死に向かって生きる アメリカを目指す中国人“走線者”
(2025年・NHK)
NHK-BS BSスペシャル
ミクロ的な視点から愚策を検討する
中国では、政権批判(めいたこと)を行ったために当局から追われる身となって、結果的に米国に政治亡命を求める人々が一定数存在するが、実際のところビザがないために米国には直接入ることができない。そういう人々は、ビザが不要なエクアドルに一旦渡航し、そこから不法移民として北上、というルートを辿って米国に密入国することになる。ただし現在トランプ政権による締め付けがあることで、不法移民が米国内から追い出されているという現状があり、たとえ入国して難民申請しても認定されることは容易でなくなっている。このまま祖国に強制送還されたら、当局に拘束されるのは明白で、日夜不安な日々を送っているという状況である。

こういう人々(「走線者」と呼ばれている)を追ったのがこのドキュメンタリーで、中国の過酷な現状だけでなく、不法入国の実態もよく伝わってくる。トランプ政権のマクロ的な表層をなぞった政策がいかに愚かであるか、ミクロ的な視点から考えさせる内容で、米国政府の愚劣さと中国内の弾圧のひどさの両方が伝わってくる。元々は
『国際報道2025』のレポートだったものが、1本のドキュメンタリーとして独立した作品のようだが、よくまとまった優れたドキュメンタリーになっていた。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『中米パナマの憂うつ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『中国 デジタル統治の内側で(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『文化大革命50年 知られざる“負の連鎖”(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『天安門事件(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『国家主席 習近平(ドキュメンタリー)』