“チェーンソー”改革の現在地 アルゼンチン 国家縮小の陰で
(2024年・フィンランドYLE)
NHK-BS BS世界のドキュメンタリー
馬鹿が社会を破壊する
2023年末にアルゼンチンの大統領の地位に就いたのがハビエル・ミレイという男。このハビエル・ミレイの自称「改革」にスポットを当て、ミレイの来し方を辿るドキュメンタリーである。
この「大統領」だが、政府支出を削減して国家財政を立て直すというかけ声の下、次々と支出を減らし、財政収支を黒字に転換させたと胸を張っている。だがその実態は、省庁を含む行政組織を次々と解体し(19省から9省に削減したらしい)、公的年金などの行政サービスを大幅に削減するというもので、そんな政策なら小学生でも思い付くというようなものだった。そういった機関やサービスの多くは元々必然性があって存在しているのであって、政府支出削減についても削減したら社会に混乱が起こるような分野に手を付けているわけである。本来であればどこに手を付けたら良いか十分検討してから(おそるおそる)断行しければならないことを、全部一律にカットするという強引な手法でやったに過ぎない。財政は(支出を減らすので)一次的に好転するかも知れないが、社会の方が破綻し、社会不安が蔓延する。社会不安が蔓延すれば財政収支が悪化するのは当然で、短期的に黒字になったとしても2・3年経てば、取り返しがつかない状況になりかねない(きっとなるだろう)。

そもそもなぜこんな幼稚な発想しかない男が、公正な選挙を通じて大統領になれたかという部分が謎ではあるが、世界中で似たような連中が権力を握りつつあるのは周知のとおり。大国アメリカにも愚か者全米代表みたいな男が君臨している上、少し前の日本にも似たようなのが君臨していた。こういう人間が、その突飛な発言と行動で注目を集めて衆愚の支持を集めるのは、SNSをはじめとするネット文化の影響がきわめて大きいのではないかと常々思っているわけだが、要は、本来表に出るべきでない人間が、極端な言動で注目を集めて人気まで得てしまい権力を握ってしまったというパターンである。プチ・ヒトラーが世界中に蔓延しつつあるわけだ。
この「大統領」、まだ今後数年任期が残っているが、その間にアルゼンチンの社会が崩壊してしまわなければ良いがと他人事ながら心配になる。同時に、他の国でもこういう愚かな人間に権力を与えてしまわないよう切に願う。愚か者に権力を与えてしまうと、社会が混乱するのは間違いない。混乱するだけならまだしも、社会が完全に破たんしてしまう可能性だってある。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『“アメリカ改革”の深層(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『“強欲時代”のスーパースター(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ドナルド・トランプのおかしな世界(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『嘘と政治と民主主義(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『華氏119(映画)』竹林軒出張所『妖怪の孫(映画)』竹林軒出張所『安倍晋三 VS. 日刊ゲンダイ(本)』竹林軒出張所『ハンガリーの民主主義は今(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ストーリーが世界を滅ぼす(本)』