ヒポクラテスたち(1980年・シネマハウト、ATG)
監督:大森一樹
脚本:大森一樹
出演:古尾谷雅人、伊藤蘭、真喜志きさ子、 小倉一郎、内藤剛志、阿藤海、斎藤洋介、光田昌弘、狩場勉、柄本明、西塚肇、原田芳雄、渡辺文雄、手塚治虫、北山修、鈴木清順、軒上泊
医大生の青春群像
大森一樹の出世作、『ヒポクラテスたち』を40年ぶりに見た。大森一樹と言えば、当時独立系からデビューしてきた新進監督で、今後どういうものを作るのか期待を持たせる存在だった。まさかその後ゴジラ監督になるとは当時思いもしなかった。そう言えば、同じく当時若手だった金子修介も、その後ガメラ監督になったりしたんで、食っていくためには、それはそれで仕方ないのかとも思う。そもそも映画の扱いが当時と今では大分違うわけで、今では映画は完全に娯楽化しており、芸術という線で見る人は少なくなったように思う。なんでも軽くなってしまうのはある意味既定路線なのかも知れない。
それはともかくこの作品、京都府立医大卒業の大森一樹が、医大生の日常を描くというもので、ある意味自伝的な要素もあって文学的な素材である。その点で芸術寄りの作品と言うことができる。もちろんエンタテイメントの要素も入っており、作品としても十分楽しめるが、完全な娯楽映画ではない。当時芸術指向の映画を多数発表していたATG(日本アート・シアター・ギルド)が配給している点でも、そういう傾向の映画であることが窺われる。
京都の医大生の日常を描く映画であるため、医大と縁遠い人間にとっては目新しい世界ではあるが、京都で学生生活を送った人間にとっては「あるある」的なものもあって懐かしさも感じる。祭りの行列に参加するアルバイト(映画の中では「デモバイト」と称される)は僕もたびたび参加し、友人との間では、この映画の影響で実際に「デモバイト」と呼んでいたのである。また丸太町通りにあった川縁の喫茶店(
『鴨川ホルモー』にも出ていたような気がする)や古臭い京阪三条駅にも懐かしさを感じる。
エンタテイメントの要素を入れようとしたせいかわからないが、ストーリー(特に最後の方)が少し作りすぎになっているという印象で、そのあたりが残念な部分だったが、医大生の青春群像として、全体的によくできた作品ではないかと思う。また、手塚治虫、北山修、軒上泊が教授役としてゲスト的に出演しているのもなかなか楽しい。他に鈴木清順も泥棒役としてゲスト的に登場する。なお、元キャンディーズの伊藤蘭は、これが芸能界引退後復帰第1作になった(当時話題になった)。また内藤剛志、阿藤海、斎藤洋介は当時無名で、この映画を機に映画・テレビの出演が増えたらしい。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『鴨川ホルモー(映画)』竹林軒出張所『京大吉田寮(本)』