1946〜1967(本)』
竹林軒出張所『手塚治虫クロニクル 1968〜1989(本)』
竹林軒出張所『ルードウィヒ・B(本)』
竹林軒出張所『奇子 (上)(下)(本)』
竹林軒出張所『手塚先生、締め切り過ぎてます!(本)』
竹林軒出張所『漫画教室(本)』
竹林軒出張所『日本まんが 第壱巻(本)』
竹林軒出張所『ボクの手塚治虫(本)』
竹林軒出張所『まんが道 (1)、(2)(ドラマ)』
竹林軒出張所『まんが道 (3)〜(15)(ドラマ)』
竹林軒出張所『まんが道 青春編 (1)〜(15)(ドラマ)』
竹林軒出張所『トキワ荘青春日記 いつも隣に仲間がいた(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の青春(映画)』
竹林軒出張所『まんが トキワ荘物語(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘の時代—寺田ヒロオのまんが道(本)』
竹林軒出張所『1秒24コマのぼくの人生(本)』
竹林軒出張所『なぜ“原画”は海外へ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2025-12-01 07:26 | ドキュメンタリー
<< 『なぜ“原画”は海外へ』(ドキ... 『マッドマックス』(映画) >>