シリコン・デザート
インド 砂漠化するIT都市
(2024年・仏Yes Sir Film)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
文明崩壊のスナップショットなのか
インドのベンガルールという都市での話。
1980年代以降、米国のIT産業の下請先として発展し、いまやインド版シリコンバレーのような都市になったのがこのベンガルールであるが、現在、同地の水不足が深刻になっている。過剰な人口の流入のために水消費が増えたことと、急速な都市開発のせいで湖などの水源が破壊されたことが大きな原因である。
現在は、地下水を売っている業者(「水マフィア」と呼ぶ人もいるらしい)や、住民自ら汲み上げている地下水に頼っている状況だが、その地下水さえ枯渇し始めているという状況で、住民にとっては生死に関わる死活問題である。こういう局面でとばっちりを受けるのが農家で、灌漑用水よりも飲料水が優先されるのは常であるため、古くからこの地で農業を営んでいる近隣の農家も、米作りが満足にできない状態になってしまっている。水不足でもたらされる混乱のある側面が現在のベンガルールに如実に現れているというわけである。

土地の破壊と水の枯渇が文明の崩壊の最大の原因であることを考えると、ベンガルールの状況は文明崩壊の過程を垣間見ることができる事例とも言える。金が増えて豊かになったところで生活の根本的な要素が失われたらどうしようもないということが、この現代文明の縮図から窺われる(決して他人事では済まされないが)。
興味深いトピックであったが、番組自体はインタビュー中心で構成されており、映像的な動きがあまりなかったため、やや退屈なドキュメンタリーになってしまった。途中少し眠くなった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『デイ・ゼロ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 第15集(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『土の文明史(本)』竹林軒出張所『サンド・ウォーズ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『私は黄砂と闘う(ドキュメンタリー)』