カネはモスクワへ消えた
国際投資詐欺を追う
(2024年・デンマークDR)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
ジューシー・フィールズ事件の全体像
全容解明には至っていないが……
数年前、医療用大麻への高配当の投資を呼びかけるJucyFieldsという企業が登場し、ヨーロッパで多くの人がそれに投資したものの、結局それが詐欺であることが判明し大金を失うという事件が起こった。いわゆるジューシー・フィールズ投資詐欺事件で、被害額は1000億円にも上るという。その事件の関係者の一人であると思われるロシア人が、デンマークの放送局DRに黒幕についての情報を提供するという話を持ちかけた。このドキュメンタリーは、そのインタビュー・シーンから始まる。
イーゴリ・タクシンというその男は、ジューシー・フィールズ事件の首謀者がロシアのマフィアであると言い、自分は彼らに裏切られたため内部告発するのだと語った。そのしてその首謀者の名前にまで言及したのだった。
その後、取材を重ねていくと、このタクシン、実際にジューシー・フィールズ事件の関係者の一人であることがわかった。しかもこのインタビュー後もJucyFieldsの元CEOを脅迫したりしており、首謀者たちと縁が切れているわけではなく活動も継続している模様であるということがわかる。
このJucyFieldsという「企業」だが、広報ビデオやネットサイトまで巧みに作り上げており、一見したところ詐欺であることになかなか気付けない。しかも大麻栽培地の見学会まで実施しているというんだから、元々かなり計画的に展開された「事業」であることがわかる。投資した人々の方も、最初は半信半疑で少しずつ金を出しているんだが、当初は高配当がついて金が入ってきたことから信用してしまい、結局泥沼にはまり大金を失ったということである。もっとも、ハードルを低いところから始めて次第に高くしていくという方法論は、詐欺の世界では常套手段ではある。

こうして集められた金は、詐欺であることが判明すると、銀行口座からそっくり消えてしまい、捜査当局によると最終的にロシアに流れていたことがわかった。今のロシアは、大統領自身がマフィアを支配しているような社会であるため、おそらく最終的にはロシア政府にもかなりの金額が流れていることが想像される。私見だが、このジューシー・フィールズ事件、国家としてのロシアがヨーロッパ人から金をせしめるために行った国家プロジェクトではないかという気さえする。配当が高いなどといううまい話には乗っからないのが一番だが、それにしてもこの事件、ロシアに蔓延する暴力的な匂いがプンプンして、気分が悪くなるような話である。
最近は、僕のところにもフィッシングメールが毎日何十通も来るという有り様で、世界は今、詐欺が平然と行われる環境になった。結局のところ、ネット上の社会などは所詮は絵空事であり、その情報については端から信用しないくらいのスタンスが必要だというになるのだろう。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『クリック・ベット(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『オンラインカジノ 底知れぬ闇(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『破綻する影の銀行(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『闘い続けた郵便局長たち(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『消えた200億円と暗号資産の闇(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ネット自動広告取引の闇(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『あなたのアパートは大丈夫?(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『「また見つかった 何が?」』