新・ドキュメント太平洋戦争
1945 終戦
最終回 忘れられた悲しみ
(2025年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル
このシリーズもやっと終戦
5年前から毎年夏に放送されてきた『新・ドキュメント太平洋戦争』のシリーズがやっと完結した。
同時代の史料に当たって、当時の庶民の感じ方・考え方に直に接しようというコンセプトのシリーズだったが、1年に1回で5年に渡って悠長に放送するというパターンで放送されるなど、その方法論についてはおおいに疑問符が付く。シリーズの展開が、開戦当初、イケイケドンドンのような空気が世間に流れていたものが、身辺に被害が現れ始め敗色が見えてくるにつれて厭戦的な雰囲気が濃くなり、敗戦後は著しく後悔するという流れになることを考えると、最後の今回の放送がもっとも重要になり、テーマのすべてがここに凝縮されていると言っても良いほどなのである。最初の放送時を軸に考えると、このもっとも重要な箇所が5年後に放送されるということになるわけで、それを考えると、一体何のつもりでこういう構成にしたのかさっぱりわからない。見せてやるんだから5年くらい気長に待てというつもりなのか知らんが、視聴者の側でも5年の間ずっと健康を維持できる保証もなく、それを考えるときわめて不親切と言わざるを得ない。また最後の「後悔」の部分を5年後まで見せないこともきわめて不誠実に映る。どうしても5年に分散しなければならない事情があるのなら、こちらを真っ先に見せるべきであるとさえ思う。

内容については、前後半の2部構成で、何人かの日記を中心にして、その人々の当時の足跡を追うという形式になっており、従来のシリーズと変動はない。ただ今回の放送については、前半部分がやや間延びしていて途中から飽きてきたんで、改善点は多いと感じる。後半では戦後の社会の姿が紹介されるが、こちらも目新しい視線が少なくやや物足りなさを感じた。
総じて全体としてよくできていたシリーズではあるが、「戦後80年」に無理やり合わせて5年越しで放送したせいだかどうだかわからないが、放送が5年に渡ったせいでインパクトも話題も小さくなって、味が薄められる結果になってしまった。アーカイブとしての価値は高いが、後でもう一度見たいと感じるほどの魅力はないように思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『1942 大日本帝国の分岐点(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『1943 国家総力戦の真実(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『1944 絶望の空の下で(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カラーでみる太平洋戦争(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『終戦直後の日本(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『あの日、僕らは戦場で(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『昭和史 1926-1945(本)』竹林軒出張所『特攻 〜なぜ拡大したのか〜(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『名前を失くした父(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 21(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』