女たちがいなくなった日
“男女平等先進国”アイスランドの原点
(2024年・米アイスランドAlternative Image Production / Other Noises / Krumma Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
70年代前半のアイスランドも
日本と状況は変わらなかった
1975年は国連が定めた国際婦人年。この年、アイスランドで「女性の休日」というボイコット運動が実施され、多数の女性がこの運動に参加したことで、女性に対する社会での扱いが改善されることに繋がったという。このドキュメンタリーでは、当時の社会状況を紹介し、この「女性の休日」運動がどのように企画され実施されたかに焦点を当て、アイスランドが世界最高レベルの「女性の地位」を実現したかを検証する。
1970年代、世界中でウーマンリブ運動が起こり(日本もその影響を受けていた)、女性の地位を向上させようという動きが出ていたが、現実的には、働く女性の地位は低く、賃金格差も大きい状態が続く。当然ながら企業の役職や政治家もほとんどが男という状況である。アイスランドでもご多分に漏れず「男は外・女は家」というような価値観が主流だったわけで、西側先進国ではこれが平均的な考え方だった。だが、多くの女性がこういった扱いに疑問を持っていたのも世界共通で、そんな中、一部の女性が丸一日ストライキをやることで、女の労働の大切さを男たちに思い知らせてやろうと思い付いた。当初は「ストライキ」という言葉に対して反対する保守派女性もいたが、「休み」という名称にすれば良いだろうということでまとまり、「女性の休日」運動が始動することになった。とにかく丸1日仕事をしないというのがこの運動の趣旨で、ビラを作り周りの女性に呼びかけることで、決行の日(1975年10月24日)を迎えることになった。蓋を開けてみると、90%を超える女性が参加し、仕事をボイコットして各地の集会に集まった。

この運動は世界中で話題になり、各国のニュースでも取り上げられた。アイスランド国内でも世論の喚起に大いに貢献したようである。結果的に、その5年後、世界初の女性大統領がアイスランドに誕生することになった。そして今では女性の政治家の割合は6割を超えているという。もっとも今でも女性が男性と100%同等とは言えないらしく(どのあたりがそうなのかはよくわからなかったが)いまだに課題があるらしい。
こういうような流れはよくわかったが、「女性の休日」の後、どうして状況が急激に改善したかはよくわからなかった。たった1回のストライキでものごとが変わることは異例中の異例のような気がするが、そのあたりの事情も詳細に語られれば良かったと思う。その点が非常に残念な部分だが、しかしそれでも建設的なトピックを扱っていることもあって非常に爽快なドキュメンタリーにはなっていた。最近暗い話題のドキュメンタリーが多く、世界の情勢に辟易していたところだったので、一服の清涼剤になったと感じる。結局は、ものごとは悪くなることもあるし良くなることもあるということになるのか。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (2)(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ハリウッド発 #MeToo(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『説教したがる男たち(本)』竹林軒出張所『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い(本)』竹林軒出張所『私のいない部屋(本)』竹林軒出張所『「非モテ」からはじめる男性学(本)』