越前竹人形(1963年・大映)
監督:吉村公三郎
原作:水上勉
脚本:笠原良三
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信
音楽:池野成
出演:若尾文子、山下洵一郎、中村玉緒、中村鴈治郎、殿山泰司、伊達三郎、浜村純、西村晃
大映らしい堅牢な作品
福井県の山村で作られる竹人形をモチーフにして書かれた水上勉の小説を映画化したもの。
主人公は若い竹細工職人で、父親と縁があった遊女を妻として迎えるが、予想通り、その後ややこしいあれやこれやが起こるというような物語である。
ストーリーは自然に流れ、それほど意外性がなく進んでいくが、ややありきたりな悲劇的展開になっていく。ストーリーには若干の物足りなさもあるが、映画作品として見れば、大映映画らしく非常に堅牢に作られており、破たんはまったくない。主役の若尾文子も美しく、映画としての見所は多いと思う。あらためて思ったが、この頃の若尾文子、汚れ役から貞節な女まで、実にさまざまな役を演じていて、目を瞠るような演技はそれほどないが、どれも実在感・存在感があり、今振り返るとすごい女優だと感心する。この作品の若尾文子も抜群の存在感で、彼女の代表作の1本と言って良かろう。他の俳優も皆うまく、こちらも大きな見所の1つである。中村玉緒と中村鴈治郎が親子で出ているのも一興。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『夜の蝶(映画)』竹林軒出張所『雁の寺(映画)』竹林軒出張所『五番町夕霧楼 (63年版)(映画)』竹林軒出張所『飢餓海峡(映画)』