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竹林軒出張所

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『ねらわれた図書館』(ドキュメンタリー)

ねらわれた図書館
アメリカ“分断の最前線”

(2024年・仏加Temps Noir / Filmoption / ARTE G.E.I.E.)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

空恐ろしい世界が現実に

『ねらわれた図書館』(ドキュメンタリー)_b0189364_09321940.jpg アメリカのルイジアナ州やミズーリ州など保守的な州での話である。LGBTQの問題を扱った書籍に難癖をつける保守勢力があって、彼らがこれを一大キャンペーンに仕立て上げ、図書館を攻撃する活動を行っている。多くはトランプ流共和党の反動政治家とその支持者が主導しており、図書館からポルノをなくせというのが彼らの主張である。もっともポルノの本など端から図書館には置かれていないが、彼らによるとこの類の本が「ポルノ」なのである。
 しかもこういったキャンペーンが功を奏し、一部の州では州政府レベルで法案を通し図書館の活動や教師の活動を規制するということまでやっており、しかも米国でこういう動きが広がっているというのだ。悪書追放にとどまらず、教育現場や公共サービスへの政治介入という由々しきことが公然と行われ、言論の自由、思想の自由に公然と制約が加えられるという状況がアメリカで起きていることが伝えられる。現在アメリカで広がりつつある病的な反動主義、それに連なる暴力肯定主義が紹介され、こういう事実を目の当たりにすると、かなり気分が悪くなる。
『ねらわれた図書館』(ドキュメンタリー)_b0189364_09322399.jpg あまり目にしたくない事実ではあるが、こういう事態がアメリカだけでなく、世界中に広がっているというのが現実であり、暗黒世界が近づいているように感じてしまうのは僕だけではあるまい。ただこのようなドキュメンタリー作品が作られて、異様な現状が紹介されることが、まだ(数少ない)救いにはなっている。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『華氏451(映画)』
竹林軒出張所『華氏119(映画)』
竹林軒出張所『嘘と政治と民主主義(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“電子図書館”の波紋(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2025-03-21 07:32 | ドキュメンタリー
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