ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『私を“合成”したのは誰』(ドキュメンタリー)

私を“合成”したのは誰
ディープフェイク・ポルノ犯を追う

(2024年・米英Willa Production / Murmuration Production他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ネットは危険物扱いが必要

『私を“合成”したのは誰』(ドキュメンタリー)_b0189364_08262672.jpg アメリカのとある技術系の女子大学生、テイラー(仮名)は、ある日、友人から自分のポルノ動画がポルノサイトに出回っていることを知らされる。ポルノ映像を撮ったことなどないテイラーは衝撃を受けるが、ネットで検索すると自分が登場している同様の映像が多数出回っていることが判明する。すべてAIを使って合成されたディープフェイク・ポルノであり、誰かがこれを作って広めているということになる。警察に相談するも取り合ってもらえず、暗澹とした気分になり、鬱状態になる。
 その後、同じ大学に通っている友人の女性についても同様のポルノ動画が出回っていることがわかり、いろいろと推理した結果、共通の知人である同級生の男が容疑者として浮かんできた。この男とはかつてトラブルになったこともあり、動機は十分で、しかもその後、この男の周辺の女子たちも同じような被害にあっていることがわかったため、この男が犯人であると特定することができた。
 警察に通報したが、この犯罪を取り締まる法律が現在、連邦にも州にもないために処罰できず、結局、警察がこの男にこのような行為をやめるよう説得するという結果で終わった。
『私を“合成”したのは誰』(ドキュメンタリー)_b0189364_08263071.jpg このドキュメンタリーでは、テイラーに起こったこのディープフェイク・ポルノ事件を中心に話を展開していくが、実は同様の事件は現在全米で多発しているらしく、被害者のほとんどが泣き寝入りの状態になっているということである。こういった現状を告発するのがこの作品である。
 一人の被害者が弁護士や友人たちと犯人を突き止める過程が非常にスリリングな上、事の重大性、問題性を鋭くえぐっている優れたドキュメンタリー作品で、主張も明確である。野放し状態になっているネット上の悪意に対して、社会が真剣に取り組まなければならない時期が来ているということを改めて考えるきっかけになった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『抑圧のアルゴリズム(本)』
竹林軒出張所『生成AIの正体(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“フェイクニュース”を阻止せよ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ネット自動広告取引の闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ソーシャルメディアの“掃除屋”たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『#フォロー・ミー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“幸せ”に支配されるSNSの若者たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『データに溺れて…(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ベリングキャット(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『NYタイムズの100日間(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2025-03-12 07:26 | ドキュメンタリー
<< 『チャップリンの声なき抵抗』(... 『カネはモスクワへ消えた』(ド... >>