ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『知られざるナミビア』(ドキュメンタリー)

知られざるナミビア 天然資源大国のいま
(2022年・仏Cat&Cie)
NHK-BS BS世界のドキュメンタリー

植民地時代の負の遺産は大きい

『知られざるナミビア』(ドキュメンタリー)_b0189364_08292664.jpg アフリカ南西部に位置する国、ナミビア。といってもほとんどの日本人にはピンと来ない土地である。タイトル通り、その実情など知る由もない。だが、アフリカ諸国に共通の問題は依然として存在しており、特に貧富の格差は世界トップレベルという。そのナミビアについて報告するドキュメンタリーがこの作品である。
 ナミビアの大きな問題は土地所有の問題で、いまだに大土地所有者が広大な土地を占有しており、金のない庶民は農業を行うこともできないという状況がある。その原因として挙げられているのが、かつてこの地を植民地支配していたドイツ人によって土地が奪われたことで、その広大な土地が今でもその子孫によって占有されているという事実である。ドイツ系の後裔たちは、このときに獲得した利権を手放す気はないようで、いまでもその利権の上にのさばっている。
 また、中国系企業がナミビア当局に食い込んで、ナミビアのインフラ整備を独占しているという問題もある。しかも北朝鮮がこのインフラ建設に絡んでいる節もあり、問題の根は深いと言わざるを得ない。同時に中国は、ナミビアの豊富な地下資源も狙っており、大量の埋蔵量を持つウラン鉱山も手に入れているという。
 このようにさまざまな利権所有者が、国の資産を食い潰すという、アフリカ諸国に共通する構図がナミビアでも見受けられるというわけある。他にも東アジアで高額で取引されるサイの角を目的としたサイの密猟の問題も取り上げられている。これにも中国の関与が疑われるような表現が、このドキュメンタリーでは行われていた。
 ナミビア共和国が独立を果たしたのは1989年だが、真の独立国家になるのはまだまだ時間がかかりそうで、ヨーロッパ植民地主義の爪痕はなかなか消えそうにない。そういうことをあらためて思い知らされたドキュメンタリーであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『メイド イン エチオピア(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アフリカ争奪戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『血塗られた携帯電話(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『絶滅へのギャンブル(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『密猟者とレンジャー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『甘いチョコレート 苦い現実(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ナイルの水は誰のものか(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2025-07-24 07:29 | ドキュメンタリー
<< 『良心を束ねて河となす』(ドキ... 『生と死の境界線』(ドキュメン... >>